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1996年 に ノーベル文学賞 を受けた ヴィスワヴァ・シンボルスカ という ポーランドの詩人 の 「終わりと始まり」(未知谷) という詩集の中の詩です。訳者は 沼野充義 。 「眺めとの別れ」
またやって来たからといって
春を恨んだりはしない
例年のように自分の義務を
果たしているからといって
春をせめたりはしない
わかっている わたしがいくら悲しくても
そのせいで緑の萌えるのが止まったりしないと
草の茎が揺れるとしても
それは風に吹かれてのこと
水辺のハンノキの木立に
ざわめくものが戻ってきたからといって
わたしは痛みを覚えたりはしない
とある湖の岸辺が
以前と変わらず―あなたがまだ
生きているかのように―美しいと
わたしは気づく
目が眩むほどに太陽に照らされた
入り江の見える眺めに
腹を立てたりはしない
いまこの瞬間にも
わたしたちでない二人が
倒れた白樺の株にすわっているのを
想像することさえできる
その二人がささやき、笑い
幸せそうに黙っている権利を
わたしは尊重する
その二人は愛に結ばれていて
彼が生きている腕で
彼女を抱きしめると
思い描くことさえできる
葦の茂みのなかで何か新しいもの
何か鳥のようなものがさらさらいう
二人がその音を聞くことを
わたしは心から願う
森のほとりの
あるときはエメラルド色の
あるときはサファイア色の
またあるときは黒い
深い淵に何も要求しない
ただ一つどうしても同意できないのは
自分があそこに帰ること
存在することの特権 ―
それをわたしは放棄する
わたしはあなたよりも充分長生きした
こうして遠くから考えるために
ちょうど十分なだけ
ほんにおまへもあの時は この時 中原 は三十歳にもなっていない青年でした。もしも 「こうして遠くから考える」 ところまで 中原 が生きたとしたら、彼はどんなふうに歌ったのでしょう。そんな思いが浮かびました。
此の世の光のただ中に
立つて眺めてゐたつけが……
戦争が終わるたびに 石原優子 は、戦争の話をしているわけではありませんが、ドキッとしました。
誰かが後片付けをしなければならない
物事がひとりでに
片づいてくれるわけではないのだから
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