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ユキノシタ 5月20日 11時30分 撮影トキワツユクサ 5月20日 11時30分 撮影
May 20, 2025
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前・駐ウクライナの米国大使ブリジット・ブリンク(Bridget A. Brink)氏が、自らの意思で大使を辞任されてのち初めて辞任を決意した理由を「デトロイト・フリー・プレス」に寄稿された。私はその文章に感動した。「デトロイト・フリー・プレス」のご好意により、以下にブリジット・ブリンク元大使の寄稿文をそのまま掲載する。 ブリジット・ブリンク氏は、ジョー・バイデン大統領によって駐ウクライナ米国大使に任命され、2022年4月、ロシア侵攻による全面戦争下のウクライナに赴任された。ドナルド・トランプ大統領第二次政権に変わって、ロシア/ウクライナ戦争へのトランプ政権の対応には民主主義国家ウクライナを擁護する姿勢がないことに、ブリジット・ブリンク氏は米国大使として苦痛を感じたようだ。辞任を決意し、2025年4月に大使を辞任された。 以下、ブリジット・ブリンク氏の「デトロイト・フリー・プレス」への寄稿文。ブリンク氏は、「ロシアによる残忍で一方的な侵略から私たちの民主主義同盟国を支援するという、これまでの人生で最も厳しい仕事である駐ウクライナ米国大使としての3年間の任務を終えて帰国した」と書き出していられる。(下に日本語訳)I was U.S. ambassador to Ukraine. I resigned because of Trump's foreign policy. | Opinion Bridget Brink | Op-ed contributorI just came home to Michigan from three years in the toughest job of my life ― serving as the American Ambassador to Ukraine ― supporting our democratic ally against brutal, unprovoked aggression by Russia.I have proudly served five presidents ― Republicans and Democrats ― to make sure the United States is the strongest, greatest country that the world has ever known.I respect the president’s right and responsibility to determine U.S. foreign policy ― with proper checks and balances by U.S. Congress. It is the role of America’s Foreign Service to execute that policy. Unfortunately, the policy since the beginning of the Trump administration has been to put pressure on the victim, Ukraine, rather than on the aggressor, Russia.As such, I could no longer in good faith carry out the administration’s policy and felt it was my duty to step down. After nearly three decades serving our country, I resigned as our ambassador to Ukraine.I cannot stand by while a country is invaded, a democracy bombarded, and children killed with impunity. I believe that the only way to secure U.S. interests is to stand up for democracies and to stand against autocrats. Peace at any price is not peace at all ― it is appeasement. And history has taught us time and again that appeasement does not lead to safety, security or prosperity. It leads to more war and suffering.