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今回のクラナッハ作品を出すにあたり、絵画のタイトルを調べる為にインターネットで各美術館やクラナッハを検索。
その中で「Lady Justice」と言うタイトルの素敵な絵を見つけた。
パブリックドメインになっていたので紹介したくて、でも美術館や来歴を確認しようとしてちょっと奇妙な事が起きた。
書かれている美術館そのもののホームページ見つからない。写真提供者の氏名も公表されていない。
その作品のタイトルを検索しても、同じ提供写真にしか行き着かないのだ。(・_・?) ハテ?
私も美術書は今まで散々見ているけれど過去にそれを見た事は一度もない。
公開されていない絵? と言う事は可能性あるが、それにしてもその画像だけはいろんな人が利用しているにもかかわらず、誰も作品を直接見たふしがない。それ以外の写真が全くないのだ。
そもそも、 クラナッハの工房では速筆して納品する為に、同じ素材の使い回しが多い。
その為のテンプレートまであったらし
い
のだ。だから同タイトル作品は複数存在するし、若干差し替えた似て非なる作品もできあがる。
つまりクラナッハ作品はたくさんあるけれど、構図や物語などで分類していくと、人物が違うだけで同じ作品だったり、ちょっとポーズを変えて神話から聖書の話に持って行くなどの技が使われている。
そんな
作品を クラナッハでなく、弟子達が量産していたので作品数は多いのだ。
もちろん最後にクラナッハのチェックは入るが・・。
確かに「Lady Justice」はクラナッハの要素満載の絵である。ただしクラナッハの作としてはできが良い感じがする。整いすぎている感があるのだ。
絵柄から発注者が
裁判所の関係ではないかと想像できるが、それならよけいに来歴があってしかるべきだ。
2日かけてあれこれ探してたどりついた結論は「ちょっと怪しいかも・・。」である。
※ 作品(「Lady Justice」)は気になるでしょうから最後にのせておきます。
クラナッハ(Cranach)の裸婦 2 (官能の裸婦とヒトラーのコレクション)
Venus en Amor(ヴィーナスとアモール)
アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)のコレクション
16世紀、優秀な芸術家は宮廷芸術家として各地の王侯君主の宮廷に招かれ、君主の賓客、廷臣、友人、
年棒付きの専任芸術家として優遇
され、地元の組合(ギルド)からは解放された自由な立場
が与えられた
そうだ。
※ 石工ギルドも地元組合(ギルド)に縛られない特権を持っていた。
ティツィアーノのように 貴族の称号を与えられる事もあった
ようだし、ラファエロなどは彼自身が王侯の貴族のような振る舞いをしていたと言う。
クラナッハ(Cranach)は1508年ザクセン選帝侯フリードリッヒ3世より盾形紋章(Escutcheon)を与えらている
。(その時点での爵位は付されていない。)
1508年はクラナッハがネーデルランドで少年時代のカール5世の肖像画を描いた年だ。
ザクセン宮廷からの名代で出向いたからか? 宮廷画家としてのクラナッハの順応は素早かったようだ
。
クラナッハ(Cranach)は
絵だけで無く、宮廷衣装や近衛兵の武具を飾る紋章のデザインもしている し
、この頃は古代神話を題材にした作品が多かったようだ。
もちろんそれらは自身の工房で多作され、フリードリッヒ3世の依頼をはもとより、地元教会祭壇画などの依頼も驚くほどのスピードでこなしていたと言う。
そんな所から 「速筆の画家」とあだ名されたらしい
。
Venus en Amor(ヴィーナスとアモール)
ベルギー王立美術館(Musées royaux des beaux-arts de Belgique)
Venus en Amor(ヴィーナスとアモール) ※ アモール=キューピッド 1531年

Cupid complaining to Venus(ヴィーナスに不平を言うキューピッド)と言う事をテーマにした寓意画だそうだ。
何とも魅惑的な色っぽいヴィーナスである。
クラナッハ独特の小さなバランスの悪い胸が気にもならないほど。
女神を裸体で描くのは北方では初の試みだったそうだ。
しかし、 南が完璧なプロポーションと近寄りがたい美を古典の女神の姿に求め表現したのとは異なり、クラナッハのそれはヌードとしてのエロティックさ満
載
だ。
母である美の女神の美しい肢体は 解剖学的にはおかしいと思う。
小顔で手足は長く、かつ、お腹がポッコリと出ていると言う不思議なこだわり
。
そして書き添えられている薄 いベールは
、かつてキリストにふんどしをつけた画家のような 隠しではなく、敢えて強調する為の策
だったそうだ。
また、 当世風の羽根飾りのつば広の帽子に大きな首回りのアクセサリーは、何も身にまとっていない事をより強調した効果?
でもあるのだろう。
クラナッハが描いたのは理想美ではなく、 官能を刺激する女性のエロティシズム(eroticism)?
なのかも。
ロンドンに同じ構図の絵があり、そちらのタイトルではVenus mit Amor als Honigdieb(ハチミツ泥棒アモールとヴィーナス)になっている。

