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平清盛 完全版 第壱集 [ 松山ケンイチ ] 価格:36,502円(税込、送料込) やっと見終わりました。 放送当時は低視聴率で騒がれたドラマでしたが、 (私もちらっとみて観るのをやめてしまいましたが) 続けて観たら面白かったです。 いろいろと目立つ欠点はあるものの、 野心的で、今まで『平家物語』の印象に引きずられがちだった 平清盛、信西の悪いイメージを 最新の研究成果で裏付けられた 実像に近づけた画期的な作品だと思います。 私は好きですね。 主演の松山ケンイチもいい俳優ですし、 なんといっても、このDVDの表紙になっている写真が好き。 躍動感と郷愁、優しさが感じられます。 まあ、前にも書きましたが、 低視聴率にはそれなりの理由があると思います。 まず、先に書いてしまいますね。 1,松山ケンイチは、習慣として大河ドラマを観る世代には人気がいまいち 「カメレオン俳優」の異名を取る松山ケンイチですが、 彼の名前をメジャーにした作品は 漫画が原作のものが多いんですよね。 年配の人には????だったのでは? 少なくとも私の実家周辺ではそうでした。 2.人気俳優を多く起用しているけれど大河ドラマ初出演が多い これも若い世代にはアピール出来ても、本来のお客様である世代には受けません。 観ていて、画面に「安心感」がないです。 特に重要な役柄に歌手や若手タレントがキャスティングされていて 演技が出来ていないのは残念、という ところが多々ありました。 3.演出過剰でしつこい 私はオープニングも好きですが、 あまりにも「遊びをせんとや生まれけむ」が繰り返されてしつこい。 最後には聴きたくなくなりました。 特に松田翔太が歌う「今様」はお腹いっぱい。 同様に双六やサイコロ、『源氏物語』の一節も 同じところばかり繰り返すので飽きますし、 バカのひとつ覚えみたいで深みにかけました。 ほどほどなら、いい題材だと思うのですが。 4.設定・展開に無理が多い 松田翔太が演じる後白河院。 ドラマではエキセントリックながら頭のいい、 権謀術数に長けた人物に描かれていますが、 史実はちょっと違います。 よってドラマで、正確な史実のナレーションの後、 話が始まるとちぐはぐな印象を受けます。 本当は失策なのに 無理矢理 清盛が「私は院の掌の上で踊らされていたのだ」とか つぶやくと、 おいおい、違うだろ!!と突っ込みたくなりますね。 5,登場人物の性格がいきなり変わる 特に璋子ですね。 檀れいが演じた鳥羽院の正室。 白河院とも関係があったといわれる 歴史上、悪名高い人物です。 このドラマでの璋子、最初はとても吹っ切れたキャラクターで 出てくる度に破天荒な言動で笑わせてもらったのですが、 後半、普通の人になってしまって残念。 後の西行が、彼女の首を絞める展開も 意味不明でした。 6.男色が描かれた これ、この時代にはよくあることですが、 拒絶反応が強かったようですね。 でも、藤原頼長に限定してあったので実際よりはマイルドなのですが。 実際は白河院、後白河院など多くの人がそういった関係で 側近を選んでいたそうです。 7.時は平安時代なのに時々西洋のモチーフや観念が出てくる まず、アーサー王伝説か! と突っ込みを入れたくなるシーンがありましたし、 信光がボコボコにされる場面ではゴーギャンの作品タイトルが 出てきたし、時代がごちゃごちゃに思える演出でした。 せっかく、綿密な時代考証、研究成果を 導入したドラマだけに残念でなりません。 しかも、そのゴーギャンの言葉ですが、 あの名作『あしたのジョー』アニメ版でも使われた言葉。 頭の中が一度にゴーギャン→ジョー に飛んでしまい、大変なことに。 それから、大河ドラマ好きな世代(60代から上)は 平清盛というと『新・平家物語』を観ていますからね-。 稀代の天才俳優 仲代達矢が主演。 成田三樹夫、緒形拳、中村玉緒、新玉三千代、若尾文子が 出演した超豪華大河ドラマ。 