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今朝の「TBS サンデー・モーニング」(2025年04月27日)を見て。アメリカの研究機関の予算削減とのニュースを見ました。最近の日本人のノーベル賞受賞者の在籍機関がアメリカでした。理由は簡単、日本国内に比べ、アメリカの研究範囲と資金が格段に多いからとの事でした。そのアメリカの優位性が縮小か無くなるのです。ここにもトランプ政権の現状把握の未熟、調査不足を感じました。先日、日本の研究範囲、資金を増大するとの報道を見た気がします。アメリカが今後、縮小してもまだ日本よりも範囲が広く、資金も潤沢なのかは不明ですが。その差は確実に縮小するでしょうし、逆転するかも知れません。ヨーロッパではアメリカからの研究員を受け入れると明言していますのでヨーロッパへ流れるかも・・・。ただ、不安はこの機会に中国が介入し人材確保に動く事です。最先端研究・技術を世界に公開しない国に集中する事が懸念されます。しかし、この可能性が一番高いと私は予想し不安を感じます。<おわり>
2025.04.27
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<姉妹だけの初陣>-----#282 店先では「頼もう」と言って入って来た、馬喰町の香具師・ 鐘屋斬次郎・元締めの一の子分、頭の勘吉が店内を睨み回した。 店内に居たお客達は目を合わせぬ様にして早々に店を出て行った。 奉公人たちも目を合わせぬ様に小僧は外の掃除に出て、他の者はお客が居なくなると板場に上がり座り下を向いていた。 厠からの戻りの手代が店先への内暖簾の処で奥へと知らせに走った。 「ほらよ、世の中にゃ~よ、怖い奴、悪い奴がいるんだよ、だから、そいつらをさ~、追っ払ってやるって言っているんだろうが、他のお店はよ~、一月五両だがよぉ~、三両にしてやろうってんだ、有難くだしねぇ~な、さもないとよぉ~、この先生方が剣の舞を見せる事になっちまいぜ」 「お前さん方、このお店のお嬢様が何方かご存じで御座いますか」 「おぉ~、知ってるぜ、天覧大試合の女子の勝者だろうが、だから何だってんだ。 この先生方に勝てるとでも言うのかい、たかが女子の部だろうが、町屋のお嬢さんが武家の嫁になってよ~、強くなれる訳がね~だろうが、えぇ~、そうだろう」 「はい、其方様の申される通りで御座います、私もお嬢様とは思いも致しませんでした。 ですが、試合を見に参りますと、何と遠目にもお嬢様と解りました、そりぁ~もう驚きました。 其方様の申される通り、嫁に行って間もないお嬢様が、何と剣豪になって居られました。 此れにも驚きました、其処の剣術家の方にお尋ね申しますが、試合を御覧になりましたでしょうか」 「見たがどうした」 「では、お尋ね申しますが、お嬢様の技は読売に寄りますと、途轍もない速さで振る木刀の成せる技なのだそうです、其方様方に出来ますでしょうか、別の一人が二人になりました技がお出来になりますでしょうか」 「あの様なものは技では無い、手妻じゃ、のぉ、御同輩」 一人の浪人が仲間の浪人に賛同を求めた。 「決まっておるわ、一人が二人になど成れる訳も無いわ」 「解ったか、うちの先生方の方が強え~んだよ」 「そうですか、世の中、怖いですねぇ~」 「さっきから聞いてりゃ~、番頭、お前、妙に落ち着いていやがるなぁ~、何でだぁ~」 「何ででしょうねぇ~、ともう少し遊んで楽しみたいと思ったのですがな。 実はですね、貴方がたが怖く無いと言う、佐紀お嬢様がお里帰りで奥にお見えなのですよ。 私の落ち着いている訳ですよ、楽しみなのですなぁ~。 