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近づく文化祭に備え、演目を決めあぐねる一年生5人だけの演劇部。突然現れたおあつらえ向きの『ロミオとジュリエット』の台本でなんとか全員の配役を決めてしまう。しかし、いわくつきの台本に秘められた思いは、突然4人の部員にロミオ役の如月への恋心を強く抱かせた・・・ これはなかなかおもしろい作品でした。 カラーページのイラストからかなり怖いホラーを覚悟したのですが、全然そんなことはない青春恋愛ものでした。台本のおかげでドロドロではありますが。 自分のものなのか、それともほかの誰かのものなのか判別し難くなってしまった感情と、それによって変化する人間関係で最後まで引っ張りきっています。特に、5人の部員と登場人物との重ね合わせ方がうまかったですね。無難にロミオ役の如月と4人の女性という組み合わせにするのではなく、男性の西園寺を加えたのがいろいろなところで生きています。 基本的には純な恋愛ものですが、随所にコミカルなシーンを挿入して場を和ませ、それでいて『ロミオとジュリエット』の劇中はドタバタしながらも張り詰めた緊張感をキッチリ最後まで維持するなど、ぐんぐん読ませる力がありました。 ラストできれいにまとまっているだけに、続編がないであろうことが残念です。もっとも、これで続編があって、芝居をするたびにいろいろな人の感情を押し付けられるのでは本当にコメディになってしまいますが。2008年3月22日読了
2008.03.27
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悲劇は繰り返される。愁也を襲撃した犯人は捕まったものの、放送室はふたたび襲撃にあい、機材はめちゃくちゃにされてしまう。放送ができなくなったなちるは、みひろが探してきたハンドマイクを手にゲリラ的な活動を始めるが・・・ 『導かれた解答』のときにはミステリ路線からどこへ行くのか、果てしなく迷走しているようだったのですが、どうやら落ち着く先は『七日間戦争』だったようです。そう、『ぼくらの七日間戦争』です。5人はハンドマイクを手に、どこに立てこもろうというのでしょう。ハンドマイクも学校の備品でしょうに。 正直、この反体制もの、反抗ものというのはキライではないのですが、ここまでの展開の紆余曲折は必要なかった気がします。 今回も章ごとに語り手を変えているため、5人の感情が強く出ているのはなかなかよかったです。なちるとみひろの友情バカップルは相変わらずですね。 鳴り物入りでやってきた校長の学校改革が始まったというか、本性を現したわけですが、今後はこの校長との対決と同時に機材破壊犯(=愁也襲撃の共犯?)を探し出す方向に行くのでしょう。5人だけではなく、炳吾や鬼城のような教師、あるいは美星空や梨恋がどのように絡むのでしょうか。関連作:『カレン坂高校可憐放送部』『カレン坂高校可憐放送部 導かれた解答』2008年3月19日読了
2008.03.26
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綾乃は授業に出ないことを注意され保健室にいられなくなってしまった。綾乃の傍でないと悪夢により熟睡できない直人にとっては困ったことだ。そこで綾乃は直人の家に居候することを決めたのだが、直人の妹水穂はそれに反発した・・・ 重々しいというか、暗い雰囲気の中で話が進む作品。今回は綾乃の弱い部分が強調され、1巻にもまして重く暗く、そして地味な気がします。扱っている題材が悪夢ですから、当然といえば当然。モノクロの映像の中で、赤い目だけが鈍い光を放っているというところでしょうか。 秘密を公にすることに対する不安、そしていつかはここを立ち去らなければならないということに対する悲愴感がいつも強気でわが道を行く綾乃の弱さを作り出していて、一先ずキャラクターの厚みを出すことに成功しているようです。対する棗や水穂はこれからどういう形で夢神や事件に絡んでいくのか、気になるところです。 物語としてはなんともあっさりとしすぎていた印象は否めず、1巻のような盛り上がりには欠けたようです。むしろ、綾乃との同居に反発する水穂の印象が強すぎて。今後に期待、でしょうか。関連作:『モーフィアスの教室』2008年3月17日読了
2008.03.25
