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普遍的な高校生の修学旅行。その最後の夜、教師の見回りスケジュールを手に入れた甚太たちは、ひとつ上の階にある葵たち女子の部屋へ突入を試みるが、思ってもいない騒動に・・・ ひとつの出来事を多くの登場人物の視点で描く一人称多視点。これにより思春期の高校生たちそれぞれの感情を表現するだけでなく、不可思議な事件を引き起こすことに成功した作品。 多くの人々にとって重要なイベントである修学旅行。それだけに思い入れも一入。これはもう、この設定を選んだ者勝ちでしょう。 視点が増えるに従って読者に新しい情報がもたらされ、少しずつ景色が変わって見得るのはなかなかおもしろいものでした。ただ、同じ出来事について繰り返し何度も多視点で語られるのは少々くどく感じられ、もう少し視点人物を絞れたらよかった気がします。 また、多視点により散らばったものを最後に収束させる手際はいいものの、回収し切れていない伏線らしきものが残されたのも事実。彼らのその後の物語があるのなら、それを生かしてほしいなあ。 単純に興味や懐かしさから「修学旅行、いいなあ」と思わせるだけでなく、騒動でのおかしさやちょっとした謎を絡ませることで、修学旅行に対する読者の感情を膨らめることに成功しています。 それにしても修学旅行、いいなあ。2008年10月23日読了
2008.10.30
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幼馴染の水野美佳から呼び出された湯佐俊紀。だが、彼女の告げられた言葉は「ちゃんと、責任とってくれるよね」だった。身に覚えがなく途方に暮れる俊紀だったが、偶然その場を見てしまったミステリー研究会会長の佐倉井綾が救いの手を差し伸べた。本当に潔白なら、犯人を探そうと・・・ 新感覚ミステリー? この言葉がとても足枷になっているようです。 読み始めるとすぐわかってしまうのが、この作品唯一最大の謎である子供の父親。冒頭で想像して「本当にそれで合っているのか?」と不安を覚えた人もいるでしょうが、おそらくその想像は間違っていません。 それゆえ、本格ミステリのような謎と論理を想像しているとがっかりされるでしょうが、タイトルから「ハーフボイルド=ハードボイルド未満」などと考えられれば、それほどでもないのでは。私立探偵が足と人脈を駆使して謎を解き明かす物語には違いありません。どれだけ「未満」なのかはまた別の問題。 メインとなる俊紀と佐倉井さんは、互いの足りない部分を補うような関係で真相に迫っていくのですが、目的は違うのに知りたいという点で共通するふたりがなかなかおもしろい関係です。ただ扱う問題がシリアスすぎたかも。このコンビでまた違った事件を読んで見たい気がします。 もっとも、同じ登場人物でも美佳はいただけません。この身勝手さはちょっと理解しがたいです。彼女をヒロインとして捕らえるとかなりいやな作品かも。ただし、この物語がどういった人物関係を描いたものか、その捉え方次第で抱く印象もまたかなり違ったものになると思いますよ。2008年10月22日読了
2008.10.30
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誰もが終末を覚悟した1999年9月、荒廃した世界には磁気嵐が吹き荒れ、その影響を受けた地球規模の異常が発生していた。探偵事務所を営む南深騎のもとにはひとりの女性が訪れた。彼女が暮らす「クロック城」に出現する「スキップマン」退治を依頼したいと言う・・・ 第24回メフィスト賞受賞作。 「物理の北山」なんて、まるで高校教師か予備校講師のように呼ばれる北山さんのデビュー作です。 その評判の物理トリックですが、なんとなく想像したものと大差なく、拍子抜けというか残念でした。図版の使い方を含めた見せ方の問題でしょうか。ただし、こういった物理トリックで勝負しようという心意気は、叙述トリックやメタな作品も多い昨今では非常に嬉しいものです。 もっとも、この作品で驚かされるのはこのトリックではなく、そのあとに残された怒涛の展開です。ついに明らかになる事件の真相は奇想天外なものです。それにこの作品におけるファンタジ-のような世界は、この最後の展開のために設定されたといっても過言ではないでしょう。 