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今回の出張は3つの県の県庁所在地でそれぞれ1泊ずつ。3日とも遅くまで本会議、じゃなくてお酒の席が続いた。関西で用件を済ませた後、翌日は取引先である九州産交バスへの訪問が入っていたので遠回りだが宮崎で1泊。宮崎と言えば、元同僚で今では宮崎県議会議員を務める武井君だ。忙しい彼だが私の出張に合わせ夜の時間を空けておいてくれて、現況など話していたら気がついたら深夜2時。私が既存事業者にばかりお邪魔しているのを聞いて「新規参入組にももっとサポートしてやらんと!」。彼は元宮崎交通の社員ながら、立ち上げから私たちのサイトにたずさわっており全国の中小貸切専業者を口説いて高速ツアーバスにどんどん引きずり込んで行く役割だったから、新しいチャンスをつかんで成長しようとしている彼らの熱い目が忘れられないのだろう。翌日は早起きして、彼が原則毎日やっているという「辻立ち」に立ち合う。宮崎交通創業者で「観光宮崎の父」岩切章太郎翁の銅像前、という定位置がなんとも彼らしい。東京で辻立ちといえば歩行者の多い駅前などだが、この銅像前は「クルマの通勤ラッシュ」を前に演説をするイメージだった。相手がクルマだから、正直、ちゃんと聞いてくれているとは思えない。その日のテーマは外国人参政権の話だったが、あれではドライバーも武井センセイが参政権付与に賛成なのか反対なのかもわからないだろう。それでも彼は毎日あの場所で演説をしているのだ。もちろん、テレビCM同様、毎日顔を見せることで「刷り込み」になるとか、毎日辻立ちを続けることでまじめな政治家というイメージが定着するとか、長い目でのプロモーション(要するに選挙対策)にはなっているだろう。だがそれだけで早朝から毎日は大変だろう。議員としての彼は、民主党にも自民党にも属さず若手3人で会派を作っている「改革派」だ。古いしがらみに縛られた宮崎の政治を変えようとしていて、例えば本人は「先生」と呼ばれるのをひどく嫌うなど「いわゆる政治家」「いかにも政治家」に見られないよう、あるいはそうならないよう注意している。一方、演説を聴いて感じたのは、やはり彼は演説がうまい(そういえば、商談でのプレゼンも演説風だった)。というか、演説が大好きだという感じが伝わってくる。歩行者に握手を求められても、その握手が見るからに上手だ。感じたのは、ああ彼は本当に政治を、宮崎を、そして宮崎の政治を愛しているからこそ、政治、宮崎、そして宮崎の政治について考えに考えた結果、本気で「宮崎の政治を変えよう」としているんだな、ということだ。あの変革への意思は、「いわゆる政治」が嫌いだからではなく、「いわゆる政治」を愛するが故なんだなと感じたのである。バスという産業に強い思いを持つからこそ、それを変えようとしている自分自身と重ねあわせ、勇気をもらって宮崎を離れた。最終日に訪れた街では、その県には交通を専門とする研究者の先生が3人しかいらっしゃらないのに、地元の既存事業者の社員さんと一緒に、その3先生が揃って迎えてくださった。なるほど大学の先生というのは意外と忙しく、大学の就職委員になったりすると企業回りなども大変そうだ。もちろんご自身の研究と講義、そして地域公共交通会議の委員など大変そうだ。「交通」と名がつけば何でも飛んでくるようで、経済学部で交通論を担当なさっている先生は、地元の路線バスの交通事故についてテレビ局からコメントを求められたと苦笑されていた。たしかに明らかにお門違いだ。しかし私は、その件は極めて象徴的だと受け取った。「地方分権」というきれいな言葉で公共交通についてのかなりの責任が国から地方自治体に移った。路線バスが赤字で撤退するとか、コミュニティバスを走らせようとかという際に、かなりの権限を公共交通会議が実は握っている。しかし実際には、本当のご専門は物流だとかシステム工学だとかいった先生方までその会議に動員せざるをえない。バスを専門とする研究者が各県に何人もいるはずがないからだ。先日ご一緒した先生方は皆さんバスに対しても熱心で、利害関係者の調整も上手そうなお人柄だったからおおむねうまくいくだろうが、それでも、たまたまそういった研究者に恵まれた県の町村は、コミバスを走らせてほどほどに成功するかも知れない。事業者もメリットがあるし、地域住民にも喜ばれるだろう。しかし今バス産業に吹いている逆風は、果たしてそのような個別の成功事例を作ることで跳ね返せるようなレベルなのか。○○県は国立○○大学の先生が、△△県は私立△△経済大の先生が、というように個別に壁にぶち当たりバラバラに模索しているのだとすれば、それは余りにもムダが大きい気がする。たしかに名古屋大の加藤博和先生の言うとおり「バスは東京の会議室を走っているんじゃない」んだとしても、バスが抱えている構造的な問題は全国共通であり、それなら中央で英知を結集して仕組みとしての改善を考え、各地域ではいかにそれを地域の実態に合わせてアジャストするかに特化するべきではないか。バスに求められているのがもし「小さな改善」であれば、より地域に密着した取り組みをコツコツ積み重ねるボトムアップ型の改革が有効だろうが、いまバスが直面している課題はもっともっと構造的なものだ。「公共交通」「バス」にたずさわる研究者の先生は全国合わせるとかなりの数になるはずだ。その先生方の知恵を体系的に持ち寄り今後のバス産業のあり方を考える背骨にしていかなければならないと感じた。いわば「バス産業憲法」作りだ。そうしなければ、今後間違いなく地域の路線バス事業の赤字額が増加する中、今まで以上に税金を投入してもらう「大義名分」が立たないだろう。つまりはバス路線を維持するための方策の研究であり、事業者側が業界全体で本気でこれをサポートする価値は十分にあるはずだが。全国どの街にお邪魔しても、地元のバス事業者や研究者の皆さんと食事をご一緒しながらバスの将来を熱く語る「サロン」のような場ができるようになってきた。それぞれの県でバラバラに開かれている「移動サロン」状態だから、横のつながり作りの意味もこめて年に一度でいいから「全国大会」を開いてみたいものだ。人との出会いは、それがさらに新しい出会いを呼んで、もっと輝きを増すのだと思う。
2010.01.30
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各地から、高速バスや路線バスの事業縮小の話が伝わってくる。「『1000円高速』の影響」が言われることが多いが、以前にも書いたように、よくよく冷静に数字を見ると、「1000円高速」によって減少した高速バスの黒字額など、バス事業全体の赤字額のごく一部に過ぎないだろう。バスを「事業」として捉えるなら、多くの事業者でそもそもそれは成り立っていない。一方で、経済環境(短期的に見れば昨今の世界的な経済不順。長期的に見れば土地の値上がり神話に依存した右肩上がりモデルの終焉)が、多くの既存バス事業者の会社全体の経営によからぬインパクトを与えており、会社の存続を優先するならば、これまで「聖域」「原点」として社内で見過ごされてきたバス事業の赤字を結果として看過できなくなった、ということだろう。長い間、路線バス事業は地域独占的に認可を与えられてきた。バス事業者は「バス事業を独占的に営業させてもらっていた」のであり、その経緯を考えると、「赤字だから」といって撤退するのは信義にもとる。だから路線廃止などの事業縮小にはそれなりの大義名分が必要で、そのために、実際の影響度合いの大小はともかく「『1000円高速』の影響」を掲げること自体は、(少なくとも嘘ではないわけだし)それほど悪いことだとは思わない。ただ問題なのは、自分たちの方便を自分たち自身が心から信じてしまうことだ。高速バスや流通、不動産など「副業」の黒字と公的補助でなんとかその穴埋めをしているとはいえ、繰り返すが路線バスという事業は全国的に見て赤字基調なのである。赤字であるから即、役に立っていないと切り捨てるつもりもない一方で、本当に多くの利用者が喜んでバスを使っているなら赤字にはならないはずだとも思う。バスにたずさわる者はみな赤字であることを多少は恥ずかしく感じるべきだし(もちろん、赤字であってもバスを走らせることの意義深さはよく理解しているが)、誰か(例えば税金を納めている市民や、黒字を計上している不動産・流通部門の社員とその顧客)に助けてもらいバスという仕事を与えてもらっているという点を肝に銘じ、その人たちに心から感謝しなければならない。