森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2019.10.13
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アテネオリンピックの男子100mの金メダル最有力は、ジャマイカのパウエル選手でした。
何しろ9秒74というとてつもない記録を持っていたのです。
ところが金メタルはとれませんでした。
パウエル選手がレース後にその時何が起きたのかを語っています。
「75メートルまではトップで勝ったと思った。そのとき横を走る選手の足が見え、まずいと思った。自分がなぜ負けたのか分からない」

これを分析してみましょう。
パウエル選手は、75メートルの時点で、まだレースが終わっていないのに勝利を確信しています。
ということは、その時点で自分では気が付いていないかもしれませんが、気が緩んだのだと思います。
100メートルの予選では、勝利を確信した選手が最後に力を抜いてゴールするという光景がよく見られます。このときは、誰が見ても「あっ、スピードが急に落ちた」と気づきます。

いったん気が緩んでしまうと、「これはまずい」と思っても、すぐに緊張状態に切り替えることは難しい。というよりも実際にはできない。
それが、コンマ何秒を争う陸上競技では命取りになるということです。
このことはよく心に言い聞かせておいたほうがよい。
反対に緊張状態を弛緩状態に持っていくことは、努力しないですぐにできるということだと思われます。

これに関連して森田先生は次のような話をされています。
乗り物酔いをしそうになった時の話です。
この時は決して心を他に紛らせないで、一心不乱に、その方を見つめている。
息をつめて吐かないように耐えている。
吐けば楽になるかと考えて、決して気を許してはなりません。
断然耐えなければならない。
思い違いをしやすいのは、自分の苦痛を見つめていると、ますます苦しくなるような気がして、ツイツイ気をまぎらせて、他のことを考えたりしようとすることである。

こんなとき、もう2、3分というところで、安心し、気がゆるんで急に吐き出すようなことがある。
(森田全集第5巻 455ページより引用)

次に、パウエル選手は、「隣の選手の足が見えてまずい」と思ったといっています。
これはネガティブな言葉です。「負けてしまうかもしれない」という否定的な考えがとっさに頭をよぎったのです。脳は否定的に無意識で感じたことをそのまま実行してしまうといわれています。
理性でいくら「そんな考えを起こしてはダメだ。勝つために頑張ろう」と思っても、否定語が足を引っ張るのです。無意識の力は顕在意識よりも強力なパワーを持っています。


「挑戦してもどうせダメに決まっている」「やるだけ無駄なことだ」「どうせ結婚なんかできるわけがない」「合格なんで夢のまた夢」と心の奥底で感じている人が、困難を乗り越えて夢や目標を達成することができますか。
反対に、他のできない理由をいくつも見つけ出して、自分を説得するようになるのです。
そして安心して現状維持にとどまってしまうのです。
自分が心底「絶対にものにするんだ」と念じているのではなく、「実現できたらうれしい」というような他人事のような希望的観測を述べているにすぎないわけですから、思いが現実のものとなるはずがありません。
無意識の世界で失敗やミスを容認している人は、むしろ心の中で思ったことが起きることで、「やっぱり思った通りのことが起きた。自分の考えたことは正しかったのだ」と納得して安心することになるのです。否定するということは、百害あって一利なしと心に刻んでおきましょう。





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Last updated  2019.10.13 09:39:34
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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