これと比べると、いくらCGを駆使しても画面が貧弱に見えます。 若手は老けメイクをしても、実際に年齢を重ねた俳優の味は 出せません。 さて、ここまでは「欠点」について書きましたが、 後は良かった点、好きな点です。 とにかく、最近の素晴らしい研究でわかった「平清盛」の 人物像がとても魅力的。 それを(まあまあ)忠実にドラマで再現しているので とてもいいキャラクターに仕上がっていました。 白河院のご落胤という数奇な出生、 武士としての才覚、優れた経済感覚、先見の明、 「平家は一蓮托生」に見る家長としての統率力、 人間的なあたたかさ。 ただ、ドラマに描かれたよりずっと冷静で落ち着いた人だったようですが。 タイトルは平清盛ですが、 平忠盛、源氏側、天皇家についても描かれていて 群像劇としての側面も持っています。 単純な「善悪二元」になっていないところも○。 悪名高い人物(藤原頼長、平時忠、平宗盛)も 長所がしっかりと描かれていて人間的な深みがありました。 ストーリーの関係上、 藤原信頼、成親は相変わらず、でしたが。 私は平清盛を父親に持ち、 苦悩する重盛が好きでした。 演じた窪田正孝がすごく上手かったです。 大河ドラマ初出演とは思えない存在感。 殿下乗合事件の黒幕は 史実では重盛なのですが、ドラマでは旧来通り 清盛になっていました。 多分、清盛と重盛の違いを明確にするために 敢えてそうしたのだと思いますが、 あの回は素晴らしかったです。 前半を 清盛と源義朝のライバル関係、 後半を 清盛と後白河院とのパワーゲーム、 という縦糸が通してあり、 それにいろいろなエピソードが入ってくるという 構成です。 前述したとおり、 後白河院は実際よりも「強く」描かれています。 これは多分、制作者側が『少年ジャンプ』的な発想で ライバルを強くすることで挑戦者を強く見せる 事にこだわった結果ではないかと疑っています。 ところで、松田翔太は 大河ドラマでよく重要な役を演じます。 だいたい、頭脳明晰な役が多いのですが、 これが合っているのかは疑問。 『ライアーゲーム』のような こざかしい役ならOKなんですが。 小悪党にしか見えない。。。 父親が名優ですし、 お兄さんの松田龍平は 出てきたときには大根だったのに めきめきと上達し、 さすが血は争えないと思わせた方。 松田翔太も上手くなる途中なんでしょうね。 最後に、 このドラマのラスト、 やっぱり『あしたのジョー』最終回を思わせる 主要登場人物 全員集合!!があって 泣けました。 夏目房之介さんのコメント (『BS マンガ夜話』) 「最終回に全員出てきたら泣くんだよ」を思い出しました。
2015.12.31
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平清盛と後白河院価格:1,728円(税込、送料別) これ、めちゃくちゃ面白かったです!『平清盛と後白河院』。NHK大河ドラマを観てつまらないと思った人も、面白いと思った人もそもそも、観ていなかった人も、面白いと思いますね。 平清盛の躍進は後白河院の引き立てがあったからで、彼なしの平家はあり得ませんでした。忠盛・清盛の才能と精力を持ってすれば出世はしたでしょうが、あれほど早く、あれほど上に、はなかったかもしれません。それがなぜ、晩年は争うことになってしまったのか? とても複雑で、人間関係、婚姻関係が入り乱れているにもかかわらず、非常に簡潔、丁寧に説明されていて、納得。考証も素晴らしく、最新の研究成果も分かり、とても読み甲斐がありました。京都大学の教員が書いたものってどうしてこんなに面白いんでしょうね??以前紹介した『乱視読者』シリーズの若島正先生然り。さすがは研究で成果を出している大学だけのことはあります。知的好奇心と行動力、資料を集める集中力とセンス、頭が下がります。 これを読んで、ああ、『平家物語』やNHK大河ドラマの功罪は大きいんだろうな、と思いました。