路線バス事業が市民生活のために必要だという点は間違いないとして、必要だけれども元から儲かるはずがない仕事(例えば消防、救急、警察、ごみ収集など)であれば、最初から民間企業がたずさわっていたはずもない。つまりは少なくとも我が国においては「バスは儲かる仕事」だったから民間が任されてきたのだ。路線バス事業者の成長の歴史を振り返ると、路線バス事業が赤字化したのは(会社ごとに時期に差はあるとはいえ)おおむねさほど古くはない。儲かっていた間は独占的に事業を行なって「いい思い」をして、儲からなくなったら「社会のためにバスを走らせているんだ」と錦の御旗を振りかざすようでは社会は受け入れてくれないだろう。今の時代、どの産業のどの企業も同様に苦しい。むしろ、(特に中心市街地の)土地の含み益や、人口増によるマーケットの自然拡大といった右肩上がりモデルに頼ってきたバス業界こそ、今日苦戦しているあらゆる日本企業の典型だといっていい。バスだけ「苦しいから守って欲しい」は通用しないだろう。バス事業者が「1000円高速」と叫ぶのを聞くと(もちろん、私の会社の業績も含め高速バスがその影響を受けていることは間違いないし、その政策が正しいかどうかは別として)、方便だと割り切って事業縮小の大義名分にしている、あるいは少しでも高速バス事業を不利にしないために条件闘争をしているというよりは、自分たちの業績の悪さ(繰り返すが業績が悪いのはどの産業も同じなのだ)を人のせいにして傷を舐めあっているように感じられて仕方がない。さて、とはいえ公共交通としての路線バスは今後の社会に必要だと信じているし、バスにたずさわる者も食っていかなければならない。ならば、どうすれば今後の我が国で路線バスを維持できるのかと言えば、諸先進国やお隣の韓国などで見られるように、大雑把に言えばネットワーク設計と維持は行政が責任を持ち、しかし旧国鉄のような非効率を生まないために、運行(場合によっては設計の一部)については何らかの競争原理を働かせながら民間が請け負う、という形を追求していくほかないのではないかというのが私個人の考えだ。我が国ではこれまで、設計機能も運行機能も、結果としての黒字も赤字も、全て民間が担ってきた。それはある時代には意味があったが、今後、赤字の度合いがますます増加する中、全てを民間が背負うには重過ぎる。現実に、国交省が開いている「交通基本法検討会」では、両備グループの小嶋代表が「赤字補填中心の補助金行政から、公設・民営化で官と民の責任を明確にすべき」とおっしゃっている(小嶋代表は以前から同様のお考えのようだ。細かく言うと上記の私の意見と異なる部分もあるが、重なる部分も非常に多い)。日本における路線バス事業の制度のあり方は、これまでの常識に囚われることなく、あるべき姿をゼロベースで模索していかないといけない。もちろん、設計から運行までの一連のノウハウを最も多く蓄積しているのは全国の既存バス事業者たちであり、今後も彼らが我が国のバス路線の維持に大きな役割を果たすことは間違いない(※)。だからこそ、何事も外部環境のせいにするより先に、彼ら自身に本気でバスの今後を考え始めていただきたいのだ。自分たち自身の将来の問題として。※なお誤解しないで欲しいのは「バス路線の維持に役割を果たす」というのは、何も「副業の黒字で赤字のバスを維持する」ことを意味するのではない。例えばトヨタやパナソニックは純粋な営利企業であるが、我が国の経済成長や技術の発展にも大きな役割を果たしている。「バス会社の役割・責任=赤字でもバスを走らせること」にこだわるのは、(それを美しいと思う気持ちは理解できるが)むしろ事業の永続性を阻害しているように思える。雪山で遭難しそうになって「寝るな!寝たら死んでしまうぞ!」と仲間の頬をたたくシーンを映画などで見かけるが、極論すれば、いま私がバス業界に抱く気持ちはそれと同じだ。もしも私が単なる悲観主義者で、おせっかい焼きなため過剰に心配しているだけなら、その方がよっぽどいいのだが。
2010.01.26
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5年ほど前(つまり私がまだ入社する前)、宿泊予約サイトとして相応の規模に育った私の会社が次に考えたのが「足回り」予約への進出であり、その第1号が「高速バス」だった(その後、航空、レンタカー、ごく一部だが鉄道の予約も始まっている)。そのとき、高速ツアーバスのみを先行して取り扱うという考えはなく、高速路線バスを運行する既存事業者に対しても熱心に提案に伺った様子だ。しかし結局、既存事業者からは前向きな返事をいただけなかった。今でこそ「高速ツアーバスの育ての親」という印象を持たれている私の会社だが、当然、当時はそのような色もついていなかったにもかかわらずだ。「高速バスの予約サイト」という概念がどうも理解されず(何度も繰り返すが「発車オーライネット」「楽バス」などは、少なくとも私たちの定義では「予約サイト」ではない。それらは私たちにとってライバルでは決してなく、役割分担しながら協力して高速バス各社をサポートしていく仲間である)、ウェブの会社にコストを投下する意義を見出していただけなかったようだ。そうこうするうちに、高速ツアーバス各社(とは言っても当時は9社。現在では60社を超えているが)との話が決まり、まずは高速ツアーバス予約事業が先行スタートすることとなった。「もしもその際、高速ツアーバス各社より先に、どこか大手の既存事業者がイエスと言ってくれていれば」という想像は、私の中ではどこか甘い響きを持っている。私は、「ウェブを通して高速バス市場を大きく拡大させる」という将来像の大きさを優先し、自分自身の「アンチ・ツアーバス」の感覚と折り合いがつかないまま今の会社に転職したから、入社当初は何度も「転職は失敗だった。もう会社を辞めてホテルマンに戻ろう」と感じていたし、その度に「高速ツアーバスより高速路線バスを先に取り扱っていればさえ」と唇を噛んでいた。当初、既存事業者に提案に回った新規事業担当のメンバーは、「経営者の言葉」も「ウェブ屋の言葉」も「旅行会社の言葉」も話せる優秀な連中だったが、当然「バス屋の言葉」は知らない。プロジェクトの最初から「バス語」を話せる私自身が加わっていればもっとうまく提案できただろうし、そもそも社内で、まず先に高速路線バスの取扱を優先すべきだと主張していただろうと、心から悔しく感じていた。また今でも、既存事業者に営業に行った際「もしも私の会社が、高速ツアーバスよりも先に高速路線バスを取り扱っていればどうなっていたでしょうね?」という話をすることがある。皆さん、急所を衝かれたように黙ってしまう(劇薬だから、ある程度気心が通じた相手にしか使えないテだ)。やれ行政が悪い、やれツアーバスが悪い、やれ高速無料化が悪いと全てを外部環境のせいにしがちな彼らにとって、高速ツアーバスがここまで成長した責任の一端は自分たちにあるというか、自分たちの選択(厳密に言うと「選択しないという選択」)が高速ツアーバスを育てるきっかけになったという現実はかなりショックなようだ。では、と思う。「歴史にもしもはない」というが、もしも本当に私の会社が先に高速路線バスを取り扱っていればどうなっていただろう。私の会社は全国の多くの事業者と契約できていたかも知れない。全国にほどほどの送客をして、私の会社もほどほど儲かり、私は全国の既存事業者から「おかげで乗車率がちょっと上がったよ」と声をかけてもらい、ほどほどに満足していただろう。しかし、それでは何も変わらなかったのではないか。まず足元の話では、高速路線バスの取扱手数料は、高速ツアーバス各社から今いただいている手数料よりも低かっただろう。私たちは(特に最初の2年ほどの間は)、手数料収入のうちかなりの部分をウェブ上での集客に再投資してきた。検索エンジン対策であるとか、「初めての利用者は500ポイントプレゼント」といったキャンペーンなどだ。もし低い料率でしか手数料をいただけていなければ、私たちの販売力は結果として今より大きく劣っていただろう。そして長期的な話では、「高速バスという事業のあり方」について誰も議論を始めていなかっただろう。従来どおりの高速バスのあり方を是とし、せいぜいウェブマーケティングをちょっと積極的に活用し乗客数が多少伸びていたかも知れないが、抜本的に高速バス事業の今後のあり方をゼロベースから考えるということは、私個人も、また業界全体でもなかっただろう。