皆も楽しみな様で、回りの奉公人を御覧下さい、誰も今までの様に怖がってはいないでしょう。 貴方がたが、どうなるかと楽しみなのですよ」 落ち着き払った番頭にそう言われて、回りを見渡した頭は、にやにや笑いの奉公人の顔に見返された。 「てめいら、にやにやと笑いやがって、勝者が何だ、女じゃね~か、こっちにはよ~、先生がたが一緒なんだよ、町屋の娘の偽物とは違ってよぉ、生まれた刻からの武士何だぜ、本物なんだよ」 その刻、内暖簾を割って二人の可憐な武家娘が店先に顔を出した。 「おぉ~、可愛い娘が・・・やや~、同じ顔じゃね~か、この店にゃ~何人の娘が居るんだ」 「おや、お嬢様がお出になられないので御座いますか」 「番頭様、お佐紀様には物足りない様に御座います、龍一郎様には言わずもがなで御座います」 「おやおや、それでお二人のお出ましに御座いますか。 正直申しまして、お嬢様がお任せですので信じたいので御座いますが・・・」 「番頭様、ご心配で御座いましょうが、お任せ下さい。 武家の方は武士廃業、他の者たちは左腕、頭目は・・・はて、葉月お姉様、どう致しましょうか」 弥生が可愛く小首を傾けて姉の葉月に尋ねた。 「何~、てめいらが俺っちの相手をするってのかい、可愛い顔が二目と見られぬ様になるぜ」 「頭、其れよりも、ひっ捕まえて吉原に売っ払っちまいましょうよ、味見の後でね」 「あらあら、味見ですって、弥生、私たちは食べられてしまう様ですよ」 番頭を始め奉公人たちが噴き出して笑った。 「てめ~ら、ふざけやがって~」 その刻、葉月と弥生の二人が宙に飛び上がり、配下の二人の上に位置すると足が伸びて左腕を蹴ると肩に乗って反動を利して二人の武家に向かい右肩を蹴ると、その反動を利して元の板場に飛び降りた。 一瞬にして「ボキッ」と言う音が四度響き、四人が倒れ込み呻き出した。 番頭も奉公人も驚いたが、頭の勘吉が誰よりも驚き固まった後に全身を震わせた。 「怪我人を連れて帰って貰う為に配下の方を一人を残しました、さて、頭目さん、貴方はどう致しましょうか」 姉の葉月が優しく、やんわりと問うたが、味方である番頭が聞いてもブルッと震えが出た程の言葉だった。 「お姉様、お佐紀様に店先での血は禁じられましたので、頭を砕くのは駄目ですね、目と鼻と口から血が出ますので、両腕と両足の骨を砕いては如何でしょうか」 「私は頭の骨を砕くつもりで居りましたが、駄目ですか~、では、私は右の腕と足にしますので、弥生、貴方は左をお願いしますね」 そう言うと葉月と弥生が半歩前に進んだ。 その動きに我に返った頭の勘吉が後に飛びのき脱兎のごとく暖簾を潜り飛び出して行った。 「あらあら、頭目さんが配下を置き去りですか、一人だけ残したのですから、皆を連れてお帰りなさい」 「自分だけで逃げようとするならば、同じ目に合うと思いなされ」 姉妹に言われて、無傷の一人が一人、一人を立たせてお店の外へと誘った、その間、その男は姉妹から目を話す事は無かった。 「失礼をば致しました、流石はお嬢様が信頼された方で御座います、驚きました」 番頭が姉妹に向き直り拝礼した。 奉公人たちもその場で深々とお辞儀をした。 「番頭様、お役に立てて何よりです、お佐紀様、龍一郎様の様に上手く出来ましたかどうでしょうか」 「店先をお騒がせ致しました、失礼致しました」 姉妹が内暖簾を潜って奥へと姿を消した。 内暖簾から覗いていた四人は頭が逃げ出した処で奥へと戻っていた。 奥座敷で姉妹を待っていた主の鳩衛門と女将のお滝がお辞儀をして迎えた。 「お疲れ様でした、ありがとう御座いました」 「お世話をお掛け致しました、ありがとう御座いました」 姉妹が廊下側に座ると待っていた様に龍之介が這って行き葉月が膝の上に乗せた。 