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2024.05.30
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カテゴリ: 報徳
報徳第53編 p.21
浜松の生い立ち
◎神谷與平治君伝
「骨くだけ身は粉(こ)になりて仕舞うとも立てし誠の心くじくな」
とは神谷與平治君の述懐にして其の誠心を察するに足る。
そもそも君が骨を砕き身を粉にしても一意誠を尽くさんと誓われしは是れぞ即ち斯道を拡張せんが為なり。
君、通称與平治、字(あざな)名は森之、正信誠と号す。本姓神谷氏に出て、遠江国旧長上郡下石田村の人なり。
父は森時といい、敬神の志篤くして、伊勢出雲を始め四国西国等より諸州の神社霊場を参拝するもの、年次幾十回なるを知らず、
会々(たまたま)相州の人安居院義道、浅田有信相携えて、伊勢大々万人講の事を以て、遠州浜松に泊し尋ねて森時氏の敬神家たるを聞き、氏に勧むるに講社加入の事を以てす。
氏直ちに応ぜずと雖も、其の翌年に至り長子森之君をして、二翁が、再び神宮に参拝するに従わしむ。旅次数日二翁偶々君に説くに、二宮先生報徳の教えを以てす。
君ここに始めて報徳の趣意を知るを得て、大いに感激、斯道を奉ぜんと欲し、行をおえて郷に帰るや、二翁を家に請じて、村内の有志を集め、報徳の良教を聴かしめ、遂に自村に一社を結び、鋭意精心同志協力して斯道を奉体す。

蓋し又た君の力多きにありと云うべし。
文久3年安居院翁の没するや、翁に代りて斯道を説くものなく、漸次衰微の色を呈し、或は単に借財返却法のみを以て、報徳の旨意と為し、分度推譲の旨を誤るものあるに至れり。
君が蓋然として家兄(久太郎と称す。又報徳家なり)に謂って曰く、今や報徳の教えに化するもの、多からんとするに際し、又たこの悲運に遭遇し、その本旨を誤りてやや衰色を示す。
今にして是が矯正せずんば、恐らくは二翁の丹誠に悖らん。
吾れ不敏と雖も二翁の訓諭に浴せり。豈に座臥傍観するに忍びんや。
将に各村を巡回してその教えを布説せんとすと。家兄大いにその意を賛し、依て君すなわち山名郡彦島邑名倉太郎馬、佐野郡倉真村岡田佐平治、豊田郡深見村伊藤七郎平諸氏と謀り、巡回報徳会なるを起し、自ら率先して各邑を遊説し、又た能く勤むるものを録して、一冊子をあつめ、之れを浜松町玄忠寺の仮本社(当時遠州報徳社中仮本社を同寺内に設けあり)に備えて社員奨励の一助とす。
嗚呼報徳の道一時中絶せんとして、復た勃興せるは君の力預て多きに由らずんばあらず。
君の家は実に天龍河畔に接するを以て、年々多少の水害を蒙るを免れず、殊に今を去る数十年前にあってはその被害最も甚だしく、所有の田圃五町余歩、砂礫の被う所となり、全村殆ど砂漠の観を現出したり。
君元来健康人に勝れ、膂力能く十人に敵す。即ち朝夕星月を戴きて出入りし、数年を出でずして興復したりと雖も、里人概ね資力続かず興復の術なく、年と共に困窮するもの多く、百弊従って生じ、将に惰民の巣窟と化せんとす。
君はこの間に処し村民に説き示し、懇諭殆ど身心を尽くし、遂に報徳社を結成す。
その法神明を敬し怠惰を戒め、和睦斉家を以て主となし、農家必要の試作作増し及び借財償却子孫安永等の目的を以て一打力をあわせて勤勉し、その社中の充備するを待ちて、漸次他村に及ぼさんとし、ややその緒に就くを得たり。

また何ぞ難きことあらんや。
もしその法を行わんとするものは我が撰に成れる書札を取って法となせと、知己を自然に待つものの如し。
初め安居院翁報徳田畑大益伝を著わし、先ず君に行わしむ。
その法たる全く旧慣を改むるものにて、従って煩労多し。
人皆なこれを厭う。

これに依りて遂にその収穫前日に倍するに至る。
ここに於て人始めて、その法の佳良なるを知り、人々競うて之に準拠するもの益々多し。ただその粒蒔きの法のみは虫害多きことの故を以て之を行うものなし。
君またその理を研究し、年々試作をなせしに更に虫害を見ず。一反歩の収穫年々十苞に下らず。





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最終更新日  2024.05.30 20:04:36
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