事務局として高速ツアーバス連絡協議会を立ち上げていなければ、行政が主催する政策の勉強会に出席させていただくなどということも無かったに違いない。高速ツアーバスの成長が無ければ、現在の高速路線バスの制度のあり方がベストなのかどうか、誰も議論していなかったに違いなく、それは高速路線バス成長の可能性を閉ざしていたと言うことでもある。これから、高速バスの制度がどのように変化していくのは責任を持って言える立場ではないが「昨日までこれでやってきたから」というだけの理由で変革をしないのは、高速路線バスを運行する既存事業者自らのチャンスをフイにすることであり、彼ら自身の問題として高速バスのベストな制度を考えていっていただきたいし、私たちはそれを精一杯お手伝いしていきたい。もっとも、私の会社が仮に高速路線バスを先に取り扱っていたならば、別のインターネット企業が高速ツアーバスを大きく育てていたかも知れない。あるいはウィラートラベルやオリオンツアーや平成エンタープライズらが、自社の販売力を徹底して大きくしたのか。それとも全く新しい高速バスの業態が誕生し急成長していたという可能性すらある。「歴史にもしもはない」と言うが、もしある誰かのある選択が仮に異なっていたとしても、長い歴史の一部として捉えた場合、時代の変化は必然だということなのだろう。とにかく言えることは、高速バスという輸送モードには、やり方しだいでまだまだ成長の可能性があり、高速バスが成長することは、安価に快適に長距離を移動したい乗客にとっても、バスでメシを食っている者にとっても、喜ばしいことだということなのである。
2010.01.24
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先日ご紹介した「カスタマイズページ」だが、MK以外の高速ツアーバス企画実施会社も次々と活用してくれ始めた。海部観光やアリーナらだ。前者は、高速ツアーバス運行事業者の運輸安全マネジメント義務化に先行してNASVA(独立行政法人 自動車事故対策機構)による運輸安全マネジメントのコンサルティングを徹底して受けている最中なので(他の高速ツアーバス運行会社にとってこれは大きな参考になろう)、そこから生まれた運輸基本方針「気品ある運転を心がける」のスローガンが印象的。後者は、最初から複数のカスタマイズページを作成してくれている上にかなり完成度が高くて、失礼ながら機能を準備したこちらが驚いたくらいだ。同社もインターロック(運転席でのチェックでアルコールを検知するとエンジンが始動しない機能)などを目に見える形でアピールしてくれている。「見せるための(見せるだけの)安全対策」になっては本末転倒なのでそうならないよう注意しながらも、安全やサービスといった目に見えないものをいかに可視化してバリュー(価値)に変えていけるかが重要だろう。安全対策の中身も、その見せ方も、ようやく工夫の余地が生まれたのだし、これから各社の工夫が始まる。さらに将来は、安全性の高さや接客のよさをアピールするだけでなく、まさにウェブ上で「接客」をしてもらいたい。宿泊予約部門では既に、漁師民宿の親父が「こんなにデカイの釣ったぞ!」と自らの釣果をデジカメで撮ってカスタマイズページに掲載したり、スキー場のリゾートホテルが「初雪が降りました」「ただいま積雪○センチ」などゲレンデの情報をリアルタイムに更新したり、「ウェブ上での接客」を始めている。地元の隠れた観光スポットを紹介するなど、利用者が「このバスに乗ってみよう」と背中を押されるようなページがどんどんできていけば、というのが作ったほうの気持ちである。繰り返すがこの機能は「利用者がバスを選んで乗る時代」へのさらなる一歩である。そしてその時代を推し進めるもう一つの大きなテコが、既存事業者の高速路線バスを私のサイトで取扱うことである。本日付の『東京交通新聞』で、私のサイトが高速路線バスの取扱を始めたことを大きく報じていただいた。「高速路線バスの需要掘り起こしサポート」という見出しが目を引く。同紙は、既存事業者の皆様の多くが目を通しておられるから、私がまだお邪魔できていない事業者の中には寝耳に水で驚いた方もいらっしゃるかも知れない。ただしこれは余談だが、既存事業者の多くが目を通しているとはいえ、やはり同紙はタクシー主体だ。『交通新聞』は鉄道主体、『交通毎日新聞』はメーカーやレンタカー主体。バス事業者が経営や運営の参考にできる専門のメディアがもっと欲しいところだ。同紙は『新聞オンライン.com』のサイトからウェブ上で閲覧(500円)できるので、本日の記事に興味のある方はぜひ。ちなみに同サイトからは第1面だけ「立ち読み」もできる。これも余談だが、同紙の1面コラム(朝日新聞でいう「天声人語」に当たる)『ガンマー線』。本日は政権交代の話題だ。日本バス協会の賀詞交換会の風景が紹介されている。「昨年のこの場の風景は、自民政権の首脳陣にバス協会が抱える『バス議連』の面々が埋めていた。そっくり転換である」とのこと。既存事業者やその利害を代弁するバス協会が保守系政治家と強い結びつきがあったことは事実。政治的な信条が自民党よりか民主党よりかという話はともかく、国全体が成長の歩みを止めるとともに、モータリゼーションの進展など業界固有の厳しい事情を抱える中で、「これまでと同じ面々で、これまでと同じ分け前を分配しましょう」という構図では業界の今後は厳しいと私は考えるのだが。政権交代が意識変革の一つのきっかけになればいいが、本日の「ガンマー線」を読む限りはそこまでではなさそう…(それとも、政権が代わるなりいきなり工事中止になったダムのように、「問答無用で補助金廃止」など政権と敵対的にならなかっただけマシ、というのは皮肉が過ぎるか)。さて記事の方は「ツアーバスが主に大都市間を結んでいるのに対し、高速路線バスは短距離や対地方が対象。同社は高速路線バスのこうした需要は掘り起こしの余地が大きいとして路線バス会社へのアピールを強化、ウェブによるプロモーション、マーケティングノウハウで路線バスの需要喚起をサポートしていく」とし、自社サイト(記事には具体名は挙げていないが、発車オーライネットやハイウェイバスドットコム、高速バスネット、楽バスなど)や電話予約と住み分けをし、純粋に新規需要を取り込む方針であることを紹介してくださっている。「ウェブでは各社が自社のバスのラインナップや特徴を細かに紹介もできる。ビジネス、レジャー、女性向けなどニーズに合わせて利用者の選択の幅を広げることで、価格の安さに依存することなく新たな需要を生み出せる」ともしている。この部分こそ、まさに冒頭に挙げたカスタマイズページがその象徴である。私たちとしては、新機能追加と新規取引先の開拓、両面をバランスをとりながら進めていきたい。さて、今週これから訪問する首都圏の事業者さんたちや、いま調整中である来週の出張でお邪魔する地方の事業者さんたちは、本日の記事にどのような反応を示しているだろうか。記事で紹介されている2社(東京空港交通と九州産交バス)に「先走りやがって」と悪態をついているようなら、その事業者にもこの業界にも未来はないだろう。「へえ、リムジンさん産交さん、思い切ったね。でもウチの上司、アタマ硬いからなあ。難しいだろうなあ」せめてそれくらいの反応だと嬉しいのだが。
2010.01.18
