先日、プロフェッショナル仕事の流儀で広島カープのスカウト苑田聡彦さん(72歳)の放送があった。
広島カープは親会社を持たず独立採算性を入れており、地方球団ということもあって、潤沢な資金があるとは言えない。
したがって、他球団のようにフリーエージェント制度を利用して、実績のある選手を獲得することができない。
隠れた逸材を見出して、それを自前で鍛えあげて中心選手に育て上げるというのがチームの方針である。
中心選手に育っても、これからという時に、 フリーエージェント制度を利用して、 金に糸目をつけない他球団に移籍する例が後を絶たない。残念だがそれが現実だ。
ドラフト制度がない頃は、有望選手は意中の球団を逆指名することができた。
その時、業界では「誠意を見せるのは金だ」という風潮が蔓延した。
当然金のある球団に有望選手が流れていった。
カープは資金難からその波に乗ることができなかった。ずっと弱小球団のままだった。
そんな時どういう戦略をとったのか。
他球団に騒がれない選手を見つけて、足しげく通いつめるという戦略だった。
そうして獲得したのが北別府学、江藤智、金本知憲、野村謙二郎、黒田博樹であったという。
黒田投手は他球団が目を付けていない専修大学の1年生の時から見続けてきた。
頭角を現した黒田投手はドラフト前には他球団から1位指名の候補に挙がっていた。
金の面では全く勝ち目はなかった。そんな折、ドラフト3週間前になって、黒田投手が他球団に指名されてもカープに入団すると公言したという。
縁もゆかりもないカープを逆指名したのだ。当時としては大変な驚きであったという。
黒田投手は、無名のころから注目して励ましてくれた人に、誠意で応えないわけにはいかなくなったのだという。他球団の札束交渉を断った。金ではない誠意だといってはばからない。
苑田さんは、選手に惚れぬいて、足しげく通いつめるという誠意を見せ続ければ、いつかは野球の神様が応えてくれる時があると言われるている。粘り強く、できるだけ他球団と競合しない無名の選手を発掘して、注目して見ているという誠意を見せる。
働いてもいないのに、いくらくれるのかというような選手はすぐにわかる。
そういう選手はカープのカラーに合わないという。
苑田さんの選手を発掘する方法はとても面白い。
丸選手は高校時代、ピッチャーだったが、注目したのはハンドワークが柔らかく、フォローが広いというバッティングであったという。三振にも素晴らしい三振があるという。
タイミングが合って思い切ってスイングする選手は見込みがあるという。
そういう選手こそ、その後も何回も見て見極めをしたいという。
高校生の段階で、打率がよいとか、通算ホームランは何本打ったとかいうのは、あまりアテにならないそうだ。だから球場に足を運んで自分の目で確かめないと見極めなどできないという。
今年ドラフト2位で熊本工業の山口翔投手を指名した。
山口投手は肘が柔らかく、軸がぶれないという長所があるという。
ところが、コントロールが悪く、5、6球に1球ぐらいしかいい球がこない。
フォアボールを連発して自滅するタイプだ。
しかしフォアボールを連発しても、決してうつむいたりしない。ここが彼の最大の長所であるという。
プロでは逆境に耐えうる強い気持ちを持っているかどうかが不可欠である。
例えばインコースに投げてホームランを打たれても、次の打席で意識してインコースを投げて、「打てるものなら打ってみろ」と言うような負けん気の強さがプロ向きの選手であるそうだ。
負けず嫌いでも、大のつく負けず嫌いでないとその後大成はしない。
山口投手はそれを持ち合わせている。このような選手は昨年は関東にはいなかったという。
フォアボールを連発するのはリリースポイントが一定でないからである。
これはプロに入ってから修正できるので、今の時点では問題ないという。
ドラフト4位では二松学舎大付属の永井敦士選手を指名した。
これは現場サイドから内野手をピックアップしてほしいという要望に応えてのものだった。
現在の内野はセカンドに菊池、ショートに田中という選手を擁しているが、バックアップ要員が不足しているという。しかし今年はめぼしい内野手が見当たらない。そこで目をつけたのが永井選手だった。
永井選手は、現在センターを守っているが、打球処理の足の運びをビデオで見ていると、内野手に転向しても十分に対応できる能力があると判断した。緒方監督も納得した。
何より強い身体、そして50メートルを5秒で走るという優れた脚力を持っている。
苑田さんは、かって3球団競合の末にドラフト1位で川島堅投手を指名したことがある。
ところが、川島投手は肘を壊し一勝しかあげられなかった。
その後引退し今では接骨院を開業している。
苑田さんは、その接骨院にずっと通っているという。
引退しても自分の指名した選手には目をかけているのである。
人間的な優しい面も持ち合わせている。スカウトは野球が好きでないとできないという。
球界最年長スカウトとしてこれからも精進してゆかれるそうだ。
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