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姉と妹 @ Re:ともたさんへ こんばんは。コメントいただきありがとう…
2025.05.06
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赤毛のアンシリーズの感想が続きます。 面白いっ…面白いんだ…!!
​​
簡単感想です。

「アンの友達」ー赤毛のアン・シリーズ4ー
「アンをめぐる人々」ー赤毛のアン・シリーズ8ー 感想
(L・M・モンゴメリ・1911年,1920年、
和訳 村岡花子・1956年,1958年)

村岡花子さんのシリーズでは「赤毛のアンシリーズ」として取り扱っていますが、海外では(一般的に)アン・ブックスシリーズには含まれないものみたいです。
内容としては、 ​アンちゃんとは縁薄い「アヴォンリーの人々」を主役とする体裁の、​
モンゴメリさんの短編集 です。



いやぁ~…面白かったです!!


「アンの友達」(Chronicles of Avonlea)
モンゴメリさんのワークスとしては、 アンの青春/アンの愛情の間に刊行された初期ワークス。
アンシリーズの人気を受け、自身の短編小説をアヴォンリーの諸物語として、アンちゃんも少しだけ絡ませるような体裁で取りまとめた作品集と認識しています。

モンゴメリさんの一番「素の部分」が楽しめる作品集なのかな、 と感じました。


まだアンシリーズ+アンシリーズの短編集数作を読んだところですが、モンゴメリさんが繰り返し使うモチーフ(興味分野)として、下記の辺りが挙げられるかなと思っています。

​​​​1,結婚​​ ​​
 ■特に喧嘩別れした後、10~20年越しの壮年/老年になってからの成就
  ■相手の生活の中に自分の居場所を見つける女性
(相手は、しっかりし過ぎておらず、支えてあげたくなる男性像が多い)
 ■家族間(特に姉→妹、母→息子)の、結婚への反対(妨害)

​​ ​2,悲恋 ​​
 ■叶わなかった過去の恋→ 憧憬/恋人の血縁者を通じての思いの昇華

​​ ​3,死に際 ​​
 ■傍から見たら「何も成しえていない寂しい人生」かもしれないが、
本人が生きてきた主観の中で軸にしていたもの/執着していたものを完遂する、強く光り輝く一瞬。

総じて、基本的にはほとんど ​「女性の生き方」が焦点の話​​ という認識です。
同じようなモチーフでも、1作1作状況が違って面白いですし、繰り返し描かれる中で『感情』も成熟していって、アンシリーズ本編の中で似たモチーフとしてまた繰り返し描かれたり…。

​​モンゴメリさんの ​​『感情軸を最重要視し、構成するお話のつくり方』​​ がとてもよく見て取れました。

・描くべき「感情」を強く想起させるために、練り込まれた人物配置
・感情のクレッシェンドを説得力を持って描き出す、絶妙なエピソードの積み重ね
・誰の主観から、どのような順番で情報を読者に魅せていくか、
様々な選択肢から一番面白い魅せ方を厳選していることが分かる、ひねりのある演出
…1作1作、どの作品も非常に面白く、興味深かったです。


以下、お気に入り短編について。

1,奮い立ったルドヴィック(The Hurrying of Ludovic)
5,ルシンダついに語る(The Winning of Lucinda)
モンゴメリさんの作品中に何度も何度も(×100)登場する、
「プロポーズしない」男性 及び 何十年も結婚しないカップル の物語。

モンゴメリさんご自身が、祖母が亡くなった後に37歳?で結婚され、そこから出産・小説も書きながら家事もやりながら子育てして…という経緯があるそうで。
ご自身の体験も含め、 「結婚」という人生における一大イベントへの決心に向け、 人がどのように心を作っていくのか… その過程に 非常に興味があったんだろうな、 と思います。


​2.ロイド老淑女(Old Lady Lloyd)​
世間への見栄はあるが、実際には困窮生活を送るロイド老婦人。
昔の恋人の娘が近くに越してきたことを知り、なんとか彼女を笑わせてあげたいと願い、匿名で様々な贈り物を届けはじめるが…。