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一昨日、取引先(高速バス・空港連絡バスの運行会社や高速ツアーバスの企画実施会社)向けの「管理画面」上で新機能を導入した。「カスタマイズページ」。さっそく1社使ってくれたのでご紹介したい。バスを予約しようと私のサイトを訪れた利用者は、乗車日・乗車地→下車地・人数を指定して「空席検索」を行なう。そうすると該当日に該当区間で空席がある便の一覧が表示される。その「空席一覧」上では、より細かい乗下車地(東京駅か新宿か、など)と出発・到着時刻、それに価格(運賃または料金)などが表示される。さらに基本情報に加え、「3列シート」「トイレ付き」「アメニティ付き」「女性専用」といったサービス内容を示すアイコンと、1行の「キャッチコピー」も表示されている。平日の首都圏-京阪神などでは80もの商品が並ぶから、利用者はその中からまずは「興味がある」商品の商品名をクリックし「商品詳細ページ」を開く。そこでは、座席やアメニティグッズのイメージ写真や、詳しい「セールストーク」など、より詳細な情報を見ることができ、いくつかの商品を比較検討のうえ最も自分に合っていそうなバスを予約する。これが従来の流れだ。ちなみに、もし乗車日や人数を指定しての「空席検索」機能ではなく、「路線一覧・商品一覧」から好みの商品を選ぶ形だと、リアルタイムの価格変動や、ここまで多彩な商品ラインナップは生まれなかっただろう。首都圏→京阪神で80の商品が並んだとして、「A社の3列シート」のページを見たら希望の乗車日は8,000円で、「B社の3列シート」を見たら希望の日は満席で、「C社の4列シートは6,000円」で…と各商品ごとにページを開かないと、希望の乗車日に空席があるか、価格はいくらかを確認できないようでは、利用者に大きなストレスがかかる。従来の高速路線バスの「ある区間にはせいぜい1~2路線」という状況ではそれで問題なかったし、価格変動しない状況でもそれで問題なかったが、多数の商品が並び、かつそれがリアルタイムに価格変動するようになればそれでは不十分だ。「検索」という機能を導入したことで利用者はバスどうしを本当の意味で比較しながら予約できるようになったし、それが高速ツアーバス各社の商品作り(ビビッドな価格変動にしても、また多彩な座席・商品ラインナップにしても)を大きく変えたことは間違いない。これまでの紙のパンフレットや時刻表であれば掲載できる情報量に限界があるが(あるいは多くの情報を掲載しようとすると逆にわかりづらさを招くが)、ウェブであれば、より詳しい情報を知りたい人はどんどんクリックして深い階層まで情報を見に行けばいいし、逆に使い慣れている人はそこまで見る必要もなくさくさくと予約すればいい。そうなると、情報量は多いに越したことはない。一方で、ウェブページを作るのは決して簡単ではない。デザインのセンスも必要だし、そのデザインをウェブ上で表現するための技術的な知識(HTMLタグなど)も必要だ。通常のバス事業者や旅行会社なら、専門業者に依頼して作ってもらうことになる。そこをなんとかしようと考えたのが、今回の「カスタマイズページ」だ。私の会社のデザイナーが、数点の「テンプレート」(雛形)を用意した。各社は、ふだん在庫や価格をコントロールするための「管理画面」を通して、例えば「画像1」のところにバスの外観写真を、「画像2」のところにアメニティグッズの写真を、「テキスト1」のところにワープロ感覚で「○○バスの自慢は…」などと書き込めば簡単にウェブページが出来上がるように準備したのだ。言ってみれば、このブログを書いているのと同じ操作感覚である。各社は、最大10ページまでカスタマイズページを表示することができ、利用者が多数の候補の中から最終的に1つの商品に絞って予約するまでの様々なステップで、このページを参考にすることができる。ずっと申し上げてきた「バスを選んで乗る時代」に向けてのさらなる一歩といこうとである。<一例 MKの「カスタマイズページ第1号」。まず公開されたのは1ページだけでそれもまだまだ「手作り感」が見られるが、今後リアルタイムに加筆修正可能であるしページ数も順次増えていくだろう。このページは、例えば、MK便の「商品詳細ページ」の左上に設置された「会社案内」ボタンなど様々な箇所からリンクされている。※モバイルでは表示されません>同機能は、私のサイトの宿泊(ホテル・旅館)予約部門からの横展開(ぱくり)だ。実は数年前にこの機能をホテル・旅館に提供開始した際、ビジネスホテルや普通の旅館の間では「何も書くことがない」という声が大きかったのだという。それどころか高級旅館でさえ、「伝統と格式」「心のこもったおもてなし」「新鮮な素材を使った料理」などいかにも典型的な決まり文句ばかり並んだ。しかし今は違う。普通のビジネスホテルや旅館や民宿が、自分たちの「売り」は何なのか真剣に見つめなおし、それを積極的にアピールするように変わっている。単純にウェブ上での情報量を増やすだけなら、従来どおり業者に依頼して「きれいなホームページ」を作ってもらえばいい。しかしそれではコストも時間も必要だし、自社サイトへの集客にもコストがかかる。本当に現場で商品を考えたり在庫をコントロールしているような担当者自身が、自分たちの「売り」を真剣に考え、業務の合間などにちょこっと管理画面を触って自分たちのページを修正していくような雰囲気になって欲しい。逆に言うとこれからは、「自分たちの方からお客様にアピールする」という積極的なマインドを持たない会社ならば、数多くの競合のなかで埋もれてしまうことになる。当然、私としては、高速路線バスを運行する既存事業者の皆さんが、安全性や信頼感も含め、この機能を使って自社の高速バスの魅力を積極的に発進していただきたい。それを彼ら自身が(業者任せではなく)管理画面から操作するようになって欲しいのである。
2010.01.15
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子供の頃「演歌は日本の歌だ」と誰かに教わった。だから、北島三郎や石川さゆりがテレビで歌うような演歌は、ずっと昔(それが江戸時代か平安時代かそれとも邪馬台国の時代かは考えもしなかったが)から日本で歌われていたと思い込んでいた。しかしある日、演歌の伴奏にギターが使われているのを見て驚いた。ギターというのは「西洋の楽器」。「演歌は日本の歌と違うん? なんでギターで伴奏してんの?」と両親に尋ねたら、北島三郎らが歌う「演歌」は、言ってみれば戦後日本の「流行歌」であって、江戸時代のような昔からあったわけではない、と答えが返ってきた。子供の頃のちょっと恥ずかしい思い出だが、「一面的な(ステレオタイプの)捉え方」から生まれる「思い込みの怖さ」に出会った瞬間でもあった。たぶん生活の中には思い込みが溢れていて、ふだんはそれで流している。ただ時々立ち止まって歴史や背景を振り返り、思い込みや常識を客観的に「因数分解」してみるのが私は大好きだ。例えば業界の常識となった「高速路線バスの共同運行システム」。運輸省の当初の方針では「高速バス」に参入できるのは国鉄バス、または沿線の路線バス事業者が共同出資した高速バス専業者(日本急行バスや東名急行バスなど)に限られていた。一方で高速道路の延伸が進むと、一般道を使う長距離路線バスがその区間にもともと運行されていたりする。沿線を事業エリアとする路線バス事業者が「相互乗入」を行なっていたのだ。必然的にそれが高速道路に乗せ換えとなり、結果として「高速バス」となっていく。路線バス事業者が自ら高速バスに参入した端緒である。そもそも一般道で結べる距離だから隣接する事業者同士(例:京王/富士急、西鉄/九州産交)がほとんどだったが、やがてより長距離路線を開設する動きが生まれた際、中間事業者の扱いなど様々な課題に直面し、最終的には「起終点の事業者同士の共同運行(例:京王/西鉄の新宿-福岡線「はかた号」)」という制度が定着する。私が「第2フェーズ」と呼ぶ時代だ。では、その共同運行の「意味」「意義」とはなんだったのか。それは決して一つではない。まず、当時は「路線権」という概念が大切にされており運輸省としても免許秩序の維持を最優先していたから、起終点に路線権を持つ事業者同士のペアでないと開設を認可しないという方針には説得力があった。また、地上設備(ターミナルや車庫)を相互利用することで余計な投資を不要とするなど、運用面において目に見えるメリットが大きかったことも間違いない。それらが、「事業者が自ら認識していた意義」である。一方、私が重要視しているのは、当時彼らにも見えていなかった「隠れた意義」の方である。大きかったのは、路線バス事業者が自ら高速バス事業に参入したことにより、地域で大きな存在感を持つ路線バス事業者が「自らの商品として」「本気で」高速バスを売り込み始めたこと。それが、特に地方側において高速バスの認知を急激に高めることとなった。様々な経緯の末、生きた化石のように「第1フェーズ」(JRバスが独占)の面影を引きずっていたものの近年になって静岡鉄道らが高速バスに本格参入した結果、高速バスが急成長した静岡-東京の高速バス事情はまさに「遅れてきた第2フェーズ」である(逆に、同じ状況ながら距離が少し長いため高速ツアーバスに向いた市場である仙台-東京は、一足飛びに「第3フェーズ」化し高速ツアーバスの草刈り場となったが…)わけだが、他のほとんどの県では1980年代にそれが起こっていたのである。