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さて、では「高速バスの観光シフト」とはなんだろう? 実は先日、バス趣味友達と一緒に群馬県北部を1泊で回った。メインは、季節限定で今シーズンから運行開始した「上州湯けむりライナー 伊香保・四万温泉号」。東武バスウエストの西上尾車庫を起点に、上尾駅、川越駅経由で両温泉へ向かう高速バスである。都心から両温泉への高速バスは以前からあったが、今回は郊外始発。上尾は東武バスの営業エリア、川越は東武バスのエリアであるとともに東武鉄道の拠点駅。もちろん、運行する関越交通も東武系事業者。三連休初日。多くの路線で続行便が出たはずだが、さすがに新規路線なので満席までは行かず、実乗19人。乗車改札時にこそっと覗き込んだ予約者リストから推測するに、東武トラベル企画実施によるフリープランの比率が圧倒的に大きい様子で驚いた。フリープランとは、往復の交通と現地の宿泊だけがセットになり、添乗員が同行しない旅行商品。航空や宿泊の団体(旅行会社)向け価格設定を活用するために形の上では募集型企画旅行としているが、実質的には個人旅行という商品形態で、特に航空の世界ではおなじみだ。始発(わざわざ路線バスで移動した西上尾車庫)から乗ったのは、さすがに我々のみ。上尾駅で乗車した20代の女性二人(学生時代の友人どうしか職場の同僚か)と、川越駅からの女性(要するにおばちゃん)7~8人の小グループはフリープランらしい(地元客または帰省客らしきご夫婦などは個札の様子。それ以外は不明)。発車後、高速バスらしくテープによる案内放送に続き乗務員がワンマンマイクで補足放送を行ない、最後に名乗って放送を終えたところ、予想外にも前方に座るおばちゃん小グループからは拍手が上がった。つまり車内は(厳密にはその小グループは)、クラツーやトラピックスのバスツアーの雰囲気なのだ。同様に観光地に向かう高速バス、例えば京王の富士五湖線や小田急箱根高速バスではほとんど見かけない光景だ。早い話がそのおばちゃん達は(一歩譲って、<今度、バスで四万温泉に行きましょうよ>と言い出したご本人はそうではなくとも、<いいわね、じゃあ●●さんも誘いましょうよ>と話に乗った方の残りのおばちゃん達は)、この高速乗合バスを「バスツアー」の貸切バスだと思っている(少なくともその区別がついていない)のである。おそらく、東武バスの車内や東武東上線の車内、駅に「バスで行く四万温泉」のポスターが大きく貼ってあるはずだ。東武鉄道の広報誌や沿線情報誌にも掲載されているのかもしれない。オフシーズンの新規路線で10人以上の上積みはありがたく、私鉄系の底力を感じる。だが、そうなるとここで考えてしまう。この、「関越交通(運行)/東武トラベル(企画実施)/東武鉄道(沿線での告知)」という組み合わせなら、どの大手私鉄でも実現する。しかし、例えば、京王系の高速バスを使う京王観光の石和、諏訪などへのフリープランが、この関越交通のように乗客のほとんどを占めているなんていう話は聞かないし、近鉄(クラツー)や阪急(トラピ)に至っては、高速バスではなくバスツアー(貸切バス)で一大帝国を作り上げてしまった。かと言って東武グループが他の私鉄と比べて沿線住民を強くグリップしているかと言えば、むしろその点では、「私鉄経営の優等生」阪急や京王と比べて遅れ気味という気もする。なぜ、他の路線でもこの結果を出せないのか、考え込む。一方、四万温泉は、湯治で知られた山深い小さな温泉街。草津などと比べればいたって静かだ。今回、私たちは、「上州周遊湯切符(関越交通の高速バス乗客限定で販売される、エリア限定ながら同社の路線バスに乗り放題のフリー乗車券)」でバスを乗り倒し湯檜曽温泉に泊まったが、ここも静かな温泉街。こぶりな宿(特にお風呂)には満足したが、それでも、ゆっくり飲みながら楽しんでも20時には夕食も済み、部屋食だから食事は下げられ部屋には布団がしかれてしまう。裏寂れたスナックでもいいから飲み屋は、と女将さんに聞いても、<タクシーで隣町まで>と言われる。まあ、早く寝てふだんの倍くらいの睡眠を取れたので、旅の意味は意外とそこにあるのかなとも思いつつ、時間を持て余したのは確かである。ましてや、上記のフリープランだと、昼過ぎに四万温泉で降車し翌昼に乗車するまで24時間弱、カン詰である。たしかに、クルマ(自家用車やレンタカー)の旅行であれば往復の道中で観光地に立ち寄ることもできるし、それこそ「本物の」クラツーやトラピであれば、むしろ立ち寄り観光でどっぷり疲れてチェックインとは言え、時間を持て余すことはない。つまりこういうことだ。何度も述べたように、大都市部での高速バスの認知は遅れている。本来なら高速バスを使った方が便利な地域へさえ、鉄道などを乗り継いで行く観光客も多い。一方で旅行会社が企画するバスツアーはそれなりに顧客を掴んでおり、当事者が意識したかどうかは不明だが、バスツアーのフリをした「カメレオン作戦」なら、一定の顧客を「バスツアー」から奪えることを関越交通の事例は示している(バス業界全体で見ればカニバリだけど)。