前回は、お蝶が若さまを訪ねて来て、「和尚が喜仙を厳重に見張れと言っているから気をつけてね」と言っていましたね。おいとちゃんをからかって楽しそうな若さまでしたが、いよいよ和尚側も動き、若さまも動いての大詰めに入っていきます。
忠弥が阿部の屋敷を抜けおみよが隠れている家に行くのを、伝三が着けていました。忠弥とおみよは魅かれ合う仲になっていたのです。
同じころ、船宿喜仙に若さまを訪ね和尚の回し者たちが押しかけて来ましたが、二階の物干し台から次々と川に投げ込まれてしまいます。
翌日、喜仙には町方の出入りがあり様子が少しおかしいようです。若さまは将棋を、おいとちゃんは小さく溜息をしたりして浮かぬ顔です。そこへ、小吉、とん平、そして伝三がやってきました。
町方が喜仙から出て行くのを見たと小吉がいうと、若さまが奉行所から禁則を申し渡されてというのです。
若さま「八百万石の禄を望むとは、上を恐れざる不届きな振舞い。よって向こう
三十日間禁則を申しつける、ときたんだ」
小吉 「野郎、あのくそ坊主」
とん平もいてこましたい、と言います。
若さま「あっはは、 王手飛車ときたね。敵はこのあと何をしですかと・・・
」
小吉がおみよの隠れ家が分かったと言います。
若さま「そうかい」
伝三がつき止めて知らせてくれたのです。
若さま「そいつは手柄だったな、伝こう」
まさかの時の生き証人だから上手く連れ出し、佐々島のところでかくまってもらうよう小吉に言います。
では早速に、と腰をあげた時、
若さま「おぅおぅ、待ちな。 とん平は残って将棋の相手をしてくれ
」
若さま「遠州屋、十分注意して動いてくれよ。敵の目が光っているからな」
と言いながら立ち上がり、
若さま「 ここんちも、ばかに見張りが厳しくなったんだ
」(小吉もおいとちゃんもキョトンとしています。)
小吉「えっ?・・」・・・(小吉は何のことか分からない様子)
若さま窓の障子を開けると
、見張っていた編み笠の男が立ち去りました。
若さま「 敵は、詰めてを急ぎだしたかな
」

夜になっても、黒頭巾の侍たちが喜仙の二階を見張っています。二階の窓は開いていて、若さまの後ろ姿があり、侍たちは笑みを浮かべ安心しているようです。 (あまいあまい・・若さまが貴方たちの思っているように、おとなしくはしていないと思いますが。その証拠に・・ほ~ら・・ね。)
阿部伊予之助の屋敷の場面になります。
夜遅くに、門をうるさくたたく者がいます。門番がこんな遅くに誰だと聞きます。すると、門をたたく者は低い声で「拙者だよ、開けてくれ」と。 (うん?・・低い声ですが、どこかで聞いたような声ですよ。)
門を開け「あなた様はどなた様」と言いかけた門番はあて身をくらってしまいます。その者は庭の見張りをしている侍にもあて身をして、屋敷に入り込みました。高岡雄助が周りを見回しています。 (侍二人が倒れているのに、曲者と騒ぎたてません。)
座敷では、増山、牧野三河守と阿部伊予之助が和尚と、側妾貞代の方が懐妊したことでの今後のことを話しています。そこへお蝶が和尚に耳に入れたいことがと廊下へうながすと、高岡が誰かが屋敷に忍び込んだようだと話をします。万全の態勢で見張れといい廊下を歩いていき、お蝶と障子が開いている部屋を通り過ぎようとした時「おいおい、坊主」・・・ (若さまです。やはり、あの声は若さまだったのですね。)
和尚 「き、貴様は」
若さま「 和尚、人間あまり欲を出しちゃいけねえぜ
。・・ どうだい、
この辺で思いなおさんか
」

