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2024.04.26
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カテゴリ: 鈴木藤三郎
鈴木藤三郎報徳日めくり

26日

人たる者は何はさておき、自己の職務を本位として、一生懸命に働かねばならぬ。これがすなわち報徳訓の義に適うものである。





諸君私は二宮尊徳翁崇拝の一人であります。
 私の演題は職務本位というのであります。
 その主意は読んで字のごとく、 人たるものは上は一国の帝王より、下は一家の下男下女に至るまで、職務を本位として誠心誠意、力のある限り、各自の職に尽くすべきものである という意味であります。
 まことに単純な事で、誰にも分ることでありますが、 この単純な言葉の中に、報徳の訓え一切を包括している。また国の東西、人類の異同、男女の別を問わず、すべての人がこれを守るべき義務を自然に有するものと私は信じます。
 なぜに人はことさら、職務を本位とせねばならぬかという、その理由に対する卑見をなるべく簡単に述べたいと思います。
 元来私が始めて報徳の教えを信じましたのは、明治9年でありまして、それより以来先輩諸氏について、いささか研究致しました。その結果、私が、報徳を考えましたのがすなわち職務本位ということに帰着したのであります。
 報徳訓は諸君の御熟知の通り。

 父母の根元は天地の令命にあり

 身体の根元は父母の生育にあり

 子孫の相続は夫婦の丹精にあり

 父母の富貴は祖先の勤功にあり

 吾身の富貴は父母の積善にあり

 子孫の富貴は自己の勤労にあり

 身命の長養は衣食住の三つにあり

 衣食住の三つは田畑山林にあり

 田畑山林は人民の勤耕にあり

 今年の衣食は昨年の産業にあり

 来年の衣食は今年の艱難にあり

 年年歳歳報徳を忘るべからず



の12句でありますが、 この句には過去現在未来を一貫し、道徳経済を一括して、最も深遠なる意味を包含せるもの であります。
 私は自分だけの卑見をもって、極めて簡単に、実用的に解釈をしたのであります。
 今日世間に現存している 人間はいかなる身分のものでも、天地の恵みと祖先の遺徳とによりて、現代の開明に浴している のであります。すなわち学問でも、教育でも、政治でも、宗教でも、はた、農工商その他いやしくも人間社会における一切の事物は、ことごとく、我らの祖先が数千年前の有巣時代穴居時代より今日までに、経験工夫のかずかずを積みて遺されたる賜物であることは、誰人も熟知のことであります。然らば天地の恵みは申すまでもなく、祖先の遺徳の大なることは、到底言葉で言いあらわすことのできることではない。
 故に 人たるものはこの大恩徳を報いる心がけが必要である ことを了知すると 同時に、その実を挙げねばならぬ。 これがすなわち 報徳の行い である。然らばいかなることを為してこの大恩徳に報いることができるかと申せば、 現代の我々は倍々勤労を積みて、人の幸福となるべきことを拓き、祖先の遺徳に加えてこれを後代に譲り、子々孫々、またかくのごとくにして、数百千代の後には、この世界をして、ついに円満無欠の楽土となすようにつとめること、これがすなわち右申す大恩徳に報いる所以 でありまして、また、 実に人間仲間に、一貫したる人生の大目的でなければならぬ。
(ちょっと、ここにお断りしておきたいことは、私が今日いう祖先または子孫という語は、通常、血統の上より称する狭義のものではなく、我々より前の人は皆祖先、後に生まれ出ずべきものは、皆子孫とする広義の見解によるものであるということであります。)
 人々がこの大目的を達せんとするには、もとより方法と手段とが必要でありますが、これはさほどにむずかしく考えるにも及ばぬ。人間仲間には古よりそれぞれ職務を分担するという最も便宜なる習慣が自然に成立しておりますから、人々が銘々にその職務を完全につとむるというだけの事であると私は存じます。なおこの意味を細説しますれば、およそ人として職務のないものはない。而してその 職務というものは皆、直接自己のために勤めるように心得るものもありますが、その実は左様で無い。何の職務でも、自己のためには間接であって、まずもって、他人のために勤めることに事実がなっている。 その証拠は一国の帝王は民を恵み、政治家は国のために政事を講じ、教育家は人の子弟を教え、医者は人の病気を治療し、実業家は需要者のために農工商の業をつとめ、車夫は客のために車をひき、下女は雇い主のために飯を焚き、その他一切の職務が、皆他人のためにつとめるようにできていることが、何と妙ではありませぬか。それ故に 一般の人々が職業を本位として職務のためには、一切の私事を犠牲として、誠意専心、勤労をなすときは、自ら人間仲間に、一貫した前述の大目的に適うようになってくる。
職務を本位として勤労を尽すことが、人生に一貫したる大目的に適う が故に、自然の報酬としてあるいは立身出世をなし、あるいは富貴福徳を得、あるいは名誉尊敬をうけ、遂に万世に不朽の令名を伝えるなど、その形は種々かわるが、ともかくも、その人の 勤労に対して、尊ぶべき報いが期せずして来る ことは、古来の歴史に明らかなので、すなわち その勤労の副産物 である。而 してこれに反するものは、必ず人生の発展を害し、自己が一時、幸いなようでも、いつか知らず、自己もまた、必ず損害を受くる ことの例は、私がここに列挙しないでも、世間にいくらでもあることであります。要するに 職務を本位として勤めるものは、自ら人生の大目的に適うて、自己の幸いは自然に期せずして来り、これに反するものはいつか反対の結果を受ける こととなるのであります。されば人の踏むべき道の大本は、実にここにある。これ以外にことさら、人が善と称するものは皆この大本幹に付きたる枝や葉のごときものに過ぎないのである。
 故に人たる者は何はさておき、自己の職務を本位として、一生懸命に働かねばならぬ。これがすなわち報徳訓の義に適うものであると私は考えまして、既に30年間、この主義をもって、馬車馬的に、一直線に進行して来たのであります。
 なお一言、職務本位の主義を実行する上につきての心がけを申上げたいと思います。 職務本位主義を実行しまするには、大いなる決心覚悟が必要 であります。元来いずれの職務でも順境にのみ進行することは望みがたいことで、必ず逆境に立つ場合があるものと覚悟せねばなりませぬ。そこで 逆境に処する工夫 が最も必要であります。それには初めから大決心がなくてはならぬ。この大決心は一種の悟道より生ずるものであります。それですからこの悟道について、私が感じました要点を簡単に申し述べます。