「お佐紀様、あれで良かったでしょうか」 「折り方は人それぞれです、頭が無傷は考えものですが、二人だけの初陣としては及第点でしょう」 「佐紀、厳し過ぎますよ」 「そうだよ、佐紀、私は驚きましたよ、軽業師の様でした」 女将のお滝と主の鳩衛門が姉妹を弁護した。 「お佐紀様、お言葉ありがとう御座います」 「学びまして御座います、頭目が配下を置き去りにするとは思いもよりませんでした。 龍一郎様、お言葉をお願い申します」 「あの頭目、勘吉と言う頭だそうです、親分に何と知らせると思われますか、親分の次の手は何と思いますか」 「・・・」 「・・・」 師匠と弟子との会話に主の鳩衛門と女将の滝は入り込めず、只、黙って聞いていた。 「あの配下を置き去りにする卑怯な奴です、己の都合の良い様に話を作るでしょう」 「香具師の稼業は押しが全てです、誰かに舐められたら仕舞です、必ずや仕返しに来るでしょう」 姉妹が交互に応じた。 「うむ、では如何するな」 龍一郎が姉妹に追い打ちを掛ける様に問うた。 「はい、香具師一党を壊滅に行きます」 「良い返事じゃ、儂が後見しょう、佐紀、其方は此処にて龍之介と共に家を守っておれ、行くぞ、葉月、弥生」 「はい」 三人が同時に答え、龍一郎が立ち上がると、葉月、弥生が立ち上がり、葉月が龍之介を佐紀に渡した。<つづく>
2025.04.27
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<姉妹と共に佐紀の里帰り>-----#281 台所で雪のお婆が団子を頬張っていた。 慈恩と双角が土産の一本づつをお婆にと雪に渡したのである。 渡された雪は婆の事を忘れていた己を恥、慈恩と双角に目を潤ませて礼を言った。 「礼など良い、早ようにな、固とうなる前にな、食べて貰うのじゃ」 「はい」 雪は婆が何時も掃除している門へと囲炉裏端から駆け出して行った。 雪が門へ行ったが婆の姿は見えず、団子を持って台所へ行くとお婆が竹包みを前に団子を美味しそうに頬張っていた。 「婆ちゃん、どうしたの、その団子」 「お佐紀様からの土産じゃ、旨いのぉ~、雪、儂しゃ~、幸せじゃ、旨い、旨い」 「婆ちゃん、此処にもあるから、たんと食べてね、慈恩さんと双角さんからよ」 「うん、うん、有難いのぉ、後で礼を言わんとな」 「婆ちゃん、村の皆には悪いが儂らは幸せ者ですね」 「うん、うん、村のもんはどうしておるかのぉ~」 「宮内村は貧しい村じゃかんね~」 「うん、うん、儂らだけが、こげに幸せで良いのかのぉ~」 因みに宮内村は佐倉城下の南に位置し明治二十二年(1889年)に合併し弥富村となり昭和二十九年(1954年)に佐倉市に合併した。 「そうだね~、龍一郎様に相談すれば何とかしてくれると思うけんど、貧しい村は一杯あるけんね~、儂らの村だけってのもね~」「そんだな~、儂らの村だけちゅうのはのぉ~、よすべ~、龍一郎様に言う事で無い」 その刻、台所へ茶を取りに来たお久が入口で二人の会話を聞いて、そっと部屋へと戻って行った。 「お前様・・・」 「そうか~、それで茶を持って来なかったか、雪も婆も偉いなぁ~、誰でも我が村を大事に思うものじゃがな」 「村で意地悪でもされて居たのでしょうかねぇ~」 「雪からは、その様な話は聞いておらぬがな」 「龍一郎殿にお知らせしますか」 「うむ、一言言うてみるが、あ奴の事じゃ、既に知っておると思うがのぉ~。 龍一郎は増上寺から戻ってどうしたな」 「遅い昼餉を皆で食べて、慈恩殿と双角殿はそれぞれに料亭・揚羽亭と船宿・駒清に戻りました。 