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大学生になった伊藤二葉は極度の怖がりなのに、推理小説研究会に入れられてしまった。途方に暮れる二葉にバイトの誘いの声が。家庭教師を探していたのは中学生の瀬川隼人。家庭教師なんて必要ない成績の隼人は、二葉のミステリの先生になった・・・●「先生と僕」 参考書を探していた書店で、二人は電話番号の書かれた付箋が貼られた雑誌を見かける・・・今この業界なかなか大変ですよね。目のつけどころがおもしろい作品でした。●「消えた歌声」 誘われてカラオケに行った二葉だったが、小火騒ぎで避難する間に二人の女子高生がいなくなったという・・・あっさりとネタが想像できてしまったのが難点でしょうか。●「逃げ水のいるプール」 二人で行った区民プール。区役所の職員らしき男がメモを取っているが、バイトの白井は何やら彼から逃げているようで・・・一種の暗号もの。普通に考えれば、この時季にこんな服装をしているのはおかしいのですが。●「額縁の裏」 時間つぶしに自然食品とギャラリーを併設した店。絵の作者の女性と親しくなった二葉だが・・・怪しいところには近づかないのが一番ですね。●「見えない盗品」 『・・・ちなみにペットサービス○崎にて収穫予定(笑)』ペットショップでの犯罪を匂わせる掲示板の書込みに、二人は現場で張り込む・・・「先生と僕」もそうですが、こういうことが半ば堂々と行われ、しかも協力したり利用したりする人がいるということが信じられません。 ふんわりとした雰囲気の短編集。坂木さんの新シリーズです。 怖がり、臆病、お人好しで押しに弱いというような二葉のキャラクターを生かした作品が多い反面、どこから切っても坂木印というか、ややマンネリ気味な気がしてなりません。 また、隼人があまりにも無邪気でとても中学生に見えず、かといって妙に頭でっかちでバランスが悪いのもどうかと。こんな中学生いや。 ミステリを読んだ満足感はちょっと得られませんでした。 短編集としては、別段区切りになる終わり方ではないので、まだ続編が出るということでしょうか。収録作:「先生と僕」「消えた歌声」「逃げ水のいるプール」「額縁の裏」「見えない盗品」2008年3月17日読了
2008.03.24
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夏、夏といえば水着、水着といえば海で合宿。ということで海辺の別荘へ合宿にやってきた民俗音楽研究部の一同。ライブのスケジュールも決まったのだが、4人の歯車はどうもうまくかみ合わない。真冬は自分がこのバンドにいる理由について思いをめぐらせていた・・・ ナオの鈍さに呆れ、真冬のめんどくささに苛立ち、神楽坂先輩の過去と脆さに驚き、そして健気な千晶に涙する。そんな作品です。 とにかくナオが鈍感。気付かないにもほどがあります。読んでいる方が呆れるやら、もどかしいやら。まあ、あまり敏感に反応されても修羅場の到来が早まるだけのような気もしますし、そもそもハーレムだと勘違いされるのも困るのですが。 一方、ヒロイン真冬はめんどくささ全開。合宿に行くの行かないの、ライブに出るの出ないのと他の3人をかき回します。もっとも、それが真冬らしさだったりします。 でも、今回はなんと言っても神楽坂先輩です。独断専行でバンドを引っ張るのは変わりませんが、ナオに過去の体験から来る不安と脆さをにじませ、圏外から懐へ一気に突入です。女性3人が同じ方向を向いてしまうにはちょっと早い気もしますが。 また、前巻ではやや印象が薄かった千晶ですが、今回は真冬のライバルとして復活。バンドを何とかしようとTシャツを作ってきたり、メンバーが揃うまでドラムソロだけで間を持たせたり。健気としか言いようがありません。敵に塩を贈るような行為もマル。 もちろん、恋愛方面だけでなく音楽方面でも楽しませてくれます。ライブのシーンなんて臨場感があってなかなか楽しいです。 これからフェケテリコはどちらの方向へ羽ばたいて行くのでしょうか。いつになったら鈍感なナオは気付くのでしょう。関連作:『さよならピアノソナタ』2008年3月15日読了
2008.03.21