トリックや事件の真相と強く結びついた世界設定でしたが、多くの要素が投げ出されたまま終わってしまったのはもったいないですね。例えば、十一人委員会とSEEMの抗争、あるいはボーガンで消されるゲシュタルトの欠片。それとも、それらはほかの作品でふたたび生かされるのでしょうか。 いわゆる館ものの本格ミステリとこの世界観との融合を受け入れられるか否かがこの作品のポイントでは。そういう意味では、読み手を試す本格ミステリではないでしょうか。僕にとっては、ぜひほかの作品も読んでみたいと思わせる本格ミステリでした。2008年10月21日読了
2008.10.29
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登美彦氏、竹林経営に乗り出す。作家として行き詰ることを見越した登美彦氏は、先輩である鍵屋さんの荒れ果てた竹林に目をつけた。竹の伐採に奮闘し、締切次朗と死闘を繰り広げ、やがてはカリスマ竹林経営者に。多角的経営の野望は果たして・・・ これはエッセイなのでしょうか。登美彦氏の虚実入り混じった妄想文です。 少なくとも、登美彦氏のこれまでの小説を読んでオモチロイと感じる人でなければ、この本を読み通してオモチロイという感想を抱かないでしょう。 結論から言うと、ぼくにとってはオモチロイ本でしたが、小説のほうがいいですね。これは読者を選びそうです。まあ、少しでも興味があるなら最初の数ページだけでも読んでみるべきでしょう。そこはもうすっかり森見ワールド。 なかなか切り進められない竹林に恐れおののいたり、あるいはMBC(モリミ・バンブー・カンパニー)の采配をふるう登美彦氏に敬意を表したりしながら読む中のもひとつの楽しみ方。しかし、「美女と竹林等価交換の法則」に従えば、当初の力の入れ具合の割に進まない竹林伐採よりも、あの本上まなみさんとのあれこれに微笑むのもひとつの楽しみ方。詳細は書かれなかったものの、NHK「トップランナー」での本上さんによる朗読は確かに羞恥プレイに違いないでしょう。 それにしても、「机上の竹林」ってのはいいなあ。本当に癒されそう。ミリオンバンブーじゃなくてね。あれは竹じゃないですから。 ちなみに、本屋大賞の授賞式で登美彦氏が万城目さんを殴打したのは、きっとおともだちパンチだったのではないかと想像するのです。2008年10月20日読了
2008.10.27
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他者にその存在さえ知られない罪を 完全犯罪と呼ぶ では 他者にその存在さえ知られない恋は 完全恋愛と呼ばれるべきか? 第一回みすてり大賞受賞作家である牧薩次さんが手がけた、孤高の画家柳楽糺画伯の評伝。これは彼の代表作になるであろう傑作です。 などとまわりくどいことを言ってみました。本書はミステリファンならご存知かもしれませんが、ある大家が自身のシリーズキャラクター「牧薩次」名義で世に送り出した作品。 終戦から現代にかけて、一人の画家の生涯を追う形で物語は進みます。そこには彼、柳楽糺こと本庄究が巡りあった一人の女性との恋愛、そして3つの殺人事件が描かれます。 まず注目すべきは3つの殺人事件。1つ目の進駐軍将校殺しにおける、時代背景を生かした凶器の消失に驚かされます。また、巧みに張られた伏線も見逃せません。2つ目の遠隔地殺人、3つ目の同時出現殺人と、スケールの大きな殺人事件が重ねられている点も見逃せません。福島と沖縄という距離を越えた殺人も然るものながら、伏線と時代背景が効果的なアリバイ崩しも目を見張るものがあります。一筋縄ではいきません。 この作品では究の柳楽糺としての業績とともに、究が恋した小仏朋音、その死後には娘や孫を遠く近く見守り続ける生涯が描かれます。ここがポイント。『完全恋愛』というタイトルに偽りはなく、人間の生涯というドラマの内で外で隠されていた愛情が、巧みに読者の前に姿を表す様は圧巻です。 正直、今までこの大家の作品にはあまり関心がなく、本書も各所での評判を知らなければ手に取ることはなかったでしょう。同じような方にはぜひともオススメしたい1冊です。『完全恋愛』。これが年末のランキングで筆頭に掲げられても全く異存はありません。2008年10月16日読了
