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Q 実に劇的です。その時、北海の空一面に天使の大群が集まって、両雄の闘いをば、息をのんで見ていたことだろうと思います。
それでクラークはどんなキリスト教を伝えましたか。
A まず第一に唯一永遠の神エホバを畏れ拝すべきことと、われらの罪を贖うために十字架上に死にたもうた救い主イエス・キリストを信じてその忠実な弟子となるべきことと、キリスト教の教えと精神とに従って清い、義(ただ)しい生涯を送るべきこととを教えました。
下段に署名するS.A.カレッジ(札幌農学校)の生徒は、キリストを彼の命令にしたがって告白することと、十字架上の彼の死に我々の罪のためにあがないを為したもうかの救い主に我々の愛と感謝とを示さんがために真の忠誠をもってすべてのキリスト信徒の義務を果すこととを願いつつ、そして彼の栄光の増進と彼が代って死にたもうた人々の救いとのために彼の御国を人々の間に前進せしめんことを熱心に望みつつ、彼の忠実な弟子となることと彼の教えの文字と精神とに厳密に一致して生きることとを。この時よりのち、神に対しまた相互に対して、厳粛に契約する。そして適当なる機会のある場合には我々は試験、洗礼、入会のためにいずれかの福音主義教会に出頭することを約する。
我々は信ずる、聖書は言葉をもってせる神より人への唯一の直接の啓示、光栄ある未来の生命への唯一の完全無謬な指導者であることを。
我々は信ずる、我々の憐み深い父、我々の公正にして至上なる支配者にいましたまい、そして我々の最後の審判者にいましたもうべき、ひとりの永遠の神を。我々は信ずる、すべて心から悔いそして神の子を信ずる信仰によっておのが罪の赦しを得る者は、この生涯を通じて聖霊によって恵みゆたかに導かれ、そして天の父の注意深い摂理に護られ、かくしてついには贖われた聖なる者の享受するもの追及するものにあずかる備えをなさしめられるべきことを。しかし福音の招きを受けることを拒むすべての者はおのが罪の中に滅び、主の御前から永久に退けられなければならないことを。以下の誡めは、我々は我々の地上の生涯のあらゆる転変を通じてこれを記憶しこれに服従することを約する。
汝、心を尽くし精神を尽くし力を尽くし思いを尽くして主なる汝の神を愛すべし。またおのれのごとく汝の隣人を愛すべし。
汝、いかなる被造者または被造物のいかなる彫像またはいかなる肖像をも拝すべからず。
汝、主なるなんじの神の御名をみだりに用うべからず。
安息日を覚えてこれを聖(きよ)く守り、すべて不必要の労働を避け、これをできるかぎり聖書の研究となんじ自身及び他人の聖なる生活への準備のために献(ささ)ぐべし。
汝、汝の両親と支配者に服従し、これを敬うべし。
汝、殺人、姦婬あるいは他の不潔、窃盗、あるいは欺瞞を犯すべからず。
汝、汝の隣人に何の悪をも為すべからず。断えず祈れ。
相互の援助と奨励のため我々はここに『イエスを信ずる者』の名のもとに一団体を構成する。そして我々は聖書あるいは他の宗教的書籍文書の閲読のため、会談のため、祈祷会のため、我々が共にする間、毎週一回以上集会に出席することを固く約する。そして我々は衷心より願う、聖霊の我々の心における明白なる臨在が我々の愛を活気づけ、我々の信仰を強め、我々を真理の救いの知識に導きいたらんことを。 S( 札幌 ) にて 1877 年 3 月 5 日。
<クラーク精神( Clarkii Spirit )>
宮部金吾は「札幌農学校創立者であるWilliam Smith Clarkの名は、北海道大学が存在する限り、また日本にキリスト教が宣伝される限り、永遠に敬慕の念をもって記憶されるであろう」と自叙伝に記した。日本キリスト教史上最も重要な運動は、クラークが札幌農学校にもたらした。
その成文化された最初のものが「イエスを信ずる者の契約」であり、クラークによって書かれ、第一期生全員と第二期生の大半が署名した。これは、神と相互に対しての契約である。アメリカ開拓のメイフラワー号のピルグリム・ファーザーズの契約と同様に共同体創設の構成をもつ。
何を契約したか。キリストを告白すること、キリスト教徒としての義務を果し、キリストの栄光を増進するためキリスト教信仰を人々に前進することを願い、彼の忠実な弟子となり、聖書に一致して生きること、そして適当な機会に福音主義教会に出頭することを契約したのである。
何を信ずるのか。聖書を唯一の指導書とすること、一人の永遠の神を。イエスを信ずる者は神により護られ救われ、拒む者は罪の中に滅び、神の前から永久に退かれることを。次の戒めを記憶し服従する。1神を愛し、隣人を愛する。2偶像を拝まない。3神の名をみだりに用いない。4安息日を守る。5両親と支配者に服従する。6殺人、姦淫、他の不潔、窃盗、欺瞞を犯さない。7隣人に悪を行わない。8絶えず祈る。相互の援助と奨励のため一団体を構成し、聖書を読み、祈祷等のため毎週1回以上集会に出席することなどが相互に契約された。
内村鑑三は、当初この契約は、第一期生からなかば強制的に署名させられたとあるが、むしろ手紙によれば、同室の親友宮部の勧奨が大きかったようである。内村にとってその実際的利益は「宇宙には一つの神」があり、「多数-800万以上-でない」ということで、毎朝四方の神に拝礼したのを止め、途中の神社への祈りを止めることができることにあった。「新しい信仰によって与えられた霊的自由は心と体に健全な感化」を与え「勉学に一層集中」できるようになった。
札幌農学校生徒にとって、最初の課題は「安息日を守る」ことにあった。契約では「安息日」は「不必要の労働を避け、聖書の研究と自他の聖なる生活への準備にあてよ」と説かれ、学校の勉強にその日を費やすことはよくないことになる。安息日の遵守が信仰の障害に感じられる生徒が多く、逆に契約者は安息日を固く守り(日曜日の夜12時まで勉強しなかった)、その他の日に集中的に勉学して、むしろ成績で非信仰者を圧倒することによって、自らの信仰の正しさを立証しようと懸命に努力したように思われる。努力の繰返しは彼らの生活態度となっていく。
「イエスを信ずる者」の特徴は教会ではなく、聖書を唯一の指導書とし、「絶えず祈れ」であった。内村は宮部家の祝いのテーブル・スピーチでなぜ「かくも長く交友を続けた得」たか語る。同室4年間、毎夜10時の鐘を聞けば独りになって「人の見ざる場所で神に祈」った。その神聖な祈祷を相互に見た。そして相互を信頼したことにあるという。そして広井勇も自分の信仰は特殊だからと、家族の合同の祈祷には加わらず、部屋に鍵をかけて生涯独り祈祷し涙したのである。
内村鑑三は、札幌農学校のピューリタニズムの信仰を土台にしながら、鎌倉仏教の祖師たちが中国渡来の仏教でなく、「日本仏教」を打ち立てたように、欧米のキリスト教信仰でない「日本キリスト教」を創造する困難な道を生涯をかけて実践し続けることになる。マックス・ウェーバーは、「資本主義の精神」はプロテスタンティズムの倫理に由来し、それは西ヨーロッパとアメリカで起ったという。しかし、日本にも直接ピューリタニズムはもたらされたのだ。それは札幌農学校出身者の教育的活動により、日本全国に広まり、日本の近代化合理化に重要な役割を果たした。そして内村鑑三によって創始されたキリスト教の日本化は今も進展中なのかもしれない。
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