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その日、学校での父母会に出かけた母はなかなか帰ってこなかった。ひとり帰りを待ち続けた真裕子だが、次に母と対面したのは霊安室だった。どうして母が殺されねばならなかったのか。誰が母を殺したのか。報道、捜査、裁判、人の目、噂、親族。事件にまつわる様々なものが家族を苦しめていく・・・ たった一人の死、たった一つの事件。それがどれだけ多くの人々を苦しめるのか。加害者以外はすべて被害者になってしまうという、乃南さんの考え方がよく表されています。 殺人という直接的な被害を受けた真裕子の母則子は当然ですが、真裕子たち家族、その親族だけではなく、加害者側の家族、親族たちも被害者の一人なのです。自分自身は何もしていないのに、加害者の家族としての責めを負わねばならない。これは被害以外の何物でもありません。 事件そのものだけでなく、捜査や裁判も被害者たちを容赦なく傷つけていきます。それらは知りたくなかった真実、直接的な当事者でしか知りえなかった事実を白日の下に晒し、家族たちに突きつけるのです。マスコミはそれを広く世の中に伝え、隣人や知人の好奇心は噂という形で狭い地域のコミュニティーにくっきりと影を落としていきます。想像するのも躊躇いたくなる世界です。 「私、裁判って――お母さんの為にやってくれるんだと思ってた。本当に」 終盤にこの真裕子の一言がなんとも重たくのしかかってきます。裁判は罪を裁き、罪を犯した人間の処遇を決める場であり、被害者のために開廷するのではないという事実は、ややもすれば判官贔屓から真裕子の側に立って物事を考えがちな読者に強烈な一撃を見舞います。 あと一年ほどのうちに裁判員制度がスタートします。もし裁判員としての務めを果たさねばならなくなったとき、自分は冷静に中立な立場で適切な判断ができるだろうか。そんなことまで考えてしまいました。 続編として『晩鐘』が出版されています。『風紋』から7年後、事件の関係者はどうしているのか、真裕子は、大輔は。気になってなりません。2008年3月13日読了
2008.03.18
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6人のミステリ作家が「川に死体のある風景」をテーマに競い合うアンソロジー。●歌野晶午「玉川上死」 太宰が入水自殺した玉川上水に浮かぶのは、紺色のジャージを着た・・・死体じゃありません。「川ミス」の縛りにのっけから変化球ですが、それを使っただけのおもしろさはあります。ミステリとしては直球。●黒田研二「水底の連鎖」 その川に飛び込んだ車は1台のはずだったが・・・次々と引き上げられる車という謎がなかなか魅力的。ただ結末はちょっと強引か。●大倉崇裕「捜索者」 捜索隊の留守番役は、なぜか沢で遺体となって発見された・・・「山ミス」あるいは「沢ミス」です。徐々に真実が見えてくるさまは興味深いですが、実現性には無理があるような気がします。近いうちにまとまるであろう「山ミス」集を読みたくなります。●佳多山大地「この世でいちばん珍しい水死人」 伯父を探しにコロンビアまで来た僕は、伯父が絡んだ死体が川に浮かんだ話を聞かされた・・・複雑な構成で読みにくいのですが、最後には鮮やかに世界を反転させてくれます。今後に期待。●綾辻行人「悪霊憑き」 散歩中の川に浮かぶ死体は奇行を繰り返した女だった・・・「この世には不思議なことなど何もない」という言葉のとおり、きれいにまとめられた一編。ただ、これもいいけれどやはりあとがきにあったアイデアをぜひ読んで見たいです。●有栖川有栖「桜川のオフィーリア」 桜川の浅瀬に浮いた同級生の死体は美しく、眠っているかのようだった・・・美しい映像が目に浮かぶような作品。ロマンチシズムに満ち溢れています。ところで桜川って『女王国の城』でどういう扱いだったでしょう。 全体に他の作家との差別化のためか、奇をてらうようなひねり方が多かったようです。ただ、そのためか川に死体が浮くこととの関係が薄く感じられ残念でした。 橋の上から、あるいは土手や堤防からちょっとあやしいものが見えたりすると「あれは!」と思ってしまう今日この頃です。収録作:歌野晶午「玉川上死」/黒田研二「水底の連鎖」/大倉崇裕「捜索者」/佳多山大地「この世でいちばん珍しい水死人」/綾辻行人「悪霊憑き」/有栖川有栖「桜川のオフィーリア」2008年3月9日読了
2008.03.12