2008.10.24
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寝坊した朝、近くの米屋に息子の交通違反の揉み消しを懇願された貴子。どうして米屋が自分のことを知っているのか不審に思い尋ねると、貴子が刑事であることを記した葉書を拾ったという。確かにそれは貴子が細かく破り捨てたものだったが、きれいにつなぎ合わされていた・・・「あなたの匂い」 直木賞受賞作『凍える牙』に続くシリーズ第2作。今回は短編集です。●「あなたの匂い」 細かく破って捨てた葉書を丁寧につなぎ合わせたのは誰・・・うーん、これは男でも気持ちが悪い。やっぱり、いやじゃないですか。●「冬の軋み」 若い男女に暴行を受けた男は「よく覚えていない」の一点張りだが・・・子供を守るという話だったのがいつの間にか世間体を守る話に。そういうものじゃない気がするのですが。●「花散る頃の殺人」 ホテルで見つかった老齢の男女の遺体からは、あんずのような香りがした・・・あまりに寂しい人生の結末。彼らの生涯を掘り起こしていくあたりがいい。●「長夜」 道ばたで目を開けたまま寝ている女。それは貴子が知っている女の死体だった・・・ちょっと理解しがたい生き方かな。貴子の元同僚という安雲がなかなかおもしろいキャラでした。●「茶碗酒」 大晦日、宿直の滝沢たちは休憩に入り酒を飲みだしたが・・・大晦日というシチュエーションが、妙に滝沢と合っている気がしてしまいました。短く、たいしたことも起きませんが非常に印象的。●「雛の夜」 ホテルに急行するが倒れているはずの少女がいない、という事件が頻発した・・・ちょっと方に力が入りすぎているかもしれないけれど、こういう正義感は悪くないですね。少なくとも、ないよりはあるほうがいいです。 やたらと人間くさい短編集。貴子のプライベートはもとより、被害者や加害者、関係者の人間らしい面がむき出しにされたような作品がそろっています。ある種のいやらしさを持って。そういった中、「茶碗酒」は一服の清涼剤のようなものかもしれません。 今回新たに貴子とコンビを組んでいる八十田もいい人物ですが、少々物足りません。やはり、滝沢の方がいい組み合わせじゃないかな。あれくらいアクの強さを持つ方が読んでいておもしろいです。収録作:「あなたの匂い」「冬の軋み」「花散る頃の殺人」「長夜」「茶碗酒」「雛の夜」関連作:『凍える牙』2008年10月13日読了
2008.10.23
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雪山で大河の本心を知ってしまった竜児。知ってしまったために、母親のもとから戻ってきた大河に対して今までどおりに接することができない。高二生活もあとわずかとなり、竜児の前には進路問題も立ちはだかる。自分の将来に対して明確な考えを持っていない竜児だったが・・・ うーん。 こんなにあっさりと結論が出されてしまっていいのでしょうか。激しく疑問。もっと時間をかけてもいいと思うし、むしろどんでん返しへの布石のような気がしてなりません。もっとも、ラストがこの展開ではそれもまた難しいか。 それにしても、実乃梨の強さが光りました。ただひたすらに自分の夢を追いかける力。それは自分にとって一番正直なこと。読んでいてちょっと羨ましいほどです。さあ、行こうか、高須くん。それぞれ行くべきところが、私たちにはある。 こんなふうに言い切れるあたり、頭が下がるような思いです。 また、亜美はけな気で、同時にもろさが伝わってきます。聡明であるがために早くにすべてを悟ってしまい、それで動いた実乃梨と動けなくなった亜美の違い。それは、転校してきたという亜美のバックグラウンドだけでなく、竜児の気持ちの方向も影響していたのではないでしょうか。このまま不戦敗のような形で終るのかな。 このシリーズはさすがにはずしませんね。今まで引っ張ってきた恋愛問題だけでなく、新たに進学や親子の問題と硬軟取り混ぜて、巧みに山場を演出している印象。でも、あれは言っちゃいけない一言だと思いますよ。 ラストはちょっと唐突で予想外でした。これが新たな展開の幕開けなのか、それともエンディングへつながるクライマックスなのか。早く続きが読みたくてたまりません。関連作:『とらドラ!』『とらドラ2!』『とらドラ3!』『とらドラ4!』『とらドラ5!』『とらドラ6!』『とらドラ7!』『とらドラ8!』2008年10月11日読了