‘Pure evil'Since Russia launched its full-scale invasion of Ukraine on Feb. 24, 2022, it has done what can only be described as pure evil: killed thousands of civilians, including 700 children, with missiles and drones that hit their homes and apartments in the dead of night.It has committed over 150,000 war crimes, abducted 20,000 children from their families, and forced millions of men, women and children to flee into Europe and elsewhere.For three years I heard the stories, saw the brutality, and felt the pain of families whose sons and daughters were killed and wounded by Russian missiles and drones that hit playgrounds, churches and schools. Over a career spent in conflict zones, I’ve seen mass atrocities and wanton destruction first-hand but we have never seen violence so systematic, so widespread and so horrifying in Europe since World War II.What we do mattersWhy does Russia’s invasion of Ukraine matter to the United States?It matters because how we handle this war will speak volumes to our friends as well as our foes. If we allow Putin to redraw borders by force, he won’t stop with Ukraine. Taken at his word, Putin’s ambition is to resurrect an imperial past ― and he can’t do that without threatening the security of our NATO allies.And if Putin succeeds, it sends signals to China that will undermine the security balance in Asia and throughout the world. That will have profound implications for America’s safety, security, and prosperity.Europe is our largest trading partner, with a $1.6 trillion dollar relationship that fuels 16 million jobs on both continents, including right here in Michigan. Maintaining 80 years of peace that came out of the devastation of World War II ― and the economic growth, trade, and real jobs that flow from it ― is what is at stake for us in Russia’s war in Ukraine.But Russia’s war is about more than foreign policy or economics. It’s about who we are.The U.S. must lead the free worldMy grandfather, who grew up in Charlotte, Michigan, proudly served our nation as a soldier in World War II while my grandmother supported their only child by renting out rooms in their home in Lansing. My grandparents did not see each other for three year and my mom didn’t know her own dad