森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2021.10.15
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カテゴリ: 行動のポイント
以前に体操日本代表に選出された白井健三選手のお話です。

白井選手は床が得意です。
床には150の技があるそうですが、その中で「後方伸身2回宙返り3回ひねり」という技はH難度で一番難しい技とされています。
「シライ3」と呼ばれて彼しかできないと言われていました。

金メダルを獲得して当たり前という状況の中で、2014年の世界選手権の「ゆか」は2位でした。白井選手は、その敗因について「同じことをやっていたから負けたんだ」と考えたそうです。この大会で彼が披露した技は、すべて前年の世界選手権で優勝したときと同じものでした。
「知らないうちに満足していて、「同じ内容でも勝てるだろう」と思ってしまったのです。失敗しないのが当たり前で、演技の内容自体に目標を見失っていました」
この反省は次に活かされました。

気分を切り替えて2015年の世界選手権では、当時の最高のG難度の大技「リ・ジョンソン」を成功させました。そのほかの大技も次々と成功させて再び世界王者に返り咲きました。

白井さんは、過去の成功体験に浮かれて、以前と同じ演技構成で臨めば勝てると考えたときはよい成績が出せなかった。新しい技に挑戦するのだという目標が持てたときは、よい成果が出せるようになったと言われています。(弱さをさらけだす勇気 松岡修造 講談社)


脳の仕組みを知っていると容易に察しがつきます。
成績が振るわなかったときは、本番になって、自分でも気がつかないうちに、緊張感が薄れ、弛緩状態(根拠のない安心感や安堵感)が入り込んできたのです。
すると、神経伝達物質のドパミンの出が悪くなります。
その影響はやる気の脳と言われる側坐核や前頭前野に及びます。
側坐核の活動が抑えられてしまうので、思いのほか勝負に徹しきれない。
前頭前野は精神拮抗作用で、「まさか、失敗するようなことはないだろうな」と自分自身を疑心暗鬼に追い込みます。自分でも何とかしなければと思っても、どうも士気が上がってこない。
さらに予期不安でいたたまれなくなるという状況に追い込まれているのです。
これでは、勝てる試合も負けてしまう。こんなことは受け入れられないと思っても、どうすることもできないのです。

白井さんは本番では緊張しないタイプだそうです。そのために練習ではできなかったことが、本番で、初めてできたという経験を何度もされているそうです。「シライ3」もそうでした。
その原因は、練習段階から、現状維持にとどまらず、高い目標を持って挑戦するという建設的な意識が、結果として本番での過度の緊張状態を遠ざけていたからだとみておられるようです。

この考え方は私たちも大いに活用させてもらいたいものです。

練習ではできたという根拠のない安心感だけではとても太刀打ちできないと思います。
普通そのような時は、深呼吸をし、反復練習をして気を紛らわせることをします。
この手の行動は、緊張感なくするという面では、逆効果になる事があります。

イチロー選手や羽生結弦選手はルーティンを重視しています。
今やるべきことをルーティン化して、今に意識を集中させることで金縛りに陥ることを防止しているのです。これも一つの手だと思います。


練習段階から、一段階高い目標を設定して、それを追いかけるという意識を持つことです。
そういう気持ちになると、感情が内向きになる事がありません。
精神拮抗作用が出しゃばるという隙を与えません。
気持ちが外向きになり、大脳の協力を得て、目標の達成に向かいますので、結果がついてきやすいのです。





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Last updated  2021.10.15 06:33:08
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kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 申し訳ございません。生涯森田様でした。
kurokawa@ Re:感情と行動を分離して行動する(11/11) New! 障害森田様 この記事の中で「心とは裏腹…
楽天星no1 @ 早速のご返事感謝 森田生涯さんへ 早速のご返事ありがとう…

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