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京都で大学院に通う「わたし」と、京都の大学を出て故郷山梨で高校教師になった「僕」。遠く離れたふたりは時間をかけて、手紙のやりとりで見たこと、感じたことを伝える。書く時間、届くまでの時間を楽しみながら・・・ 作家とイラストレーターのコラボレーションは、往復書簡の形式で紡がれる一年の物語でした。 何も劇的なことや特別なことは起きない。起きないけれども、そこには伝えたいという思いが確実に存在しています。春なら桜のこと、夏には暑さのこと、秋には色づきのこと、そして冬には雪のこと、と。それは、ふたりだけの特別なこと。 もちろん、ふたりが会っていれば手紙は書かない、書く必要はないわけで、会う前の手紙はあっても会っているときのことは書かれていません。それがぶつ切りのようにならず、余韻を残すように次の季節へと移っていくのもなんだか心地よいです。 淡く、そしてあたたかい田雑さんのイラストが絶妙で、雰囲気に合っていたことも見逃せません。 通信手段の発達により、手紙を書く機会は失われつつあります。実際、最後に手紙を書いたのはいつだろう、という方も多いのでは。しかし、手紙には手紙でしか伝えられないような何かがあります、きっと。2008年3月3日読了
2008.03.08
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岸杜直人は、最近悪夢に悩まされて寝不足が続き、保健室で仮眠を取る日々。赤い眼をした怪物にクラスメイトが食べられる不吉な夢を見た日、そのクラスメイトは居眠りから目覚めることなく、病院へ運ばれて行った。幼馴染の綾乃は何かを知っているようだが・・・ 学園異能ライトホラー、とでも言うべきでしょうか。ホラーはあまり得意ではないのですが、なかなか楽しめました。この程度の描写であれば、苦にはなりません。 全体的に重々しい雰囲気。派手さはないけれど、確実に読み手を物語に引き込んでいきます。読みやすく、そしてわかりやすい文章。盛り上げるべきところを盛り上げ、落ち着くべきところは落ち着かせるうまさがあります。 また、直人をはじめとする登場人物たちも自然な感じの普通な言動をします。突飛なところがない分だけ地味かもしれませんが、リアリティが増して作品の雰囲気を作るのに貢献しています。出来事の事情を把握している綾乃は若干不器用でややエキセントリックかもしれませんが、それが読み手を煽っている点も外せません。 ただ、ホラー小説の常として「得体の知れないもの」が怖く、おもしろいのだと思うのですが、それが明らかになってしまっては残されているのは描写しかないような気がして、今後ホラーとしてどうするのか、不安だったりします。 おそらく、今後は直人の妹水穂が深く絡む展開になるでしょうし、棗もまた中心に引っ張り込まれることでしょう。人間関係とともに、今度はどういう形で恐怖が迫るのか気になります。2008年3月2日読了
2008.03.05
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コピーバンドでギターを担当している姫川。高校のときから同じメンバーで活動してきたが、2年前にドラムのひかりが妹の桂に交代した。それ以来、恋人でもあるひかりとの関係はギクシャクしている。いつも使っていたスタジオのが閉鎖が決まり、ぞこでの最後の練習中、悲劇は起きた・・・ 一昨年、『向日葵の咲かない夏』を読んで自分に合わないと決め付けていた道尾さん。紹介文に惹かれて懲りずに読んでみましたが・・・これはなかなかおもしろい作品でした。 前半、特に事件が起きるまでは若干状況が飲み込みにくく感じたものの、事件の後はかなりスリリングで、ラストまで怒涛の一気読み。『ラットマン(=騙し絵の一種)』というタイトルどおり、巧みに配置されたレッドへリングで注意していてもミスディレクションの罠にはまってしまいます。特に現在と過去の使い方には感心するばかり。 また、昨年『シャドウ』で本格ミステリ大賞を受賞した際に、道尾さんは座談会で「本格ミステリほど人間を描ける、感情を描けるジャンルはほかにないんじゃないか」と発言されています。本格ミステリがそのベストジャンルなのかわかりませんが、新たに知りえた事実だけでなく、感情の移り変わりがものの見え方を変えるということを巧みに描いた作品であることに間違いはありません。 ただし、「誰が殺人を犯したのか」という謎については、本当にその人なのか、他の人物をかばっているんじゃないかという疑問が拭えませんでした。それは、その真相に至るまでの明確な裏付けが見つけられないためで、残念なのと同時に小さなひっかかりのような印象が残ります。2008年3月1日読了
2008.03.05
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