森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2018.04.22
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子供が社会に適応し、自立していくためには、身近に存在する親を参考にしている。
特に男の子の場合は、父親を自分のモデルとして、師として、その1挙手1投足を、関心や価値観を、意識的無意識的に取り組んでいく。
この事を心理学では同一化という。子供の発達過程では4歳の頃から始まるという。母子密着の次の段階である。子供は父親を自分の同一化する身近な存在として見ているのである。
喋り方や感情的な反応の仕方、行動や考え方まで貪欲にコピーして取り込んでいくのである。
実際子供は父親のしている事を真似ようとする。
父親が車を洗い始めたら、自分も洗いたがる。父親がノコギリを挽くと、自分もノコギリを使いたがる。
父親が美味そうにビールを飲んでいると、子供も牛乳を美味しそうに飲むように真似る。
父親は子供の要求を十分に受け止め、満足してやることが、外に向かおうとする意欲を、現実的な力にすることができる。
こうして母子密着の状態から離れ、社会という現実の仕組みの中に入っていくことができる。

同一化が起きると、父親の良い特徴だけではなく、悪い特徴も取りこまれ、似た特性を示すようになる。
もともとその子が持っているものを越えて同一化の影響は及ぶとされている。
(父と言う病  岡田尊司 ポプラ社 113ページより引用)

この同一化を正常に切り抜けて成長していくということが、その後の子供の人生に多大な影響を与える。
子供は父親をモデルにして、社会への適用の仕方、困難の乗り越え方、人付き合い、欲望の制御、交渉の仕方、職業選択、能力の高め方などを自然に身につけていく。そして自立した人間に成長していく。

問題は、父親がその役割を果たしていない場合である。
離婚や病気、ネグレクト、仕事の関係などで子どもと関わりを持てない場合である。
こうなると、母子密着状態が続いてしまう。あるいは母親が父親の役割を果たすことになる。
母親が父親の役割を肩代わりしようとすると、過度なしわ寄せがおきやすい。

私の父親はアルコール中毒で肝臓を悪くして52歳で亡くなった。
亡くなる前は30代後半から昼間っから酒を飲むような生活をしており、 1日中酔っぱらっていた。

私はその影響からか、オヤジのような人間にはなりたくないといつも思っていた。
つまり私の父親は、私にとって同一化の対象にはならなかったのである。
その代役もいなかった。
1人の人間の発達過程から見ると、身近なモデルはなかったために、社会性、職業選択、技術の習得、人間関係、挑戦性、意欲などが全く身に付かなかった。
そのおかげで、社会の荒波の中で適応することがとても困難となった。

注意や意識は内向化し、本来外に向かうエネルギーは、自分を傷つける道具となった。
対人恐怖症となったのも、父親という模範となるべき存在を欠いていたことが、私の1番の原因ではないかと考えている。
今では神経症は自分の人生を見つめ直すために大いに役立った。その原因は父親から受け継いだと思って感謝している。だがもし父親が自分の果たすべき役割を多少なりとも認識していてくれたならば、もう少し違った人生を歩んでいたかもしれないと思う。





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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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