で、いつも書いている通り大都市側では路線バス事業者の販売力は結果としては発揮されなかった。路線バス事業者のマーケティングは常に「沿線」を対象とする。地方において路線バス事業者の「沿線」とは地域全体を覆う「面」であるのに対し、大都市の私鉄系事業者にとって沿線とは、文字通り「線」でしかない。考えて欲しい。小田急電鉄(京王であれ阪急であれ)が、系列の百貨店やホテルやスーパーのマーケティングを沿線で行なう。これは非常に効率がいい。小田急沿線の住民が買い物や結婚披露宴をする際、小田急のターミナルである新宿に(または郊外の最寄り駅に)立地する店舗は、銀座や池袋に比べて非常に優位性がある。私鉄系の流通やホテルはそのアドバンテージを大いに活用し成長できた。しかし高速バスの場合はそうではない。小田急グループは沿線で新宿発の高速バス(箱根行きや秋田行き)を告知できるが、小田急沿線の住民が「新宿からバスがあるから」という理由で「次の出張は秋田」と決めるわけはない。大手私鉄の沿線マーケティングは、流通やホテルには有効だったが高速バスには十分とは言えなかったのである。では、そもそも「路線権」概念が公式には消滅した今、大都市の私鉄系事業者は高速バス業界に果たせる役割はないのか。とんでもない。首都圏や京阪神という「まだ掘り起こせていない広大な土地」に向かい合えるのは彼らなのだ。巨大市場において本気でマーケティングを行なうには、空中戦、地上戦、硬軟織り交ぜたあらゆるアプローチが必要だ。たしかに人件費などコスト構造が高めで運行から上げられる利益は大きくないが、多数の地方側事業者と共同運行を組む「ハブ」である彼らには多くの情報が集まる。大企業ならではの優秀な社員も多い。彼らは「高速バスの頭脳」としての役割を担うことができる。大都市側事業者は自身が持っているリソースに早く気付くべきであり、そのリソースを活用できるようビジネスモデルを変化させていくべきである。一共同運行事業者として運行から稼ぐのではなく、ウェブマーケティングの積極活用も含め「集客」「ブランド」、そして都心ターミナルの提供など、よりソフト側で収益構造を確立すべきである。本当は、そこに競争原理が生まれれば高速バスはもう一皮剥ける。大都市側事業者の努力が足りなければ、「集客とブランドのためと思って○○電鉄バスと組んでるけど乗車率は伸びないし、契約を切って他の大手私鉄系と組むか」と地方側事業者が言い、逆に組むメリットが大きい大都市側事業者があれば、地方側事業者はそのパートナーの座を争う…。路線バス事業者のメンタリティを考えるとそこまでは無理と言われるかも知れないが、高速バスを成長させるチャンスがそこに隠れていることを考えると、「業界の常識だから変えられない」などと言うのはなんとも悔しく、私としてはあきらめるつもりは一切ない。
2010.01.13
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新年のビジネスが本格的に動き出したというか、連休明けに出社するとアポイントやご取材のお申し込みのメールが山ほど溜まっていた。会社のスケジューラ上でアポイントがどんどん増えていくのは「仕事をしてる気分」になってなんとなく嬉しいのだが、そこに既存事業者の名前が並ぶのはもっと嬉しい。それに、街でバスに出会った際、最近、それらの中に「取引先」(東京空港交通)や、「まもなく取引先になりそうな事業者」(会社名は言えないけど)の比率が増えてきたのもちょっと嬉しい。そんな時にはつい車内を見上げて乗車率をチェックしてしまう。もっとも、これは学生時代からの私の癖だ。バス好きの友人たちと高速バスを乗っていて対向車線の高速バスとすれ違うと、車両タイプなどそっちのけで「どれくらい乗っているか」をチェックしてしまう(バスを乗り歩く友人など限られているから、対向する高速バスの「車両チェック係」「方向幕や運行ダイヤから行き先を判別する係」などに自ずと「役割分担」が進むが、その意味では私はもう何年も「乗車率チェック係」だ←マニアックな話で恐縮です)。これまでなら、乗車率の低い高速バスとすれ違ったりすると、「もったいないなあ。なんとかあと数人でも乗ってくれないかなあ」と漠然と悔しさを感じていたのが、今だと「あの路線を扱わせてもらえたら、1便あたり何人増やせるかな」と真剣に考え込んでしまう。その路線を売るためにはこうやってああやって…と妄想はふくらむ。よく既存事業者の皆様は、高速ツアーバスを指して「あの料金でよくやっていけるな」とおっしゃるが、私に言わせると、高速路線バスこそ「あの乗車率でよくやっていけるな」という感じだ。つまり既存事業者の皆様は、どうも「乗客数を増やす」「乗車率を上げる」という発想になりづらいようだ。「平場」の路線バスを地域独占で走らせてきた彼らにとって乗客数はアンコントローラブル(制御不能)ということらしい。しかし乗客数はコントローラブル(制御可能)である。乗客数の増加こそ、マーケティングの出番である。いや、端的に言えば、価格弾力性が大きいタイプの路線(※)においては価格を下げればさえ簡単に乗車率は上がるが、本当は「乗車率が上がればさえ、それでいい」ということではない。<※鉄道や他社の高速バスと競合が激しい路線ほど価格弾力性が大きく、鉄道が不便で高速バスが独占状態にある路線ほど価格弾力性は小さい。この価格弾力性の大小の見極めはレベニューマネジメントのために非常に重要である。また、乗客数の最大化のためにマーケティングができる役割は、決して価格施策だけでないことも合わせて強く明記しておく>しかしそれで乗車率が上がっても単価が下落し収益(運賃収入)が悪化すれば意味がない。「バス一運行あたりの収益=販売単価(全乗客が支払った運賃・料金の平均)×乗車率×座席定員」であり、そのうち「座席定員」は原則的には車両購入時(数年に一度)しかコントロールできないから、あとは「販売単価」と「乗車率」のトレードオフの関係をいかにバランスさせるか、ということが重要になる。ここで「運賃・料金」や「価格」ではなく「販売単価」という語を用いたのは、乗車している乗客が支払う運賃・料金が一人ひとり異なるからだ。高速路線バスで言えば乗車距離が短い乗客は運賃の額が小さいし、高速ツアーバスでいえばダイナミックプライシング導入の結果、予約した時期によって一人ひとり料金が異なる。今後は高速路線バスでも同様のケースが増えるだろう。その組み合わせも重要だということだ。限られた座席定員を、どのくらいの販売単価でどのくらいの乗車率に持っていくか。乗車率が当日になっても低いからといってどんどん運賃・料金を下げれば、その瞬間に数席は売れるかも知れないが、ライバル会社が追随し不要な値下げ合戦が始まればお互い体力を消耗するだけだ。一方で年末年始のような繁忙日は単純に需要量と供給量を計算式に入れ込んで理論値を求めれば、瞬間的には「東京→大阪 4万円」というような数字が導かれたりするが、あくまで理論値でしかない。高速バスマーケットは「生き物」であり、今日出発と明日出発、今日予約受付と明日予約受付では環境が大きく異なる。なるだけ細分化した小さなマーケットそれぞれに適切な価格設定を行ないながら、個別の便ごとに単価と乗車率のベストなバランスを導き出し収益の最大化を図る。同時に、足元の収益にこだわり過ぎてはよからぬ単価下落を招くだけだから、短期と長期のバランスを調整する。そのためには、何段階かのレートストラクチャを構築した上で、最適なプライシング・ストラテジーを見つけ出す…それが「高速バスにおけるレベニューマネジメント」だ。こう書けばなにやら難しいようだが、ロジックをもう少し詰め、それを支援するためのシステムを開発することは、ホテルや航空業界の例を見ても不可能ではないだろう(それでも、「続行便設定の可否」つまり総在庫量が変動するというバス固有のパラメータを反映させられるかどうかは自信がないが)。「私が次にやりたいこと」の中の一つが、高速バスにおけるレベニューマネジメントのシステムを完成させ、各事業者に活用してもらうことであることは間違いがない。とまあ、こんなことを書くと「金儲け主義」という印象を持つ人も多いんだろうなあ。あるいは「ツアーバスなどというものさえ無ければ、高速路線バスは黙っていても利益を上げることができたのに」とでも言われるのか(「黙っていても利益を上げる」……それを「ぼったくり」というのだが)。まあ小言はそれくらいにして、レベニューマネジメントの教科書には最初に必ず書いてあることがある。それは「レベニューマネジメントとは、それ用の情報システムを導入することではない」というものである。マーケットの需要に耳を澄ませ乗客の心理を読む力や、末端のスタッフ一人ひとりを同一の目的のために動かす力など「総合的なマネジメント(経営)力」の話なのだ。そして高速バスの場合には、より柔軟な価格設定を可能とするなど、法規制面での地殻変動もまだまだ必要だ。そういった様々な課題を乗り越え「高速バス1便ごとの収益の最大化を通して高速バス業界全体の収益を最大化する」というアプローチは、まだまだ道半ばであり、チャレンジングでもある。