和尚は、何を言っているのかさっぱり分からない、思い違いをしているのではと白を切っているところへ、腰元がお酒の膳を持って入ってきました。 (お蝶も和尚もこれはいったい・・・という顔つきです。)
若さま「 ああ、ご苦労ご苦労
」
和尚 「なんじゃ、これは」
若さま「 いいんだよ、おれが言いつけたんだよ
」
和尚 「なに、貴様が」
腰元が、お客様ではないのかと和尚に聞きます。
和尚 「 いや、かまわん。飲ましてやれ
」と言って部屋を出て行きます。
若さま「いいんだよ、一人で飲むからいいよ。あぶねえから、向こうに行ってた
ほうがいいぜ」
と腰元に言い、お酒を飲んでいるところへ、お蝶がどうしてこんな所へ来たのだと、やってきました。
若さま「 そんな顔をしていないで酌をしてくれ
。そうしろと言われて来たんだろう」
この部屋は囲まれている、お酒がまわったところで斬り込むのだ、とお蝶が言います。
若さま「 和尚のやり口はそんなものさ
。ふん、知恵のねえ話だなぁ」
そう言って 盃のお酒を一飲みします
。

若さま「もう少し飲みたいが、お前に怪我をさせちゃいかんから、それじゃ、
こっちから出かけてとっちめるかな」
そう言って立ち上がり、身構えて若さま襖を開けると、物々しくかまえている侍達に、
若さま「あっはっはっは、ご苦労だったな。人が酒を飲んでるのを見張るなんぞ
は、随分間の抜けた役目だぜ」
うしろの障子が開き振り返ると和尚の姿がありました。
若さま「坊主、本性を現したな」
和尚 「雉も泣かずば撃たれぬものを、今宵こそは生かして帰せぬ」
若さま「世の中には、そっちの都合通りばかりいかねえことだってあらぁな。
どうだ坊主、今のうちなら心を入れ替えりゃ許してやる。これ以上悪事を
重ねやがると、そのがん首が胴に付いちゃいねえぞ」
和尚 「それを言いたいために、わざわざ命を捨てに来たのか」
若さま「 そうよ、武士の情けってぇやつだ
。だが、聞かすがん首が足らねえ
ようだぜ。三守はどうした、増山、伊予之助も居たはずだが」
和尚の「こやつを討って捕れ」の声がかかります。
若さま「 お目当ての顔を揃えてくれなきゃ、また日を変えて改めて出直すぜ
」
(ここから、立回りです。)


∞
すごいですね。だんだん立回りの動きが長く激しい動きになってきています。スピードもあります。
障子に素足が入ったり、そこから激しい動きで続いていき、廊下も走る。廊下の角に来た時廊下をまわって走らないで向こう側の廊下に飛ぶのです。
(ちょっと・・障子が倒れているでしょう・・次に橋蔵さまが障子に足を入れる場面になるのには、障子がもう少し手前に出ていないとうまくありません・・そこで斬られ役の人が動きながら上手く少しずつずらしていっているのです。細かいところまで観ていると楽しくなってきてしまいます。)
チャンバラの好きな人にはこういう動きあるものはたまらないです。橋蔵さまの流麗な動きですからなおのこと、いいですねぇ。
それにしても、そうとう動いていても、橋蔵さまは着流し姿が着崩れません。
∞
ここでまたもや、若さまの前に高岡が現れます。奥の部屋の方へ追い込まれる若さま・・後ずさりをしていきます。 (危ない)
その時、高岡の刀は灯していた蝋燭を斬ったのでした。
若さまの姿がない・・ (屋敷の外に逃げ出すことはできないはずですが。)
お蝶が逃がしたのだ、裏切り者は殺せという和尚に、高岡がおとりに使ってはどうかと、牢へ連れていきます。牢に入れられたお蝶に声をかける者がいます。
「お蝶、静かにしろよ、眠れんではないか」・・ (若さまの声です。どのようにして牢にきたのでしょうね。)
若さま「わしだよ」
お蝶 「お武家様、こんな所にいたんですか」
若さま「隠れるには一番いいな。誰も気がつかん」
みんなが探しくたびれ諦めた頃に逃げ出すのだ、刀があるから錠前は壊すことができる。
若さま「それまでお前もひと眠りしたらどうだい」
お蝶「あたしは、いつまでもこうしていたい」・・お蝶が若さまにすり寄ります。
若さま「これこれ冗談をゆうな、ここには酒がないぞ」・・若さま慌てます。
喜仙の二階を見張っている者たちが若さまだと思っていたのはとん平だったのでした。
和尚たちは、側妾貞代の方の懐妊をしり、おえんの方の寵愛が薄れるのを恐れ、安産祈願の参詣時を襲う計画を立てていたのです。護国寺に駕籠が入ると、門を締め取り囲み、
和尚 「貞代の方出られませい」
阿部 「仔細あって、一命頂戴つかまつる、お覚悟」
駕籠から出てきたのは、若さまでした
。
若さま「 忘れるはずはねえぜ、船宿喜仙の居候だ
」

