森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2018.12.23
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速水敏彦さんは、現代人は「仮想的有能感」を身につけている人が多いと言われている。
これは、周囲の人から現実には有能と認められていないにもかかわらず、過度に自己主張を繰り返す自己中心的で、他人を軽視し、軽蔑する人のことをいう。
ミスや失敗の原因を自分以外の要因として責任転嫁してしまう。
また、周りの人の失敗には敏感で、その機会をとらえて、相手を批判することを通して自分の有能さを回復させたり、誇示しようとする。
会社で評価されない人が、家で会社を批判したり、成績の悪い子供の親が、母親同士の集まりで学校を痛烈に批判するようなことが起きる。
周囲の人を批判、否定することには際限がないが、反対に、自分が周囲の人から非難、軽蔑されることには猛烈に反発する。
例えば、常識はずれの運転をしている人に注意をすると、逆上して注意した人を危険な目に合わせたりする。高速道路上で幅寄せを繰り返したり、車を停車させ、喧嘩を売るような行為をする。

ここで言う仮想的有能感を持った人は、森田理論で言うと「かくあるべし」が強い人なのではなかろうか。なんでも自分の思い通りにしようとする。
周りの人を自分の支配下に置き、自由自在にコントロールしようとしている。

理想の立場に自分の身を置いて、上から下目線で他人を見下している。

速水氏は、仮想的有能感を持った人は、次のような特徴があると言われている。
仮想的有能感を持つ人は、本質的に自己中心的であり、自分のことだけは関心が強いが、他人のことには関心が薄い。仮想的有能感の高い人の特徴は、共感性がもてない人である。
街で見知らぬ人が困っていたりしても、 「悲しみ」を共感できないので手を差し伸べるような事はない。彼らは社会的出来事に対しては極めてクールで何ら感情を持たない。

仮想的有能感の高い人は、何よりも自分が弱い存在だと思われたくない。
例えば、学業成績が悪い、運動競技に負けたという現実があっても、素直に自分の能力や努力の足りなさを認めるというよりは、先生の指導が悪かったとか、競技場のコンディションが悪かったと自分以外の要因に帰し、自己責任を回避するものと考えられる。
その限りでは悲しみは生じない。ただ怒るだけである。

仮想的有能感の高い人は、多くの苦労をしてまで目標達成を目指すとは思われない。
彼らは障害に直面すると怒りを爆発させてしまい、失敗を正当化して、別の目標に移行させてしまうことが多いだろう。

仮想的有能感の研究は、 「かくあるべし」の弊害ととてもよく類似している。
私たち森田理論を学習しているものは、 「かくあるべし」の弊害については十分に認識しておく必要があると思う。なぜなら、「かくあるべし」という発想が葛藤や苦悩を生みだす原因となるからである。

(他人を見下す若者たち 速水敏彦 講談社現代新書より一部引用)





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Last updated  2018.12.23 06:30:12
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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