全468件 (468件中 51-100件目)
「時ひらく」辻村深月伊坂幸太郎阿川佐和子恩田陸柚月麻子東野圭吾 すごい!この顔ぶれ。「オール讀物」に2023年と2024年に掲載された短編とのこと。“2024年2月6日『時ひらく』 (文春文庫)発売。創業350年の老舗デパート「三越」を舞台にした6人の作家によるアンソロジー。“と『時ひらく』 (文春文庫)発売! | News | 伊坂幸太郎 Kotaro Isaka (ctbctb.com) にある。 表紙が三越オリジナル包装紙「華ひらく」とおなじ模様であることに気づかず、書籍名『時ひらく』が包装紙名にかけてあるということに今、気づく。実力派の皆様なのだけれど、幻想的内容に抵抗を感じ、ささっと読み始めた。「思い出エレベーター」辻村深月「Have a nice day!」伊坂幸太郎「雨あがりに」阿川佐和子「アニバーサリー」恩田陸「七階から愛をこめて」柚木麻子「重命(かさな)る」東野圭吾 伊坂幸太郎のみ仙台の三越であり、他の人は日本橋三越本店を取り上げている。日本橋三越本店でのあれこれを時空を越えて書いているのだけれど、一人、東野圭吾だけは違った。三越が出てこないのである。しかも、“ガリレオ”こと湯川教授が出てくるのである。湯川教授と草彅刑事と事件。それだけなので、思わず三越縛りはどうなった!?と思わずにはいられなかった。そのように感じた頃、ようやく土産物として三越が出てくる。それだけか、と思ったら、やはり、土産物として三越が出てくる。たいそうな品物、ありがたい土産物、三越が貴重なものという印象を残す。お題に対してのアプローチの違い、シリーズの登場人物を使うという手駒で秀逸な短編を書き上げる手練れさ。著名作家のアンソロジーにおいて、頭抜けた作品であった。時ひらく (文春文庫) [ 辻村 深月 ]
2024.05.08
コメント(0)
読み終えて、さすがの東野圭吾と思えた。秀逸な作品である。凶悪な犯人がいると思える設定、そして三度、犯行現場となるであろう”ホテル・コルテシア東京”。そこに潜入捜査が三度となる新田警部。歳月が経っているので、ホテルの様相もかわり、コンシュエルジュ・デスクはもうない。コンシエルジュを務めていた山岸尚美も渡米して現地のホテル勤務であろう。かわって(?)登場なのが、合同捜査をすることになる梓真尋という女性警部。新田警部が木村拓哉、山岸尚美が長澤まさみという映画キャストの顔として浮かび、新しく登場した梓真尋は誰が演じるのだろう、適役が誰なのか気になる。広瀬アリスが浮かんだが、もう少し背丈があってアラフォーくらいのほうが良いのだろうか。次に米倉涼子が浮かんだが、彼女はアラフィフだなぁ。タッパで考えたら、菜々緒が浮かび、演技巧者で安藤サクラが浮かんだ。東野圭吾繋がりで”ガリレオ”の柴咲コウというのもアリ?新田警部と梓警部の主軸二人と思ったら急遽、呼び出されて山岸尚美が登場。ホテルで万全な警備体制の中で、犯人探し。関係者と思われる人が続々と宿泊していく中、予想もできない展開となっていく。驚きのクライマックスに結末。本書は書き下ろしとなっているが、書下ろしでないとこれほど精巧で緻密で奇想天外な展開を持つ作品にならなかっただろうなと思えた。楽しめた。マスカレード・ゲーム [ 東野 圭吾 ]
2024.05.06
コメント(0)
何で見かけたのか。「エバーグリーン」を推奨しているのをネットで見て、読んで見た。読み始め、なぜか高校生と勘違いし、中学生の話だと認識を新たにしながら読み進めた。中学最後の文化祭、音楽をやりたかったシンはバンドを組むがイケメンボーカルに脱退されて空中分解。文化祭のステージに立つ夢かなわず、と思ったところでシンに大注目の漫画オタクの小柄な女子アヤコの震源により、アコギでひとり弾き語りでステージに立つ。それから特に仲良くなった話でもないけれど、いよいよ卒業というときに10年後の3月14日午前10時にここ、田んぼの中のあぜ道での再会を約束する。シンはミュージシャンとしてアヤコは漫画家として夢を実現していることを誓って……。その10年後、約束の待ち合わせに行くまでの数カ月を綴った物語。思春期、青春。いろいろな思いがないまぜになった、まだ何も体験していなかった14歳。経験をしてしまった24歳。この淡い片想いの物語はティーンエイジャーの、ひいては若者の感情をつらつらと描き出す。読者がうなづきながら、どこか心に少しの痛みを感じながら読む物語。作者、豊島ミホは小説を断筆し、その後漫画となり、今は専業主婦らしい。ブログなど綴っているようで、いつかまた小説に戻ってくるのだろうか。エバーグリーン【電子書籍】[ 豊島ミホ ]
2024.05.04
コメント(0)
「月まで三キロ」人生、ここまで歩んできて手もとに何もなくなって……死。負の感じがどうにも嫌で、嫌で、投げ出したくなる小説。それでも読み進めて“月まで三キロ”の意味が分かった時、なるほどと。「星六花」雪の結晶。六花。雪の結晶にもいろいろとある(らしい)。融けてゆく雪のように淡い想い。「アンモナイトの探し方」地層。アンモナイトがいる石。ダムに沈んだ村。ダムに沈んだアンモナイト地層。やるせない思い。「天王寺ハイエイタス」伝説のギタリスト。へんてこな長男、堅実な次男。普通とは違う、生き方。「エイリアンの食堂」研究者の夢。やりたいことをやるために、他のものを捨てる。いろんなものを手にすることはできない。研究者の生き方もありかな。「山を刻む」この作品が一番。素敵でいいと思う。予想外の展開、結末に安堵と笑みがこぼれる気がした。“月まで三キロ”を読んだときにこの作家の作品を読み続けるのはどうかという思いがよぎったが、その負のオーラはこの作品だけであとの作品にはない。とはいえ前向きな成功物語ではなく、いずれもうらぶれた、あるいは落ちぶれた中年男女が登場する。中には小学生が主人公のこともあるが(アンモナイトの探し方)、早期リタイアとなった老人が登場する。長い人生のひとときを切り取った短編の数々。大きな事件が起こらない分、ふつうな感じがなんかいい。「特別掌編 新参者の富士」富士山に登れない虚弱な地元民と東京人、そして、火山研究者のドローンとな。「<対談 逢坂剛・伊与原新>馬力がある小説」この対談を読んで、馬力のある小説=逢坂剛の小説 を読んで見たくなった。月まで三キロ (新潮文庫) [ 伊与原 新 ]
2024.05.02
コメント(0)
これはミステリー作品の始まり…パクリか?と思ったところで現実世界に移り変わる。ちょっと違法な(?)始まりである。映画鑑賞同様、事前情報なしで読み始めたので、事件が起こり、加賀恭一郎登場となって加賀恭一郎シリーズの新作だと知った。加賀恭一郎には阿部寛が想起された。冒頭除き、犯人は登場せず、共犯者がいるのではないかという疑惑から、共犯者探しの「検証会」が行われる。そこに同席する加賀恭一郎。従来の捜査をするという手法とは違ったように思える。読ませる、読みやすい、さすがの東野圭吾である。クライマックスから二転三転の結末。恐れ入る展開である。ただ、多少外連味が過ぎたか。納得したり、感嘆したりするというよりは”どうなの?”という印象ももった。東野圭吾であればやはり傑作と思えるものを読みたい。あなたが誰かを殺した [ 東野 圭吾 ]
2024.04.27
コメント(0)