1番のお気に入り作です。 ​泣いたよ…。​
自身の寂しい極貧の生活や様々な後悔をもって、尚のこと一層、「若々しく才能のある昔の恋人の娘」への思いを募らせ、献身的に贈り物を届けるロイド婦人…
老婦人の献身とか…やめろよ…泣いちゃうじゃんよ…。


3.めいめい自分の言葉で(Each in His Own Tongue)
4.小さなジョスリン(Little Joscelyn)
2作、「音楽×臨終モチーフ」の似た話が並んでいて印象的でした。
アンシリーズ本筋では、それほど音楽モチーフが出てきた印象がなかったので、 音楽の力を奇跡のものとして描く感性 のある方だったんだ…と意外に感じました。


7.オリビア叔母さんの求婚者(Aunt Olivia's Beau)
8.隔離された家(The Quarantine at Alexander Abraham's)
12,争いの果て(The End of a Quarrel)
状況は異なりますが、いずれも長きに渡り結婚していなかった女性が結婚する話。
モンゴメリさんの価値観というか、結婚観がよく見て取れる3作 だと感じました。

「オリビア叔母さんの~」の、一度求婚を自分から断っておいてからのラストの大反転は、形としては、「アンの愛情」のお話構成に似たものを感じました。
「争いの果て」のラストの会話も、「愛情」のラストシーンを彷彿とさせる言い回しですね。


​11,カーモディの奇蹟(The Miracle at Carmody)​
妹の足が不自由になり、様々な手を尽くしたが治らないことに絶望した姉は信仰を捨てる。
姉妹は養子の男の子・ライオネルを迎えるが、姉は教会へは通わせず…。

日本の感覚とは異なる宗教観/信仰観を見て取れる1作で、興味深かったです。
モンゴメリさん自身の宗教観は、なんとなく…
ご自身が「信仰してる」と言うより、 様々な事態に対し、人が「信仰」を使ってどのように心に収めていくのか 、また 「教会」組織の社会的機能の側面…地域社会としての共通認識醸成等 への興味の方が強い方だったんじゃないかなぁ…と感じています。



​「アンをめぐる人々」(Further Chronicles of Avonlea)​


「アンの友達」をまとめる際に没にしたはずだった原稿を、 後年になって出版社が(若干手を加えた形で)勝手に刊行したもの
(…本当なら、そら作家は怒るわ…。)

読んでみて…
確かに、 これは世に出す用に体裁を整えてはいないな…
モンゴメリさんとしては全く世に出す気はなかっただろうな…
と感じる作品もあるので、ご本人的には非常に不本意な作品集だったのかもしれませんが、
ただまぁ… ​​​​ 洗練していない作品にこそ、 モンゴメリさんのお話構築過程を想像させるヒント がたくさん見て取れて、 読者的には、めっちゃ面白かったんですよねぇ…。​​ ​​

​「アンの友達」と比べると ​、
若干狂気じみた…「とんでる/いっちゃってる」系の話
が多い印象でした。​
その分、1作1作の色がはっきりしていますし、どうなるか展開が分からないスリリングさがあって読み応えがありました。


1,シンシア叔母さんのペルシャ猫 (Aunt Cynthia's Persian Cat)
2,偶然の一致 (The Materializing of Cecil)
3,父の娘 (Her Father's Daughter)
出だしから、様々な経緯を経た「結婚」物語が続いて興味深かったです。


​9,セーラの行く道 (Sara's Way)​
何度も求婚してきた男性が事業に失敗して逆境に立った途端に「結婚する」という女性の物語。
これも「独特な結婚観」…なんですが、心情としてきちんとついていけます。

「アンの愛情」でも、アンちゃんが「自分の幸せ」ではなくて、「ギルバートの幸せ」の中に自分の生きる場所を見出したところから「結婚」の道が開けていったのだと受け取っていますが、それに近い感性を感じました。