龍一郎と佐紀は葉月、弥生を連れて実家へ孫を見せに龍之介を連れていきましたよ」 「雪が佐紀付きではなかったか」 「ええ、そうなのですが、葉月と弥生が是非にもと願いましてなぁ~」 「そうか、では戻ってから話をして見ようかのぉ~」 その頃、噂の龍一郎達は佐紀の実家の居間に居た。 父の鳩衛門と妻女の滝が上座に座っていたが、滝の膝の上には龍之介が機嫌良く座っていた。 両親と佐紀が四方山話をし、刻々、佐紀の兄の寿一郎が店から奥に顔を見せた。 龍一郎は佐紀の横に座り僅かに顔に笑みを浮かべて話を聞いていた。 一緒に行った、葉月と弥生は内庭を見物していた。 内庭は中々の広さで鳩衛門の庭弄りが好きなせいか、見応えのあるものだった。 刻々、龍之介を抱こうと鳩衛門が手を伸ばしたが龍之介は婆の滝の膝の上から動かなかった。 「龍一郎様は相変わらず無口な方ですね、それにしても、お店の前では驚きましたよぉ、綺麗なお嬢様が二人も、それも同じ顔の二人を連れて来るなんて、あの二人はどうしたの、佐紀」 「二人の顔が同じなのは双子だから当たり前です、二人はあれでも道場の弟子なのですよ、それも凄腕ですよ」 「あらま、あの子達、強いのね」 「まぁ、その辺の半端者や浪人なら十人程でも大丈夫でしょうね」 「そんなに強いのぉ~、あんなに可愛いのに、そんな風には、とても見えないわねぇ」 「半端者で思い出したのですが母上、あれから、お店には脅しや強請はありませんか」 「それがじゃ、佐紀、別の奴らが来る様になってなぁ~、佐紀、世の中、どうなっておるのかのぉ~、儂も用心棒を雇うかのぉ~」 「このお店の娘が私だと知らないのでしょうか、父上」 「それがなぁ、知っておるのじゃよ、奴らの親玉は馬喰町の香具師の元締めでなぁ。 その男が援助している剣の鍛錬所の者たちが一緒に来るのじゃ。 その者らが佐紀、お前の腕前を馬鹿にしてな、大試合の勝者でも女子だと言うてな。 第一、あの試合は幕府の出来試合であると言うのだ、橘の者ばかりが勝者、次席がその証しと言うのだよ、これには儂も滝も何も言えぬでなぁ。 そう言われれば確かに勝者と次席の全員が橘の者ばかりじゃからな」 「そう言う見方もあるのですねぇ~、成程ですね、橘の者が皆、本当に強いとは思わないのですね、世間にはそう見る見方もある様ですよ、旦那様」 「良いでは無いか、我らが皆と同じ普通の人と思われればな」 「それにしても、悪い奴は尽きませぬなぁ~、旦那様」 「そうじゃなぁ~、何とかせねばなぁ」 その刻、店先が騒がしくなった。 廊下に人の走る音が聞こえた。 「旦那様、若旦那様~、鐘屋の頭が来ました~」 「おや、おや、噂をすればですなぁ~」 大旦那が佐紀と龍一郎の二人がいるせいか余裕の言葉を吐いた。 「寿一郎、其方が応じなされ、何事も修行です」 「お・親父、私には無理です、さ・佐紀~、頼む~~」 「兄者、私が何時もいる訳ではありませぬ、父上が申されました、何事も修行です、何事も初めては御座います」 佐紀が兄の願いを突っぱねた。 寿一郎が恨めしそうな顔で父親と佐紀を見詰め、項垂れて障子を開けて店先へと向かった。 騒ぎを聞きつけたか、庭を散策していた葉月と弥生の姉妹が庭の廊下に腰かけた。 「お佐紀様、店先が何やら騒がしい様で御座いますが」 葉月が佐紀に尋ねたが、その顔は獲物を狙う獣の様に舌なめずりしている様だった。 「出番は貰えますよね、お佐紀様~」 雪に次いで龍之介の子守が多い葉月と弥生の姿を見つけて、龍之介が「だぁ、だぁ」と滝の膝から二人へと移りたがった。 「おや、おや、龍は双子の姉妹がお好きなようね」 「以前、こちらにおり連れても参りました、雪の次に、この子の守りをしておりますせいでしょう」 「佐紀、お前はどうなのですか、疎かにしているのでは無いですか、子に取って実の母親と接する事は大切ですよ」 「母上、私は母です、接する刻が一番多いのは当たり前です」 葉月、弥生の姉妹が下駄を脱ぎ、念の為に置いてあった雑巾で足の裏を拭き廊下に上がった。 