しかし旅行というのは常に目新しいネタを投下し続けないといけない商品分野なので、目的地を取り替えられる旅行会社ならともかく、路線に縛られたバス事業者の場合は、親会社に当たる鉄道の沿線住民だけに告知をしていてはいつかは飽きられ長続きしない(「認知・販路の限界」)。また、現地側の宿泊施設や観光集客施設も、クルマや貸切バスでの移動を前提にしており、高速バスを使った旅行では物足りなさ、もどかしさが残る(「商品の限界」)。とはいえ、前回まで見てきたように、旅行会社が企画実施する総花的な旅行商品(マスツーリズム)は、長い目ではシュリンクしていく。旅行者のニーズは多様化し旅行形態は個人化が進むのだ。その流れは、次が高速バスの出番であることを、理屈では、明確に示している。我々はいま、先に挙げた「認知・販路」と「商品」という、二つの限界を乗り越えることを求められている。しかしそれを乗り越えられた先には、マスツーリズムの退潮により縮小を余儀なくされる貸切バスマーケットの受け皿どころか、若者のクルマ離れや高齢化進展により増加する「自家用車を使わない旅行客」、さらには現時点でも急増しているFITといった新しい市場が待っているのだ。難しいことではない。30年前、共同運行クローズドドアという新しい運行形態を得て、地方部において「都会への足」として高速バスを定着させた「第二フェーズ」の大先輩たちのように、そしてここ数年、インターネットを最大限に活用して大都市間夜行路線を急成長させた、私自身も含めた「第三フェーズ」の担い手たちのように、もう一度、次なる市場と出会うために、試行錯誤を続けるだけのことである。次回は、まず「商品の限界」から順に、我々の前に立ちはだかる壁についてもう少し詳しく見てみたい。
2014.01.27
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長々と高速バス「第三の市場」について前置きを書いた。だがいざ具体的な話に入ろうとするとなかなか筆が進まない。実は、自分で唱えておいて恐縮だが、率直に言えば、ひとりのバス好きとして、どうも高速バスの「観光シフト」にいくばくかの違和感があるのだ。学生時代にバスターミナルのアルバイトとして高速バスに出会い、そのままハマってしまった私は、しかし、仕事では10年ほどバスから離れた後、楽天トラベルの高速バス事業に転職してバスの世界に戻った。そこで「第二の市場(高速バスの歴史でいえば「第三フェーズ」。この、成長フェーズと市場とで連番が一つズレているのは、第一フェーズでは市場を作り上げられなかったからで、逆に言えば第二フェーズを担った既存事業者の存在の大きさを象徴しているのだが、混乱するので別の名称を考えるかな)」の誕生と成長に立ち会った。むしろ自らその旗を振ったと言っていい。いま私が生活していけるのは、「第二の市場」を成長させた実績を皆様に評価いただいているからだと思う。その意味で私は「第二の市場(第三フェーズ)」で食っている。だが正直に言うと、愛着を感じるのは、「本籍地」である「第一の市場(第二フェーズ)」だ。文学少年だった私は(ちょっとした理由で商学部に通っていたものの)ビジネスというものを少し軽蔑していた。しかし友人の紹介でアルバイトを始めた高速バス事業は、ただの金儲けとは違った。現地(山梨や長野)で多少の赤字(当時はまだ「多少」だった)を我慢して地域公共交通の維持のためがんばっている共同運行先事業者や、回数券を握りしめ、我々スタッフに対し、<お世話になります>と頭を下げながらご乗車になる現地のリピーターがそこにいた。もちろん、その反動で事業者の顧客志向が弱かったり大都市側に大きな潜在需要を残していたりすることに当時から疑問はあり、最寄りの居酒屋「つぼ八」でバイト仲間と議論するのに夢中になってはいたが(その頃の仮説を全て放り込んだものが「第三フェーズ」であり、その先に生まれた貸切バス型管理受委託や幅運賃制度だ。私がいま食っていけるのは、突き詰めれば「つぼ八」のおかげだ)、それでも、「沿線の役に立っている」という使命感がなければ、ただ金儲けのやり方を考えるだけなら、真剣に議論することはなかっただろう。だから私は、「第三フェーズ」の登場人物である高速ツアーバスからの「移行組」たちとは「仕事」としては深く付き合うものの、好き嫌いで言えば、私鉄系の既存事業者どうしが共同運行する、地方都市を結ぶ高頻度昼行路線や、その現地需要への思い入れが強い。いったん話は変わるが、イーグルバスの「お客様感謝会」に、毎年お招きいただく。取引先の他、川越市長や国県市議会議員、川越の商工会議所や商店会の役員も招かれ盛大な会だ。同社の努力と谷島社長のお人柄の成果だと感心する。一方で、少しだけ不思議な感覚に陥る。壇上で代わる代わる挨拶に立つお偉方達が、二言目には「川越の観光」というキーワードをおっしゃることに、何か違和感があるのだ。