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本日付の『産経新聞』朝刊の第一面、高速ツアーバスに関する記事でコメントを紹介いただいた。全国紙の一面、というのは初めての経験。ただできるなら、事故やら撤退やらといったネガティブな話題はもう卒業したいのだが。なお先日も書いたが、本日の記事も含め各社の記事に書かれた事実は間違いとは言えないものの、少なくとも高速ツアーバスの運行にかかわる事業者数だけをもって高速ツアーバス事業全体がシュリンクするかのように紹介されるのは、ちょっと本質とは違う気もする。今回の制度改正により、これまで貸切バス事業者として、高速ツアーバスの企画実施会社(旅行会社)から発注があれば高速ツアーバスの運行を担っていた会社の多くが、乗合バスの事業許可も貸切バス型管理受託の許可も得ず、結果として高速ツアーバスの運行から撤退することは一つの事実。しかし、それらの事業者の多くは、高速ツアーバスに限らず、観光つきのバスツアーや修学旅行、社員送迎など多様な貸切バスの仕事を請け負っていて、その一部が高速ツアーバスであったという会社が多い。特に、お盆や年末年始など高速バスの繁忙期は修学旅行や社員送迎などの仕事が少ない時期であり、ちょうどいい補完関係にあるということで、繁忙期のみ高速ツアーバスに顔を出す事業者が多かった。今回の制度改正においては、貸切バス型管理受委託という新しい制度の下で同様の波動対応が可能になったはずであったが、関越道事故の後、制度の詳細を組み立てる際に、当初想定していた姿よりもかなり「硬い」運用となることが決まってしまった。一例を挙げれば、受託に使う車両にも乗合バス車両の要件(三方の行先表示、車内での次の停留所表示、降車ブザーなど)が求められる点。従来から、(「既存組」高速乗合バス事業者はおおむね乗合と貸切を兼業していたこともあり)自社内で貸切バス車両を高速バスの続行便として活用する際にはそれらの要件は求められていなかったから、この点は制度が後退したと言える。結果として、貸切バス型管理受委託は、波動対応が目的と言いながら、事実上、通年での委託が中心とならざるを得ない。結果として、お盆などの繁忙期に続行便を手配することが困難になり(停留所のキャパシティなど別の要因もある)、これらの時期に高速ツアーバス(今夏からはそういう呼び名も使えなくなるのだが)を使ってくださっていた利用者にとっては、予約が取りづらい、早々に満席になっていた、ということが起こる。本日の産経でご紹介いただいたコメントはこの部分だ。もっとも、常々述べているように、高速ツアーバスの年間利用者数は750万人(事故前年の数字)であるのに対し高速乗合バスは1億1000万人。わずか7%のシェアしかない。さらに首都圏~京阪神、名古屋、仙台を結ぶ大都市間路線においてこそ高速ツアーバスは高速乗合バスを逆転し大きなシェアを握るが、地方向け路線、特に短・中距離の昼行路線には高速ツアーバスはほとんど進出できていなかった。したがって、今回の制度改正で供給量が大きく減少するのは大都市間路線と、せいぜい、首都圏~青森県、北陸(富山県、石川県)などを結ぶ限られた長距離の夜行路線に限定される。さらに大都市間路線とて、所定便は多少の減便はあるものの、普通の平日においてはもともと空席が残っていたのであり、乗車率が上がることはあっても「席が取れない」とまではいかない。結局、影響があるのは、繁忙期の大都市間路線に限定され、該当の利用者には心苦しいが、高速バス市場全体から言うと極めて軽微な影響である。ただ、「需要量に合わせた柔軟な台数設定」が高速ツアーバスの長所であったことも事実であり、また貸切バス型管理受委託は「既存組」高速乗合バス事業者にとっても活用するメリットが大きい制度であるから、先に述べた車両要件の件も含め、今後はこれらの課題を乗り越える工夫が求められる。大学の学生向けシャトルバス(主に平日)に運用される貸切バスを高速バス仕様で導入し、週末は京王電鉄バスから貸切バス型管理受託を行なって新宿~松本線の続行便として運用している西東京バスの事例などは参考になろう。また、高速ツアーバスからの「移行組」の顔ぶれを見ると、これまでの事業形態の違いなどから、今回の制度改正への対応には有利不利が見られる。安全意識の高低とは別の部分で、制度上、大きな変革を求められる会社はどうしても事業規模の縮小をいったん余儀なくされている。一方でさほど大きな変化なく新制度に対応できる会社は、事業規模を維持できそうだ。ついでに言うと、従来から高速乗合バス移行をコツコツと目指していた会社たちは、新制度への対応こそさほど苦労せず乗り切れるものの、停留所の確保が全体の枠組みの中に取り込まれてしまい目論み通りいかなかったりして、悲喜こもごも、横で見ていてかわいそうな例も少なくない。とはいえ、ここで同業者にやっかみを言っていても何も進まない。一方で「既存組」高速乗合バス事業者も、記事を読んで、<そうか、ツアーバスは縮小するのか>と安堵している場合でもない。両者とも、真摯な姿勢でこの変革期を乗り切っていただきたい。特に高速ツアーバスからの「移行組」各社には、頼むから、せっかくここまで築き上げてきた移行スキームを壊すことのないよう、事故防止やルールの遵守、そして各種申請書類の早期完成を徹底してもらいたい。昨年の事故以来、文字通り寝る間もなく移行スキームの構築に関わってきた身としては、移行期限までひと月という最終局面を迎え、まさに祈るような気持ちである。
2013.06.30