「”アート”に生きる」私だったら、この題名にする。ラヴ・ストーリー好きなので「カンヴァスの恋人たち」という表題であれば、絵筆、すなわち画家たちの恋の物語であると予測してしまった。甘く切ない恋物語を。そうでなくてもビター・スウィートな恋かもしれないと思いつつ手に取った。しかるに、恋物語はサイドストリーと思え、それよりも女性の生き方、生き様、画家として生きる、学芸員として仕事をするという、女性が社会の一員として生きるための日々の暮らし。主人公である学芸員の将来に対する悩み、葛藤、慟哭を綴っているように思えた。それゆえ、”カンヴァスの恋人たち”とは思えず、生きる、生活することに重点が置かれていると感じた。そして、内容は正よりも負を感じた。孤高というか孤独というか、ひとり山奥に暮らす老画家ヨシダカヲルは負のオーラをまとっている。進むにつて彼女のこれまでの人生を知るにつれ、なかなかの業の深さと孤独を知る。翻って、主人公の美術館に勤める学芸員の貴山史絵は、遠距離恋愛に悩み、転職活動に彷徨う。内容は深く濃く、読むべくところは多く、感じるところも多いけれど、負のパワーに侵される気分になった。カンヴァスの恋人たち [ 一色 さゆり ]
2024.04.24
コメント(0)
不思議な小説だ。芥川賞受賞作。作家・今村恵子を私は知らない。しかし、彼女が原作者である「星の子」は見た。映画「星の子」(ブログ)なので、ああいった世界観を描く作家なのかな、なんて思って読み始めた。読み進めても不思議だ。一風変わったミステリーでもある。むらさきのスカートの女 と 黄色いカーディガンの女二人は交錯しても交わらない、と思える。展開は読めないし、結末も不穏だ。評するに何とも言えない作品と言える。このようなものを書く人はなかなかいないのではないだろうか。そこはかとなく負のオーラを感じる……。むらさきのスカートの女 (朝日文庫) [ 今村夏子 ]
2024.04.21
コメント(0)
江國香織さんの本は一冊も読んだことがなく、恋愛小説を探していたらランキングに登場していたので、読んでみるかと手に取った。短編集である。その短編が短い、あまりに短い。昨今の短編の半分以下の長さなのではないだろうか。読んでみて内容はわかるのだが、ほとんど響きがない。江國香織は私には合わないのか?と思った。読み進めるうちに、小説は散文であるが、彼女の作品は韻文なのではなかろうか。詩や短歌のようなもので省略された物事を読み取れないとまったくわからないのではないかい、と思えた。短編をずんずん、ずんずんと次々に読んでいく。ピンとくるものはない。表題作「号泣する準備はできていた」はその題名通り、号泣するものだと思い、自宅で号泣しても大丈夫な状況で読んだ。読んだ……。……。号泣……することはなく、涙ひとつでない。なんなのだろう、この寂莫感。江國香織は私には合わない。それを実感した読書であった。号泣する準備はできていた (新潮文庫) [ 江國香織 ]
2024.04.20
コメント(0)
Amazon.co.jp: 流星さがし (光文社文庫 し 28-15) : 柴田よしき: 本より”京都の人権派弁護士事務所から東京の大手法律事務所に移籍してきた新米弁護士・成瀬歌義。武者修行と意気込んでいたが、勝手の違うことばかりで、熱意は空回り。依頼人には嫌われ、挙げ句の果てに先輩弁護士からは関西弁がよくない、とまで言われてしまう。持ち込まれる案件も一風変わったものばかりで、四苦八苦する歌義だったが……。青年弁護士の奮闘と葛藤、そして成長を描く爽やか青春ミステリー。”とあるが、短編連作集である。文字にされた関西弁。東京へのやっかみ。うなづける事柄ながらも、”関西の方がええねんで”という変なプライドが感じられて嫌だ。かくいう私も上京するまで、字面が標準語ならば標準語だと思い違いをしていて、アクセントやイントネーション、大方に関して、同じ字ずらでも東西では真逆の言い方に気づいていなかった。話法のレッスンで直され、半年くらいしてようやく違いがわかり、標準語を話せるようになると、関西弁がおかしくなった。地元に帰ってしゃべってもエセ関西弁となり、中途半端な標準語とエセ関西弁でどこの言葉をしゃべっているのか能が混乱し訳が分からなくなった。それから標準語に慣れて、何とか標準語に染まっってくるとエセ関西弁も関西弁らしくなり、うまく脳で切り替えられるようになった。さてこの短編小説。なかなか読みどころがあっていい。しかし、なんか中途半端。短編の結末。収束の仕方がすっきりしない。まるっきり解決しないまま終わり、次の案件(短編)へとつながっているように思える。表題にもなっている「流星さがし」という冒頭の短編からして、流星をさがすのだけれど、その結果、子供の証言の正誤性、親権争いの結果について言及していない。ゆえに、わだかまりではないが、結果どうなの?という疑問が残る。これに続く短編も同様であり、それぞれ解決しているようであるが判然としない感じがした。おもしろく読んだけれど痛快とまではいかない要因がこのあたりにあるのかも。流星さがし (光文社文庫) [ 柴田よしき ]
2024.04.20
コメント(0)
普段読まないたぐいの小説である。この本を読んで、現代では日本でスリはいないのか(少ない)と思った。この作品にも登場するが万引きは多い(と思える)。映画「空白」も万引きに起因する物語だった。「万引き家族」という映画もあったなぁ。けれど、これはスリである。ただのスリではない。天才スリ師。この彼に最悪な最強な悪(ワル)が取りつく。悪(ワル)は主人公であるスリの男の生殺与奪(せいさつよだつ)の権限を示した。頼まれたスリの仕事を断れない、抗えない状況に追い込まれた主人公はどうするのか。スリルというか怖さを感じる作品である。掏摸(スリ) (河出文庫) [ 中村 文則 ]
2024.04.14
コメント(0)
職場環境に疲れ果て退職した彼女は、親戚で、はとこの男性が倒れた父に代わって社長を務める小さな製菓会社に就職する。他人に対する優しさはあれど頼りない社長、いわくありげなパート事務おばさん。声も態度も大きい営業マン、その部下でいつも怒られてばかりの若者、そして店舗の人々と家族。彼女を取り巻く悲喜こもごもが1年を通じて移り変わっていく物語。いろいろある気持ちを面と向かってではなくそこはかとなく、しかし着実に表出するように描かれている胸にせまる日常であった。こまどりたちが歌うなら [ 寺地 はるな ]
2024.04.13
コメント(0)
Amazon.co.jp: 東大に名探偵はいない : 市川 憂人, 伊与原 新, 新川 帆立, 辻堂 ゆめ, 結城 真一郎, 浅野 皓生: 本 KADOKAWAが仕組んだ東大生によるアンソロジー。市川憂人、伊予原新、新川帆立、辻堂ゆめ、結城真一郎の東大卒作家に加え、今回のコンテストによってえらばれた現役東大生の浅野皓生の6人。「東大に名探偵はいない」市川憂人 [文芸書] - KADOKAWAこれまで、伊予原新、新川帆立、辻堂ゆめの3人しか読んだことがなく、読後、振り返ってみると一本目の「泣きたくなるほどみじめな推理」の内容が思い出せない、どんな話だったのか……。「アスアサ五ジ ジシンアル」(伊予原新)は地震予知に虹と東大の研究者の歴史を絡ませ、執念深い話を面白く読んだ。「東大生のウンコを見たいか?」(新川帆立)は贔屓の新川帆立なので期待しはしたが、ウンコの話はやめてほしかったので敬遠気味に読んで……でも面白かった。ストーカーは嫌だねぇ。「片面の恋」(辻堂ゆめ)料理得意の男の恋する話である。片面ときいて突飛なネタと思った。そんな、というかそこまでのお嬢がいるのか?不思議に思いながらも5月祭のにぎやかさに、その渦中にいたいなつかしさにとらわれ面白かった。「いちおう東大です」(結城真一郎)はさもありなん、と思わせる高学歴、特に東大ネタである。正しく東大家系ではこのようなことが日常なのだと思っていて、シビアな世界が描かれていると思えた。「テミスの逡巡」(浅野皓生)これはもう「あっぱれ!」である。新人作家?(今作でデビュー)の作品としては東大卒の先の5作を凌駕している。今作に注ぎ込んだ熱情と集中と時間がこれほどの秀作を生んだような気がした。素晴らしい!自作を大いに期待する。 泣きたくなるほどみじめな推理 市川憂人アスアサ五ジ ジシンアル 伊予原新東大生のウンコを見たいか? 新川帆立片面の恋 辻堂ゆめいちおう東大です 結城真一郎テミスの逡巡 浅野皓生期待の現役東大生ミステリ作家・浅野皓生さんに迫る【デビュー作のモデルはUmeeT!?】 (todai-umeet.com)東大に名探偵はいない [ 市川 憂人 ]
