僕は小学校で通級指導を担当しています。
通級指導って、基本的には 個に応じた指導
なのですが、別に個別学習塾みたいにして勉強を教えているわけではありません。
子どもそれぞれの困り感に寄り添い、どうしたらいいかを一緒に考え、その子に合った目標を立てて、計画的に「自立活動」と呼ばれるいろいろな活動を行ないます。
学校の教職員は集団指導を行なう人が多いので、その中では特殊な役割と言えるでしょう。
同じ仕事をしている人は校内はおろか勤務市内でも数えるほどしかいません。
初めて担当になったときに何をしていいか分からなくて困る人が多いのでは、と思います。
「もしかすると学級担任よりも養護教諭(保健の先生)のほうが役割的には近いかも?」というは、前から思っていました。
そして、『 アドラー流“勇気づけ”保健指導
』という本を手に取りました。
読んでみると、養護教諭どころか、民間の会社で働いている人に「保健指導」をする人の本でした。(笑)
ところがこれが、想像していたよりも、通級指導に生かせる内容が多かったのです。
『ミレイ先生のアドラー流“勇気づけ”保健指導 アドラー心理学で面談技法のスキルが身につく!』
(上谷 実礼、 メディカ出版 、2017、税別2600円)
本書から勉強になった部分を少しご紹介します。
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『アドラー流“勇気づけ”保健指導』
・「 課題の分離を行い、共同の課題にすること」
・相談者が自身の健康 課題に向き合うことが支援者に貢献することにもなる
ということが伝わり、相談者の貢献感も高まります。
・「どのようになっていたいか」を相談者自身が決める
(p114-115より)
アドラー心理学では「 課題の分離
」ということが言われます。
目の前の人が困っているとして、それはその人の課題であって、自分の課題ではない。
自分の課題とは明確に分けよう、背負い込みすぎないようにしよう、といったものです。
しかし、そうすると教育の分野では、目の前の子どものことは自分の課題ではないということになってしまいます。
子どもの悩みに引きずられないためにはそれでいいのかもしれませんが・・・。
そこで、たとえば子どもが目標を立てたとき、「その目標がかなったら、先生もうれしいな」といったような気持ちを伝え、子どもががんばることが、相手も喜ばせることを意識させるのです。
アドラー心理学では、「幸福とは貢献感である」と捉えています。
子どもと大人が互いに相手に貢献し合う関係であることを確認すれば、子どもの課題が共通の課題になり、それに向かってがんばることが、相手に貢献することにもなる。
こういう考え方は、本書を読む前にアドラー心理学の本をいくつも読んでいたからすんなり腑に落ちたのかもしれませんが、本書によってよりはっきりイメージでき、よかったです。
・ 支援者であるあなたの感情がイライラ、モヤモヤと動くときは、あなた自身の考え方や物事のとらえ方、あなたの中の思い込みに気づくチャンスなのです
。
(p141より)
・イライラしてしまう一番のポイントは、
相手をコントロールしようとする気持ちです。
(p184より)
対人援助職でよくある悩みは、相手が自分の思ったとおりに動いてくれないことからくるイライラでしょうか。仕事でなくても、普段の人間関係でも、そうですね。
これは、解決するのでしょうか。
「
相手が自分の思ったとおりに動いてくれない」のは、ある意味当たり前です。
自分自身は、誰かの言うとおりに動くロボットではありませんよね。他の人も同じです。
だからこそ、自分がそれに気づくことが、とても大事。
イライラする人は、自分が悪いとは思っていない。
逆に言うと、イライラしない人は、自分の思い込みかもしれないという自己に対する客観性を持っている人。
僕自身は、自分に余裕がないとすぐにイライラしてしまいます。
そこで「相手が悪い」と思うのではなく、「自分に余裕がないから」と思えるのがまずスタートかな、と思っています。
・ 「ニーズなきところにサプライなし」
・「目の前のこの人は、いつか自分なりにちょうどいいタイミングで健康課題に向き合う力をもっている」と信じるところから始めてみてください
(p186より)
自分がさせようと思っていることを、相手がしようとしないとき。
そんなときはしょっちゅうあります。
相手の課題における目標を決めるのも相手なら、そもそもしようとするかどうかを決めるのも相手。
教育ではしばしば言えることですが、「信じて待つ」ことも必要です。
短期的な即効的効果を求めるなら、いろいろなやり方はあるでしょう。
しかし、長期的に「信じる」ことこそが、もっとも大切な支援者の仕事なのかもしれません。
・ あなたが変わっていく姿を見せることで、
そのうち周囲が興味をもちはじめる
・まずは自分自身が仕事を通して本当に幸せになりましょう。
自分を勇気づけられる人になりましょう。
(p196より)
・ 支援者を勇気づけていると、
「相談者を勇気づけている自分が発する勇気づけの言葉」によって、 支援者であるあなた自身も勇気づけられる
(p200より)
アドラーの「勇気づけ」という言葉が僕は大好きです
。
相手を勇気づけている行為そのものが、自分も勇気づけている。
こういった対人関係における循環が、相手を直接変えようとしなくても、互いがよいほうに変わっていくムードを生み出すのではないでしょうか。
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アドラー心理学の本はいろいろ読みましたが、本書は具体的な事例が「通級指導」における子どもとのやりとりに重なり、僕としてはとてもよかったです。
教育とは違う場面での事例も、とても参考になるものですね。
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