藤原信頼、藤原成親、今回の大河でも無能で嫌味な貴族、といった描かれ方でしたものね。物語をわかりやすくするために「軍事貴族」については触れられず、もっぱら武士が貴族・天皇家に対抗してのし上がってゆくという方向性でしたし。 この二人が、実際には割と優秀で、武家に近い地位にあったことなど、とても勉強になりました。信頼と清盛が婚姻関係で結ばれていた、という事実も大河ドラマではスルーされていましたし。この時代、身分の高い人たちの殆どが政略結婚なので、親戚関係が蜘蛛の巣状態。これをわかりやすく読み解くだけでも大変な作業だと思いました。 ラスト、すごく面白かったのが壇ノ浦の合戦後、清盛の娘 徳子 (建礼門院)を後白河院が訪ねたというエピソード。 どうやら、後白河院は昔いわれていたように無常観から会いにいったのではなく、邪な野心を抱いていたらしい、ことが最新の研究でわかったそうです。どんな資料が出てきたんだろう??? それはともかく、後白河院は平清盛や重盛など平家一門の男性には厳しく当たり、勝負に勝ったことがあったけれど女性にはいつも負けていたというところに笑いました。 神器と安徳天皇を抱いて海に身を投げた時子、その娘で後白河院をはねつけた徳子、時子の妹で徳子の叔母に当たる滋子は後白河院の寵愛を一身に集めていた女性。一度も勝てていません。
2015.12.27
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スキン・コレクター [ ジェフリー・ディーヴァー ]価格:2,538円(税込、送料込) この10年ほど、年末のミステリーベスト10 常連のジェフリー・ディーヴァー。彼の新作『スキンコレクター』読了しました。いやー、毎回、安定して面白いです!私はいつも、この人の本はシリーズの前作を読んでいなくても楽しめるだろうなと思うのですが、今回は『ボーンコレクター』、『ウォッチメイカー』を読んでいる方が楽しめます。年末、この本を読む予定の方は未読でしたら読んだ方がいいですし、既読でしたら思い出した方がいいです。まあ、忘れていても充分に面白いですが。シリーズも長くなると、登場人物たちに愛着が湧き、ああ、トムがまたもやライムの世話を焼いているのね、と、ほほえましく思ったりパムがこんなに大きくなって、と、時の流れを感じたり、ご近所さんのような感想を持ってしまいます。そういう部分も楽しいですね。起こる事件は猟奇的でも、主人公たちを巡る人間関係が安定しているのは読んでいて気持ちのいいものです。今回もどんでん返しや意外な展開の連続で手に汗握ります。徹夜はしませんでしたが、続きが気になって家事の合間を縫って読んでいました。こんなに「意外な展開」を考えるのは疲れるだろうな、と余計な心配をしてしまいますね。 それにしてもこのクオリティーで安定供給ってすごいなあ。。。
2015.12.25
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経営者・平清盛の失敗 [ 山田真哉 ]価格:1,404円(税込、送料込) ここ数ヶ月、NHKの大河ドラマ『平清盛』を観ています。これ、低視聴率といわれていましたが、歴史好きの女性には大変、人気があったそうです。私が好きな漫画家の今市子さんも絶賛していて興味を持ち、友人たちにも訊いたところいたって好評。そんなものなんですよね。まあ、低視聴率だった理由も分析していましたが。それはまた、最後まで見終わってから書きますが、平清盛、調べると凄く面白いですね。 私は戦記物が苦手で、大岡昇平の『野火』ですら30才を過ぎてから読んだくらいです。『千一夜物語』岩波版、全巻持っていたのに戦記物の部分はスルーしました。そうです、小学校から高校にかけても『平家物語』は必要な部分以外は勉強しませんでした。序文と那須与一が的を射る部分だけ暗唱できる程度です。勿論、『源平盛衰記』には手を触れたこともありません。で、今、とても後悔しています。