2024.04.12
コメント(0)
分厚い本だなぁ。エンタテイメント推理小説のシリーズともなると手が込んでくるのか小ネタも多く、なかなかの分量である。読むのに少々時間を要したが、今作も楽しめた。犯罪の動機がややこしいのとホテルの年末イベント仮装大会、いやマスカレード・ナイトゆえ、なかなか真相にたどり着けず苦労した。犯人はあいつか、こいつか、そいつか、はたまた誰か?ラブ・アフェアーありの年末4日間における創作劇はすごかった。原作を十分楽しんだ後、映画化作品も堪能したい。マスカレード・ナイト (集英社文庫(日本)) [ 東野 圭吾 ]
2024.04.07
コメント(0)
衝撃的である。原田マハはなぜこのようなダメージのある作品を書いたのか。わからない、私にはわかりえない。ダメージ・ジーンズが流行っているように、不協和音が斬新な音楽として取り入れられたように、年月を経た原田マハは有名作家と言う名の下にエッジの利いた作品を出した。激辛料理なのか、まずい料理なのか、わからない。ただ、おいしくないと思える。ゆえに、原田マハの作品として認めたくない気がする。作家・原田マハ本人は一家言(いっかげん)あるようだが。<一家言=その人が持っている、大衆よりではない独特な意見>深海魚 Secret Sanctuary楽園の破片 A Piece of Paradise指 Touchキアーラ Chiaraオフィーリア Ophelia向日葵奇譚Strange Sunflower黒い絵 [ 原田 マハ ]
2024.04.04
コメント(0)
フランスで100万部「女の生き辛さ」わかる小説 『三つ編み』が描いた女性の葛藤と強さ | 読書 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)インドのカースト最下層の女性は夫と一人娘の三人家族。女性はその地域の人糞を回収する仕事をしている。素手で人糞を掬うのだ。イタリアのシチリア島に住む末娘は倒れた父に代わり、家業の鬘づくりを営む。イタリア人の髪から作り上げるのが習わし。カナダの敏腕女性弁護士は事務所の共同経営者にならんとするアラフォー女史。それぞれの生活がそれぞれの地域で少しづつ描かれる。インドで非条理な差別以上の差別を知った時、無理解な夫に愛想をつかし母は娘と出奔する。イタリアでは自転車操業の鬘工場が実は火の車であと一か月で閉鎖されるという。カナダでは女性弁護士にがん告知。手術の後、通院する姿を目撃され出世街道からはじき出される。この後のことは、本書を読んでほしい。三人三様の日々が描かれ、最後にそれぞれのつながりがわかる。世界はつながっている。それがわかる辛辣な内容の作品である。三つ編み [ レティシア・コロンバニ ]
2024.04.03
コメント(0)
映画を見ていると思い込んでいた。この本を読みながら、近年の物忘れの激しさから、映画を見たのに筋を忘れていると思い、楽しみながら本を読んだ。そして、読書感を書こうとしてチェックしてみると、映画を見た痕跡がない。“えっ!”、見ていないのか、というショック。記録にない。この後、映画を見ようと思う。映画の予告を見ただけで本編は見ていないのかもしれない……。 さて、この本を読みながら時系列ではシリーズ第2作の「マスカレード・イブ」の方が過去と言うことを知り、先に“イブ”を読んだ。十分に面白い作品だったが、小説という気がした。しかるにこの“ホテル”は小説でありながら、映像が浮かび上がり、とてもエンタテイメントであり、驚いた。すごい、さすがの東野圭吾である。 不可解で手掛かりのない数字だけの犯行声明。犯人はとても聡明で狡猾で捜査の手が及ばない。そんな中、新たな犯行現場となるホテルを捜査員潜入にてガードする。日夜、往来する宿泊客たちを観察し、多種多様なクレームにも対応する。クラークとして潜入した刑事と彼を補佐・監督・監視するホテルマン・クラークの関係の変遷も読んでいて面白く思えた。次へ次へと読み進めたくなる魅力ある小説である。やっぱり、さすがの東野圭吾である。マスカレード・ホテル (集英社文庫(日本)) [ 東野 圭吾 ]
2024.03.28
コメント(0)
2021年10月13日に亡くなった山本文緒さんの最後の著書と思っていたが、その後に「ばにらさま」とエッセイ「無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記」が出版されている。「恋愛中毒」を読んで過激な小説を書く人だと思えたが、マスコミ絡みの話はエンタテイメント性があり、楽しんで読んだ。直木賞を受賞した「プラナリア」は未読なので読んでみたい。彼女の死とともに注目していた「自転しながら公転する」をようやく読んだ。読み終えて、現代と未来の話であったが、三十代、仕事と婚活に揺れる独身女性の生きざま、行動を描いてとても刺激的であった。仕事と結婚、それはもう人生そのものである。大人になってしまった女性の逡巡、考えと行動、予期せぬ出来事に翻弄されるさまは痛々しくて生々しい。ベトナムが登場してくるあたり現代を切り取り、未来を先取りしているように思えた。先見性があるということなのだろう。昨年末、この「自転しながら公転する」がドラマ化された。見たくて録画していある。ようやく見ることが出来る。楽しみである。自転しながら公転する (新潮文庫) [ 山本 文緒 ]
2024.03.27
コメント(0)
「マスカレード」シリーズの第2弾。第1弾の「マスカレード・ホテル」の前日譚になるとのことだったので、まくはこちらから、と読んだ。面白い。よどみなく進展する物語に引きずられ、気が付けば終章の「マスカレード・イブ」を読んでいた。大学の研究室内で起こった教授殺人事件は近年、大学構内で教授を襲った実際の事件があっただけに興味を持って読むことが出来た。ホテルマンと刑事、そしてホテルの宿泊客。不倫を絡ませた事件は淫靡でありながらバラの香りというエッセンスでとても香り豊かで華やぎ、清楚な感じを抱かせる。スラスラと読めて謎解きも事件解決も腑に落ち、読書を楽しめる本であった。さあ、注目の「マスカレード・ホテル」読んで見ようか(笑)マスカレード・イブ 東野圭吾/著
2024.03.17
コメント(0)
