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ランダム読書日記 「トマトとイタリア人」 内田洋子、 S・ピエールサンテイ (うちだ ようこ)文春新書 236頁 ¥700 2003.3.20 第1刷 発行 [目次] 第1章 トマトの歴史第2章 絶妙のコンビ、パスタとの出会い第3章 ニ一世紀のトマト付録 レシピページ[内容]「食べ物は世界を変える」南米のチリやペルーを原産地として数百年にわたって原住アメリカ人によって改良されてきたトマト。 コロンブスの米国到着から三十年たった1519年、メキシコのアステカ帝国に侵略して文明を殲滅したスペインのコルテスがはじめてトマトの種をヨーロッパに伝える。 しかし、200年以上もの間、いくら食べても満腹感がない、強烈な匂いを発する、毒がある、と評判わるく食べ物として認められずに過ぎる。 イタリアにはスペイン統治下のナポリにまず伝わり、最初のレシピが1750年ごろに紹介される。この地でパスタと一緒に合わせて食べられるようになって、初めてトマトは食べ物としての真価が認められた。 さらに19世紀末から20世紀初めに各地に移民として渡った400万人ものイタリア人がトマトを世界に広めた。 「感想」トマトがどのようにヨーロッパに伝わり、食品と認められるまでにどのように長い年月の紆余曲折をへたかが、いろいろなエピソードをまじえてわかりやすく描かれています。日本の書物ではこれまで扱われていない記事が随所にみられ、新書では珍しく表記されているイタリア語の引用文献とともにこの本の資料的価値を高めています。巻末にトマト料理のレシピが47頁もついているのも興味深く思いました。ただ難をいえば、この本には少し雑な記事が見うけられます。(1)「コロンブスの新大陸発見」-コロンブスがアメリカに着いたときにはすでに少なくとも数十万人もの人が住んでいたし、北欧やアジアからの移住もたびたびあったことが知られています。コロンブスの「成果」が世界を変えたことは事実ですが、いまどき「新大陸」とか「発見」とかの表現は不適切でしょう。(2)「まもなく宗教は文化の一つという見方に変わっていき...」 これは、宗教(ここではヨーロッパ社会でのキリスト教)と社会の関係 やルネサンスや中世について、あまりにも偏った雑な表現というしか ありません。たった1行であまりにも重要なことを断定する表現は、 新書といえども許されないでしょう。(3)「アステカ人はトマトを栽培し、さまざまな種類をかけ合わせては、改良品種を作り出していた。」 これは本当だろうか? もしそうなら人工交雑による品種改良についての世界で最も早い記録 となる! たまたま自然交雑したものから選抜したのではないかと考えられる。(4)「トマトは植物のなかで最も研究されてきたものといってよいだろう。現在にいたるさまざまな品種改良は、今からおよそ四十年ほど前に始められている。」 この記事は正しくありません。トマトより研究が早くから進んでいる植物あるいは作物は多い。また、トマトの品種改良は40年以上の歴史があります。126-7頁にはトマトの品種の写真も載っているが、白黒ではトマトの鮮やかな色がわからない。カラーで見せてほしかった。[頁のかけら] ○ 「ケチャップとイタリアで食べる本物のトマトソースは、楽隊が鳴らす軍艦マーチとオーケストラが奏でるシンフォニーほどの違いがある」 指揮者アルトゥーロ・トスカニーニ ○「イタリアの家庭料理からトマトを外したものなど、私には想像もできませんねえ。トマトの原産地がイタリアでなかったなんて、本当に嘘みたい。それまでトマトなしに、イタリアの主婦はどうやって料理をしていたのかしら」 ************************************************** ランダム読書日記 by 行道はるか YUKUMICHI Haruka (2008.1.24 No.69)
2008.01.25
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ランダム読書日記 「全核兵器消滅計画」 中嶋彰 (なかじま あきら)講談社 187頁 ¥1400 2005.7.15 第1刷 発行 [目次] プルローグ第1章 パンドラの箱から飛び出た核第2章 マンハッタン計画第3章 核消滅構想第4章 新構想の課題第5章 核に翻弄される日本と世界第6章 核消滅構想の未来エピローグ[内容]全世界には現在約2万発の核兵器が存在しています。2002年現在で米国10600、ロシア8600、英国200、フランス350、中国400(ほかにインド、パキスタン、北朝鮮?)これらの核の脅威により、地球上の60億の人間を含む全生物は絶滅の危機にさらされています。これを技術的に消滅させる手段があるという。提案者は高エネルギー加速器研究機構の機構長であった菅原寛孝氏。著者は科学ジャーナリスト。「感想」「核保有国」が核をもって攻撃し侵略してきたら、核非保有国にはそれに対等に打ち向かう手段はない。だからといって自衛のための核保有を図れば、地球上の国々はほとんどが核保有国になってしまう。この本では、超高エネルギーのニュートリノを照射すれば、核を「未熟爆発」という現象を利用して消滅させられるというとてつもない構想が語られています。それも地球の裏側から核を消滅できるという。ただし、それには直径が1000キロメートルという巨大な加速器施設の建設が必要となります。なお超伝導磁石の開発が進めば、直径60キロメートルまで縮小できる。夢物語に近いと計画と思うでしょうが、「核には核を」か、ひたすら祈るしかない「平和主義」か、その他に何の手だてもない現状では、検討に値するプランだと思いますが・・・・・・。[頁のかけら] ○ スウェ-デンのストックホルム国際平和研究所によれば、 2004年の世界の軍事費は約110兆円にも達している。 多めに見積もってもその数%で加速器はゆうゆうと建設 できる。 ************************************************** ランダム読書日記 by 行道はるか YUKUMICHI Haruka (2008.1.16 No.68)
2008.01.16
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ランダム読書日記 「山頭火とともに」 小野沢実 (おのざわ みのる)ちくま文庫 317頁 ¥760 1997.10.23 第1刷 発行副題 「句と人生の観照」 [目次] はじめに第一部 如愚ー山頭火観照第二部 いのちひとりまとめ解説 宮原昭夫[内容]山頭火(1882.12.3-1940.10.10)これは、山頭火の句の単なる解説書ではない。また、その文学的鑑賞のみをねらったものでもない。既に山頭火の伝記なり、その日記についての著作は数多く公刊されている。またその句についての解説的なものも少なくない。しかし、山頭火の句について真正面から取り組み、その「如愚」としか言いようのない生きざま、その「生きるかなしみ」への共感を描いたものはあまり見ないと著者は「はじめに」に記しています。「感想」行乞の中で人が鉢に入れてくれるわずかな米や銭だけを生活の資として、一生を放浪と句作に過ごした山頭火。ついに悟ることなく、望みどおりに誰も看取ることのない時間に独り脳溢血で逝った山頭火。山頭火についてはいくつもの本がありますが、私にはこの本が一番静かに読めました。山頭火の生涯にぴったりと寄りそうようにその心情を描いた本といえるでしょう。[頁のかけら] ○ 蛙さびしみわが行く道のはてもなし ホイトウと呼ばれる村のしぐれかな うしろすがたのしぐれてゆくか 山頭火○ 分け入っても分け入っても青い山 どうしようもないわたしが歩いている いただいて足りて一人の箸をおく なんぼう考へてもおんなじことの落葉ふみあるく 山頭火○ とんぼが、はかなく飛んできて身のまはりを飛びまはる。 とべる間はとべ、やがて、とべなくなるだろう。 山頭火************************************************** ランダム読書日記 by 行道はるか YUKUMICHI Haruka (2008.1.10 No.67)
2008.01.09
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