2010.01.12
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私たちのサイトを訪れる利用客の8割以上が、トップページ左上にある「空席検索」機能で乗りたいバスを探す。乗車地の県、下車地の県、乗車の日付と人数を指定して「検索」ボタンを押すと条件にあったバスが表示され、比較の上で予約に進める機能だ。「発車オーライネット」「ハイウェイバスドットコム」「楽バス」など高速路線バスの予約エンジンは先に「路線」を選ぶ形なので、マルチトラック化して全く同一区間に複数の路線がある場合、まずは路線(つまり、事業者)を選ぶのに対し、私たちの場合は検索結果の画面で商品を選ぶ点が大きく異なる。いつも書いていることだが、これをメインの動線に据えたことが高速ツアーバス業界にとって大きなターニングポイントだった。リアルタイムの価格変動も、繁忙日だけのスポット運行も、多彩な車両タイプやアメニティグッズ等の特典も、ポイント付与率の商品ごと日ごとの変動も、全てこの機能があるから実現したのだ。原則的には、利用者はプルダウンして乗車地、下車地の都道府県を選ぶのだが、首都圏-京阪神・名古屋・仙台の主要3路線については「東京→大阪」「名古屋→東京」などショートカットを用意してあって、ラジオボタンをクリックするだけになっている。この場合、例えば「東京→大阪」のショートカットを選べば、システム的には「乗車地:東京都 下車地:大阪府」をプルダウンから指定した場合と同じ結果を表示する。もっとも現実の利用者のニーズは様々で、一口に首都圏と言っても神奈川県や千葉県など東京都以外の県での乗下車の比率も大きいのだが、現在のところ首都圏-京阪神の高速ツアーバス全商品が、最低でも1ヶ所は東京都と大阪府を経由しているので、このショートカットにおける「東京→大阪」とは、実質的には「首都圏→京阪神」ということである。最初からもっと細かく「千葉県→京都府」などその利用者の希望に沿った検索に誘導した方が利便性が大きいのでは、という意見もある。しかしあえてそうしていない。最初に絞りすぎるのは選択肢を減らしてしまうと考えているからだ。例えば神奈川県在住の私が兵庫に帰省するのに「神奈川県→兵庫県」で検索した場合、「東京都→大阪府」に比べ3割程度の商品しか表示されない。3列シートやトイレつきなど「特車」の比率も低い。実際には横浜乗車も新宿乗車も、大阪下車も三宮下車も利便性は大きく差はないから、まずはたくさんの商品を見てもらいたい、と考えている。その意味で、最初の時点ではなるだけ「神奈川県」といった絞り方ではなく「東京」(実質的には「首都圏」)で検索してもらうよう誘導しているのだ。その上で、検索結果の画面では、画面上部に「詳細条件」を設定できる機能を準備している。平日の「東京→大阪」など80商品くらい表示されるから、乗車地を「東京都」よりも細かく「新宿」に絞り込んだり(もちろん「神奈川県」とか「横浜市」にすることも可能)、「3列シート」のみに絞り込むとか料金の安い順に並べ替えるとか、利用者は希望に合わせて再検索できる。ちなみに、高速ツアーバスのほとんどが夜行便なので、あえて時刻順で並べ替えをしない限りは、時刻順は無視して、座席グレードの高い順(「2列シート」が最上位)に表示される。ただ、と今考えていることがある。今後、高速路線バスの取扱が増えてくると難しいなあ、と。上記事例でも、仮に「千葉県発、神奈川県経由○○県行き」とか、「神戸行き(大阪府には止まらない)」のような路線であれば上記ロジックだと表示されなくなってしまう。例えば「金沢まで高速バスで行きたいのに渋谷発も新宿・池袋発も満席」で困っている利用者に「横浜発で空席を見つけた!」というようなことをお手伝いするのが私たちの役割のひとつであり、ならばシステムを小改修して、画面上で「東京」と表示している場合はシステム上は「東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県のいずれか」で空席検索するようにしようかなあ、などと迷っているのだ。一方、ではエリアをどんどん広げればいい、というものでもない。長距離夜行の場合は新宿発が満席なら横浜まで移動して乗ればいいが、距離が短い路線ではそうではない。最も極端なのが空港路線で、下車地の羽田空港は距離で言うと目と鼻の先。だが電車だと乗換が面倒だからあえて直行のバスを選ぶわけで、新宿乗車希望の利用者にとって池袋や東京駅発のリムジンバスを見せても煩雑なだけだ。この場合は「高速バス」とは異なるカテゴリーだから、そもそも入り口で分けてしまってリムジンバスの専用ページを作り、そこからの検索では「新宿発」と「東京駅・TCAT発」を別々に空席検索できるようにした。また、座席グレードは全便一緒なので、リムジンバスの検索の場合だけは出発時刻の早い順に並べている。ということは、今後、比較的距離の短い「高速バス」が増えてくると配慮しないといけないことが多くなる。仮に、の話だが、東京都から長野県に向かう高速バスの取扱が増えると(現在取扱中の高速ツアーバスは便数が少ないからさほど気にならないが)、「東京都→長野県」で検索しようとしている人にはもう一段細かく「長野」「松本」「伊那」などと最初から指定してもらった方がいいかも知れない。そしてこの場合は、リムジンと同様、出発時刻順がいいなあ。一方、この場合「東京都」の方は自動的に「神奈川県」も含んで検索するようにしておけば、まだ認知が小さい横浜発の伊那飯田方面も表示されて、新宿発が満席の場合など有効かなあ、などと妄想は(勝手に)膨らむ。その他、座席管理の手法など、鉄道をベースに発展した高速路線バスのオペレーションと、旅行ツアーをベースに発展した高速ツアーバスのオペレーションなど、両者の違いはけっこう大きい。今後私のサイトで取扱させていただける高速路線バスがどんどん増えていくということは、サイト上や管理サイドの様々な点において、高速路線バスの現状にも対応するよう改良していかないといけないということだ。もちろん、それが高速ツアーバスを好んで利用してくださっている利用者や高速ツアーバスの企画実施会社の便利さを妨げるものであってはならない。課題は大きいように見えるが、方法はひとつしかない。何度も何度も、様々なタイプの利用者や取引先担当者になったつもりで、サイトの利用者画面・管理者画面を繰り返し繰り返し使ってみること。それ以外に答えはない。
2010.01.09