when he came home, but they understood doing what was right.The America I love, the one our grandparents served, would never stand by and let such horrors happen.Or give up helping our friends. Or appease the aggressor.We must hold fast to who we are ― a just, generous, and hard-working people, blessed with a democratic and accountable government, the largest free market economy in the world, and the most powerful military in human history. We must show leadership in the face of aggression, not weakness or complicity. When America does not lead the free world, what is at risk is our own success as a nation.This is the America I love, and was proud to serve every day.I may no longer be an American diplomat, but I will never stop believing in the need for American leadership to secure our own future and offer the beacon of hope and possibility for every Michigander, every American and so many others around the world.【山田維史註:Reprinted by courtesy of Detroit Free Press(デトロイト・フリー・プレスの好意による転載)】【日本語訳】私はウクライナ駐在の米国大使でした。トランプ氏の外交政策が原因で辞任しました。 ブリジット・ブリンク | オピニオン寄稿者人生で最も過酷な3年間、ウクライナ駐在の米国大使として、ロシアによる残忍で一方的な侵略から民主主義の同盟国を守るという任務を終え、ミシガン州の自宅に戻ったばかりです。私は、共和党と民主党の5人の大統領に仕え、アメリカ合衆国が世界で最も強く、最も偉大な国となるよう尽力してきたことを誇りに思います。私は、大統領が米国の外交政策を決定する権利と責任を尊重します。それは、米国議会による適切な牽制と均衡のもとで行われるべきです。その政策を実行するのが、米国外交部の役割です。残念ながら、トランプ政権発足以来の政策は、侵略者であるロシアをではなく、被害者であるウクライナに圧力をかけることになっています。そのため、私はもはや誠意を持って政権の政策を遂行することができず、辞任することが私の義務であると感じました。30年近く国に仕えた後、私はウクライナ大使を辞任しました。国が侵略され、民主主義が爆撃され、罪もない子供たちが殺されるのを傍観することはできません。米国の利益を守る唯一の方法は、民主主義を擁護し、独裁者に対抗することだと私は信じています。いかなる犠牲を払ってでも平和を得ることは、平和などではなく、宥和政策です。そして歴史は、宥和政策が安全、安心、繁栄につながらないことを繰り返し教えてきました。それはさらなる戦争と苦しみにつながるのです。「全くの悪」ロシアが2022年2月24日にウクライナへの全面侵攻を開始して以来、彼らは全くの悪としか言いようのない行為を行ってきました。真夜中にミサイルやドローンを自宅やアパートに撃ち込み、700人の子どもを含む数千人の民間人を殺害したのです。ロシアは15万件以上の戦争犯罪を犯し、2万人の子どもを家族から誘拐し、何百万人もの男女、子どもたちをヨーロッパやその他の地域に避難させました。3年間、私はロシアのミサイルやドローンによって遊び場、教会、学校が攻撃され、息子や娘が殺されたり傷ついたりした家族の話を聞き、残虐な行為を目の当たりにし、その苦しみを味わいました。紛争地域でのキャリアを通じて、私は大量虐殺と無慈悲な破壊を目の当たりにしてきましたが、第二次世界大戦以降、ヨーロッパでこれほど組織的、広範囲に及び、恐ろしい暴力を目にしたことはありませんでした。私たちの行動は重要ロシアによるウクライナ侵攻はなぜアメリカにとって重要なのか?重要なのは、この戦争への対応が友好国だけでなく敵国にも大きな影響を与えるからです。プーチン大統領の武力による国境線の変更を許せば、彼はウクライナだけで終わることはないでしょう。プーチン大統領の野望は、帝国時代の復活であり、NATO同盟国の安全保障を脅かすことなくそれを実現することはできません。