平家の隆盛、転落、、こんなに面白いのなら読んでおけば良かった!!!と言うわけで図書館から借りました。まだ読んでいませんが。で、関連図書が沢山出てきたのですが、その中で気になったのがこちら。『経営者 平清盛の失敗』。めちゃくちゃおもしろそう!!!経済学の立場で、平家滅亡の謎を解く、らしいです。平家が日宋貿易で富を築いたというのは本当なのか?本当に貿易はもうかったのか?あれだけの地位と財があり、後継者もいたのにどうして滅びたのか?貴族化したから、という説は正しいのか?この謎に挑むということ。早く読みたいなあ。今、手配中なので読んだらまた、感想を書きます。
2015.12.23
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】レッドベルベット・カップケーキが怯えている [ ジョアン...価格:950円(税込、送料込) 読み終わりました。ジョアン・フルークの最新作『レッドベルベッド・カップケーキが怯えている』。毎年、10月末から年末にかけて一作ずつ紹介されています。私にとってはクリスマス前のお楽しみです。 所謂、コージーミステリーのひとつですね。ジル・チャーチルの主婦探偵シリーズ『ゴミと罰』などに比べるとミステリー色はかなり薄いです。どちらかというとミネソタの架空のレイク・エデンを舞台に繰り広げられるクッキー&ベーカリーオーナーの日常と町の人々のドタバタやお菓子、軽食のレシピ、主人公ハンナと2人のボーイフレンドを巡るラブコメディーといった要因の方が強いです。 松本清張やトマス・H・クックを愛読する人間がなぜそんなものを読んでいるかというと時には甘い気分の現実逃避も必要!!ということで。 このシリーズ、バランス感覚が優れていて楽しめます。それは登場人物の設定によく表れています。主人公の母親や妹たち、仕事のパートナーやボーイフレンドたちが絶妙なバランスで作り込まれています。また、 架空の町とはいえ、アメリカの食文化や年中行事を知る楽しみもありますし、異国情緒が楽しめます。主人公ハンナがもともと文学部で研究者を目指していた女性という設定なのでときどき語学・文学ネタも出てきます。今時のスラングを多用しない、上品さがあります。 また、ハンナは大の猫好き。愛猫モシェの個性も光っていて好きです。 私のお気に入りはハンナの共同経営者 リサと末の妹ミシェル。二人とも美人で性格も良くて働き者で、ややもすると「あり得ない」キャラクターなのですが、説得力を持って描かれています。リサ、かわいくて働き者で機転が利いて情に厚いのですが、結構、毒舌。ミシェル、ハンナ姉妹の中でもっとも多才で如才ないのに、時々ぶっ飛んだことをします。 登場人物の殆どがいい人。そうでない人は殺人事件の被害者になるか、加害者になるか、町から出て行くかというユートピア。皆さんも、辛いときには是非、どうぞ。 私は卵・乳製品のアレルギーがあるので無理ですが、小説に出てくるレシピを試すのもまた一興だと思います。バターを使用していて、マーガリンやショートニングを使っていないところ、著者の真面目な人柄が伝わってくるようで気に入っています。今回は、小さな謎でいろいろと楽しませてもらいました。人の名前を思い出すときの連想法、どこの国でもするのですね。以下、ちょっとだけネタバレ*******************************事件の犯人は大抵、シリーズ初登場の人物なので敢えて触れません。シリーズを読んでいるファンなら目星は付きます。事件の真相もありがち。ただ、今回は小さなミステリーが工夫を凝らして配置されていて楽しめます。ファンが気になるのはどちらかというと登場人物たちの動向でしょう。さて、今回もハンナ・ノーマン・マイクの三角関係に進展はありません。妹たち、姪っ子たちは相変わらず元気です。今回、ハンナの母が最後の最後で再婚を発表しますが、どうなることやら。。。。相手は深みがあって良いキャラクターのなのでリサの父親同様、頻繁に出てきて欲しいですね。 このシリーズが第一作がテレビドラマ化されたそうですが、日本では観られるのでしょうか???検索して画像を観ましたが、 ヒロインは私が思っていたよりつり目で勝ち気そうでした。赤毛でもないですし、ぽっちゃりもしていないような。。。。
