森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2019.10.03
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​​最近「不問」という言葉をよく耳にするようになった。
何を「不問」にするのかということですが、もちろん「症状」のことです。
症状を取り除きたい、緩和したい、苦しみから逃げたいという考え方や行動をとらないということです。
ただ、考え方のほうは、自分の頭の中にコールタールのようにべったりと引っ付いていますので、取り除くことはとても難しいです。しかし行動には意志の自由があります。
症状を不問にするということは、実際には行動を変えていくということになると思います。
実践や行動が伴わないで、「不問」を口にしている人は、多分すぐに行きづまるでしょう。

私の体験では、最初は実践課題を作り、実施することに取り組みました。
そのうちに、気のついてことをすぐにメモして、雑仕事、雑事に丁寧に取り組みました。
その中で「仕事に追われる人と仕事を追っていく人」の違いも体験することができました。

それを、集談会で発表してアドバイスをもらっていました。
すると弾みがついて、自信が生まれてきて、好循環が生まれてきました。
森田でいう「ものそのものになりきる」という実践でした。
そのうち、趣味や習い事の方面にも広がってきて、充実した人生を送ることができるようになりました。
振り返ってみると、結果として、かなりの部分で「症状不問」の状態になっていたのです。
症状でいっぱいだった頭の中が、その比率がどんどん少なくなっていったのです。

ところが、この時点で神経症を克服したかのように見えるのですが、実際は対人恐怖で押しつぶされそうなつらい人生とは決別することはできませんでした。
この時点では、森田療法は、症状はそのままにしておいて、目の前のなすべきことに取り組むことで、神経症をなくする理論だと思っておりました。
それ以上の対人的な苦しみや葛藤は、森田ではどうすることもできないと信じて疑わなかったのです。
集談会では世話活動をしていましたので、不満足ながら発見会活動は続けていました。

その私に衝撃的な出来事がありました。
岩田真理さんの「流れと動きの森田療法」(白揚社)の冒頭部分に、森田理論で治った人の中には、ときどき独特の臭みを持った人がいるという指摘でした。妙な胸騒ぎがしました。
ごく一部の方なのですが、独特の、それも似たような個性をお持ちの方がいるのです。
頑固で、自己主張が強く、どこか尊大で、人の気持ちや場の雰囲気などお構いなく自分の言いたいことを言う人たちです。

これにはドキッとしました。腰砕けになりそうでした。

正直、これって私のことを言われているのかと思いました。


症状を不問にして、なすべきことをやりなさい。
なぜあなたは真剣に取り組まないのですか。
そんなことでは森田理論の学習をしている意味がない。
そもそも症状を克服したいという気持ちを持っておられるのですか。
などと声を荒げてみんなを叱咤激励していたのです。


そのしっぺ返しは強烈でした。そのことを言えば言うほど浮き上がってしまうのです。
すればするほど、他人が自分から距離を置いていくのです。
終いにはあなたは集談会に参加しないでくれといわれるのです。
私はみんなのためにと善意で行っている行為が、総反発を食らっていたのです。
次第に私の居場所はなくなってきました。むなしさだけがつのってきました。

私はそのうち腹が立ってきました。恨みつらみで我慢の限界を迎えていたのです。
私は善意で行っているのに、非難や否定されることは理不尽極まりない。
批判する人に電話をかけては喧嘩を売ってしまうというような有様です。
どう考えても自分の方が正しい。間違っているのは相手だと思っていました。
でも事態はどんどん悪化してきます。決して好転することはありませんでした。
退会しなかったのは世話活動があったからです。
そんな時に、岩田真理さんのこの言葉はずばり自分のことを指摘されていたのです。

私はこの言葉でやっと目が覚めたようです。
今考えると、自分の「かくあるべし」をみんなに押し付けていたのです。
その時、相手の症状、苦しみや葛藤は全く眼中にありませんでした。
自分の言いたいことだけを主張して、自己満足の世界にいたのです。
しかも、実践行動が乏しい、観念中心だったので、犬も食わない代物だったのです。
一人相撲をとっていたことに気がつきました。

相手が症状で苦しみのたうち回っているのは、「症状不問」になっていないからだ。
「症状不問」で目の前のなすべきことに取り組めば、間違いなく症状を克服できる。
その考え方を今現在症状で苦しんでいる人に伝えたいと本気で思っていたのです。
今思うとなんという勘違いをしていたのでしょうか。

さらに、森田先生の「思想の矛盾」、事実、現実、現状から出発するという「事実本位」の考え方を学習して実践する中で、私のやり方は間違いだったことにはっきりと気がつきました。
私の「かくあるべし」という信念を他人に押し付けてはいけない。自分も他人も不幸になるばかりだ。
いくら物足りないなと思っても、相手の立場を理解して、相手に寄り添い、ただ少しの刺激を与え続けることしかできない。

私と同じようなタイプの人はときどきいらっしゃいます。
「症状不問」をことさら訴え続けている人の特徴は、相手のことが全く見えていないと思います。
相手のことよりは、自己存在感をアピールする世界に入り込んでいるような感じです。
それは百害あって一利なしだと思います。
このことは十分に認識しておく必要があると思います。

ただ、そういう人は、とてつもない爆発的なエネルギーを持っておられます。
そのエネルギーの吐き出し方を間違えているために、自他ともに蟻地獄に陥って苦しんでいるのです。
そのエネルギーの放出先がまともになると、日本のあるいは世界の森田理論学習の先陣をきれる可能性を秘めていると思います。
「かくあるべし」の弊害と、事実本位の生き方を学習し実践できるようになったとき、その人は再び大きく脚光を浴びるようになることでしょう。
そういう意味では大変貴重な人材である可能性があります。是非復活してほしい。
人生において敗者復活は可能です。そのほうがかえってかっこいいじゃありませんか。
爆発的なエネルギーはそういうところで発揮すればよいのです。
そうしないと、他人を巻き込んで、自分自身も不幸な人生で終わってしまうかもしれません。​​





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Last updated  2019.10.03 06:20:06
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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