もちろん、観光客対象の川越市内循環バスはよく承知しているし、「朝ドラ」効果もあり川越の観光客数が数年で大きく伸長しているのは、同市役所のお仕事をいただいたこともあるので理解している。それでも、何か違うと感じる。私にとって(あるいはバス業界の人間にとって)イーグルバスとは、旧・都幾川村のような半過疎地域で、ダイヤ最適化システムなどITを活用しロジカルに事業の改善を進め、大手事業者が放り出した路線を引き受け地域公共交通を守っている真面目な事業者である。大学院に通い留学経験もある谷島社長の物静かな語り口がその生真面目さを象徴している。だから、壇上の皆さんが、<同社は川越の観光振興に大きく貢献され>と口々に挨拶されるのを聞くと、イーグルバスを少し軽く見られた気がしてハラハラする。うん? 軽く見られる? 「観光振興に貢献する」ことは軽いのか?? 半過疎地域の地域交通は立派な仕事で、観光客を迎える仕事は「軽い」? なぜかはわからない。だがたしかにそう感じてしまう。一方、ご挨拶は続く。<同社は先代の頃から・・・>。なるほど、谷島社長は、乗合バス業界にとっては苦境を切り開く改革派のエースであっても、地元のお偉方にとっては「谷島さんとこの息子さん」なのだ、ずっと以前から。そして、川越の商店会長さん達とっては、いかに観光客を入れ込むかが生活と直結しており最大の関心事である。だが彼ら自身では観光客を呼ぶことはできない。誰が観光客を増やしてくれるのか? 理屈で言えば、西武鉄道や東武鉄道でありJTBやクラブツーリズムであり、テレビ局や出版社だろうが、あまりに遠い存在だ。自ずと、子供の頃からよく知っている「谷島さんとこのボン」に期待が集まる。イーグルは、それでも、いろいろ上手で努力もし、結果として循環バスで観光に貢献している。しかし、全国を回っていると、たしかにそのような経緯で貸切専業の事業者の、二代目三代目が、地元から、<今後は人口が減るんだし、観光客を呼ばなければ地域が持たない。お前んとこバス会社だろう。地域のためにがんばってくれ>と期待されることが多いと聞く。だが貸切バス事業は受身の事業で、観光客を迎えることはできても増やすことはできない。だから、大都市から地元への高速ツアーバスに挑戦したりしてしまう(結果はほぼ全滅)。つまりこういうことだ。ホテルなどで働いていた私でさえ、ことバスの話になると、「運輸」だと規定してしまう。地味だけど、生真面目に、地域のために走るのが仕事。それが美学。「観光」のような、華やかだが浮ついた仕事とは違うんだ、と。ところが、自分たちが貢献しているはずの地域の側は、実は、「観光」に期待しているのである。浮ついた軽い仕事? 旅行業界はバス業界を搾取する存在? とんでもない。「観光」はこの国の次の生き様である。高度成長期に、製鉄や重機などの業界が、<俺たちがこの国を支えている>と自負していたように、我々は観光立国というこの国の生き方の、一翼を担えるんだ。バス業界はその役割を楽しめばいい。先日、委員に任命いただいている国土交通省での会議で、高速バスの観光シフトについてプレゼンテーションさせていただき、自慢のようで恐縮だが、お偉い方々からわざわざ直接お褒めの言葉を頂戴した。もう後戻りはできないし、それを推し進めることが、実は皆さんから期待されていることを実感する。では、観光客を呼び込む高速バス事業とは何なのか? 観光施設をセットにした企画乗車券を作れば十分なのか? 次回(いつになるか自信はないけど)からは、具体的に高速バスの観光シフト、「第三の市場」の切り開き方について考えてみたい。
2014.01.18
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新年あけましておめでとうございます。昨年は高速バス業界にとって歴史的な年でありましたが、本当に多くの皆様に助けていただいて乗り切ることができました。本年も、さらに一歩前に進める一年になるよう、がんばります。 早速ですが(というより昨年末に掲載されたものを遅れてご紹介しますが)、『日本経済新聞・電子版』映像ニュースのコーナーでインタビューをご紹介いただきました(共同通信による配信)。相変わらず?WILLER、海部の車両に私のコメントという組み合わせです・・・このところ、高速バスの豪華車両を紹介するニュースが各紙各局で続いております(『日本経済新聞」12月21日付の夕刊なんで第1面でしたね)。バスに詳しい方からすれば、一つひとつはそんなに目新しい車両ではないかもしれませんが、こうやって一般の方に高速バスのことをご紹介いただけることは非常に意味のあることです。関係者のみなさん、ありがとうございます。 (該当ニュースに直接リンクを貼れないようなので、上記リンク先のページ上部の検索機能で「夜行バス」と検索してください※「高速バス」では表示されません)
2014.01.03
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