2015.12.19
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】見知らぬ者の墓 [ マ-ガレット・ミラ- ]価格:842円(税込、送料込) 今日明日、夫がいないので終日本を読んでいます。小さな幸せ。 まあ、読んでいる物はしあわせとはほど遠いのですが。 年末のミステリーベスト10発表、今回は海外物は殆ど目を通していました。文春ミステリーベスト10のことですが。まあ、話題になった本は入っていると言うことですかね。 さて、最近、また出版されてきたマーガレット・ミラー。はまっています。というのも、およそ20年前、私が病気で寝たきり状態の時、マーガレット・ミラー他、あの時代の作家の翻訳ラッシュがありました。で、当時は独身でお金にちょっとだけ余裕があったので買いあさっていましたね。何せ、病気で図書館には借りられないから、家族に頼んで買って来てもらっていました。これを結婚する際、BOOKOFFに二束三文で売ってしまったのは今でも悔やまれます。 さて、今回読み返したのは『見知らぬ者の墓』。マーガレット・ミラーに良作は多いですが、冒頭の謎に惹き付けられたのはこれが一番でしょう。 人妻、デイジーがある日、夢を見ました。散歩をしていてあるお墓を見つけます。そこには何と自分の名前が彫ってあったのです!そして没年は4年前のある日。たかが夢、だけれど何か、胸に引っかかるものがあります。割り切れないデイジーは父親(母親とは離婚しています)の保釈に手を貸してくれた探偵を雇い、調査を始めます。 それが、思いもかけない方向へ行くとも知らずに、、、、、。 今回、読み返してちょっと疲れたのは事件の規模の割には、長いこと。あの時代のものは、大抵、冗長。よく言えば鷹揚ですね。編集者も読者ものんびりしていたのでしょう。事件とは無関係に見える人間関係にかなりのページが割かれてあり、やきもきしました。気が立っていますね、現代人。以下、ちょっとだけネタバレを含みます。ご注意下さい。 *******************さすがマーガレット・ミラー。家族の持つ独特の雰囲気や力関係、弱い人間を書かせるととても上手い!!です。説得力がありすぎて、辛くなります。そこそこ幸福だけれど満たされない人妻デイジー、その過干渉な母親アダ、保護者然とした夫ジム、アルコール中毒気味で、口は達者だけれど、けんかっ早くて生活能力のない父親スタン、孤児で少々肩に力が入っている探偵ピニャータ。 この作品は、人種差別や心の闇を鋭く深く描いてあり、読後、とても重く哀しい気分にさせられます。時代は流れましたがいまだ、これが過去のものとは言えないということを考えさせられますね。俳優たちの個々の演技は素晴らしいのに、偏見と誤謬に充ち満ちていた映画『バベル』を思い出しました。人種差別も民族に対する先入観もなくなるものではない、と痛感しましたね。あそこに描かれていたメキシコ及びメキシコ人がこの作品の根底にあるものと大差ないことに薄ら寒い思いがします。アメリカ、何十年経っても変わっていないんだな、と。日本も同じかもしれませんが、たとえば、森村誠一の『人間の証明』。あれは舞台を現代に移したら成立するでしょうか?考えてしまいますね。 少々、冗漫の嫌いはありますが、『見知らぬ者の墓』はマーガレット・ミラーが得意の人物描写を駆使し、有機的なトリックを仕掛けた傑作です。 ラストの一行で全てが収束されます。追記;この本が人種差別を扱って入るからといって作者を差別主義者と断じる感想文がネットにあって辟易。このお話のラスト、差別を乗り越えるところで終わるんですけど??? たしかにミラーはこのような差別的な意識があった時代の人。ですが、差別と区別は違いますし実際にその時代、その国に生まれ育ち暮らしていないと分からない点が多いです。簡単に他国の事を断定するのは控えたいもの。特に私達日本人は海外からいろいろ言われて嫌な思いをしているので同じ事は、、、、したくないですね。