そして、もしプーチン大統領が成功すれば、それは中国へのシグナルとなり、アジアそして世界全体の安全保障のバランスを損なうことになります。それはアメリカの安全、安心、そして繁栄に深刻な影響を及ぼすでしょう。ヨーロッパはアメリカ最大の貿易相手国であり、1兆6000億ドル規模の関係を築いており、ここミシガン州を含む両大陸で1600万人の雇用を生み出しています。第二次世界大戦の荒廃から生まれた80年間の平和の維持、そしてそこから生まれる経済成長、貿易、そして実質的な雇用こそが、ロシアのウクライナ戦争において私たちにとって危機に瀕しているのです。しかし、ロシアの戦争は外交政策や経済の問題だけにとどまりません。それは、私たちが何者であるかという問題なのです。アメリカは自由世界をリードしなければならないミシガン州シャーロットで育った私の祖父は、第二次世界大戦で兵士として誇りを持って国に仕えました。祖母はランシングの自宅の一室を貸し出し、一人娘を養っていました。祖父母は3年間会えず、母は帰国した父の顔も知りませんでしたが、彼らは正しいことをすることを理解していました。私が愛するアメリカ、祖父母が仕えたアメリカは、このような惨劇が起こるのを黙って見ているようなことは決してありません。友への支援を諦めたり、侵略者を宥めたりすることも決してありません。私たちは、公正で寛大、そして勤勉な国民であり、民主的で責任ある政府、世界最大の自由市場経済、そして人類史上最強の軍隊に恵まれていることを、揺るぎなく貫かなければなりません。侵略に直面した時、私たちは弱さや共謀ではなく、リーダーシップを発揮しなければなりません。アメリカが自由世界をリードできなければ、国家としての成功が危うくなるのです。これが私が愛し、日々奉仕できたことを誇りに思うアメリカです。私はもはやアメリカの外交官ではありませんが、アメリカのリーダーシップが私たちの未来を確かなものにし、ミシガン州民、アメリカ国民、そして世界中の多くの人々に希望と可能性の光をもたらすために必要だと、私は断固として信じ続けます。 (訳;山田維史)
May 19, 2025
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ハーバード大学に対して大統領令によって助成金凍結の脅しをかけたトランプ大統領にとってまことに皮肉なニュースを CNNが報じている。 ハーバード大学が1946年に日本円にしてわずか4000円程度(現在のレート)でイギリスの古書籍商から購入した「マグナ・カルタ(大憲章)」の「複製」が、最近の研究で本物の「原本」と確認された。13世紀に成立し、現在の英国憲法の基盤となている「マグナ・カルタ」は、「法の支配」を宣言し、王の権力、またすべての為政者の権力を制限した近・現代憲法のさきがけである。国際的にも法理念の規範と言ってもよいだろう。すなわち民主主義国家であろうと王政国家であろうと独裁主義国家であろうと、憲法を超えることはできず、憲法に基づき制定した法による「法治国家」として法の支配を超えることはない。「悪法もまた法である」と、私はこのブログでも何度か述べてきたが、しかし権力は憲法に制限されている。為政者の権力を制限すること、それが憲法の主目的である。 さて、アメリカ合衆国ではドナルド・トランプという男が大統領に再選され、低所得者層と高齢者の支持をねらっての「MAGA(Make America Great Again ;アメリカを再び偉大に)」を旗印に、大統領令という法的には認められているが極めて特異な超越的な命令を頻発して、民主主義大国を誇ってきたアメリカ合衆国を混乱に陥れているようだ。つまり財務削減のために、低所得者層および高齢者向けの医療補助(メディケイド)の廃止案を出したことで、自らの支持層に打撃を与えているのである。バーニー・サンダース上院議員が、トランプ大統領の政治は「億万長者のための億万長者による億万長者の政治」と非難する理由である。トランプ大統領の説明は、メディケイドの廃止によって不法移民を排斥するというものだが、じつは低所得者層および高齢者も含まれる可能性についてはまったく触れていず、また、憲法で認められている不服申し立て条項を完全無視している。この例のように、トランプ大統領の大統領令によって引き起こされた混乱は、前近代的な王政ないしファシズム体制の独裁者のごとく、どうやら上述の近代以降の憲法が意味する「法の支配」を超えているらしい。 私の推測は次のような事実に拠る。すなわち、トランプ大統領擁立母体である共和党議員のみならず民主党によって、反トランプ運動がもちあがっていること。及び、ただいま現在、共和党のシュリ・タネダール下院議員によって、トランプ大統領の数々の法律違反等7項目を理由に、弾劾訴追が正式に議会に提議されたこと。 アメリカ合衆国において、一般国民のみならず国会議員によって大統領が「独裁者」呼ばわりされたことがアメリカ政治史上にあっただろうか? ハーバード大学図書館所蔵のこれまでマグナ・カルタ複製と思われてきたものが、1300年に書かれた原本であることが判明したことを、トランプ大統領にとっては皮肉、と私が書く所以。いったいこの人は憲法をどのように自らの意識と教養の内に納めているのか・・・私はそう思いつつ書くのである。 いやいや、私はアメリカ合衆国をのみ思っているのではない。故安倍晋三首相もそのケがあった。概して戦後の歴代首相は、できるだけ憲法を軽く見ようとする観念が意識の底流にあった、と私はみている。その観念は日本の民主主義の崩壊に直結していることは間違いない。CNNニュース ハーバード大学所蔵マグナ・カルタは本物