「キノベス!2023」1位「汝、星のごとく」2位「光のとこにいてね」「2023年本屋大賞」1位「汝、星のごとく」2位「ラブカは静かに弓を持つ」3位「光のとこにいてね」「第168回直木賞」「地図と拳」「しろがねの葉」、候補作「汝、星のごとく」「光のとこにいてね」「汝、星のごとく」が「光のとこにいてね」を上回った。直木賞では林真理子氏が「同じテイストを持っていたため脚をひっぱり合っていたような気がしてならない。」とあるように似たものとして評価が低くなってしまったのかもしれない。「光のとこにいてね」は導入部から中盤までは良いのだけれど、佳境となる終章「光のところ」になると二人の関係というか思いが不明になっていくように思われて、ラストに締まりがない。その点、「汝、星のごとく」は秀逸でエキサイティングだった気がする。また、「ラブカが静かに弓を持つ」も面白く、興味を持って読めた作品だ。直木賞は時代小説ゆえ受賞したのかもだけれど「しろがねの葉」は感激度やシンパシィでは「汝、星のごとく」や「光のとこにいてね」ほどではなかった。「地図と拳」は未読なので、わからない。このシンパシィというか共感とも思える主人公二人にはとても心酔するような感じで読み進めた。年月を経て交錯することは興味深く、大人となってしまった時の不慮の再会は刺激的であった。家族の人たちの存在感が乏しく、それぞれが排他的であるのも、主人公たちに友達がいないのも納得(?)であった。とても同情と言うよりは同調して読んでいたので、読むのが嬉しくて嬉しくて、幸せ気分で読んだ。読み終える時にほんとお別れするのが寂しく感じられた。さて、この本、クライマックスの怒涛のような展開とありえない果遠の行動に不明瞭な感触のまま読み終えた。この終わりなき終わり方がこの本の評価を曇らせているのかもしれない。しかし、好きだなぁ。とても好きな感じがした。光のとこにいてね [ 一穂 ミチ ]
2024.03.11
コメント(0)
恋愛短編集・人気女性作家たちのアンソロジー「最悪よりは平凡」島本理生・著島本理生はいい。「深夜のスパチュラ」綿矢りさ・著スパチュラって何なの!?って話。「フェイクファー」波木銅・著着ぐるみ、大学の手芸サークルの思い出。キモイけど、なんかいい。「カーマンライン」一穂ミチ・著カーマンラインって言葉を知った。小説「ホテル・ニューハンプシャー」に興味を持った。映画化されているので映画を見ようかな。「道具屋筋の旅立ち」遠田潤子・著初めての彼氏の言いなりになってしまう。「無事に、行きなさい」桜木紫乃・著ちょっとなぁ、染みる話だわ。セカンドって、セカンドかぁ。「海鳴り遠くに」窪美澄・著恋?女性が女性に惹かれる、でも、でも……。う~ん、わかる気がするかも。二周目の恋 (文春文庫) [ 一穂 ミチ ]
2024.03.06
コメント(0)
「私たちの金曜日」三宅香帆=編角川文庫オリジナルアンソロジー令和5年1月25日 初版発行社畜・山本文緒(角川文庫『ファースト・オウライオリティー』に収録)山本文緒の小説は嫌いじゃない。美女山盛・田辺聖子(講談社文庫『日毎の美女』に収録)これが一番面白かった。バブリーでルッキシズムな時代に生きていたので、とてもよくわかる(笑)こたつのUFO・綿矢りさ(集英社文庫『意識のリボン』に収録)綿矢りさはなんか合わない。(苦笑)茶色の小壜・恩田陸(新潮文庫『図書室の海』に収録)いいねぇ、恩田陸、好きだわぁ。神様男・桐野夏生(文春文庫『奴隷小説』に収録)アイドル。地下アイドル。芸能界と庶民に隔たりがあった20世紀と違い、21世紀は芸能界と庶民の間が埋め尽くされて、セミプロならぬ限りなく素人に近いアイドルのいる世界になってしまった。うなるしかないのか。おかきの袋のしごと・津村記久子(新潮文庫『この世にたやすい仕事はない』に収録)ユニークなお仕事小説である。読ませる、読みどころがある。面白い、興味を持って読める。ふむ、ふむと納得。ファイターパイロットの君・有川ひろ(角川文庫『クジラの彼』に収録)斜め上から降りてきたような物語。妻が戦闘機パイロット!さすがの有川ひろである。私たちの金曜日 (角川文庫) [ 有川 ひろ ]
2024.02.29
コメント(0)
「名探偵のままでいて」小西マサテル・宝島社ミステリー大賞受賞作ということで期待して読んだ。すらすら読める軽さ。そこがいいのか、わるいのか。材料の下調べもきちんとしているようでいいネタが並んでいる。軽さだけでなく、ネタの新鮮さも絶妙で、軽妙と言っていいかもしれない。しかしだ、個々に起こる事件のネタ振りは十分なのに、解決がいささか急に思える。さて、どのように謎を解きどのように解決してくれるかと思いつつ読んでいると、謎解きまではいいけれど、解決は結果のみを述べて一段落。感情も思いもあまり挿まず、事実だけを述べている感じに味けなさを感じる。この繰り返しが続くかと思っていると、全編を通しての壮大な仕掛け、ネタを仕込んでおり、クライマックスにどんでん返しとも思えるほどの意表を突く犯人と事件解決が示される。これがいいとするかどうか、読み手によって評価の差が出るところかもしれない。軽妙洒脱までには至らないのかも、という感想。とはいえ、洒脱までいくと万人受けしないのかもしれない。ということで、この本は褒めておこう(笑)名探偵のままでいて [ 小西 マサテル ]
2024.02.28
コメント(0)
もしこれが映画であったなら楽しく見たのかもしれない。本屋さんで表表紙を見て、読んでみたいと思った物語であるけれど、読み始めておとぎの国というか空想の世界の物語であることにかすかに忌避感を感じた。映画なら「ロード・オブ・ザリング」や「ホビット」シリーズのような感じがするのだけれど、本で読むとなると抵抗を感じるのはなぜなのだろう。それは私の本を読む姿勢にあるのかもしれない。映画では奇想天外なスペクタクルな作品を好む傾向があるにもかかわらず、本を読むときは実社会、生活に密着した物語に興味を覚える。さて、「レーエンデ物語」について語ろう。語るほどのことを書けないかもしれないが、冒頭から中盤まで国境に街道を通そうとする計画を持っていろいろな種族や銀色になってしまう不治の病のことなど設定はおもしろく、読みどころもあった。ただ、中盤から主人公たちの立場が苦しくなり、困難なことが立ちはだかるにつれ、どうなることか心配になる。終章をもって夢物語として終わらなかったのはリアリティがあると思えども嬉しく思えなかった。レーエンデ国物語 [ 多崎 礼 ]
2024.02.21
コメント(0)
バルト三国の一つエストニアに生まれたラウリ・クースクの物語。ソ連の体制の中に生まれ、数字に才能を発揮し、コンピューターという時代の趨勢に乗って、あるいは政治的国家間の施策に翻弄され生き抜いた人。彼の人となりを知りたいと願う者が彼を探し、彼の過去を記した本。私はあまり興味を持たず、読みどころも本の命題もわからず、心を動かされることもほぼなかった。何が読者をひきつけ、推せる小説としてピックアップされてきたのだろうか。私はただ、ただラウリ・クースクの人生を垣間見た、読んだだけである。ラウリ・クースクを探して [ 宮内悠介 ]
2024.02.11
コメント(0)
青山美智子さんの著書が好きだ。今作も心が温かくなる気持ちで読んだ。淡い思いの作品である。欲を言えばもう少し胸に迫るものを書いてほしかった。とはいえ、これはこれで、リカバリーカバヒコだからね。リカバリー……。寄り添えることがいい。寄り添えるだけでいい。リカバリー・カバヒコ [ 青山美智子 ]
2024.02.08
コメント(0)