​5,夢の子供 (The Dream-Child)​
20カ月で赤ん坊を亡くした妻が、夜になると「子どもの声が聞こえる」と海辺をさ迷い歩く。
ラスト…まさかそうなると思わない展開が来てびっくりしました。


10,ひとり息子 (The Son of his Mother)
11,ベティの教育 (The Education of Betty)
12,没我の精神 (In Her Selfless Mood)
上記3作はかなりぶっ飛んだ作品で、それぞれ面白かったです。

ひとり息子を溺愛するあまり、息子の恋愛相手に憎しみを覚え、傍目に奇行にまで発展する母親…
自身を振った女性のひとり娘の後見人となり、親身に教育する男性の、娘への飽くなき愛情…
死の床の母親と弟のクリストファーを護ることを約束した少女の生涯…
各話、おいおいおいおい…どこまで行くんだコレ…! とハラハラしながら読みました。


​15,平原の美女タニス (Tannis of the Flats)​
住民の多数がインディアン血統や混血で構成される、カナダ西部の平原地方の電話局へ赴任した英国系男性の運命。

この作品はまた、 なかなか当時のカナダにおける価値観を持っていないと 出てこないお話 というか、他とは趣向の異なる作品で興味深いお話でした。



先に書いてきたこととも被りますが、これら2作の短編集を読んで…
​とにかく、​​​『結婚』をモチーフにした作品が非常に多いです。​ ​​​

モンゴメリさんの執筆/編纂時期を考えても、個人的に注目してしまうのが、
『アンの愛情』の下地になるような感情やお話構成の作品を、 たくさん見つけられるところ!

『アンの愛情』は…シリーズの中でも、 主人公の人生軸を決定づける重要な作品 だと思ってます。
すごく強烈な感情が、繊細なエピソードの積み上げで構築されており、 モンゴメリさんご自身の一番の興味分野(結婚)について、咀嚼して咀嚼して、 アンシリーズのファンたちの期待に応えるよう、 渾身で繰り出された作品なのだろう と感じています。

​『愛情』を読んだ際に感じた
​「なんて強烈な感情なんだ!なんて洗練された構成なんだ!」​ という印象は、​
こうやって… 短編作品として似た題材を繰り返し形にする中で、 キャラクターを走らせることで感情自体を成熟させたり、 1話としての構成として魅せ方を試行錯誤したりして、 高濃度/高品質なものとして洗練・構築していくものなんだな、
とひしひしと感じました。

アンちゃんたちとは縁薄い…と言いつつ、
アンシリーズのお話の構築の仕方を鏡のように映す、縁深い作品集だと思うので、
​特に 「『アンの愛情』凄い!やばい!」 と感じる方は、 これらの短編集も 是非!
by姉



◆小説 赤毛のアンシリーズ(村岡花子訳) 感想リンク
アンの青春(Anne of Avonlea)1909
アンの愛情(Anne of the Island)1915
アンの幸福(Anne of Windy Willows)1936
アンの夢の家(Anne's House of Dreams)1917
炉辺荘のアン(Anne of Ingleside)1939
その1:アンの娘リラ(Rilla of Ingleside)1921
その2:アンの娘リラ(Rilla of Ingleside)1921
アンの友達(Chronicles of Avonlea)1912
アンをめぐる人々(Further Chronicles of Avonle)1920

◆モンゴメリ著 小説 感想リンク
果樹園のセレナーデ(Kilmeny of the Orchard)1910
ストーリー・ガール(The Story Girl)1911
黄金の道―ストーリー・ガール(The Golden Road)1913

◆赤毛のアン 関連本 感想リンク
赤毛のアンの手作り絵本 / 松浦英亜樹 さんのイラストについて
赤毛のアンシリーズのコミカライズについて





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最終更新日  2025.10.24 23:34:37
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