正座した二人の姉妹が主夫婦に拝礼した。 「素晴らしい、お庭を拝見させて頂き感じ入りました」 「感謝致します」 「うん、うん、喜んで貰えて嬉しいですよ」 「何とも、礼儀正しくて美しいお武家の娘さんたちですね」 滝の膝の上の龍之介がいよいよ溜まらず身を捩り捩り滝の腕から抜け出し葉月と弥生に這って近づいて行った。 皆が見守る中、龍之介は葉月と弥生の間に入ると二人の手に触りにっこりと微笑み「だぁ、だぁ」と言った。 「あらあら、婆よりはやはり若い美人の方が良いのですか」 滝が呆れた様に言った。 「女将様、私たち二人が接する刻が長いだけで御座います」 葉月が滝に弁解した。 「おや、何時の間にか龍一郎殿が居らぬが、何処へ、何時、行かれたかの」 「父上、店先の様子を見に行ったのに決まっております」 「おぉ、そうでした、忘れて居りました、龍之介に見惚れておりましたでな」 皆の目が龍之介に集まった、その瞬間に龍一郎が元の席に戻った。 その刻、また店先が騒がしくなった。 「龍一郎殿が・・・」 と鳩衛門が言って前に目を戻した刻には龍一郎が元の席に座っているのを見て驚いた。 「何と・・・何時の間に」 「葉月殿、弥生殿、店先の騒ぎを任せても良いかな」 「大師匠、いえ、龍一郎様、お任せ下さいますか、ありがとう御座います」 「龍一郎様、どの程度かのお望みが御座いますでしょうか」 「お店を血で汚してはなりませぬ、剣を持つ者は武士としてたつきが得られぬ様に、他の者たちは世間に迷惑を掛けぬ様に足の骨をな、血はならぬぞ」 「心得まして御座います」 葉月と弥生が龍一郎と佐紀に拝礼した。 すると真ん中に座っている龍之介も習って拝礼し、皆を微笑ませた。 「はい、龍之介様、お婆様の処へ戻りましょうね」 弥生が龍之介を抱き上げて立ち上がり滝の膝の上に戻した。 直後は少し膨れていた龍之介も直ぐに滝に甘え出した。 「では」 葉月と弥生の二人が店先へと向かった。 「佐紀、二人は本に強いのですか、あんな可愛い娘が・・・」 「母上、ご心配はいりませぬ、一人でも大丈夫なのですから」 「お前がそう言うのなら・・・見に行っても良いのかしらね、お前様も見たく無いですか」 「確かに、どの様に対するか・・・」 龍一郎が立ち上がり龍之介を滝から受け取り抱えると店先へ向かい、その後を佐紀、鳩衛門、滝と続いた。 何故か、龍一郎に抱かれた龍之介は笑顔ではあるが大人しくなっていた。<つづく>
2025.04.23
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<門前の掃除>-----#280 唖然としている師範代に双角が語り掛けた。 「師範代さんや、どうするね、そちらは其方と見物人の振りをしている二人だけとなったがなぁ~」 師範代が慌てて、回りを見渡し逃げて見物人の振りをしている者を探した。 見物人の中に武家、浪人が何人もいて誰かが解らない様子だった。 「双角さん、師範代さんは自分の弟子も解らない様子よ」 「その様だのぉ~」 「儂の弟子に逃げる者などはおらぬ、戯言を言うでは無い」 「お~い、其処の浪人さんよ、其方は師範代よりも強いのに何故に弟子でおるのじゃな」 慈恩たち五人の目が一人の浪人に注がれた。 師範代もそちらに目をやり、何人かの帯刀している者の中から一人に絞り尋ねた。 