読書をするようになって、現代の本だけでなく、昔の名作も読まないとなぁ、なんて考えていた。NHKの大河ドラマでは「光る君へ」と源氏物語作者である紫式部を取り上げている。古典で大長編の源氏物語をいきなり読めるわけはなく漫画「あさきゆめみし」を読んで大筋を知り、現代語訳を読んで見るかと与謝野晶子、谷崎潤一郎、田辺聖子、瀬戸内寂聴などの作家を見比べ男性作家としては谷崎潤一郎しかいないことに気づく。図書館で見かけた「春琴抄」は薄く、これならばさっと読めると思い手に取った。読んでみる。一人が足りの文章で一ページに文字がびっしり並んでいる。これは文体が特殊でもあるけれど、印刷に金がかかる時代ならではの紙片を少なくする技なのかもしれない。さて、主人公となる春琴については生前から評判なうえに死後も語り草となるほどの人物であった。薬問屋のこいさんとして生を受け、盲目となってからは琴・三味線の稽古に励み、当時女子としては最高位となり師匠となり教えるまでとなる。この春琴に付き従ったのが薬問屋に丁稚奉公にきていた佐助である。佐助は甲斐甲斐しく春琴に仕え、朝起きてから夜寝るまで、お風呂の世話までやっとという。この二人の関係、二人がなくなるまでの聞き伝えを小説というか一人語りにした文が「春琴抄」である。このような小説が存在し、このようなことが昔あったということにとても感じ入った。年上の男子が年下の女性を甲斐甲斐しく世話をするという上下関係の逆転現象にえもいわれぬ印象を持った。春琴抄改版 (新潮文庫) [ 谷崎潤一郎 ]
2024.02.04
コメント(0)
なんて素敵な作品だ。高校生花生けバトル。そこに青春がある。『塞王の楯』で直木三十五賞受賞した時代小説作家である今村祥吾の現代作品をいぶかしみながら読んだ。主役は女子高生。彼にそんな十代の物語が書けるのか、と。読んで見ると、なかなか面白い。四国に祖母が住むという東京の女子高生は花いけバトルに参加するために華道部を作ろうにも部員が集まらず彼女一人の同好会サークルにて発足。花いけバトルは二人一組での参加のため、なんとかひとりの同好者を探し求めるが、お花の経験のあるものは既に入っている部活動で忙しく、断られ、次も、次も断られ……。そこに現れた転校生男子。彼にも断られるが、彼には参加できない秘密があった。興味深く読み進むにつれて、次から次へと知らないことが興味深いものであって、花いけバトルの参加も危うく、はたしてどうなる?終盤に入り、思わず感動した。泣いてしまった。そんなことが起こるなんて。とても素敵な物語であった。作家・今村祥吾の手腕に賛辞を贈る。ひゃっか! (ハルキ文庫) [ 今村 翔吾 ]
2024.02.03
コメント(0)
読み始めて、一人語りが厄介だなと思えた。ひとりひとり、仇討ちの目撃者の証言。江戸という広い都市で芝居小屋が集まる限られた地域で、ことは起こる。それぞれの証言者、芝居小屋を通じて関係はあると思えるのも、芝居小屋の脇にて仇討ちが行われたからなのだ。知り合いというくらいで特に強いつながりがないように思えるが、読むすすめるうちに無関係と思えた者同士が繋がっていく。終章に至る頃には表題の”あだ討ち”が、なぜ”仇討ち”でないのかも想像でき、そのことそのものが小説の文章としても綴られる。深く密接に繋がる物語。読みごたえがある圧巻の時代物であり世話物でもあった。なかなかのドラマである。木挽町のあだ討ち [ 永井 紗耶子 ]
2024.01.28
コメント(0)
自転車ロードレースの小説はほかにもあるのだろうか。自転車好きに贈る、自転車小説まとめ 27冊 | しいたけ堂の本棚 (m-keta.com) ふと、思い立ちググってみるとリンクの数、またそれ以外にも自転車に関する小説はあるらしい。しかしながら、自転車ロードレースを描いたものはこの作品の作者、近藤史恵の書くらいしか読むものはないようである。一冊目の「サクリファイス」を読んで自転車ロードレースの世界に惹き込まれた。そして、二冊目の「エデン」でもヨーロッパの地に飛んだ主人公・白石誓の姿を追い、読んだ。ゆえに三冊目の「サヴァイヴ」も白石の書かと思いきやどうも違った。違和感を感じながら読み進めると、赤城の話だと気づく。その後も赤城のチームメイトである石尾などが出てくる。最後に白石の出てくるスペインの話になるが、読みどころはあるものの、散漫な感じがして全体としてのまとまりはないように思える。とはいえ、いろいろな視点から自転車ロードレースを読み解くので、面白さはある。サヴァイヴ (新潮文庫) [ 近藤 史恵 ]
2024.01.25
コメント(0)
面白く読んだ、楽しめた。当初、過去の作品を取り込んで、他人のふんどしで相撲を取るような小説家と危惧したけれど、杞憂であった。過去の有名作品に託けて書いた作品でなく、過去のそれらの作品は素材として生かされていた。文学少女(青年?)であったママさんが大阪の中心部に点在する文学に関係ある場所を聖地巡礼のごとく訪れるのは最近の聖地巡礼ブームと相まって今時感があって良い。章ごとにいろいろな事件が起こり、それにあたふたする主人公を尻目にママあんが文学的洞察力で謎を読み解き事件解決に貢献するのは痛快である。その謎解きも読者(私)が「へぇ~!」と感嘆するような内容である。途中、難解ななぞかけも登場するけれど、卓越した読書家へのお楽しみ、挑戦と言えるところであろう。読み終えて見れば、目まぐるしく過ぎた大阪観光(?)がとても素敵で読むだけで大阪に行きたくなる物語であった。人を愛する感情を情感を抑えつつ深い深い思い出描いた本作はおすすめしたいエンタテイメント小説である。月夜行路 [ 秋吉 理香子 ]
2024.01.24
コメント(0)
すごい本だ。短編集だ。圧倒的な筆力は向田邦子の「思い出トランプ」に引けを取らないのかもしれない。短編とは思えない内容の濃さと深さはすごい。6つの短編からなる。第1話「ネオンテトラ」第2話「魔王の帰還」第3話「ピクニック」第4話「花うた」第5話「愛を適量」第6話「式日」それぞれの作品のそれぞれの人間関係が濃くて深い。そして想像もつかない事象や事情を抱えていて衝撃的であり重い。軽々しく始まり、結末はずしりと重い。業の深さを感じる物語たちである。短編でありながら圧巻。スモールワールズ (講談社文庫) [ 一穂 ミチ ]
2024.01.20
コメント(0)
「サクリファイス」の続編。今作はヨーロッパのプロチームに入って、初めてのツール・ド・フランスに挑む。ツール・ド・フランスに参加する日本人は主人公・白石誓、ただ一人。彼のチームはスポンサーの撤退が決まり、解散することになった。ただ、監督はその解散を回避するために、フランスのチームを手助けして、チーム生き残りを画策する。しかし…。彗星のごとく現れたフランス人選手が一躍注目のスターになって…。読み応えあり、次々と展開するレースと裏方とまわりの熱狂に読む手が止まらない。とてもおもしろく読んだ。続編を早く読みたいと思える快作である。エデン (新潮文庫) [ 近藤 史恵 ]
2024.01.13
コメント(0)
ヤバイ!この本は読んじゃいけない。とても先鋭化されたどぎつい!!!!!!!!!!!!!?本だ。読み始めて、そんなことを思い、置こうとした。とはいえ本年最初の読書。最初から頓挫したとなるのは気に食わないので、とりあえずダメになるところまで読もうと思った。どぎつい内容に驚きながらも、そのどぎつさに読む進む力をもらっていたかもしれない。表題から女性の日記の話だと思っていたのに、裏切られ、人材派遣会社に勤める男の話であった。その男はちょっとどうにもならない感じの男であったが、その彼がググって読んできたのがブログ”天龍院亜希子の日記”であった。素材として使われていて、本筋とはほぼ無関係である。この男の日常と感情を描いていて、あまりに赤裸々で直接的などぎつい表現に作者は男なのだろうとなかば思いながら読むようになった。読んでいいかどうかわからないが、とんでもなくどぎつかった本である、そし、この作家の本はもう読むことはないだろうと思ったが、このブログを書こうとしてググった作家が、安壇美緒で「ラブカは静かに弓を持つ」を書いていいたなんて!!「ラブカは静かに弓を持つ」はすでに読んでいた……。同じ作家とは思えない。天龍院亜希子の日記 [ 安壇 美緒 ]
