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イズ 1389 @ Re:暁のヨナシリーズ、完結です!…外伝4『王の風』速報感想。(07/03) ヨナ終わってしまいましたね。とても満足…
2025.04.13
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​「アンの娘リラ」ー赤毛のアン・シリーズ10ー​
(L・M・モンゴメリ・1921年、和訳 村岡花子・1959年)

​感想その1 ジェムくん・ウォルターくんの配置について​

原題は、Rilla of Ingleside。
イングルサイドは、ブライス一家の住む大きなお屋敷の名前です。

1914年、プリンスエドワード島フォア・ウィンズ港・グレン・セントメアリ村。
ブライス医師一家 の6人の子どもたちも大きく成長した。
兄や姉はレドモンド大学/クイーン学院の高等教育に進む中、責任や野心のない 末娘リラ は、 15歳になり、この先10代後半の青春時代を謳歌するつもりでいた…

しかしその矢先に第一次世界大戦が勃発。
英国参戦にカナダも追随し、志願兵として 長兄・ジェム や幼馴染が戦地へ向かうこととなった。
当初はすぐ終戦するという楽観的な見方もあったが、諸国参戦により戦争の規模は拡大・長期化。
戦況が混沌とする中、カナダ中の若い男性たちが次々と出征していく。
詩と美しいものを愛する 次兄・ウォルター も出征の意志を固め…。



2009年に作者・モンゴメリさんの遺作である『アンの想い出の日々』が公表されるまでは、本作が赤毛のアンシリーズの(本編時系列的な)最終作だったのだと思います。

まだシリーズ全作をしっかり読めたわけではないのですが、アンちゃんの人生軸/物語時系列はおおよそ把握したところで…
描きたいものが明確で、描写のキレ・読み応えがずば抜けている! と妹と話しているのが、
①赤毛のアン、③アンの愛情、⑩アンの娘リラ の3作 です。​

​個人的好みという観点においては… ⑩リラが、マイベスト! ​​

…凄い!名作って本当に凄い!
こんな凄まじいものがあったなんて!
どうしてこんな…戦争題材で、悲劇もいっぱいあって、
だけど「愛」ばっかり読み手の心に焼き付くんだ!?

主体数も数えきれないほど登場して来て、そこかしこに様々な関係性や激情があって、
…でも、きれいに1つの物語として、最初から存在していたみたいに頭にすっと入って来て​​​度肝を抜かれました。



*以下、「アンの娘リラ」のラストシーンまでのあらすじ、 及び後日譚を含む作品「⑪アンの想い出の日々」のネタバレあり感想です。未読の方はお気をつけください。*


本作の主人公は子供たち世代であり、ブライス家の末娘・リラちゃんの主観で物語が語られます。​​​
主人公はリラちゃん…とも言えますが、 ​個人的には本作は「群像劇」という印象が非常に強かったです。​

群像劇というか…言ってしまうと ​主役は「ブライス家」という組織体かな、​ と。
ギルバートとアンちゃんが、一代でその土地における圧倒的信頼を勝ち得ながら、個性豊かな6人の子どもたちを、愛情持って堅実に育て上げた一家… 非常に志の高い、意識の高い「理想的な家庭」…いち組織体。

頼られまくる立派な医師の父と、美人で聡明で子どもたちに精一杯の時間を費やす愛情深い母、料理上手で家族の一員である女中・スーザンに囲まれ、子どもたちは何不自由なく、周囲から羨まれる環境で育ち、また、両親ともに非常に頭脳明晰なので、一家全員子どもたちも皆優秀。

このあまりに真っ当で理想的な「ブライス家」自体、非常に特色のある組織体だと思います。
そこに降っかかってくる…第一次世界大戦という、いち個人・いち家族ではどうにも抗いようのない大きな出来事。

世界大戦など前代未聞なため、どんなに頭の良い人でも事態の予測は不可能ですし、上手く立ち回ることなど誰もできません。もし「うまく立ち回れた人」が居たとしても、そんなものは全部結果論です。

この事態に対して、「ブライス家」が組織体として…というか、組織体の中の個々人が、いかに向き合っていくか…絶妙なキャラクター配置の中で、子どもたち一人ひとりが目いっぱい考えて行動します。

6人の子どもたちの配置自体、本作・リラを描くことを念頭に構成されていると感じます。
基本的には、 長男ジェムくん、次男ウォルターくんの2軸で大戦といち家族の関係性を作り、 それを「ずっと家(イングルサイド)に居る」末娘のリラちゃんの主観で切り取って、魅せる。
ここのトライアングルが本作を形作る一番の土台だと思っています。



