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2009.04.26
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カテゴリ: 読書
佐藤嘉尚氏から「人を惚れさせる男:吉行淳之介伝」をいただいた。

佐藤嘉尚氏は、若くして美輪明宏の「紫の履歴書」を編集してベストセラーにし、長じて自ら編集する(編集者は有名な作家が半年交替)70年代サブカル雑誌「面白半分」を「四畳半襖の下張り事件裁判」で社会的に有名にし、今は、単行本の編集をしつつ、わいせつ裁判では敵となった検察庁に指揮監督権をもつ大臣の選挙参謀をやっている、というまったく変わり者のオッサンである。

私は、実はわいせつ裁判の公判担当検事の甥である。「面白半分怪人列伝」の感想を楽天ブログに書いた際に、このことを遠まわしにかいたら、嘉尚さんからご連絡をいただき、それ以来親しくお付き合いさせていただいている。初めて嘉尚さんにお目にかかった場所である、息子さんが赤坂でやっている スペイン料理レストラン「岬んち」 も愛用させていただいている。

実は、本書出版の直前に、「岬んち」の店主の息子さんと電話でお話した際に、近々、嘉尚さんが吉行淳之介の本を出すということを聞いて、アマゾンで注文してしまったために、手元には同じ本が二冊ある。一冊は叔父の遺族に寄贈しようかと思っている。

さて、本書の読後感であるが、本書は実質二部構成である。前半は、嘉尚氏が吉行淳之介と知り合う前の、周囲の者の書いたものや聞き書きからまとめた評伝部分、後半は、第12章以後の嘉尚氏が吉行と知り合ってからの嘉尚氏、吉行、そして宮城まり子の関わりについて書いた部分である。

前半は、有名人はこれだけプライバシーをさらされてしまうことになるのかと思うほど、吉行の心理・行動が記述される。私だったら絶対いやである。初めての自慰から、吉行が言うところの「濡れたシャツ」である童貞の喪失から、こんなに露骨に書かれると、自分は有名でもないし、自分の周りにペンの立つ気の利いた人間がいないことに感謝するのである。吉行の場合、朝の連ドラにもなった「梅桃の実るとき」を母親あぐりが書いているのを始め、妹の吉行和子、同人の仲間たち(当然小説家志望者たちだから筆が立つ)、結婚したり交際した女たちが、ことごとく吉行淳之介とのかかわりを随筆にしてしまっているから、これを足し合わせると、プライバシーなんかなくなってしまうのである。

ところが、後半になると、急に、嘉尚氏から見た吉行像、宮城まり子像の話になる。したがって、この時期になると吉行淳之介の作品の話が極端に減るのだ。

私たち1960年代生まれ世代にとって吉行淳之介と言えば、何といっても1978年の「夕暮まで」である。233頁にも、生涯一番売れた本は「夕暮まで」の50万部と書いてある(「夕暮族」という流行語?まで生み出したのだ)。しかし、その執筆の経緯もなにもすっ飛ばしである。



やや、批判的になってしまいましたが、前半と後半を別の本として読めばいい本です。ドラマ「あぐり」を見られた方は、その記憶と対比してみるといいかと思います。私の記憶では、ドラマでは戦災で焼けたあとの市ヶ谷の家の建て直しを淳之介が友達と手ずから金槌を握ってバラックを建てるように描いていたように思いますが、実際には大工に頼んでいたようです(素人には無理だよなあ)

吉行淳之介は、反戦ながらマルクス主義にかぶれなかったという点が、自分の祖父や父との対比で興味深いです。祖父は、大正時代に東大新人会の活動にかかわるうちに左がかっていってしまうのですが、地主である親元で小作争議が起こった途端、慌ててその収拾に走り、反マルクスに転向してしまいました。
父は、旧制高校時代、マルクス主義者のドイツ語の先生がマッカーシズムで追放された際に、反対ストを討って留年した挙句、そのせいで旧帝国大学には進学できなくなり、それ以後共産党大嫌い人間になりました(当時のレッド・パージはそれくらい厳しかったようです)

話を元に戻すと、「人を惚れさせる男:吉行淳之介伝」ハードカバーで一見厚いようですが、一晩で読めます。ゴールデン・ウィークにお勧めの一冊です。


人を惚れさせる男





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Last updated  2009.04.26 07:50:34
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