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高速ツアーバス各社の乗合移行の支援作業は、停留所をおおむね確保できそれを出発時刻単位で各社に割り振り終わったら私の手を離れるかなと勝手に考えていたのだが、結局巻き込まれっぱなし。この「放っておけない」というかおせっかいな性格のせいでずいぶん損な役回りを背負わされてきたような気がして反省。とはいえ放っておけないものは放っておけない…そういう性格でなければ、コンサルタントという影の役割ではなく自ら事業をやっていたに違いなく、そう考えると、つまりは一生治らない、ということだろう。もっとも、道路占用許可等の各種申請作業や、停留所標柱そのものの発注やら表示内容のデザインやらといった実務(と、それら実務を進めていく上での関係者間の調整。そっちの方が実は何倍も時間とエネルギーが必要)については私は関わらずに済んだ。自社の移行準備を進めながら業界全体の調整役も引き受けイッパイイッパイになっている業界大手数社の担当者たちには申し訳ないが、ようやくこのブログも更新しようと思えたのだから、少しは余裕ができほっとしているというのが本音である。さてこのところ、乗合許可(または管理受託の許可)を取得する事業者の数だけをもって、<高速ツアーバスが半減>などと伝える報道が続いているが、まあ間違いとは言えないものの本質とは少し違うなと感じている。営業主体(企画実施会社。移行後は乗合許可事業者)の数はほとんど減っていない。ただ停留所の問題や車両の要件などが理由で便数は減少の方向にあり、特に繁忙日の続行便も含めた台数が減少することは間違いない。多くの媒体のご取材が継続しており、真実を伝えていただけるよう、真摯に対応を続けたい。話は変わって、先日このブログにひとしさんから幅運賃についてご質問をいただいた。また西武バス等の池袋~新潟線、南海バス等の大阪~立川線、そして九州各社の島内路線など「既存組」高速乗合バスでも新運賃の導入が続いている。ちなみに前の2つは「発車オーライネット」の新機能を活用したもの。九州は14社局いっせいに基幹システムを京王の「SRS」に切り替え、同システムの優位性を活かしたもの。ただいずれも以前の法令下でも対応できなかった内容ではなく、したがって法令改正自体というより「一本化」による競争環境変化が背中を押した新運賃というわけで、大きな一歩と評価をしつつも、各社がさらに踏み込んで新制度を活用してくれることを期待している。何度も書いたことだが、価格について格段の法的縛りがない高速ツアーバス業態においても、わずか7~8年前までは、せいぜい「週末は500円アップ」というような設定が主流であった。それが、ウェブ化の進展により、カレンダー型の価格表示から空席検索(乗りたい日の価格がずばり表示される)にメイン動線が変わったことにより価格の幅(上限と下限)が大きく拡大した。さらに、一度価格設定を済ませ予約受付を開始した後でも、状況の変化により価格を変更する(同じ日の同じ便の乗客でも、予約日によって価格が異なる)ことが当たり前になった。その結果として、よりアグレッシブな価格設定が可能になり高速ツアーバス各社の収益性は一気に向上した。これと同様に、予約受付開始後も運賃が変動すること(ダイナミックプライシング)が高速乗合バスでも可能になった点こそ、このたびの新制度のポイントであり、「既存組」高速乗合バス各社による積極的な活用が待たれる。では高速ツアーバスの真似をすればいいのかというとそうでもない。高速ツアーバス各社は、ウェブ予約が定着して以降に誕生、成長したから、利用者の側もウェブ予約・決済が前提である。むしろ、ウェブ予約以外の利用者を(会社によってはTDRのパッケージなどの比率が大きいところもあるが)無視してきたと言ってよい(と言葉にすれば冷たいようだが、ターゲットを選定することは何も悪いことではない)。また法令の縛りがあり事前予約・決済が必須であったから、逆に言えば当日の飛び込み客のことは無視できた。一方で「既存組」はそうもいかない。スタッフばかりか乗客まで慣れきっている従来のオペレーションと整合を図りながら、ダイナミックプライシングを実現せねばならないのだ。また、「既存組」の中で、ダイナミックプライシングの対象を長距離路線に限定して考える傾向が見られる。おそらく、高速ツアーバスが(様々な理由から)まずは大都市間路線、次に大都市と地方を結ぶ長距離夜行路線においてライバルとして台頭してきたから、それらの路線を守りたい、という思いが先立つのだろう。しかし、短・中距離の多頻度路線を後回しにしていい理由もない。また運賃変動というと、「値下げ」「割引(特に早期予約・早期購入割引)」と決めつける方も少なくないが、普通運賃の見直しや往復割引の廃止などで、便によっては単価を上げることも考えられる。また、運賃は繁閑(乗車率、人数)だけに連動するものではない。乗車率が低くても高単価に設定すべき路線や日、便もある。ダイナミックプライシングを含むレベニューマネジメントとは、<値下げによる新規顧客開拓手法>ではなく、<収益を最大化するための手法>である。そしてそこで得た収益を、さらに事業を充実させるための施策(わかりやすい例で言えば新車の投入とか車内サービスの向上とかさらなるプロモーションとか)に再投資する仕組みを作ることである。<ツアーバスが同じ土俵に乗ってくるから>というような消極的な理由で取り組むべきものではない。各社の現実の事業内容と、新制度をうまく組み合わせることが肝要なのだ。「既存組」高速乗合バス各社が、「ツアーバスの亡霊」におびえる必要は一切ない。
2013.06.26
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