以下、各キャラ/関係性について。

​​ ・長兄・ジェムくん
(本作開始時21歳・レドモンド大学で4年の文科卒業後、医科1年目)​

母親譲りの赤髪且つ父親譲りの圧倒的リーダーシップを兼ね備えた 光のスーパー長男。
大学の医科在籍中で、誰の目にも明らかな「ブライス家の跡継ぎ」。

ブライス夫妻の第1子(女の子)は産後すぐに亡くなってしまい、その悲しみも背負って誕生した待望の第2子であり、実直で、両親や弟・妹たち/周囲の人々にも素直に愛情を示す性分のため、老若男女+犬・近所の幼子までみんな彼にメロメロ。
近所の牧師館の幼馴染4兄弟のうち、美人でしっかり者の長女フェイスちゃんと相思相愛の仲。

ジェムくんがあまりに「理想的な跡継ぎ」として盤石なため、下の弟・妹たちは興味分野方面を結構好き勝手やってる印象です。

本作の大きなとっかかりの一つとして、 「この『スーパー跡継ぎ』が戦争に行く」という組織体にとってあまりに葛藤のある状況 を描く点があったのだろうと受け取っています


​・次兄・ウォルターくん​
(本作開始時20歳・クイーン学院卒業後、2年の教職を経て大学入学)​

眉目秀麗・文学的才能に富み、詩と美しいものを愛する心優しき青年。
勉学に打ち込み過ぎて、父親と同じく腸チフス(重症)にかかった経緯があり、家族に体調面を心配されている。

戦争勃発時は病気後で募集対象ではなかったものの、1年後、周囲から兵役忌避者の烙印を押される状況に苦しんだ後に入隊の意志を固める。
塹壕で書き記した詩が世界中で脚光を浴びる中、1916年・フランスのソンム戦線で勇敢に戦い、戦死。

本作のとっかかりのもう一つとして、大戦中の戦死後に名を馳せた詩人からのインスパイアがあったようです。
1917年発表の『アンの夢の家』の冒頭には、ルーパート・ブルーク(~1915)という詩人の詩が引用されており、彼自身や彼の残した詩の与える影響力に感銘を受けたモンゴメリさんが、大きなテーマとしてこの要素を取り扱ったのだと受け取っています。


​​ ・ジェムくん/ウォルターくんの配置について ​​
上記2つのとっかかりは、分解してみると個別のものだと思うのですが、これが、ブライス家の長兄・次兄という配置によってなんとも絶妙に神合わさって…
間違えた、噛み合わさっていて、度肝を抜かれました。

この2人の配置・作り込みこそ、本作最大の語りポイントだと思っています!
ジェムくんとウォルターくんは、表裏一体・光と影の関係性というか…お互いにそれぞれの役割を強烈に認識している「半身」というか…

ブライス家というのはどこまでも「理想的な家庭(組織体)」であって、この第一次世界大戦下において、「戦線に出て、国のために勇敢に戦った後に帰還する」も「国のために勇敢に戦い戦死する(詩とともに名は後世に残る)」もどちらも泣けるほど立派な「理想の息子」像なんですよ。

1人の人物像として2つの理想像を描き切れないから「2人に分かれた」…。
「となりのトトロ」も、初期構想時にはさつきちゃんとメイちゃんが1人の少女でしたが、いち人物像として不整合な面が出てきたため役割を分けた…と聞いたことがありますが、それと似た印象を受けています。

ジェムくんは、世間体も含めてブライス家の未来と品格を一身に背負っていますので、どこまでも「正義」に忠実で、戦争が始まると真っ先に志願して出征していきましたし、その上で長期化し混沌とする戦場の中で、なにがなんでも生還しなければならない立場でした。

ウォルターくんは、極論、役割として「理想的な息子としての『戦死』」という側面を​​一身に請け負ったキャラクターだと受け取ってますが、彼自身が「ブライス家で一番大事な息子はジェムくん」って、進んで演出して来るんです。

本作を、本作のバランスで読ませ切ったコンダクター/演出家は彼だと思ってます。
リラの前作「虹の谷のアン」は、子どもたち世代のキャラクター配置を諸々試行錯誤しているのかな?と感じる作品ですが、
この中で、喧嘩を好まないウォルターくんがフェイスちゃんの為に決闘するエピソードがあり、またリラ本編でもさらっと彼女のことを詠った一連の短詩を書いていたことが記されているので、
…これ、フェイスちゃん本人は元より、家族/周囲にも悟らせてなかったけど、
ウォルターくん、フェイスちゃんのこと好きだったのかな? …と受け取りました。

本来、ジュリーくん(牧師館長男)たちと共に大学に行ってても良いウォルターくんが、勉強のし過ぎで死線をさ迷うほどの重病(腸チフス)を患い、進学を延期していたのも、背景に「フェイスちゃん諦めなきゃ」という、彼の中での葛藤があったからでは…?
(父・ギルバートと同じこと(by「アンの愛情」)やらかしたんじゃ…?)
​​​
…切ねぇ!!…でも超イイ子!!