2008.10.22
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乳姉妹の馨子の命で、馨子の身代わりを演じることになった宮子。姫様修行の一環として、仮御所から出ようとしない「桐壺の更衣」の説得という名目で冷泉院に赴くのだが、そこで宮子はとんでもないものをみつけてしまった・・・ 平安ライトミステリの第2弾。 今回もあらためてミステリとしての出来具合に感心させられます。この時代性をしっかり活かした道具立てといい、そこかしこに張られた伏線といい、これは本当に拾い物だった気がします。『なんて素敵にジャパネスク』を読んだあとじゃなかったら、きっと手にとっていなかっただろうから、尚更。 次郎の君(東宮)や蛍の宮、あるいは馨子(和泉の君)のような能力に秀でたスーパーマンがそろっているというのは、いかにもという印象を受けます。ただし、そういった登場人物もしっかり物語の中で消化されていて、あまり違和感はありませんでした。もっとも、彼らを宮様や姫様にしておくのはもったいないような。検非違使とかどうですか。 また、真幸の影が余りも薄いのはどうかと思います。一応、彼は馨子公認で宮子のお相手ということになっています。しかし、登場シーンも少ないし、あまり魅力的にも書かれていません。その辺、3巻目でフォローされるのでしょうか。関連作:『嘘つきは姫君のはじまり ひみつの乳姉妹』2008年10月8日読了
2008.10.19
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駄弁るだけではないっ! いつもこんなことばかりしているわけじゃないんだ! とばかりに? 生徒会室を飛び出した碧陽学園生徒会。彼らは普段、生徒会室以外では何をしているのか。あんなことや、こんなことも。彼らの日常生活を赤裸々に公開した短編集。 シリーズ番外編。生徒会室から話の舞台が移っただけで何も変わっていない気もするし、それだけでも劇的な変化のような気もします。なんとも不思議な番外編です。いや、正確には場所が変わったことにより登場人物が増えたことの方が変化でしょうか。 どれもおもしろかったのですが、際立っていたのがあの中目黒くんが登場する「二年B組の一存」でしょうか。ただでさえ真冬のBLの登場人物(しかも杉崎の相手)と同じ名前なのに、こんな「いかにも」なキャラクターだなんて! きっと杉崎じゃなくても退きます。それなのに、杉崎の行動で中目黒くんが好感度を上げていくなんて。ただ、ハーレム云々を除けば、杉崎はかなりまともで能力もあるよい人だから、好感度が上がるのは当然といえば当然。 また生徒会的バトル・ロワイアルである「三年A組の二心」もかなり楽しく読ませてもらいました。結末まで含めて、くりむと知弦の特徴がよく出た作品。このなんとも言えないゆるさはいかにも生徒会的。全然殺伐としていない。 似たような意味では「杉崎家の一晩」での林檎も同じかも。あのイラストで「ふぁっきゅ」とか言われても、全然物騒じゃないですよね。もちろん、狙いはそこですが。 次はまた生徒会室に戻るようですが、この番外編も継続していくようなので外の世界にも期待しています。 収録作:「ドラゴンマガジンのっとりの序章よ!(生徒会の零話)」「アカちゃんは昔からこの調子だったわ(実録!生徒会選挙ポスターの裏側!)(会長の宣言)」「ドラゴンマガジンが侵食され始めた頃の話だな(リニューアルする生徒会)」「杉崎君は、素晴らしい男子だと思います!(二年B組の一存)(二年B組の一日)(二年B組の一員)」「杉崎の私的な記録を、勝手に持ち出してみたぞ(杉崎家の一晩)」「俺のいない間に、なにやってんスか・・・(欠ける生徒会)」「ゲーム化希望!(三年A組の二心)」関連作:『生徒会の一存』『生徒会の二心』『生徒会の三振』2008年10月7日読了
2008.10.17