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「バス経営情報」でも紹介されているが、高速バス(この場合は「高速路線バス」)の規制について、パブリックコメントの募集が開始されている。詳しくコメントする立場にはないので、以下はあくまで一愛好家としての雑感である。読めばわかるように、おおむね規制はゆるくなる方向だ。本パブコメの「趣旨」から抜粋すると、<道路運送法において、高速バスは、日常生活における生活密着型輸送サービスである一般路線バスと同じく、一般乗合旅客自動車運送事業に位置づけられている。従って、高速バスの路線の新設等に当たっては一般路線バスと同様に同法第15条に基づく認可を受ける必要があり、運行開始まで一定期間を要することから、利用者の多様な需要に十分応えられていない状況となっている。(中略)一般路線バスとの規制の区分を見直し、規制緩和により利用者の需要に対応した新たな路線の機動的な設定を可能にする必要がある>とのことである。この「趣旨」は、私が『運輸と経済』に執筆させていただいた論稿などを通して日ごろよりご提案申し上げてきた正にその通りである。公益性が大きい「平場」の路線バスと、収益事業である高速バスを同じ規制の下に運営すること自体、無理がある。合わせて、「高速路線バスの規制緩和」は、日本バス協会らが求めていたものでもある。高速路線バスにおいて商品設定の自由度が高まるということは、今後ますます多くの高速路線バスを取扱うことになるインターネット予約サイトにとっては非常にメリットが大きい。インターネットというのは、極めて同時性が高いメディアだからである。例えば価格(運賃。高速ツアーバスの場合は料金)。これまで高速路線バスの運賃が硬直的であったのはもちろん上記の通り規制がガチガチであったからだが、高速ツアーバスの世界でもつい3年ほど前まで、料金は原則的に毎日同額であった(せいぜい、「金土日は500円アップ」など、二段構え程度の価格差であった)。パンフレットによる告知と電話による受付では、そうするしかなかったからだ。しかしそれではインターネットのメリットを活用しきれない。私たちの方からリアルタイムに価格を変動させる手法を各社にご提案した結果、今では高速ツアーバスの料金は需給バランスの状況に合わせ100円単位でリアルタイムに変化する。需要が見込める地域にスポットで路線を設定することについても同じである。これまでなら、例え高速ツアーバス業態であっても、チラシを刷って新聞折込をしてと、新路線を作るにはかなりのリソースが必要で一定期間を運行しないと元が取れなかったが、今では正に需要に応じて商品を作り総合予約サイトに登録すれば、その日からすぐに予約が入ってくる。したがって、「需要にリアルタイムに応じた商品設定を行なう」というワザは、規制の強弱という以前に、これまでは単純に運用的にみて難しかったということである。それがインターネットの普及と予約サイトの成長によりカンタンになったのである。今後、その高速ツアーバスと同じ商品棚に続々と高速路線バスが並び始める以上、どちらも商品設定上の自由度が大きく、リアルタイムに対応できた方が当然いい。一方、残念なのは「高速バスに係る規制の抜本的見直し」にはなってなさそうなことである。結局、乗合とツアーという二つの制度は並存し続けるわけだし、そもそも「バス停の権利の平等な配分」という肝心の部分は手付かずだ。「高速ツアーバス側の立場」(そういうものがあるのなら、だが)に立って言いたいことだけを言えば、<バス停の権利に代表される「既存事業者の既得権」は手放さないまま、商品設定の自由度は増すというのは不公平>ということになる。まあ、私は別に「高速ツアーバス側」の人間ではないし、高速ツアーバスに直接たずさわっている人たちも事を荒立てる気はないと思うが。そして(ここからは既存事業者やその関係者の皆様に強く申し上げたいことである)、今回の省令案がそのまま公布・施行されたとして実際のところ本当にどこまでリアルタイムな運用が可能になるのかは「やってみなければわからない」ものの、少なくとも規制が柔軟になることは間違いない。高速ツアーバスという業態に対して「アンフェアだ」と主張してきた既存事業者の要求が(程度がどれほどであれ)通ったのだ。完全に「フェア」になったとも言えなさそうだが、一方で高速ツアーバス業態にも当日発券不可や集合場所のわかりづらさなどハンディキャップも多いわけだし、それでもどうしても高速ツアーバスの方が有利だと主張するなら、なぜツアー業態に転向しないのかという議論になる。これまでのように、なんでもかんでも「制度のせい」「行政のせい」にはもうできない。規制がゆるくなるということは、当たり前の話だが、事業者のフリーハンドが増える、ということである。それはイコール、各事業者の「腕」がより試されるということである。どうやったらより多くの乗客に自分たちのバスを選んでもらえるか、どうやったらより効率よく売上を、そして利益を上げることができるか、自分自身の頭で今まで以上に真剣に各事業者自身が考えないといけないのだ。私たちのサイトにとっては願った通りの動きであるし、各事業者の努力と工夫がバスという産業全体を強くするはずだ。我が国に「高速バス」が誕生してから約50年経つわけだが、「共同運行」という制度が(なし崩し的に)生まれ各地域の路線バス事業者が自ら高速バスに本格参入し始めてから約30年。ダブルトラックが認められ始めてから約20年。高速ツアーバス業態が生まれてから約10年(ちなみに私の会社が高速バス予約事業に参入してからまだ4年)。制度は変化していくものだから、高速バスを巡る制度が10年後どうなっているか、今は誰も答えられないだろう。だからこそ「こうあって欲しい」「こう変わっていくべき」という絵だけは常に描き続けたい。次なる高速バスの制度を(勝手に)考える試みは、私の頭(妄想?)の中と何人かの仲間の間で、まだまだ動き始めたばかりである。
2010.01.08
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本日付の『日経産業新聞』など、いくつかのメディアで、この年末年始の送客実績を速報していただいた。先月末に進捗をご報告した通り、やはり、前年に対して31%の成長にとどまった。昨年の年末年始が一昨年に対して60%、昨年のお盆は40%の成長だったし、通年で見ても、2008年は07年に対して47%成長だったのに、2009年は08年に対し32%ほどの成長に終わった。したがって実のところ、成長率は着実に?鈍化してきている。もっともそれは成長「率」の話であって、成長「額」で言えば不思議なことに毎年ほぼ同じ額が積み上がっている計算になる(単純な「算数」の話だが)。さて私のサイトの取扱額のうち4分の3は、依然として主要3路線(首都圏-京阪神・名古屋・仙台)で占めているが、上記記事にあるとおり首都圏-京阪神の成長率は21%しかないなど、これら「大都市間路線」の成長率は間違いなく鈍化している。理由は簡単だ。マーケットを掘り尽くしつつあるからである。神奈中バスの夜行完全撤退のニュースの際に書いたが、これら「大都市間」には以前から既存事業者が多数の高速路線バスを運行してきたものの、実は彼らはマーケットを掘り起こしきれていなかった。これら大都市間路線は非常に大きなマーケット(例えるなら広大な土地)であるが、「丹精に畑を耕す」「地上戦」を得意とする既存事業者たちは、このような広大な土地を相手にするのは失礼ながらあまり上手ではない。しかし非常に広い土地であるため、そのごく一部を耕しただけで高速路線バスは十分な輸送人員・乗車率を確保することができ、それを「ドル箱」だとして満足してしまっていた。逆に言えば、首都圏-京阪神などの大都市間路線には、実際には「耕しきれていない空き地」がまだまだ大きく残っていたのである。そこにウェブマーケティングというブルドーザーを持ち込めば、言葉は悪いがさほど苦労せずに未開拓の土地を掘り起こすことができた(勢い余って既存事業者が耕していた小さな畑まで掘り返してしまったことは間違いないが、だからこそ一緒にブルドーザーに乗り込んでいただきたかった…)。私たちが高速バス予約事業を始めてから4年の間、私のサイトとご契約をいただいたのは(昨年の11月以前は)全て高速ツアーバス会社であり、新しく掘り起こした需要は高速ツアーバス各社に送客するより他なかった。そして残念ながら、そろそろ「空き地」は尽きようとしている。一方、大都市と地方都市を結ぶ路線においては、地方都市側での「地上戦」が効を奏して高速路線バスの存在感が圧倒的だ。それでも、大都市側の居住者については未だ高速バスの浸透度合いは低いから、そこに私たちの働きどころがあると考えている。記事にあるとおり、まだまだポーションは小さいものの成長率が大きいのは大都市-地方都市路線である。今回の記事でも、特に成長率が大きかった大都市-地方都市路線を具体例を挙げて紹介していただいているが、路線別の成長率をプレスにお伝えする際、これまでは実はけっこう気を使うことがあった。こちらとしては既存事業者の高速路線バスも取扱させていただき新たにご送客したいと考えているわけだが、既存事業者の側はどうも私のサイトを「ツアーバス側」と決めつけ(なかには私の会社が自ら高速ツアーバスを企画していると誤解なさっている方もいらっしゃって)「敵」だと勘違いされていた。