上記、憶測&憶測の裏読みでしかないのですが、でも「虹の谷」~からの流れの中で、牧師館の4兄弟との掛け合わせで一番丹念に作りこんでいるのは、ここだと思うんですよ。
やっぱり… 次兄ウォルターくんの、対・長兄ジェムくんへの感情って、 「リラ」で描くべき話筋において一番重要なところだと思いますもん。

​本作を読んだ際、一番驚いたのが「ハッピーエンドに見えたこと」でした。​
4年半ほど続く苦しい戦争ですが、途中でウォルターくん戦死の報が届き、そこから18歳になった直後の三男の出征、そして長男・ジェムくんの負傷/行方不明の一報が入ります。

最後、読者としても「ジェムくんさえ帰って来てくれたら…!」と 祈りながら読んでしまうんです。
「次男は戦死したけど、長男は帰って来たからハッピーエンド♪」なんて絶対不謹慎じゃないかと思うのですが、でも ​「このバランスで正しいんだ!」という大きな意志に押し切られる​ んです。

ひたすらジェムくん帰還を駅で待ち続けるブライス家の飼い犬のマンディや、ジェムくんが大好きで、無事を祈るあまり可愛がっていた飼い猫を供物として神様に捧げるブルースくん(牧師館の幼子)…等、ジェムくん帰還を至宝の出来事に持ち上げる神演出が凄いんです。

大けがを負って行方不明になったジェムくん(後に捕虜になっていたことが判明)の帰還が、​​​「神様に感謝したくなる」ほど奇跡的な…
言い換えれば 「あまりに都合の良い」出来事 なのですが、何かしらの意志に導かれるように、「神に感謝しながら」自然と読める。
​作品に押し切られる。​
…これはすごいことだな、と感動しまして。

​​​​作品を司る、これらの演出/印象は何なのかな…と考えると、
やっぱり ​「ウォルターくんの意志」だな、​ ​​ と感じたんです。

ジェムくん帰還を誰よりも願っていたのはウォルターくんで、戦場でもずっと、 「自分はいいから、病気したとき運よく拾った命だし、何ならあげるから、 ジェムは帰してね」って願掛けしてたんじゃないのか とか、
作品全体バランスを見れば、 「交換条件をもって神様と取引した」のは ブルース坊やじゃなくて、ウォルターくんだったんじゃないのか とか、あれこれ妄想が広がって…。

とにかく本作を読んで一番感動したのは、 ​この力業の「ハッピーエンド」の説得力。​

はっきりと明確に記されているわけではないし、あくまで「裏読み」の筋道なのですが、
でも設定や話筋を俯瞰する限り、 ​一番作り込んである作品の核は間違いなくここ、​
​ジェムくん/ウォルターくん2人の対比だろう、​ と思って読みました(沼)


感想その2に続く!

by姉 ​​​​
​​ ​​ ​​ ​​



◆小説 赤毛のアンシリーズ(村岡花子訳) 感想リンク
アンの青春(Anne of Avonlea)1909
アンの愛情(Anne of the Island)1915
 ⇒​ アンの愛情 村岡花子訳と後続の翻訳本の比較について
 ⇒​ アニメ『アン・シャーリー』及び『アンの愛情』翻訳比較を受けて思うこと徒然(姉編)
アンの幸福(Anne of Windy Willows)1936
アンの夢の家(Anne's House of Dreams)1917
炉辺荘のアン(Anne of Ingleside)1939
その1:アンの娘リラ(Rilla of Ingleside)1921
その2:アンの娘リラ(Rilla of Ingleside)1921
アンの友達(Chronicles of Avonlea)1912
アンをめぐる人々(Further Chronicles of Avonle)1920

◆モンゴメリ著 小説 感想リンク
果樹園のセレナーデ(Kilmeny of the Orchard)1910
ストーリー・ガール(The Story Girl)1911
黄金の道―ストーリー・ガール(The Golden Road)1913
可愛いエミリー(Emily of New Moon) 1923
エミリーはのぼる(Emily Climbs)1925
エミリーの求めるもの(Emily’s Quest)1927
青い城(The Blue Castle)1926

◆赤毛のアン 関連本 感想リンク

赤毛のアンの手作り絵本 / 松浦英亜樹 さんのイラストについて
赤毛のアンシリーズのコミカライズについて





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最終更新日  2026.07.10 00:53:02
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