2024.01.10
コメント(0)
これは時代小説ではないかと心して読んだ。そのせいか、主人公たちの純愛物語は入ってこず、銀鉱山から発掘の間歩(まぶ)への思いをひしと感じた。その間歩の銀掘になれない主人公ウメの胸中に思い馳せるばかりであった。読みごたえはある。物語は連綿としっかりつながっている。主人公ウメの生い立ちから子供らが成長していくまでをよく描いている。けれど、なぜか私には感じられるところが多くなかった。しっかりとした本ではある。しろがねの葉 [ 千早 茜 ]
2023.12.31
コメント(0)
人の真意というものはなかなかわからない。それゆえミステリーというものが存在するのかもしれない。ミステリー作家であるという近藤史恵によって書かれた自転車ロードレースの物語。日本ではあまりなじみがなく、本場ヨーロッパでのツール・ド・フランスが知られているくらいだろう。この本を読むまで自転車ロードレースという競技は個人競技と思っていた。ところがこれは団体競技というかチームプレイとしての結果、エースとなるただ一人を残りの5人でサポートする競技であることを知った。何日も何日も個別のコースを走り、その都度都度の優勝者を表彰していきながらレース全体の総合優勝を争う。ロードバイク(自転車)で走る速さは山を下るときには時速70キロほどのスピードとなるそうである。事故ればひとたまりもない。「サクリファイス」という題名と読み進めた自転車ロードレースの競技の内容から、エースのためにサポートするチームメイトがサクリファイスだと想像した。ところが”サクリファイス”と称された章を読んだ時、想像もつかなかっわかっとともに”サクリファイス”の理由がわかった時、震撼するように驚いた。ものすごい小説である。第10回大藪春彦賞受賞作、第5回本屋大賞では第2位に選ばれたのもむべなるかな。サクリファイス (新潮文庫) [ 近藤 史恵 ]
2023.12.24
コメント(1)
この本、この前読んだ「川のほとりに立つ者は…」の作家さんなんだ。こちらの本の方がいいかな…。ガラス工房をしていた亡き祖父の跡を継いで兄と妹でガラス職人となる話。家を出ていった父。料理研究家として成功していく母。発達障害なのか、変わり者とされる兄。唯一まともで手のかからない妹は孤独な葛藤を抱えていた。ガラスで骨壺を作る。そんなこんなの物語。読んで良かったと思える、悲喜こもごもの日常である。ガラスの海を渡る舟 [ 寺地 はるな ]
2023.12.23
コメント(0)
読み終えて、驚く。物語が佳境に入って、彼と彼が同一人物だと気づく。並行で描かれていた生活が二十数年前と今と時代を越えたドラマだった。同じ現代でAとBとCが錯綜して描かれていると思って読み進めたが、AとBの間に二十数年もの隔たりがあり、AとCは同じく現代であった。昔を知っているからこそ違和感なく同時代と思ってしまったのかもしれない。読み終えて、宇佐美まことの本を私は読んではいけないのではないかと思えた。内容がおどろおどろしく、非業で無残なものであるからだ。湊かなえの「告白」を読んだときに作家その人についてはわからなかったが、性悪説をもって描かれている内容に他の作品を読んではいけない、読むべきではないと思った。宇佐美まことの場合、最初に手に取ったのが「逆転のバラッド」だったので、群像劇として描かれているのがおもしろく、クライマックスもラストも衝撃的で痛快であった。大変面白く読めたので「ボニン浄土」を読み感心し、この本「展望塔のラプンツェル」を読んだ。「展望塔のラプンツェル」は読み進めるほどに救いがなく、解決したとは言えないまま禍々しい(まがまがしい)ものが残り、ざらついた気分の悪さを残す読了感であった。負のオーラにまとわりつかれてしまった。救いのないように思える一方でどこか救いがあるようにも描かれている。宇佐美まことはどちらを見ているのだろうか。展望塔のラプンツェル (光文社文庫) [ 宇佐美まこと ]展望塔のラプンツェル [ 宇佐美まこと ]
2023.12.21
コメント(0)
「イクサガミ 天」を読んだとき、選んだ本を間違えたと記した。デス・ゲームを読みたいとは思わないからだ。とはいえ、乗り掛かった舟、完結まで読まねばならないと思い、この「イクサガミ 地」を読み始めたところ、面白かった。デス・ゲームであることに変りはないのだが、登場人物の人となりを理解してきたせいかもしれない。一子相伝ともいえる奥義を伝えるために8人で修業し、殺し合い、生き残ったひとりが継承するという非道極まりない伝承がなされていることも、百人を超える金の亡者、いや剣の猛者が果し合い9人が東京へ到達するというゲームもルールを把握すれば、いかにして切り抜けるかという興味が湧き、またこのゲームの主催の謎を解くという面白さが加わって、楽しめた。最近興味を持った大久保利通が登場し、その行動にも興味が持てた。刺客、刺客、刺客…。腕に覚えのあるものが斬りあうのは読んでいて身震いがするほど、見入ってしまった。なんておもしろい続編なのだろう。結末となる第三部が待ち遠しい!イクサガミ 地 (講談社文庫) [ 今村 翔吾 ]
2023.12.16
コメント(0)
いいなぁ、青山美智子さんの本。2019.11.23「木曜日にはココアを」青山美智子:著 宝島社文庫に読んだ時にとても感激し感動し、この作家さんのほかの本も読みたいと思った。作家として成功してほしいと思った。その後、新作を知ることもなく時が過ぎ、第1回 宮崎本大賞(2020)を受賞することにより、彼女が作家として活躍していることを知る。2022.05.14「赤と青とエスキース」青山美智子:著 PHP研究所2022.06.26「お探し物は図書室まで」青山美智子:著 ポプラ社2022.07.06「月曜日の抹茶カフェ」青山美智子:著 宝島社2022.09.08「猫のお告げは樹の下で」青山美智子:著 宝島社2022.12.24「鎌倉うずまき案内所」青山美智子:著 宝島社文庫2023.06.21「ユア・プレゼント」青山美智子:著、U-ku:絵 PHP研究所2023.10.21「月の立つ林で」青山美智子:著 ポプラ社読書をすることが習慣化され、いくつもの本を読んできたけれど、青山美智子さんの本を読んでは感動し、感嘆する。素晴らしく素敵な作家だ。青山という名も東京・青山の地名を連想させ、美智子という名も美しくたおやかで聡明な感じがする。とても素敵な名前だ。お姿はネットで拝見したが、お声はどのような声だろうか。ご本人がどうかよりも本が素敵であれば良し。「ただいま神様当番」は期待せずに読んだ。話題をよんだと思えないから。じいさんの神様が朝のバス停に並ぶ5人に次々と取り付く話だった。言葉を交わしたこともない乗客たちはそれぞれにそれぞれの問題を抱えており、じいさん神様の思うところ希望を叶えることによって乗客たちの問題も解決していくというファンタジーである。OL、小学生、高校生、大学非常勤講師、零細企業社長という5人それぞれに対し、荒唐無稽というか、ある意味、絶妙というか難題をじいさん神様が押しつけ、その難題をクリアすることで気づかなかったことに気づける話。とてもこんな小話で感動するわけはないと思って読み進めたが、高校生の”リア充”で落涙した。はからずも感動してしまった。共感してしまった。それは私が好きな映画が関連していたせいかもしれない。十代の若者の心に共鳴するなんて、私が幼いのか、はたまた還暦を過ぎて若かりし頃を懐かしむ気持ちだったのか、自分でもわからないながら、感動していた。とても素敵な、そして今どきの物語であった。最終話の零細企業社長の時は女性がストリップ劇場に行くということに驚いたが、青山さんも取材で訪れたのだろうか。女性の行動に感心した。ただいま神様当番 (宝島社文庫) [ 青山 美智子 ]