「き・さ・ま・か~」 「良くお解りで」 「何故に逃げるか」 「某、逃げたのでは御座らぬ、負けと決まっている戦に参戦せなんだだけの事に御座る」 「それを逃げたと言うのじゃ~」 「いやいや、そうでは御座らぬ、戦術で御座るよ」 「こ~の~、ああ言えばこう言う奴め~」 「お~い、浪人さんよ~」 師範代と浪人の掛け合いに慈恩が割って入った。 「浪人さんの方が強いのに何故に師範代に成らぬのだな」 「何故って、解り切った事じゃ、街の衆に迷惑を掛ける奴どもの面倒など見る気は無いわ」 「おい、おい、迷惑を掛ける者どもはここに倒れておるでは無いか」 「おぉ~、そうじゃな~、面倒な奴らは、もうおらぬなぁ~、師範代になってみるか」 「何~、貴様ら、儂の頭越しに話をしおって」 浪人が前に出て来て慈恩たち五人の前に立った。 「浪人さん、私達と同じに右腕上腕の骨を砕くつもり~」 雪が無邪気に尋ねた。 「そうしたい処だがな、この男は卑怯、残忍、非情、執念深い奴でな、骨を折る位では駄目じゃな」 「そう言う奴か、さも有らん、この先、良い人間に変わる事もあるまい、我らは望まぬが、この世の邪魔はおらぬ方が良いか、どうじゃな、慈恩殿」 「側におった者の言葉じゃ、信じ様では無いか」 「私達も何れは通る道ですね、しっかりと目に焼き付けさせて頂きます」 一番、年下の雪がしっかりと賛同した。 「さて、元師範代殿、この世に別れを告げて下され」 浪人がそう言うと刀の鞘を払った。 「生意気な奴め、お前こそ、あの世へ送ってやるわ~」 師範代も刀を抜いて正眼に構えた。 相正眼で二人の間が少しづつ詰まって行った、だが、最後の死線を越える事は無かった。 「来ぬのか、来ぬならば、あの世へ行け」 「ぬかせ~」 師範代が浪人の誘いの言葉に乗り剣を一旦胸前に引き寄せ前に踏み出した、浪人は待っていた様に右に身体を開くと師範代の腹を撫で斬った。 斬った浪人は前にそのまま進むと後に剣を向けると振り返った。 斬られた師範代は信じられないと言う表情を浮かべて前に倒れ伏した。 元に変わった師範代の身体の回りが赤く染まって行った。 回りで痛みに堪えて見ていた弟子たちが元師範代と浪人を見詰めて次々によろよろと立ち上がり広場から門前通りを避けて逃れて行った。 「浪人さん、お前さんが先の師範代の様に迷惑を掛ける様ならば、今度は其方が元になると思え」 「御心配無く、儂が強いと言ってもこの程度、橘の者たちに叶う腕前では無いのは承知」 「我らの師匠と当寺の法主様は入魂故な、悪さは直ぐに知れると思え」 慈恩と双角が浪人に念を押した。 「元師範代さんを葬って上げてね」 雪が浪人に願った。 「無論の事、此れから鍛錬所に戻り、人を集めて参る、約定致す、お任せあれ」 「では、我らは戻ろうぞ、そうじゃ、其方、名は???」 「辰巳辰之進」 「承った」 双角を先頭に雪、葉月、弥生、しんがりを慈恩が務め茶屋へと向かった。 その頃には見物客も疎らになっていた。 五人が茶店に戻り元の縁台に座ると茶店の主・自らが五人に新たな茶碗でお茶を出してくれた。 「お雪も自らの手は下してはおるまいが人の最後は見た事がある様だな」 龍一郎が後も見ずに雪に言葉を掛けた。 「はい、里では自分でこの世を去る者が絶えません」 「そうか・・・」 龍一郎が雪に掛けた言葉は暗に慈恩、双角、葉月、弥生が自らの手での殺生の経験がある事を知っていると伝えていた。 「龍一郎様は私の過去をお聞きに成りませぬが気には成りませぬのでしょうか」 「せねば成らぬのか、慈恩殿、其方はお上に追われておるのか、何処かの藩に追われる身か」 「そうでは有りませぬが」 「では良いでは無いか、其方が話たくなれば話せば良い」 「それで宜しいのですか」 「構いませぬ」 「はい、覚悟が決まりましたなら、お聞き下さい」 「龍一郎様、私もお願い申します」 「私達二人もお願い致します」 「うむ、何時でも、其方らが話す気になった刻で良い、儂は其方らの今が良ければ良い、聞くは其方らの心が軽くなるからでな」 「私の心が軽くなりますか」 「なります、誰にも話せぬ事が心にあるは己の心のタガでな、心が広く大きくなるを妨げるのじゃ」 四人は考えこんでしまった。 