それにしても神の子を抱くマリアよりもリアリティーがある母子はこちらかもしれない。
この絵はナポレオンの意匠の蜜蜂を調べていた時に見つけた絵だ。(自分で撮影してきた写真です。)
余談だが、この額縁にBalon(
バロン) クラナッハと書かれていた。
クラナッハは貴族の仲間入り? 男爵に昇格?
子供なのにやけに足が長いキューピッドである。ヴィーナスの足も長がすぎるが・・。
クラナッハもそう言う意味では現実的でない体を描く。
ルネッサンスが求めた究極の美の形とも全く違うが・・。
ナショナル・ギャラリー ロンドン(National Gallery London)
Venus mit Amor als Honigdieb(ハツミツ泥棒アモールとヴィーナス) 1537年
こちらはウィキメディァから借りて来た写真です。(パブリックドメインで公開)

流行の帽子とアクセサリーを身に付けるヴィーナス。
6年経過して帽子が派手になりポーズも大胆になっている。
でもベルギーの作品の方が色っぽい。
バックには前よりも彩色豊にはっきり景色が描かれている。
多分明らかに依頼者の意向が反映された絵と思われる。割に派手な彩色は、まさか家具の一部でも無ければ使わなさそうだが・・。

教訓が込められた作品であるが、裸婦をメインにしているので今回はあまり触れない。
アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)のコレクション
それよりも驚くのはこの絵の来歴だ。
この派手めな彩色絵画の 来歴を今ナショナル・ギャラリーは必死で追い、一般から情報を求めていると言う
なぜ?
それはこの絵がヒトラーが所有していたコレクションの中にあったらしい事が判ってきたからだ
。
(ヒトラーは古典派嗜好であった。)
今はまだ裏付け取りをしている最中らしい。

アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)(1889年~1945年)は「ナチス・ドイツの総統」と表現した方が早いが、正式には国家社会主義ドイツ労働者党(Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei )の総統である。
以前2016年「ナチスのアートディーラー、ヒルデブラント・グルリットのコレクション」
ホフブロイハウス(Hofbräuhaus)の中ですでに触れたが 、もともと画学生であったヒトラーは名画のコレクターであった
。
コレクターと言うと体裁は良いが、実際は権力により集めまくったコレクションである。
(とはい言え画家になる事をあきらめても、なお、
求めた芸術への執着には感服する。)
ナチスのアートディーラー、ヒルデブラント・グルリットのコレクション
※ リンク ナチスと退廃芸術とビュールレ・コレクション(Bührle collection)
前出、ヒルデブラント・グルリット(Hildebrand Gurlitt)(1895年~1956年)は美術品の審美眼と人脈の広さをヨーゼフ・ゲッベルスに買われてアドルフ・ヒトラーの為の美術館のディーラーとして働いていた男だ。
謎とされているのが1909年~1945年。
ヘルマン・ゲーリング(Hermann Göring) (1893年~1946年)の名前も出て来ている。
件(くだん)の「Venus en Amor(ヴィーナスとアモール)」の絵がヒトラーのコレクションの一部であった事が間違いなく証明されるなら、この絵には「ヒトラー(Hitler)のコレクション」と言う輝く来歴が付与され、もともと価値ある絵であるが、もっともっと高額の絵画に変身する事になるだろう。
(
ナショナル・ギャラリーが必死になるのも当然ですね
)
ウイーン 美術史美術館(Kunsthistorisches Museum)
ロトと娘
いやらしそうな年寄りの行為により旧約聖書の話ながら卑猥さを感じずにはいられない。
内容も父との近親そうかんである。
※ 漢字で入力できませんでした。
理由は子孫を残す為に姉妹で唯一の男である父の子を求めたのである。
絵は父が酒に酔わされて娘に仕掛けられている所である。
因みに二人はやがて子供を出産。長女の息子「モアブ」はモアブ人の祖となり次女の息子は「ベン・アミ」はアモンの人の祖となった。
なんか本当に生々しい感じがします。![]()
Lady Justice
最後に冒頭話が及んだ出所の怪しい件(くだん)の裸婦。「Lady Justice」を紹介
Amsterdam Fridart Stichting(アムステルダム フリダート財団) 1537年
Lady Justice
Justice as a naked Woman with Sword and Scales( 剣と秤を持つ裸の女性としての正義
)

Lady Justiceは、裁判所のシンボルに置かれている審判の女神像の原型である。
16世紀頃から目に目隠しがされる。
クラナッハの要素満載であるが、実はクラナッハにしては美し過ぎるし完璧過ぎるのがちょっとひっかかった。剣の下方に前回紹介したクラナッハのサインも入っているようだ。果たしてこの絵は、そもそも本当にあるのか?
クラナッハ(Cranach)おわります。案外興味深い画家でしたね。
※ 「クラナッハ(Cranach)の裸婦 1 (事業家クラナッハ)」ではクラナッハが画家以上に実業家であった側面を紹介しています。特にマルティン・ルターとの関係は驚きです。
リンク クラナッハ(Cranach)の裸婦 1 (事業家クラナッハ)
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