May 16, 2025
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私は4月19日のこのブログ日記で、最近の私の書棚からユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書「NEXUS 情報の人類史」をとりあげた。その第二巻目は、AIをめぐって現在そして未来におよぶ重大な問題を示唆し、且つ人間がAIの支配下に従属しないための・・・AIはすでに人間の管理がおよばない知能の自己生成をすることが判っているため、人間がAIに従属する危険性は十分すぎるほどあるので・・・そうならないために私たちは如何にすべきかを説いている。 さて、今日はエンターテイメントにしよう。世界的大ベストセラー「ダ・ヴンチ・コード」の著者ダン・ブラウンの「ディジタル・フォートレス(ディジタル砦)」。もう27年も前に出版された。日本語訳があるかどうかは私は知らない。紹介するのは英語原書であるが、高校生の英語力で読みこなせるだろう。 スリリングな冒険小説なのでストーリーは述べない。NSA(国家安全保障局)のアジア暗号部門においてディジタル・コードを巡り、明敏な美人女性暗号研究家で数学者スーザン・フレッチャーと、直感的記憶力に優れアシアの6言語をスペイン語・フランス語・イタリア語と同様に使いこなす言語学者デイヴィド・ベッカーとが一緒になって、ハラハラドキドキの活躍をする。本書が刊行された1998年、日本はすでにディジタル研究分野で世界に抜きん出ていたらしく、エンセイ・タンカドという日本人も登場する(この日本名、はたしてダン・ブラウン氏はどんなところから思いついたのだろ?)。 ・・・それはともかくとして、書名「ディジタル砦」が示すとおり、コンピューター・ディジタル・コードが、国家機密の安全保障問題と世界覇権の鍵であることを示唆しているのがこの娯楽小説のおもしろさである。アメリカのニューヨーク・タイムズ紙、シカゴ・トリビューン紙、ワシントン・ポスト紙、ボストン・グローブ紙、ヒューストン・クロニクル紙など数多の書評が絶賛してい、その他、国家安全保障研究所の研究員も絶賛している。 ペイパーバック版 ST.MARTIN'S PAPERBACKS 2004, New York
May 15, 2025
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大学時代の級友で、その後の60年間の長きにわたって変わらぬ友誼を願っている勝呂氏が、今朝、私の傘寿(80歳)に祝辞を贈ってくださった。「我が人生とは遊ぶことなり」とうそぶいて、この年までのんべんだらりと生きてきた私は、勝呂氏のお言葉にまことに恐縮した。ありがとう、ありがとうございました。
May 14, 2025
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昨夜、習慣になっている読書をやめて、溝口健二監督の映画「雨月物語」をヴィデオで観た。もう何度も観ているのだけれど、あらためて映像の細部についてメモしておきたくなった。 この映画は上田秋成の怪異譚「雨月物語」のなかから「蛇性の淫」と「浅茅が宿」とを撚りあわせて一本の物語に翻案したものである。脚本は川口松太郎と依田義賢の共作。撮影監督・宮川一夫、美術監督・伊藤熹朔、風俗考証・甲斐庄楠音、装置・山本卯一郎、背景・太田多三郎、音楽監督・早坂文雄、他。 溝口作品の中でもとりわけ美しい映像として私の記憶に刻まれている映画である。あらためてメモしておこうとおもったのは、その映像の細部の拵えについてだ。何度も観ているのに、記憶に刻まずにサーッと通り過ぎていた。しかしながら次の点はこの作品の映像の「特徴」と言ってもよさそうな気がする。それは、主要人物の所作の遠い背景に二、三のぼんやりとした小さな人影が動いてい、ただ通り過ぎるだけなのだが、画面に奥行きと、何と言おうか・・・主要人物たちの生きている空間が表出されるのである。具体的なシーンを述べてみよう。◉戦乱に明け暮れる近江の山国。しがない焼物(陶器)作り源十郎(森雅之)と女房の宮木(田中絹代)は、できた焼物を都で売るために、弟の藤兵衛とその女房阿濱とを連れ立って、陸路は残党狩りの武士が出るので湖水を舟で渡ることにする。小舟に荷積みをする一家の背後、遠い岸辺に霧にかすんだ一人二人と小さな人影が通る。◉湖を舟を漕ぎながら渡るその遥かかなたに、やはり霧にかすんで小さな舟の影。一艘、二艘。◉都で金儲けをして味をしめた源十郎は、女房宮木と幼子を家に残してふたたび焼物を都に運ぶ旅に出る。その留守中、残党狩りが村を襲うという報せに、宮木は子供を抱いて逃げる。山道で数人の武士に襲われ、持っていた飯を奪われる。あげくの果てに槍で突き刺される。宮木は粗朶を杖に立ち上がりよろめき歩く。カメラは子供を抱いてよろめき歩く宮木を追うが、山の下に畑が見え、そこに奪った飯をさらに奪い合う二人の武士の姿。◉都から命からがら荒れ果てた村に帰ってきた源十郎の遠い背景に村人の影。◉エンド・マークの背景に、山の下で畑を耕し野良仕事をする二人の小さな姿。 上述のようにこの作品は画面の作り込みが、大声で主張するではなく緻密で繊細である。琵琶湖水を舟を漕いでゆく最初のシーンでは、場面の変わりをフェイド・アウト(容暗)ではなく画面向かって右から濃い煙霧が流れてきて、立ち籠め、艪を操る阿濱の後ろ姿を消している。じつはこの作品は場面転換に「黒み(黒い画面)」を使用しているので、湖水での霧による場面転換は特別と言ってよいと思う。 さて、もう二、三書いておこう。◉源十郎から焼物を買った上臈若狭(京マチ子)と侍女の右近(毛利菊枝)は、屋敷に届けてくれと言う。源十郎が届けに行く途中に二人が待っていて、「案内がのうては分かるまいと思いましてな」と侍女。そのときの若狭のかすかに妖しく笑む顔のつくり・・・京マチ子の演技は、能面「近江女」あるいは「増」をモデルにしていると思われる。◉屋敷。その若狭の部屋の几帳の薄絹(生絹;すずし)に揚羽蝶の文様。蝶は霊魂の象徴である。【後注】◉源十郎は若狭に対面し、酒肴を勧められる。この場面での音楽は仏教の御鈴(おりん、あるいはそれを模倣した)が、間をおきつつかすかに鳴りつづけている。しかし、観客はほぼ終盤にいたるまで美しい上臈若狭が妖怪であることは知らされていない。この御鈴の音は、几帳の蝶の文様とともに音による観客への暗示なのである。◉源十郎と閨房の契りをかわした若狭は、寝入る源十郎を見やりながら次の間の鏡の前に座る。若狭の左背後から鏡に顔を映すミドル・ショット。性の充足感がある。しかし、鏡には何も映っていない。◉源十郎が路上で僧に出会った後のこと。屋敷にもどった源十郎に若狭は抱擁しようとして絶叫する。源十郎の肌に経文字(梵字)が墨書されている(小泉八雲の「耳なし芳一」を思い出してほしい)。その場面での若狭の髪(すべらかし。あるいは、おすべらかし)はそれまでの美しい形から、鬢の先がざっくりと乱れている。 源十郎と妖魔若狭との出会いは、理屈では源十郎の「幻視」であるが、源十郎にそのような質(たち)がそなわっていたかもしれないのは、映画の中で一箇所伏線のような場面がある。屋敷に焼物を届ける途中で、源十郎は衣服店(上田吉二郎)にぶらさがった華やかな小袖を目にとめた。いずれも没落貴族や武家屋敷から出た着物であろう。源十郎は金を儲けたら宮木に買ってやりたいと思う。店の裏手の暗がりから宮木が出てきて、嬉しそうにぶらさがった小袖に触れる。もちろんこれは源十郎の幻想である。私(山田)が注目したのは、その幻想が何ら効果が加えられていない完全実写映像である点だ。もしもこの宮木出現の場面にいわゆる通俗的なエフェクト(幻想効果)がほどこされたならば、後の若狭の屋敷(こちらこそ妖異)の映像との整合性がとれなくなってしまう。つまり源十郎にとって妖異が「実像」として経験されていなければならないので、源十郎の想像のうちに現れた宮木も映像としては実写そのものでなければならないのである。と、すれば、源十郎という人物は、夢見がちな、普段から幻視するような質(たち)である、と私は考える。 まあ、そんなこんなで、おもしろい発見がある溝口健二監督の「雨月物語」である。【注】私はこのブログ日記2006年8月28日に 〈溝口健二「雨月物語」の蝶〉と題して書いている。 ついでに私が所蔵する上田秋成本を紹介上田秋成全集 全二巻分冊 国書刊行会大正7年2月に國書刊行會より出版された書籍を昭和44年11月に一切の変更無く大正初版を写真製版で再刊行された。【第1巻 目次(収録作品目録)】上田秋成小傳。上田秋成年譜。藤簍冊子。藤簍冊子脱漏。十雨餘言。歌島稲荷社獻詠歌。秋の雲。去年の枝折。餘齋文集。葦芽の詞。文反古。雨月物語。春雨物語。背振翁物語。燗癖談。膽大小心録。哬刈葭。安安言。漢委奴國王金印考。【第2巻 目次】荷田氏訓讀齊明紀童謡存疑。萬葉集會説。金砂。金砂剰言。古葉剰言。歌聖傳。冠辭考續貂。よしやあしや。靈語通。靈語通砭鍼。也哉抄。清風瑣言。 秋成遺文 藤井乙男編 国暑刊行会本書もまた大正7年10月に國書刊行會より刊行されたものを昭和49年11月に大正初版をそのまま使用して再刊された。【目次】神代がたり。史論 その。、史論 その二。ぬば玉の巻。七十二候。追擬花月令。淺間の煙。つゞら文。麻知文。異本膽大小心録。自傳。岩橋の記。山霧記。花蟲合。十五番歌合。海道狂歌合。山裹。迦具都遲能阿良毗。箕面行。北野加茂に詣づる記。伏見行。藐姑射山。再詣姑山。初瀬詣。暁時雨。背振翁傳。鴛央行。ますらを物語。鶉の屋。寛政改元。うかれ鴉。田父辭。雛祭詞。夏山里に遊ぶ。納涼詞。初秋の夜を玩ぶ。初がりの詞。十六日朝雨大文字を思ふ。雪の詞。文化元年朝雨雪遙思故國歌。八月下旬歸京後雨連日復思故國歌。寿淨光精舎にてよめる。瑞龍山下に庵ずみの時雪の日獨言に。山村除夜。山村元旦。多福言。近頃題詠の歌ども。名節賛。茶の歌。天保歌。同解。俳句。豊太閤を祭る。哭梅厓子。安樂寺上人傳。遠藤氏假山記。幽石軒記。仰觀俯察室記。呑湖堂記。富士山説。讀日本春秋。代太武禪祝壽畫山水説。皇太子厩戸論。皇太子大友論。菅相公論。大明國師畫像記。自像筥記。賜攝津國西成郡今宮庄弘安之勅書并代々之御牒文序。介中拙齋國手追悼之序。井華集序。奇鈔百圓跋。古今和歌集打聽序末識語。土佐日記解序。土佐日記解識語。再版文布序。縣居歌集序。靜屋歌集序。伊勢物語古意序。よしやあしや序。懐風藻跋。萬葉集見安補正序。春葉集序。東丸の書ける古今和歌集序の後に。夏野の露識語。落窪物語序。校本大和物語奥書。古筆名葉集序。契沖阿闍梨遺文書後。河づらの宿。壁書。畫隠松年にあたふ。尾張人大館高門へ答ふ。呉春へ。かきね漬のこと葉。呉春へ。呉春へ。呉春へ。松本重政へ。呉春へ。無名氏へ。百錬へ。眞乗院へ。無名氏へ。大田南畝へ。【追加】楢の杣。秋風篇。西歸記書後。讀環中師題于虎渓三咲圖。齋宮へ。羽倉氏へ。紫暁へ。實法院主へ。
May 13, 2025
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トランプ大統領の民主主義破壊につながる独裁的政策に対する一般民衆の抗議活動は、とうとうトランプ大統領擁立の党である共和党からも出始めている。 トランプ大統領の政策を、その「フェイク発言」を含め、頑強に支持していた陰謀論者マジョリー・テイラー・グリーン共和党下院議員さへ、数週間前にトランプ大統領を裏切り者とののしっていた。 しかし注目すべきは、先週、同じく共和党下院議員シュリ・タネダール(Shri Thanedar)氏が、トランプ大統領の独裁と法律違反を理由にトランプ大統領弾劾訴追状を提出した。そしてシュリ・タネダール議員は、昨日10日、ジェシカ・デンソン氏の番組「ライツ・オン」に出演し、この弾劾訴追は誰に相談したのでもなく、合衆国の民主主義のためであり、数日中にアメリカ合衆国下院で弾劾採決を強行すると述べた。シュリ・タネダール共和党議員「ライツ・オンに出演」【註】シュリ・タネダール(Shri Thanedar)氏のお名前は、「タネダー」と発音するのかもしれない。同氏はインドからの移民と私は推測し、迷ったあげくヒンドゥー語の発音で「タネダール」とした。
May 11, 2025
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小庭の野草や土佐文旦、柿などの花が咲いた。フタリシズカ(二人静) 5月8日 午後3時 撮影フタリシズカのそばにヤブタビラコワタナトサブンタン(土佐文旦) 毎日ほろほろと散り落ち、かすかな香りを漂わせている。カキ(柿) 柿の花もたくさん咲いている。毎日散って、掃除がちょっとたいへん。カシワバアジサイ(柏葉紫陽花)のまだ幼い花 これから長さ30cm以上にもなる白い花の密集した總状花序(房状)となる。
May 8, 2025
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トランプ大統領「移民は出て行!」「あれ? アメリカ合衆国ってヨーロッパからの移民じゃなかったかな? トランプ大統領さん」◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉◉ トランプ大統領はいまや「嘘つき」として名を馳せているが、政治家の嘘は独裁者・ファシストに付きものだ。しかもその嘘は、まずは内向き(自国民向け)と相場がきまっている。独裁者・ファシストはドナルド・トランプ氏に限らない。世界中に存在する。民主社会を手放し独裁者によって隔離された国民は、嘘によって洗脳され、情報を遮断され、監視され、密告され、分断され(親子分断、家族分断を含む)、脅迫され、虐待され、拷問され、処刑され、殺害される。厳重な法制度のもとで、自らは意識することがないとしても自己を喪失した隷従者となっている。それが独裁者・ファシズムの国民支配の形である。 さて、ファシズムによって民主主義が危機に立つのは、日本とて同じである。戦後80年間、常に危機に立ってきたといってよい。むしろよくぞ民主主義を持ち堪えている、と言うべきかもしれない。 去る5月3日、那覇市内で開催された沖縄県神社庁と神道政治連盟県本部、日本会議県本部などが主催し自民党県連が共催したシンポジウムにおける講演で、自民党の西田昌司参議院議員が、沖縄戦で犠牲になった女学生たちから成る「ひめゆり部隊」の慰霊碑「ひめゆりの塔」の記述について、私(山田)が端的に西田氏の自説を換言すれば、要するに「嘘」だと発言した。 朝日新聞5月8日の朝刊14版、金子和史、笹山大志両記者の記事によれば、西田議員はひめゆりの塔について、(以下記事を引用)〈「今はどうか知らないが、ひどい。日本軍がどんどん入ってきて、ひめゆりの隊が死ぬことになっちゃった。そして、アメリカが入ってきて沖縄が解放された。そういう文脈で(説明を)書いている」などと持論を展開した。(改行)さらに、「沖縄の場合、地上戦の解釈を含めてかなりむちゃくちゃな教育をしている。