雪は我、関せずと無邪気に団子を頬張り、茶を飲んでいた。 「広場での仔細は平太に聞いておるで、報告はいらぬ、存分に考える事じゃ、限りがある訳では無いでな」 「旦那様、そろそろ戻りましょう、思いの外、刻を要しました」 「そうじゃな、さて、皆、道場にもどるぞ、団子は土産にして貰いなされ」<つづく>
2025.04.21
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<雪の初陣>-----#279 突然、門前通りが騒がしくなり、暫くすると五十人程の武士、浪人が店の前に現れた。 「おぉ~、稀に見ぬ美形じゃ、この女子が佐紀に違いあるまいて~、おい、女、その方が佐紀か」 佐紀の前に立っていた女将と主が店の中に引っ込んだ。 「はい、私が佐紀で御座いますが、何か御用ですか」 「其方が奇怪なる妖術を使い倒した二人の敵(かたき)を撃ちに参った、勝負じゃ」 「私一人に何人様でお相手下さいますのでしょうか」 「一対一に決まっておるわ、女子相手に多数では少々可哀そうだでな」 「それはそれは、お気遣いありがとう御座いまする、が、それでは面倒です、皆さん一緒でお相手致しましょう、少しは汗も出る事でしょう」 「何~、四、五十人はおるのだぞ」 「はい、承知しております、其方様が師範代で御座いますか」 「そうじゃ、儂が師範代である、裏の広場で勝負じゃ」 その刻、師範代の後にいる男が師範代に耳打ちした。 「何~・・・おなご、其方の隣におるは橘龍一郎殿か」 「はい、人の妻たる私が旦那様以外の殿方と席を同じくするはずも御座いません」 「それで、隣が橘小兵衛殿と妻女であるか」 「はい、左様で御座います、付け加えますと旦那様の隣の二人と後の四人は門弟衆で御座います」 「何と・・・橘道場の者たちが・・・大試合の勝者二名に次席が二名・・・門弟衆も六名とな」 「ご安心下さいな、お相手は私一人ですよ」 その刻、双角が立ち上がった。 その大きな体格に皆が驚いた。 「お佐紀様、お願いが御座います、その役目、私にお譲り下さい」 「いや、待て、儂に譲って下さい」 「待って下さい、我ら姉妹にお願い致します」 「いいえ、私が譲り受けます」 双角の後に慈恩、葉月と弥生の姉妹、最後にお雪が譲ってくれと佐紀に願った。 「おやおや、困りましたな、どう致しましょう、旦那様」 「佐紀、ここは、五人に任せ様では無いか、其方は二人で我慢致せ、楽しみを譲るも師匠の務めじゃ」 「はぁ~、少々退屈の虫が沸いておりましたがなぁ~、仕方が御座いません、此処は其方らに任せます」 五人が対戦者たちを無視して佐紀の前に立ち深々と頭を垂れた。 「ありがとう、御座います、お佐紀様の名を汚さぬ様に致します」 慈恩が五人を代表して礼を言った。 「貴様ら~、勝手に話をしやがって、このやろう」 「はい、お佐紀様のお手を煩わせる相手でも有りませんので、私一人でも良いのですが、楽しみは皆で分ける事に致しました」 一番歳下のお雪の言葉に師範代を含め相手方は唖然となってしまった。 「何だと、小娘一人で十分だと申すか、それを五人にするか、門弟の五人で・・・」 「はい、では裏の広場へまいりましょう」 お雪も可愛い子だったが、可愛い双子の姉の葉月が先頭に立って広場へ向かった。 