二宮翁夜話に
「夫れ人、生れ出たる以上は死することあるは必定なり。長生と雖もど、百年を越ゆるは稀にして限のしれたる事なり。若死と云も、長寿と云も 実は毛弗の論なり。譬へば蝋燭に大中小あるに同じ。大蝋と雖も、火の付たる以上は、4時間か5時間なるべし。然れば人と生れ出たる上は必ず死するものと覚悟する時は一日活れば則ち一日の儲け、一年活れば一年の益なり。故に本来我身もなきもの、我家もなきものと覚悟すれば、跡は百事百般皆儲けなり。」 云々
とあります。これがすなわち私の申しまする悟道の法で、すなわち二宮翁の遺教であります。
 なんと諸君、この道理は実に簡明で誰人にも解し得らるることではありませぬか。元来一度生じたものは3歳で死ぬも一生、50歳100歳で死ぬもまた一生であります。然れどもいつ死するということが、自分にもわかるものは天下にないのであります。それで
「今日また今日と生活している限りは幸福であり、儲けである」  と覚悟し、いかなる逆境困難に出会いましても 「もともと、死すべきものが生活している。その幸福に付帯せる年貢なり」 と思えば 、「いかなる困難でも、一切が丈けの知れたことである」 と一大決心をなし、而して職務を本位として誠意専心勤勉するときは、最愉快にこの世に処することができる。この道理が会得せらるれば、胸中豁然として一点の汚物なきに至ること必定であります。されど、ただ了解せられたばかりで、 実行が伴わねば何の用にも立たぬ。そこでなおこの上にも必要なものは強固なる意志 であります。すべて人が一たび決心をした以上は永久かわらぬようにするのに、意志が強固でなければいけない。また善(すなわち人生終局の目的を達するためになること)と知りては直にこれを行い、悪(すなわち、人生終局の目的を達する妨害となること)と悟りては直にこれを去るということも、強固なる意志に基くのでありますから、強固なる意志を有するということも、また肝要なことであります。
 今一応、概括して要点を申しますると、
第一、人は人生に、一貫せる大目的を認めてそれを目標として進行すべきものなること。
第二、この大目的を達する手段方法としては職務本位ということが必要であるということ。
これが、今日の本論でありましたが、なお職務本位を実行しまするには、
第一、死をも恐れず、艱苦にも堪うべき大悟道の必要なること。及び、いわゆる悟道の方法。
第二、強固なる意志を有すべきこと。
に論及したのであります。





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最終更新日  2024.04.26 00:00:24


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