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番匠が椴小節を引かねて 孤屋 片はげ山に月をみるかな 利牛 俳諧炭俵集 下巻 大工が鋸を樫の建材の小節に挽き当てて、難渋している。 (ついに短日の一日仕事となり、終わってやれやれと) 片はげ山にかかる月を仰ぎ見ることよ。(「月をみるかな」は和歌の常套句だが、 職人歌合は月・恋などの題で競われた。「片はげやま」と「月をみるかな」の雅俗取合せがおかしい。) 参考「新日本古典文学大系」(岩波書店)
April 28, 2006
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濱迄は宿の男の荷をかゝえ 野坡 師走比丘尼の諷の寒さよ 孤屋 はつ春や年は若狭の白比丘尼 前川 すみたはら 俳諧炭俵集 上巻 浜の乗船場までは宿屋の若い衆が荷物を持って送ってくれる。 勧進に応じる者もない師走の吹きさらしの中で うらぶれた比丘尼の唱える歌念仏が寒々と聞こえる(歌念仏を唱えて勧進し熊野牛王を配って歩く歌比丘尼には小唄で気を引き色を売る者も多かった)。 續猿蓑 巻之下 春の部 永遠にめぐり来ていつも新鮮なこの新春というもの。年齢をいうならば若いことは若いのだが白比丘尼(若狭の国の生まれで人魚の肉を食べて八百歳まで長生した比丘尼は顔が白かったという)と同じく八百歳とでも言っておこうか。 参考「新日本古典文学大系」(岩波書店)
April 27, 2006
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寅の日の旦(あした)を鍛冶の急起(とくおき)て 芭蕉 雲かうばしき南京の地(つち) 羽笠朔日(ついたち)を鷹もつ鍛冶のいかめしく 荷兮 月なき空の門はやくあけ 執筆 はる雨や光りうつろふ鍛冶が鎚(つち) 桃首 冬の日 寅の日は武神毘沙門天の縁日だから、刀工たるもの、特に早朝より起き出して仕事に励むことである。 さかんに立ちのぼる煙に、どこかゆかしい趣がある。ここは南都奈良である(奈良には刀鍛冶が多く、寅の日は刀を鍛えるにふさわしい。刀工は朝早く起きて仕事にとりかかるから、夜明けの雲も紫だちて香ばしい)。 春の日 月の朔日はいつも心改めて迎えるのであるが、この冬は帝の巡狩のある由がふれ出されたので、土地の鍛冶職で自らも愛玩の鷹を所有するこの者は(鷹を持つというから格式ある刀鍛冶であろう)、特に威儀を正してこの月を迎えた。 空も未だ明けないうちから、いちはやく門が開かれた。月もない。所に何代か続く鍛冶職の家。門を開いて威風あたりを払う一行が出発して行く。 續猿蓑 巻之下 春の部 春の長雨に、ふだんは手入れの行き届いた鍛冶の鎚(鍛冶職の者が使う金槌。頭に鋼を加えて強化したもので刀剣を鍛える場合や銅器を整形する場合につかう)も光が鈍って見える。 参考「新日本古典文学大系」「七十一番職人歌合」(岩波書店)
April 26, 2006
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節季候や弱りて帰る藪の中 土芳節季候の拍子をぬかす明屋哉 少年桃後節季候に又のぞむべき事もなし 伊賀順琢 『芭蕉七部集』續猿蓑巻之下冬之部節季候(十二月二二日より二八日頃に門づけした物乞)は終日「せきぞろ」と叫んで人の家に入り躍り廻ってわずかの米銭を得るのみ。疲れ果てて数人連れ立って藪かげの家へ帰って行く。勢い込んで跳び込んだ所が中はもぬけのから。節季候の一行があてがはずれてびっくりしている。猿蓑猿蓑集 巻之一今年も押しつまって節季候が来たが平凡な行く年来る年にこれといって望むべきこともない(節季候は二人または四人づれで赤布で覆面するなど「異様な」姿で家々の土間に踊りこみ祝詞を唱えた)。 参考「新日本古典文学大系」(岩波書店)
April 25, 2006
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“ゆつくりでも更新”よね(苦笑)。 松尾芭蕉 一六四四(寛永二一)~一六九四(元禄七) 食時やかならず下手の鉢扣 路草 鉢たゝき干鮭賣をすゝめけり 馬見 娵入の門も過けり鉢たゝき 許六 狼を送りかへすか鉢たゝき 沾圃 から鮭も空也の痩も寒の内 芭蕉 鉢たゝき憐は顔に似ぬものか 乙刀 一月は我に米かせはちたゝき 丈艸 『芭蕉七部集』続猿蓑 巻之下 いまごろは毎日、食事の時分になるときまって鉢叩が通る。お世辞にも上手とはいえぬ念仏を唱えながら。 鉢叩の一行が路上に行き違った干鮭売りをつかまえて、殺生の罪なることを語り、仏道に帰依すべきと説く(実は喜捨を求めている)。 鉢叩がさすがに婚礼の家の前は、そそくさと通り過ぎた(祝言は夜行われるので、その家は門前にあかあかと篝火をたく)。 一心に念仏を唱えて巡行する鉢叩には、送り狼(夜間に行く人があれば、その頭上を数回跳び越え、人がもし恐怖に転倒すると食らいつくという)もつけ入る隙もなかろう(むしろ洛外の諸方の墓所まで引き廻されたあげく、最後には追い払われるのがおちであろうか)。『芭蕉七部集』猿蓑 巻之一[書名]「猿-」は斬新でユーモラス。「蓑」は時雨にはおる具で、旅人の象徴。 色の書名である。[編者]去来・凡兆 [成立]元禄三年(一六九〇)、芭蕉が幻住庵(近江)に入庵していた頃。 ミイラのように干からびた乾鮭の姿も、寒行に痩せ干からびた空也(鉢叩。京の空也堂の有髪妻帯の僧。十一月十三日の空也忌から四十八夜、鉦と瓢を叩き念仏唱歌しながら洛内外を巡る)僧の姿も、冷え冷えとした寒中(小寒から大寒をへて節分までの約三十日間)にこそふさわしい。 寒夜に聞く鉢叩はしみじみとあわれ深いが、それが何とむくつけく卑しげな面つきで、およそ似つかわしくない。 鉢叩よ、毎夜の勤行でお米のもらいももう大分たまっただろう。どうだ、ひと月分ほど俺に貸さないか(貧交の句)。 参考「新日本古典文学大系」(岩波書店) つづきは、“前のページへ”をクリックで見られます。
April 24, 2006
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