五人の後にぞろぞろと四、五十人の武士と浪人が続き、その後を通りを歩いていた者たちと門前のお店の者たちが続き、またも、門前は誰も居なくなった。 五人の橘の者たちと師範代を先頭に四、五十人の門弟衆を大きく囲む様な見物人の円陣が出来ていた。 「お前ら武士だろうが~、子供の其れもよ~、女子相手に大人数で恥ずかしくね~のかよ~」 見物人の一人が大声で叫んだ。 「そうだ、そうだ」 と賛同の声が大歓声になった。 その大歓声を跳ね返す様に師範代の大音量の声が響いた。 「う~る~さ~い」 見物人が静まった。 「相手が了承しておるのだ、良いでは無いか」 お雪が前に一歩出て言った。 「私一人でも良いと申したのです、どうしますか、私は全員でも良いのですが他のお弟子の方々が許してくれませぬ、私は楽しみたいので私一人に十人でお願いしたいのですが、如何でしょうか」 「こ~の~、小娘が~、女子とて、餓鬼とて容赦はせぬぞ、誰ぞ、対したい者はおるか」 「よ~し」 「儂じゃ」 と二十人程が名乗り出た。 「うわ~、嬉しい」 お雪が喜んだが、双角、慈恩、双子たちが不平を言った。 「お雪ちゃん、狡い~、私達の分も残してよ~」 「だ、そうですので十人にして下さいな、此方は五人ですから十人づつでお願いします」 「お・の・れ・ら~」 「駄目でしょうか、駄目と言って下さ~い」 お雪が本気なのか、鹹かっているのか、願った。 「良かろう、大人の武士が子供の女子の願いを聞かぬ訳にもいかぬでな」 師範代が鷹揚に了承した。 「な~にを偉そうに言いやがって、結局は多勢に無勢じゃね~か」 見物人から野次が飛んだ。 師範代はこの野次を無視して十人を選び、前に送り出した。 十人の武家と浪人は相手の小娘の獲物は何かと訝しんでいると、雪が右手を後ろに回し帯の間から小太刀様の木刀を出して正眼に構えた。 十人が慌てて剣を抜いて構えた。 正直、雪はがっかりしていた・・・全員が弱過ぎるのだ、己の過信かと疑う程だった。 そこで、雪は一人一人を見詰め弱い処を探り確かめた。 やはり、一人一人の弱点が見えて己の過信では無いと確信した。 「師範代殿、この十人では物足りません」 「何を申すかやってもおるまいに~」 「お雪ちゃん、狡いぞ、先陣なのだから我慢、我慢、残り者には福があ~る~」 「ぶぅ~」 敵からだけでは無く、味方からもの反対に雪は膨れた。 「いいわ、いらっしゃい・・・来ないの~じゃ~、こちらから参ります」 雪が宣言すると、次の瞬間には十人が右手の上腕骨を折られて刀を取り落とし痛みに呻いていた。 雪はと言えば元の位置に立ち、師範代を見詰めていた。 「だから~、言ったでしょ、師範代さ~ん」 「・・・お・の・れ~」 「はい、はい、雪ちゃん、下がって、下がって、交代、交代」 師範代が怒りに顔を赤くしたが、雪たちは我関せずと問答していた。 「は~い、次はだ~あ~れ」 「弱い順に出て来る様だから、慈恩さん、双角さんから、どうぞ」 「何とも、ありがたい申し出じゃな、慈恩殿、お先にどうぞ」 「何とも、儂が貧乏くじか」 慈恩がいやいや前に出て行った。 「さてと、師範代さんや、次の十人を出してくれぬかのぉ~」 「お・の・れ~皆で掛かれ~」 「お~お~、皆、手を出すで無いぞ~、儂の獲物じゃ~」 一斉に刀を抜いて掛かって来た者たちを慈恩は木刀で丹念に右腕上腕の骨を砕いて行った。 慈恩が気付くと回りの相手たちが次々に倒されていた、双角、双子の姉妹、雪が参戦していたのである。 回りの見物人が歓声を上げた途端に乱戦は終わっていた。 元の位置に戻った慈恩、双角、葉月、弥生、雪は師範代を見詰めていた。<つづく>
2025.04.18
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