2015.12.13
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シンプル・プラン / スコット・B.スミス、近藤純夫 / 扶桑社ミステリ−【中古】afb価格:150円(税込、送料別) 昨日、観た映画の原作本です。出版された1994年には割と話題になった本。地味な題材ながら、工夫が凝らしてあり、面白かったです。それが、今では楽天市場内では原作は中古のみ、原作を映像化したDVDは売り切れ状態。寂しいですね。時の流れは早いなあ。 佐藤正午の『身の上話』が評判になった際、「和製シンプルプラン」と引き合いに出されたこともあった作品です。 お話しはタイトル通り、至って単純。 雪深いアメリカのある州で、3人の男が墜落している飛行機を見つけます。その中には440万ドルの大金が入ったバッグがありました。操縦していた男は死亡。このことは誰も知らない。きっと、麻薬に絡んだ裏のお金に違いない。3人の男は、暫く様子を見て、飛行機墜落とお金の件が表沙汰にならなければ山分けしよう、そして町を出ようと計画します。はい、ねこばばです。とても簡単な話、と3人は思っていました。3人が沈黙を守っていれば、、、。 これ、誰もが一度は考えるのでは無いでしょうか?もし、宝くじが当たったら、、、もし、竹藪に大金が捨ててあって自分が見つけたら、、、警察に届けて一割もらってもいいけれど黙ってさえいれば、全部自分のものに出来るかも。そして自分なら上手くやれるかも。こういうことを想像するとき、人は結構、ポジティブ。自分を信用しています。 でも、そうは行かないんですね。『シンプルプラン』の主人公ハンクは妻に話してしまいますし、あとの二人、兄のジェイコブは独身の失業者(ややアルコール中毒気味)兄の友人ルーは同じく失業中の妻帯者(かなりアルコール中毒の暴れ者)。映画を観ていると隣で夫が「こんな二人と秘密を共有するってホラーだなあ」とつぶやいていました。監督は、あのサム・ライミ。そのつもりで作っていると思います。ルーとジェイコブの言動の危うさ、ハンクの疑心暗鬼と暴走、こざかしい計画で3人の調和を乱すハンクの妻サラの冷徹。全てが極寒の山地とともに人をぞっとさせます。 大金が人を変えてしまう様が如実に描かれた作品。これはある意味、ホラーです。
2015.12.11
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ゆがんだ光輪価格:1,296円(税込、送料別) 寒くなりました。新潟市の図書館から借りている本も底をつき、借りたいものは予約が多くて借りられない状態です。 そんなわけで、手持ちの本を読み返しています。最近の本は食指が動かないので、引っ越しの際、実家から持ってきた古い本を読んでいます。ほこりっぽいので透明のゴミ袋をかけて読んでいますが、それでも眼がかゆくなる状態の悪さ。困ったものです。 マーガレット・ミラーの『これより先怪物領域』クリスチアナ・ブランドの『ゆがんだ光輪』P・D ジェイムズの『汚れた血』は我ながらよく売らずに持ってきたなあと思っています。 古いミステリーはテンポがゆっくりしていて現代物を読み飽きたときにはいいですね。 特に『ゆがんだ光輪』は殺人事件や大きな窃盗事件も起きないユーモア(ブラックユーモアも)あふれる作品。 この方、短編集でもキリスト教を揶揄するものを書いていますが、やはりイギリスは、宗教の事情でこんなことも可能なんでしょうね。 若いときにはのけぞるほど驚きましたが。。。はるばる来たなあ。
2015.12.07
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