森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2019.06.14
XML
森田先生のところに入院していた人は、朝起きた時と夜寝る前に、 5分間くらいずつ「古事記」を音読する習わしになっていた。
内容は分からなくても、ただ棒読みすればよいと言うことであった。

水谷啓二先生は次のように言われている。
それならば論語とか、お経とか、聖書とか言うもの読ませないで、なぜ「古事記」を読まされるのか。
これが私にとってのひとつの疑問でありました。
仕方なく、訳はわからないままに「古事記」を音読しておりました。

ところが森田療法を終わって、その後だいぶ年月が経ってから、私には「古事記」を読まされた訳が、ふとわかってきました。
「古事記」にいうところの神々とは、いわゆる多神論的な神々というのではなくて、純なる人間、かねて先生の言われる「真人間」のことである、と全身心を持って納得することができたのであります。

先生は、その晩年の著書である「神経質療法への道」第1巻の初めに、次のように書かれておられます。

この一生をただで終わりたくない・偉くなりたい・真人間になりたいとの憧れに対する・やるせない苦悩であるのである」
この真人間、つまり純なる心に生きる人間こそ、「古事記」に言うところの神々でありました。

森田先生が入院生に朝晩5分間「古事記」を読ませていたのはそういう理由だったのか。
「かくあるべし」で現実の自分や他人を、裁判官のように厳格に判定して、ルール、規範、しきたり、法律、理想、観念、完全、完璧、目標に無理やり従わせようとしている人間。
観念や理想が主導権を握って、現実、現状、事実を軽視・否定しまくっている状態が、人間に大きな葛藤や苦悩をもたらしている。その手法は間違いですよ。
人間の再教育をしていかないと、苦悩だらけの人生を歩むことになる。
また、長い目で見ると、早晩人類は絶滅の方向に向かっていますよ。

現実、現状、事実が主導権を取り戻して、しっかりと事実に立脚した人間として生きていくことが大切なのですよ。それを森田先生は「真人間」という本来の人間に立ち返ることなのだといわれているのだと思います。理性が高度に発達した人間は、理性が暴走して、そのような当たり前のことは考えもしなくなっている。この考え方は森田先生の生きておられた時代よりも、現代人のより大きな課題となって目の前に立ちはだかっている。あるいは制御不能な状態に足を踏み入れているのかもしれない。

欲望の暴走と「かくあるべし」の肥大化は、すべての人間に課されている近々に解決すべき問題となっている。森田を十分に学習して理解し、森田理論を存分に生活に活かしている人は、この2つの問題をできるだけ多くの人に向かって警鐘を鳴らしてほしいものである。
森田先生がもし現代に生きておられたら、その方面の活動を積極的に進められているだろうと推察している。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2019.06.14 06:30:08
コメント(0) | コメントを書く
[観念重視から事実重視への転換] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

知らぬ間に立派な大… 楽天星no1さん

泉佐野フィルムフェ… へこきもとさん

激しい運動の後、疲… メルトスライム25さん

神経症を克服します♪ ROSE33333さん
「私」がいる幸せ えみこた2さん

Profile

森田生涯

森田生涯

Comments

kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: