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140 『カ ブラの冬』 藤原辰史 人文書院 154頁¥1500 2011.1.15 初版第1刷発行 [目次] はじめに 戦争と食糧 第1章大国が飢える条件 第2章食糧危機のなかの民衆と政府 第3章日常生活の崩壊過程―「ブタ殺し」と「カブラの冬」 第4章食糧暴動から革命へ 第5章飢饉からナチズムへ おわりに ドイツの飢饉の歴史的位置 参考文献 あとがき 略年表 [内容] 一般の食物史では平時の時の食の歴史が中心で、戦 時という非常時の食糧難 に触れているものはほとんどありません。この本は、第一次世界大戦中のドイツ で76万人の餓死者を出した飢饉のことを書いたものです。 (餓死者数は第二次 大戦中の連合軍によるドイツ諸都市への空襲での死者数60万人よりも多い)書名 の『カブラの冬』のカブラは、ル タバガ(別名スウェーデンカブ)のことで す。カブラを主食としなければならないほどの飢饉でした。 この本では、多数の餓死者が出た時代の人々の悲惨な情況が詳しく描かれてい ます。 ○エンバク藁の粉が50%入ったビスケット、10%のジャガイモを含む戦時パン、 豚肉に乾し鱈の実を入れた代用肉が工夫された。(日本でもダイコン、ニンジ ン、サツマ イモ茎などを米飯にまぜて増量したことがありました) ○1916年にはパンの配給が少なくなり都市下層の人々の主食は ルタバガになっ た。ルタバガをスープ、スフレ、だんご、カツレツと手を変え品を変えて調理す るようさまざまなレシピが人々に勧められた が、ルタバガは所詮ルタバガだっ た。(ルタバガは英国ではスウィードといわれます。アブラナ科ですが、日本の カブとは異なる野菜です。私 も英国で何回か煮て食べたことがありますが、日 本のカブとは大違いで、硬くてまずい) ○ 腹を空かせた子供たちは、パンやパン切符を盗んだ。盗みを犯した少年少女 たちには牢獄での懲役刑が 待っていた。これは緩慢な死刑に等しかった。弱っ ていた身体はさらに弱った。(私も、1945年3月10日未明 に東京大空襲で焼け出 されたときの夜に配給された一人1個のおにぎり、1週間後に疎開先へ行くために 待っていた駅のプラットホームで、見知らぬ人から譲って頂いた1袋のポップ コーンが忘れられません。) [感想] 戦時、脂肪不足に対処するためドイツ政府は学校の生徒にサクランボの種子を集 めさせた。また食糧不足を補うため畑の害 虫、ブナの実、キノコ、野イチゴを 集めさせ、豚の餌用にコガネムシを採集させた、と書いてあります。 (日本でも第二次大戦中、疎開先の田舎の小学校で、一人あたり60キログラムの 野草を集めて乾燥させて学校にもってくるよう言われた記憶があります。あれは 何の役に立ったのだろうと今 でも不思議です。) [頁のか けら] ○ 「50キログラムの豚肉の生産のためには90キログラムのジャガイモか25キロ グラムの大麦を必要とするのに対し、これらは人間の食料としては1キログラム の豚肉よりも遥かに多くの栄養を供給し得 る」という「単純な計算」。(中 略)学者たちは、もし、このままジャガイモが豚にまわされるのであれば、1915 年7月末で、ジャガイモの在庫が尽きてしまう、という計算をはじき出した。 1200万頭の豚の殺戮が必要であるとされたのである。(74頁) ○ 3週間に卵1個と か、1週間に5ポンド(約180グラ ム)のジャガイモしか当た らないとか、牛乳が全くなく、台所に香辛料さえないとか、リンデンの花を紅茶 がわりにし、タンポポの根や炒った ドングリをコーヒーに用いなければなら ず、しかも牛乳も砂糖もなく、わずかに少しばかりのサッカリンがあるだけとい うようなこととかを、 肌で体験したことがない人が表現することは絶対に不可 能である。(79頁) ○ 「カブラの冬」の最大の犠牲者が女性と子どもで あったことは、ドイツ民衆 の憎悪をかき立てた。しかし、それはケインズが恐れたように敵国へと向かうだ けでなく、内にも向けられた。つま り、ドイツ帝国政府とユダヤ人である。前 者は革命へ、後者はナチズムへと接続している。(92頁) **************************************************** ランダム読書日記 by 道は るか MICHI Haluka (2015.2.25. No.140)
2015.02.16
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139 『盗 作の文学史』 栗原裕一郎 新曜社 492頁¥3800 2008.6.30 初版第1刷発行 [目次] 序章 盗作前史-偽版・代作・著作権 第1章メディアの事件としての盗作疑惑 第2章新人賞と盗作事件 第3章オリジナルという“データ” 第4章素材と創作のあいだ 第5章作品の自立と模倣の可能性 第6章異メディア間における盗作疑惑 第7章インターネットという新しい告発装置 第8章その他の事件 あとがき 盗作事件年表 [内容] 日本推理作家協会賞受賞作品です。「文学における盗作事件のデータをここま で揃えた書物は過去に例が なく」と、著者が述べています。正にそのとおり。 江戸時代の仮名垣魯文から2008年の泉鏡花賞受賞作家の事件まで、数えきれない くらい 多くの盗作事件を丹念にまとめあげた労作です。「盗作されたといわれ る作品」と「盗作疑惑をもたれた作品」の文章を併記してあるので、読 者が自 分で比較して盗作かどうかある程度判断できるのがよい。 [感想] それぞれの盗作事件は状況がさまざまで、それらを全 体的に俯瞰して、どこ からが盗作で、どこまでは問題のない利用ないし引用といえるのかという線引き は難しいと思われました。 同時に、文学の世界において真にオリジナルな作品を 生むということがいか に難事かという感想をもちました。 オリジナルな作品は、オリジナルな人生からしか生まれないのかも。 [頁のか けら] ○ たとえば、「国境の長いトンネルを抜けると雪国で あった」とは、川端康成 の小説『雪国』の有名な冒頭であるが、この一文自体は、国境のトンネルを出た ならば雪国であったという状態(=ア イディア)を文章にすることが決まって いるのであればだれでも思いつく文章の一つであるから創作性はなく、この程度 の長さの文章に著作物 性を認めると、幾人目か以降はこのアイディアを表現す ることができなくなるということを勘案しなければならない。(田村善之『著作 権法概 説』)(15頁) ○ 有吉佐和子『複合汚染』は朝日新聞に連載された作 品だが、連載中の1975年 5月、科学啓蒙書からの「無断引用」が問題になった。(中略)この事件にはい くつかの報道が出たが、『複合汚染』の連載 媒体である朝日新聞は報じなかっ た。先に見た堀田善衛『19階日本横丁』も朝日新聞で連載された小説であった が、 こちらについても同紙は報道しなかった。いずれも同紙が率先してスクー プした山崎豊子か『不毛地帯』事件とほとんど同じ性質の事件である のに、自 紙に連載された作品には目をつむるというのではダブル・スタンダードではない かという批判が出た。(440頁) **************************************************** ランダム読書日記 by (改 名)道はるか MICHI Haluka (2015.2.1. No.139)
2015.02.01
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