2023.12.09
コメント(1)
「ボニン浄土」という題名である。本来はボニンアイランドとしたかったのだろうけれど、それだとまんま小笠原諸島ということになるので、本の内容と合わせて浄土というものにしたのかもしれない。盛りだくさんというか、小笠原諸島の歴史を鑑み、いろいろなことを描いている作品である。主人公たちと言える複数の人物が登場し、接点のないまま進展していって最後に交錯し、知り合う。小笠原諸島については沖縄と似て異なる戦中戦後の歴史を歩んでいながらほとんど何も知らない。こんなことがあったんだと、小笠原諸島の成り立ちからの歴史を知りえるとても良い本だと思えた。これほどの内容の本を書き表した宇佐美まことの力量に感服。大河ドラマをみるような連綿とした歴史と人生を織り込んだ読みどころのある書籍である。ボニン浄土 [ 宇佐美 まこと ]
2023.12.06
コメント(0)
やる者がいないのでカフェの店長をしている私。彼氏は秘密主義ではないものの、あまり話してはくれない。ある時、彼が友人と殴り合って歩道橋の階段から友人ともども落下し、二人とも意識不明の重体…。なぜ?隔靴掻痒。事故か事件か、真相がわからない。合鍵をもって彼の部屋に入ると、様変わりしていた。ここでも、またなぜ?ミステリーというかわからないことだらけで不安になる主人公。それは読者も同じ。読み進めていくうちに不審に思っていたことは、明らかになっていく。なにかが解決したということはなく、日常に戻っていく。こんな小説もあるんだ。こんな思いをする人もあるんだ。ん……。
2023.12.03
コメント(0)
ポッポちゃん。鳩ちゃんも歳を重ねたんだな。いつのまにかQPちゃんは成長し、弟妹ができ、飛ぶがごとくの年月が過ぎた。先代の恋文の発見から伊豆・大島への旅。鎌倉を愛でる散歩。ツバキ文具店でアルバイトするひとの記述はほとんどない。文筆業を再開した鳩ちゃんの思い、考え。淡々と過ぎていく日常におけるあれやこれや、人とのかかわりを考えさせられる。人は亡くなった後もその人を知る人がいれば生きていられるのかな。人を思いやる心持にじゅわっと感じる心。いいなぁ、やっぱり素敵な鎌倉、ツバキ文具店の鳩ちゃん。「椿ノ恋文画集」もあるんだ。見てみよう。椿ノ恋文 [ 小川 糸 ]椿ノ恋文画集 [ しゅんしゅん ]
2023.11.29
コメント(0)
宮下奈都のエッセイ集。あちらこちらに書き連ねたエッセイの中から、子どもたちのことを書いたエッセイのまとめを後半に集めて、それまでの、また同時期に書いたエッセイを選び本とした。子どもたちのことを書き綴ったエッセイは3人兄弟の真ん中、次男が高校を卒業し家を出ていくときに筆をおいた。三人兄弟を綴ってきたエッセイで末っ子の娘一人だけを書くようになってはと懸念したゆえ。宮下奈都の本との出会いは駅の本屋であった。駅西側にある大き目の本屋の小さめの本屋が逆サイド東側にあった。店玄関の平置き台が二か所、中に一つ目立つ本棚の奥に壁一面と島で4っつほどの本棚がある規模。ところせましと各出版社の文庫がちょっとずつひしめき合いながら並んでいた中で、何か読める本はないかと探していた。POPがあったかどうか、下手な横好きながら歌が大好きな私が惹かれて手に取ったのは「よろこびの歌」だった気がする。高校生の主人公たちが歌に活気満ち溢れる喜びがとても素敵で感動したと覚えている。その後、宮下作品と出会いがないままだったけれど、「よろこびの歌」の続編となる「終わらない歌」で就職に翻弄される歌の世界で生きたい女性の物語にこれまた感動した。おぼろげな記憶だけで書いているので本の題名も本の内容も確かである自信はない。日々の暮らしの中で感じる女性たちの心の揺らぎ、迷い、希望といったものを書いていて、私の心にとても訴えかけるものがあり、共鳴・共感していたと思う。宮下作品に興味を持ったおかげで出たばかりの「羊と鋼の森」を読み、この本が人気を呼び、本屋大賞を受賞したことは存外の喜びであった。ブームは熱をよび、映画化された。ただ、残念ながら映画は成功せず、注目は浴びたもののヒット作品とはならなかった。映画を鑑賞した時、原作と味わいと内容が違って見えたのはキャスティングミスのように思えた。主人公に山﨑賢人ではない気がしたし、姉妹の上白石萌音・上白石萌歌にも違和感を感じた。ただ「緑の庭で寝ころんで」を読み、映画製作現場見学について書かれている箇所があり、主人公を演じた山﨑賢人が努力していたことを知れた。結果が伴わなくて残念である。最近、宮下作品が読みたくなって「誰かが足りない」「つぼみ」「静かな雨」を読み、エッセイにも手を出し「ワンさぶ子の怠惰な冒険」「とりあえずウミガメのスープを仕込もう。」を読んで、この本「緑の庭で寝ころんで」を知り、読んだ。この本を手に取った時は驚いた。エッセイ本でありながらあまりに分厚い、圧巻である。文字通りの圧巻。427ページもある。「ワンさぶ子の怠惰な冒険」が277ページ、「とりあえずウミガメのスープを仕込もう。」が268ページであるので、倍近い分量である。宮下作品の良さは日常が描かれていることである。事件や事故ということはほぼ起こらない。そして日常の出来事に対する登場人物たちの心模様を掬い取るように描いている。力説はしない。あたかも淡々と描いていいるようであるけれど、激情にかられる思いも願いもあり、読んでいるこちらが感動のあまり涙にむせぶということもある。寄り添いたいと思える作家である。知名度も人気もないところが良く思えた。従来であれば知る人ぞ知る作家であり、そこそこの作家であったろう。けれど、本屋大賞というものが出来、その中で取り上げられ、ついには「羊と鋼の森」で本屋大賞を受賞するというだれも予測できなかった衆知の場に引っ張り出され誰もが知る作家となった。素晴らしい。その宮下奈都が書き連ねた、書き続けた、書き溜めたエッセイをまとめて一冊の本にした。子供たちは巣立ってしまった。今後、彼女は何を書くのであろうか。そういえばこの本の中で書かれているが、彼女は自身の本を子供たちに読ませない。子供たちに読まれるとなると何を書いていいのか、書きたいことが思うままに書けないということで彼女の著書の読書を禁止しているということである。母がどういう本を書き、それによって本屋大賞を受賞したということ、その中身を知れないということは子供としては嫌なというか隔靴掻痒な感じがするけれど、宮下が読まれることはエッチな映画を子供と鑑賞するような気まずい気づまりな感じがするのだろう。子供たちに自身の著書の読書禁止をすることで思う存分彼女が本を書けるなら、彼女の本を読める私は喜ぶほかはない。彼女の新作が楽しみである。文庫 緑の庭で寝ころんで 完全版 (実業之日本社文庫) [ 宮下 奈都 ]
2023.11.26
コメント(0)
