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2006年03月29日
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カテゴリ: 沖縄関係
沖縄の民話「嘉手納屋良漏池(ヤラムルチ)のいけにえ」

琉球国嘉手納村屋良に屋良漏池(ヤラムルチ)と言う池があります。
戦前まで、この屋良漏池は木々が行く手を遮るほど、うっそうとした森の中にありました。
その奥に、約千坪の底無し大池として存在していました。

その昔、この屋良漏池に恐ろしいジャー(大蛇)が住んでいました。
ジャーとは、
大蛇とも、
龍とも、
大ウナギとも人々から呼ばれているマジムン(魔物)です。

ジャーは、度々漏池から現れると、村人が汗水たらして作った千貫田の作物を食い荒らしました。
またある時は、山羊・豚・牛・馬まで食っていました。
しかも困った事に、このジャーの機嫌を損なうと干ばつや長雨が続きました。
琉球国義本王時代には、溜まりかねた村人がジャーの通り道にカマドの灰を撒き、這う事ができなくなったジャーを捕まえて食べてしまいました。

それから、七ヶ月の間、日照りが続きました。
島中の全ての泉が枯れ果て、どこの田畑の農作物も茶色く立ち枯れてしまいました。
人々は、食い物も飲水もなくなり、木の根をむしり、雫を舐めながら耐えていました。
が、多くの人々が亡くなりました。
その後、
ぽつぽつと雨が降り出しました。
人々は、これで災いは去ったと思いました。


七ヶ月続きました。
長雨の為、煮炊きする薪も乾く事がなく底を付きました。
ジメジメした状態が続けば疫病も流行り、また多くの人々が亡くなりました。

人々は、徐々にこんな事を言うようになりました。
「王に徳がないから、こんな災いが起こるのだ」


この噂を聞きつけた義本王は、霊徳の高い神女に相談しました。
すると、
「この災いの元凶が屋良漏池に住むジャーの怒り」
そう神女は言いました。
義本王は、漏池のジャーに生け贄を差し出す事で解決しようとしました。
程なく屋良の村に次のような高札(こうさつ)〔命令札〕が立てられました。
『20歳の辰年の娘を、生け贄にすれば、その家族には一生食べ物を与える』
屋良村の金持ちの娘が、ちょうど20歳の辰年でした。
村人は、公儀(こうぎ)の命令だからと、その金持ちの娘を生け贄にしようとしました。
しかし、金持ちは、
「褒美も食べ物も欲しくはない。この娘がいなくなったら、なんの甲斐があろうか」
と、村人がどう頼んでも娘を生け贄にしようとはしませんでした。

ちょうどその頃、首里から屋良に来て住んでいる父と娘がいました。
この父娘は、畑を耕す鍬(クワ)の持ち方すら知らぬ商売人出で、その上父親は目が見えませんでした。
その為、その日その日を凌ぐのが精一杯でした。
「私が生け贄になりましょう。そうすれば目が見えないお父さんでも一生食べていける」
娘はそう思い、公儀に自分が生け贄になると名乗りでました。

後で、この事を知った父親は娘を止めようとしましたが、その時には、もう娘を生け贄にする準備が進められていました。

生け贄のその日、屋良漏池には近隣の村人達が集まってきました。
娘は、降り続く雨の中、白装束を身に纏い漏池のほとりに立ちました。
王が用意した供物の前で、神を祭る神女達が祈願を始めました。

村人達は、固唾を飲んで見ています。
すると突然、
風が激しく吹き、
雨が激しく降り、
日頃は不気味なほど静かな屋良漏池に大きな渦巻きが起き、
その中から巨大なジャーが姿を現しました。

ジャーは、
赤い大皿の様な目を光らせながら、
次第に娘の立つ岸に近づいてきました。

見物していた村人達が悲鳴を上げても、娘は微動だにせず目を固く閉じていました。
ジャーは、大口を開け娘を一飲みにしようとしたその瞬間、
激しい雷鳴と共に、
天から真っ直ぐに稲光が下がりました。
ジャーを直撃。


人々は、その激しい落雷の閃光に、暫くの間、気が遠くなっていました。
皆が気づいた時、
ジャーの姿はどこにもありませんでした。

ただ、漏池岸の岩の上に、娘がうずくまっていました。

先ほどまで空を覆っていた雲が晴れ、七ヶ月も姿を見せなかった太陽の光が屋良漏池に差し込んでいるのに人々は気づきました。

娘は、ジャーを退治したという功績を認められて、王より沢山の褒美を与えられました。

それ以来、
干ばつになると屋良村の老女達は、七個の卵を池に投げ入れる雨乞儀式を行なうようになったということです。


那覇から北へ24キロ、
沖縄本島のほぼ中央にある嘉手納町は、町の大部分が軍用地に接収され、毎日のように空軍機が激しい爆音とともに嘉手納の空を飛び交っています。
現在でも、
米軍が半分に埋め立てた屋良漏池の岸には、この娘を偲ぶかのように、神を祀る石の香炉があるということです。



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最終更新日  2006年03月29日 08時37分45秒
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