阿部 「図りおったな」
若さま「阿部伊予之助とその一党、よーく受け賜われ。 天下を狙うその方どもの陰謀すでに隠れし。将軍家に代わって余が成敗いたす
」
若さまを斬れと言われた高岡が翻えます。公儀隠し目付高岡雄助でした。和尚たちは、若さまが仕組んだ罠にまんまとかかったのでした。
(ラストの立回りになります。)
伊予之助を斬り、 和尚との対決になり、一刀の下に切り捨てます
。


祭の日、みんなを引き連れ、今回の事件についての話をしていると、「若さま」と町人になった忠弥とおみよがやってきました。一緒に行こうと楽しそうに歩く若さまを、物陰から見ているお蝶の姿がありました。


( 完 )
後ろ向きで飛び上がり向きを変え塀の上に、そして下へ飛び降りての場面が半ばにありましたね。
そして、ラストの立回りで悪玉和尚との一対一の勝負、若さま宙に高く飛び上がり、おりてくる時に一刀のもとでという絵になりました。ここで、まさか・・観客はこのような演出になるとは思ってもいなかったでしょうね。映画館では「うわぁ」「おっー」という声が上がったのではないでしょうか。
橋蔵さまの飛び、上手いですね、ポーズも決まっています。橋蔵さまは運動神経抜群、歌舞伎での鍛錬し見も軽いし高くジャンプするのはお手のもの、そして特殊技法を伴っての絵になります。
今の時代に見ても違和感なくよく出来ていると、私は思いました。
よく、橋蔵さまが宙に飛ぶ最初の作品は「若衆変化」の中で飛んで塀を越える場面といわれるのですが、その前にこの「魔の死美人屋敷」で飛んでいたのです。
橋蔵さまの立回りは体全体を使っての動きとなっていますね。伸び、そり、と体の線もちゃんとしています。プラス舞踊で鍛えた膝の使い方でより柔軟性が出てきています。
時代劇の立回りは、動、静、綺麗さ、力強さがないと、、見ている側には満足感が伝わってきません。
橋蔵さまは、力強さはもう少しといったところです。まだ、橋蔵さまは女形として保ってきて細かったですから、いたし方ないです。その分、舞踊的立回りの流麗さがきわだっているのでしょう。
どんどん立回りが上手くなっていますから、「魔の死美人屋敷」から立回りが多くなっています。それに、若さま出ずっぱりですから、橋蔵さま大好きの人にはたまらない作品です。
「若さま侍捕物帖」シリーズの面白さは、とあなたが聞かれたら何と答えますでしょう。
橋蔵さまの持っている二枚目半の軽妙さが引き出されているし、二枚目であり色っぽさがあり、颯爽としてスピード感ある殺陣で魅了させてくれる。
船宿をねぐらとして着流し姿の浪人であるが、品位があり高貴なのに、べらんめえな江戸っ子口調の若さまは、橋蔵さまとそっくりなところがある。
と、人それぞれにいろいろあることと思います。
原作の若さまは、橋蔵さまが映画に来ることをよくぞ待ってくれました。主人公「若さま」のイメージにこれほどピタリという人は、橋蔵さま以外にはこれから先も出て来ないでしょう。
品位がないといけないし、所作も見についていなければならないし、二枚目で華があり色っぽさもなければいけない。・・これだけ揃った人は・・橋蔵さま。
若さまシリーズ第4作品「鮮血の晴着」は少しあとになりますが、女形の体型から立役としての体型になってきた、そしてちょっとお顔が丸くなり、橋蔵若さまもよい意味での若さまらしい貫禄が磨かれて、歩き方、殺陣、台詞にも安心して見ていられるようになります。
新しい剣道の形を教えてもらい立回りにも研究中だったようです。
皆様ご存知の"一文字崩し"は、お目見え間近・・ということになります。
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