「星を編む」という題名を目にしたとき、即座に「舟を編む」という題名がよぎり、何も似た題名にしなくてもと思った。本書を開くと「春に翔ぶ」「星を編む」「波を渡る」と三部あるので、他の「春に翔ぶ」「波を渡る」という題名でもよかったかもしれないし、“夕星”という題名でよかったかもしれない。ボリュームがあるので、短編三作品をまとめたと考えれば、その中の一つの題名を表題とするという法則に則っているのですがね。さて、『汝、星のごとく』で語りきれなかった愛の物語と謳っているようであるが、前作が波乱万丈、劇的であり、とても素晴らしい作品だったので、それと並ぶ、或いは超える作品なのかととても危惧した。前作の記憶も不確かで読み始めた「春に翔ぶ」は衝撃的な話でありながら、前作との関連性がわからず、単独の作品として読了した。続く「星を編む」は編集者たちの話で、興味深く、時に感動しながら読んだ。表題作となるも当然なのかもしれない。さいごの「波を渡る」は『汝、星のごとく』と同じ形式で書かれた作品であり、先生と彼女のその後を描いて情報過多と言えるほどの目まぐるしい出来事の多さ。「春に翔ぶ」を思い起こして先生の人生の奇遇を不遇でないものにしたと思える。振り返ってみれば関連性を感じなかった「春に翔ぶ」がそもそもの起源であり、含蓄(伏線というか)を含んだ物語である。そしてまた生を考える物語であった。三作品すべて、とてもとてもいい物語でした。星を編む [ 凪良 ゆう ]
2023.11.15
コメント(0)
「はじめての」というお題(?)で4人の作家が紡いだ短編。これをYOASOBIが楽曲にするという企画。島本理生(楽曲「ミスター」原作小説「私だけの所有者」著者)辻村深月(「ユーレイ」著者)宮部みゆき(「色違いのトランプ」著者)森絵都(楽曲「好きだ」原作小説「ヒカリノタネ」著者)といった4人の直木賞作家の小説を読んだ。「私だけの所有者」は、島本理生がSFを書くと思っていなかったので意外性があり、興味深く読んだ。読み終えた時、この作品にも島本の表現したい愛が描かれていて、感じ入った。「ユーレイ」は、少女が主人公である。現代の女性が抱える苦悶を受け止めて、一晩なんとか乗り越えたことによって見えてくる世界を提示してくれている。「色違いのトランプ」は、未来世界SFのパラレルワールドで運命と不条理を描いているように思う。「ヒカリノタネ」は幼なじみへの過去の告白を取り消したいとタイムトラベルする女子高生の話。過去の告白だけを取り消していくと、取り消さない方が良かったのではという思いが去来する。そして今、幼なじみとの関係の再確認。怪奇現象を含めSFというかありえない話が描かれている。「はじめての」とは未知の体験ということであれば、このどれもがそうなのであろう。お気に入りの島本理生がSF小説を書いたということに驚き感嘆したので、あとに続く三者の作品のびっくり度は大きくなかった。とはいえ夫婦・親子・友達との愛情を表現した作品であった。はじめての|水鈴社 (suirinsha.co.jp)
2023.11.15
コメント(0)
「ベルサイユのばら」を初めて読んで見た。映画「ベルサイユのばら」は見たけれど、いまひとつだった印象がある。上京して東京宝塚劇場であれば見に行けないほどの距離ではなかったので、足繁くでもないけれどチケットが取れた時はタカラヅカを見に行った。そこで見た「ベルサイユのばら」の素晴らしかったこと。タカラヅカ自体は最初に見た「ミーアンドマイガール」ではまってしまっていたので、ベルばらには心底やられてしまった。ベルばらを知らないながらも「アンドレとオスカル編」だとか「フェルゼンとマリー・アントワネット編」とか見に行った。このところ読書をするようになって、文庫になった漫画も読むことがあって、文庫にベルばらがあることも知って全5巻読み終えた。4巻までにアンドレとオスカルの物語は終わり、5巻はフェルゼンとマリー・アントワネットの話となり、プラスおどろおどろしい若い娘を食い物にしていた美女の話が付け加えられていた。原作漫画を読んで、また、タカラヅカの舞台を見たくなった。チケット取るの大変だろうなぁ。ベルサイユのばら 文庫版 コミック 全5巻 完結セット (化粧ケース入り) (集英社文庫ーコミック版) [ 池田理代子 ]
2023.11.09
コメント(0)
「月の満ち欠け」佐藤正午:著 岩波文庫的岩波書店として初の直木賞、そして最後の直木賞かもしれない作品「月の満ち欠け」。2022年12月に映画公開され、興味を持ったが主演の大泉洋に食傷して見に行かなかった。はたして内容は面白いものなのか?興味津々で読んで見た。序盤、大学生が人妻に惚れる年上の人・恋物語なのかと思って読んでいた。けれど、話が進むと、風変わりな、というか今まで一度も聞いたことがない転生の物語であった。こんな奇妙なことがあっていいのだろうか。前世の記憶が蘇る事象。そしてそれは一心不乱に恋人を追い求める心。う~む。唸ってしまうほど難解というよりはややこしい、人知の理解を越えた状況に納得はしても承服しかねるという、ちぐはぐな心持になってしまう。理解できても釈然としない主人公・小山内堅(おさない つよし)の心境のようになってしまった。なぜこれが直木賞なのか?という疑問がわいてきた。内容は薄気味悪いものであるけれど、小説として完成していて他の作品より群を抜いていて、直木賞受賞なったようである。岩波文庫的 月の満ち欠け [ 佐藤 正午 ]
2023.11.08
コメント(0)
『逆転のバラッド』(宇佐美 まこと)|講談社BOOK倶楽部 (kodansha.co.jp)これはすごい。読み始めると興味津々となり、早く先が知りたくてしかたなかった。その衝動を抑えながら、余暇を、いやすきま時間をみつけては読んだ。おもしろい!先へ進むにつれて、謎や不明だったことが解明されていくけれど、それに伴い、伏線回収というか、あの時のあれはこういうことだったのか、なるほど感じていた違和感の正体はこれだったんだ、と腑に落ち、納得し、感心する始末。事件は解決したのかどうか不明であるかと思われるけれど、主人公たちの物語は確かに一段落、区切りがついていた。それにしても、善良な人々を描いて社会の闇に迫るとは痛快な作品でもある。講談社BOOK倶楽部の紹介文には”人生の折り返し点を過ぎた男たちが、平凡な地方の町を侵食する欲に塗れた悪事に立ち上がる、一発逆転のリベンジゲーム。”とある。逆転のバラッド [ 宇佐美 まこと ]
2023.11.03
コメント(0)
この本は何と言おう。小説ではないし、エッセイでもない。物故者である著名人との妄想の対談集。原田マハが原田マハに課した企画である。2019年9月1日から7日まで開催されたICON京都大会に合わせて特別に企画された「CONTACT展」の、いわば「発展的資料」という位置づけであるという。歴史に名を残した20人の著名物故者に妄想インタビューをし、読み物に仕上げ、本にした。読んでみるとインタビューとも思えないものもあったが、それぞれの人物を2か月という限られた時間の中で調べ、その人となりを咀嚼しインタビュー記事、もしくは紀行としてまとめた。原田マハの精力的な文筆作業がものをいった作品だと思う。資料としてパンフレット的意味合いもあるのだろう。しかし、その人となりは原田マハが見て感じたそれぞれの物故者への印象であり、哀悼であると思える。
2023.11.01
コメント(0)
来年、2024年のNHK大河ドラマは「光る君へ」ということで源氏物語を書いた紫式部を取り上げたものである。源氏物語を読んだことがなく、瀬戸内寂聴さんが現代語訳をするというので瀬戸内寂聴と吉永小百合との対談を聴きに行って、第一巻を購入したが未だ読んではいない。とはいえ、思い立ち、読んでみた。読んでみたといっても、ストーリーを追って和歌は読み飛ばすか斜め読み。ディテールまで読みこめてはいないけれど、高貴な方の自分勝手な恋に翻弄される姫君たちの生活を心を痛めながら読んだ。7巻すべてを読み終えた時に瀬戸内寂聴さんが現代語訳をしたかった気持ちがわかるような気がした。まんが「あさきゆめみし」なかなかの本である。
2023.10.30
コメント(0)
全468件 (468件中 51-100件目)