森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.06.28
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種田山頭火の自由律句は神経症で苦しいときには共感を覚える。

分け入っても分け入っても青い山
どうしようもない自分が歩いている
振り返らない道を急ぐ
うしろすがたのしぐれていくか
ぬいてもぬいても草の執着をぬく
ふくろうはふくろうでわたしはわたしでねむれない
おちついて死ねそうな草萌ゆる

「神経症の時代 わが内なる森田正馬」と言う本を書かれた渡辺利夫氏は、種田山頭火は紛れもなく神経症者であるという。

母親は夫婦の不仲のために33歳の時で自殺している。兄弟姉妹にも不幸が相次いだ。
そうした不幸な境遇がその後の彼の人生に大きな影響を与えている。
山頭火は28歳の時に結婚をして男の子が生まれている。
その後、熊本市に移り住んだか山頭火は定職というものを持たなかった。
家に寄りつかず、俳諧仲間を訪ね歩くという生活であった。
家庭をかえりみることがなく、その後離婚に追い込まれている。
妻子は不幸であったが、子供は妻が立派に育て上げた。

山頭火は乞食僧として托鉢をしながら全国を歩き回った。流浪の俳人と言われる所以である。
その間俳句仲間には多大な世話をかけることになったが、山頭火に師事する人が多く助けられた。
種田山頭火の一生を追ってみると、うつ状態と飲酒が常に付きまとっていた。
いつも精神状態が不安定でイライラしている。うつ病ではなかったのか。

じっとしておられない精神状態とその不安を取り去るためのアルコール。
少し精神状態が良いときに、その内面の苦しみを自由律句として吐きだしていったのだ。

渡辺利夫氏は次のように説明されている。
山頭火は、父の放蕩、母の自裁、弟の自殺、兄弟姉妹の早世、家産の瓦解、己を取り巻くものの、ことごとくの崩落に打ちのめされ、その暗鬱から逃れようとして漂泊を繰り返し、しかし苦悩から生涯逃れることのできなかった男であった。
小鬱的心理にあっては、創作はかなわない。しかし、鬱という病の特徴の1つは波状である。

山頭火の俳句は、 「作られた」ものではなく、心の中の叫びとなって「自然に生まれた」ものなのである。波打つ苦悩を内界に抱えて放浪を続けた。
山頭火の自由律句が、我々の心を揺さぶるのは、山頭火の内界の苦悩の吐露がのっぴきならないものであったからなのであろう。私の目に映る山頭火は紛れもなく神経症者である。
神経症は高い文学的才能と結びついて山頭火は山頭火たりえたのだと言わねばならぬ。
(種田山頭火の死生 渡辺利夫 文芸春秋参照)

神経症で苦しい時は、山頭火の自由律句を読んで共感を覚える。自分よりもさらに精神的に追い詰められ、なんとかそこから抜け出そうともがいている人は共感を覚えるのである。
これは私が、マーラーの巨人という曲を聴いた時に、自分の苦しみを包み込んでいやしてくれた体験と重なるところがある。人間は共感を覚えると、自然に涙としてその苦しみを吐き出すことができるのである。
症状で苦しい時はいくら適切なアドバイスをされても、心の中に染み込んでくることは難しい。
それよりは、自分と同じように苦しみもがいている人がいるという存在を知って、共感できるというステップを踏む必要があるのだと思う。
苦悩のどん底にある人は、最初にすることは、共感できる人を探し出しすことが重要になる。
得てして自分の苦悩にのたうち回るだけで、益々増悪してアリ地獄の底に落ちてしまう人が多い。
神経症では生活の発見会の集談会という集いがその役割を担っている。

自分の苦しみを他人とシンクロできることは、一つの能力であるかもしれない。
その能力は自助組織に参加することで獲得することができる。
そしてその能力を持っている人は、苦悩を乗り越えて立ち直っていくことができると思う。





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Last updated  2017.06.28 06:30:05
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