「首都圏-○○線が2倍に増えました」などと無配慮に発表し地元のメディアに取り上げられたりすれば、該当路線を運行する事業者から「いよいよ我が街にも敵が攻めてきた」と身構えられてしまい、こちらのラブコールを聞いてもらえなくなるリスクがあったからだ。いちおう、私としては路線ごとに既存事業者の顔ぶれを想像しながら成長率をプレスにお伝えする路線をチョイスしていたつもりだ。だが今回からは、その点についてかなり気が楽になった。最低限、多くの既存事業者の皆様に「敵ではない」ことをお伝えすることだけはできたと感じているからだ(本当に皆さんのハラに落ちているのかどうかははなはだ怪しいとはいえ、だ)。最も象徴的な例が、対前年比2.3倍となった京阪神-鹿児島線であり、これまで気を使ってきた正にその相手である既存事業者の高速路線バスそのものが既に私のサイトに登場しているのである。「トワイライト神戸」の取扱開始は年末年始には間に合わなかったため今回の「2.3倍」には含まれていないものの、これからは「トワイライト神戸」も、「●倍増」のメリットを享受できる。今後は、私のサイトの好不調が、九州産交バスの業績の好不調の一部に反映する。京阪神-熊本・鹿児島には他にも高速路線バスが走っているが、さあ、他の事業者もこの部分について頭を切り替え、「トワイライト」を追いかけてきてくださるだろうか? そして、全国の他の路線はどうだろう?私が今の会社に転職したのは3年半前。その数ヵ月後、何人かの関係者に「既存事業者の高速路線バスも取扱いたい」と伝えたら、揃いも揃って即効で「それは無理だよ」と答えが返ってきた。しかし、ただ1人だけは「5年かかるやろな」と言ってくださった。つまり、5年は必要だが実現するだろう、ということだ。その人の関西風のイントネーションまで今でも耳に残っている。それを、なんとか3年に短縮した。数多くの皆様のご協力やご決断に感謝するばかりである。しかし私のゴールは「トワイライト神戸」1路線を取扱うことでは決してない。「アンチ・ツアーバス」の塊のようだった私が、考えに考えた末に今の会社に転職する際、ぼんやりとながらも自分が頭の中に思い描いていた業界の構図を実現するため、ようやく今、私はスタートラインに立ったに過ぎない。
2010.01.07
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九州産交バスの鹿児島・熊本~神戸線「トワイライト神戸号」の取扱が本日から始まった。これでようやく、高速ツアーバス、バスツアー(以上が「募集型企画旅行」)に加え、高速路線バス、定期観光バス、空港連絡バス(「乗合バス」)の「2業態5商品形態」がなんとか一通りそろったことになる。将来的には貸切バスのウェブ予約(チャーター)等やりたいことは山ほどあるのだが、当面はこの2業態5商品形態の商品の充実を目指すことになる。4年間かけて、ようやく私たちの事業の枠組みが整ったということだ。このトワイライト神戸は、大都市側事業者が共同運行から撤退し地方側事業者の単独運行になってから10年以上も運行が継続されているわけで、大都市側の各事業者には失礼ながら、高速路線バスというのは大都市側での市場開拓はほとんどなされておらず地方側事業者の販売力に頼っていることを図らずも証明している。ウェブマーケティングによって大都市側での集客を補完すればより強い路線に育つはずである。合わせて鹿児島・熊本~神戸間では、私たちでは既に南薩観光「シティライナー・ウェスト」等の高速ツアーバスを取扱っている。南薩の「シティ」は3列独立シート・トイレ付きの専用車両(09年の三菱エアロエース)、地元では相応の歴史と存在感を持つ貸切バス事業者の自社運行ということで、一般利用者にとってはトワイライトと比べさほど遜色はない。空席検索結果画面で見比べてみると、価格は平日で1~2割、週末ではごくわずかだがシティの方が安い。それに対しトワイライト側は、「わかりやすい停留所で待てるので安心(一部は待合室あり)」「払戻手数料が安い」などの「ベネフィット(利用者が実感できる目に見える利点)」をアピールして対抗する。まずは1路線ながら、ようやく同じ商品棚で利用者が2業態を比較しながら予約できる形がスタートする。この「ベネフィット」。最近、高速路線バス事業者の自社サイトで、ベネフィットを明記した例が散見される。ハイウェイバスドットコム内の新宿~長野線のページにおける、運行の多頻度さと便変更手数料無料の便利さや停留所のわかりやすさの訴求、札幌~北見・網走線の車内吊りポスター(北海道中央バスのサイトにも掲出)での車内設備の快適さの訴求そして「暖かい待合室」といった表現は、同路線での高速ツアーバスの台頭(北見・網走にも高速ツアーバス“らしきもの”が昨秋から登場した)を踏まえ、ベネフィットを「具体的に」利用者に伝えている。その方向性そして表現はこれまでまさしく私が申し上げてきたことそのものである。色々な所で私が申し上げてきた言葉が各事業者の耳に届いたのかは知る由もないが、ようやく高速路線バス事業者も「ツアーバスは許せない」という感情論ではなく、自分たちの商品とライバルのそれとを利用者目線で客観的に見比べた上で、自分たちが勝っている点を積極的に利用者に伝えようとし始めたということであり、大きな一歩と言えるのではないか。彼らの次のステップとして取り組んでいただきたいのは3点。1点は、これまで高速路線バス事業者がこだわってきた「安全、安心」といった「目に見えない利点」をいかに可視化して、事業者の「こだわり」(こだわりのままだと単なる自己満足でしかない)を利用者の目に見える「ベネフィット」に変えていくか。いつも話しているように、高級ホテルのサービスのよさや料理のおいしさも、マンションの安全性(耐震構造など)も、本来は目に見えないもの。それを各社が工夫して可視化しており、バス事業者もぜひそれに挑戦していただきたい。もう1点は、上記のようなせっかくのベネフィットを、自社サイトや車内チラシで(つまり、自社のバスを予約しようとしている人や乗っている人に対して)訴求するのでは効果は半分でしかなく、高速ツアーバスを予約しようとしている人や高速バスに興味がない人にまで効率よく伝える方法をぜひ考えていただきたいことだ。そして最後の1点は、商品作りそのものである。需給調整時代においては、ある区間に認可が下りる高速バス路線は原則1路線、せいぜい2~3路線であり、1商品でなるだけ広い利用者層に対応する「最大公約数」的「平面」的な商品作りが求められた。しかし今日、高速路線バスは要件さえ満たせば何路線でも許可、さらに高速ツアーバスもあるなかで、「無色」の「最大公約数」では埋没してしまう。利用者には男性/女性、ビジネス/レジャー、若者/年配、高級志向/低価格志向など様々な属性が存在するわけで、これからは各利用者のニーズになるだけ沿った特徴ある商品を各社がそれぞれに工夫することになろう。各社が、それぞれのニーズに細かく対応した商品を準備することで、従来の「最大公約数」「平面」「無色」では対応できず他の交通機関を選択していた人たちのニーズにまで応え、高速バス全体のパイを大きくする。以前の紙媒体による告知と電話による予約受付では、高速バスどうしの「色の違い」までうまく伝わらなかったが、ウェブの普及により利用者が手にする情報量が飛躍的に増加したことにより、利用者は「好みのバス」を「自ら選んで予約する」流れが、いま生まれようとしているのである。かつて酒類の販売免許がガチガチだった頃、家庭で飲む酒の種類は限られていた。例えばビールは近所の酒屋の親父がラックを担いで持ってくるものであり、その頃、各ビールメーカーは原則、1つずつのブランドしか持っていなかった。しかし酒の販売が実質自由化されスーパーやコンビニで買えるようになった今、同じビール類でも「本物のビール」も発泡酒も、さらに健康志向も高級志向も、そしてビール以外のおしゃれな缶入りカクテル等も含め多彩な商品の中から消費者自らが好きな酒を(あるいは、今日飲みたい酒を)商品棚から自分の手で選んで買えるようになった。販売力のフラット化は商品の多様化を促し、それが市場全体のパイを大きくする。高速バスも、遅ればせながらようやくその時期にさしかかったのである。
2010.01.05
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