自分たちが納得できる歴史を作らないと」とも述べた。(以下略)〉 自らの幻想に浸って、学問的成果をまったく否定する歴史修正主義*の見解は、これまでにも繰り返されてきてた。「自分たちが納得できる歴史」とはどういう意味か。そんな御都合主義な歴史が人類史にあるだろうか? 私はこういう「むちゃくちゃな教育」を自らに果たしたバカ者の発言には飽き飽きしている。 しかしながらそのバカ者たちが党派を仕立てて大衆に向かってわめきたてる。これぞファシズムの旗振りである。西田氏もこのシンポジウム主催者も、自分たちの幻想によって墜ちる社会を理解していない。【註】歴史修正主義;この言葉が使われるのは、科学的な学問としての歴史実証主義の観点からは自己中心的な歴史改竄であることがほとんどである。つまり「歴史修正主義」とは歴史記述の政治利用を指している。
May 8, 2025
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May 6, 2025
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「目には青葉山ほととぎすはつ鰹」は、山口素堂(1642-1716)のよく知られた句である。千葉県勝浦漁港で今朝水揚げされた鰹が届いた。さっそく刺身にして食べた。我が家としては初鰹でsる。 私がつくった献立は・・・ 鰹刺身(生姜、山葵)、蕗と高野豆腐の煮物、ほうれん草の胡麻和え、だし巻き卵焼き、味噌汁(若布、油揚、葱)、そして緑茶。
May 4, 2025
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アメリカ全土に拡大しているトランプ政権の政策に抗議するデモンストレイションのニュースを観ていて、私は「なるほどネー」と思ったプラカードがあった。抗議のメッセージを記したプラカードはさまざまであるが、「移民排斥」に反対するプラカードの中に蝶(オオカバマダラ)の旗指物が目についた。 オオカバマダラは渡り蝶として知られる。北アメリカ(カナダ南部あたり)から南アメリカ北部(メキシコ)まで毎年約4,000 kmを往復移動する。越冬のための大移動である。よく知られている飛行ルートは、ロッキー山脈の東側に生息するオオカバマダラは、メキシコのミチュアカン州へ一斉に大挙移動する。数万匹数千匹が一群となって、熱帯樹林の或る一本の樹木に宿る。その様は一見して蝶とは思えないような、重なりひしめき合った茶色の塊。体温を下げないためのじっと静かな押しくら饅頭である。興味深いことに、そうした大群は移動地がきまっているようで、ロッキー山脈の西側に生息するオオカバマダラは別の土地に移動するのである。 さて、私がプラカードの中にオオカバマダラの旗指物を見て「なるほどネー」と思ったのは、上述のように、この蝶が「移民」の象徴としてこれほど端的にふさわしいものはないかもしれないと感じ入ったからだ。 トランプ大統領はメキシコとの国境を軍事基地にしてメキシコからの人民流入を防ぎ。また、米国内の移民を排斥している。オオカバマダラは数万、数千万、数億匹がメキシコに「移住」している! この「知的」なプラカードが、はたしてトランプ大統領のセルフィッシュ(自己満足)な人格に届くかどうか・・・【NBC NEWS からスクリーン・ショット】【AZC. からスクリーン・ショット】
May 4, 2025
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民主主義はファシズムに包囲されている
May 3, 2025
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May 3, 2025
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朝方から小雨が降っていた。「五月雨をあつめて疾し最上川」(芭蕉)、「さみだれや大河を前に家二軒」(蕪村)などと呟いていたら、やがて大降りになってきた。風も強い。 紫陽花にはもってこいの雨だが、せっかく二輪の花が咲き始めていた二人静はか細い茎を倒されている。頼朝に命じられて鶴岡八幡宮の社前で舞った白拍子静は、たおやかさの内にも芯の強さがあったように想われるが、それにしても我が小庭の二人静は地に倒れ伏して哀れだ。私は大きなポリバケツを持ち出し、群生する数十本を起こしてまとめ、バケツをかぶせた。雨がバケツの底をドラミングしている。静の舞の振鈴にあわせて奏す鼓の音にも似ようか・・・ さみだれのあまだれ鼓聞くも良し 青穹(山田維史)
May 2, 2025
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庭草木わかば出揃い五月入る 青穹(山田維史) 老いし身にこれかあれかの衣更(ころもがえ) 葉桜の緑影さす人の妻 端午の節句を控え おさなごの兜飾りは今いずこ
May 1, 2025
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