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クリスマス・イブに実乃梨に振られ、おまけにインフルエンザでダウンした竜児。やっとのことで登校した新学期だったが、待っていたのは大河のひとり立ち宣言だった。最後の望みを賭けた修学旅行、竜児は実乃梨の真意を聞き出そうとするが・・・ うわーっ。 『とらドラ7!』の展開からどんな風に風呂敷をたたむのか興味津々だったのですが、たたむどころかさらに大きく広げてくれました。まったく、ここからどうするっていうんだ。 修学旅行なんて学生として一番といっていいほどのイベントなのに、そこにこんな重い感情を引きずらなければならないなんて。 昼ドラも真っ青のこのドロドロ状態、正直ここまでするとは思いませんでした。 本当の気持ちを押し隠す大河、ついに知ってしまった竜児、板ばさみになる実乃梨、そして現状へのいらだちを隠せない亜美というそれぞれの立場があります。このなかで一番辛い立場にあるのは大河でしょうか。自分の気持ちは竜児に向いているのに、竜児のためにそれを隠して実乃梨との恋を応援し憎まれ口を叩く大河です。あるいは自分と竜児が両想いであることを知りながら、親友大河のことを思いそれをなかったことにしようとする実乃梨かもしれません。いや、それともその関係の輪に入れず、自分の為には何ひとつできず、ただただ眺めているしかなかった亜美のほうが辛いか。本当にもうわからなくなりそうです。 とにかく鍵を握るのは竜児。彼が誰を選ぶのか、それによってすべてが決まるのですから。大河の母親が登場してきたことも気になるのですが、いったいどうなるのか。関連作:『とらドラ!』『とらドラ2!』『とらドラ3!』『とらドラ4!』『とらドラ5!』『とらドラ6!』『とらドラ7!』2008年8月8日読了
2008.10.16
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あの緒形副隊長の若かりし頃は? 堂上や小牧はどんな新人だった? そしてあのふたりの行く末はどうなるのか! シリーズ完結、ついに明かされるあの人たちのあの頃とあの人たちのその後・・・ とうとう完結してしまった『図書館戦争』シリーズ。期待どおり? あの人たちの話が集められたスピンオフです。●「もしもタイムマシンがあったら」 「いつに戻りたいですか? タイムマシンがあったら」そんな質問に緒方が出した答えは大学の頃・・・これは切なく、苦いですね。彼が引きずるのもよくわかる気がします。って、このあとどうなるの?●「昔の話を聞かせて」 いまや教官となった郁。ベッドに腰掛け聞いたのは、まだ新人だった堂上のこと・・・うーん、やはり堂上と郁は似た者どうしの夫婦なのですね。●「背中合わせの二人」 図書館の利用者として柴崎に迫るストーカー。郁ではなく、手塚に助っ人を頼むのだが・・・柴崎麻子最大の危機。今までうまくいきそうでなかなかうまくいかなかった手塚と柴崎。ふたりにはこれほどのことがなければいけなかったのでしょうか。奥村の家族の態度が不気味でした。 いよいよ完結なのですが、最後がこんな終り方で本当によかったなあと思うのとともに、旦那さまに感謝。下読みの段階で泣きが入らなかったら、どれほど後味の悪いシリーズになっていたやら。 それにしても幕引きは残念。まだまだ書けるネタがいっぱいありそうなのに。何年後でもいいから気が向いたときにまた書いてほしいものです。収録作:「もしもタイムマシンがあったら」「昔の話を聞かせて」「背中合わせの二人」関連作:『図書館戦争』『図書館内乱』『図書館危機』『図書館革命』『別冊 図書館戦争1』2008年10月5日読了
2008.10.10
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あの騒動による停学があけて、学校に戻ってきた大河。12月、クリスマスを前にして、大河はすっかりいい子に変身、おとなしくしている。一方、実乃梨は部活でエラーをしたことが原因でへこんだまま。北村率いる生徒会は、有志によるクリスマスパーティを計画するが・・・ うわーっ。 今までの学園ドタバタラブコメディが嘘のような展開へ。もう、後戻りができないところまで来てしまいました。 とうとう確信を持った亜美、見てしまった実乃梨、そして知られてしまった大河。もはやそれぞれの気持ちは明らか。自分の気持ちはわかっていて、それでいて素直になれない状態。本当ならば読者も含めてみんなが幸せというのがいいのでしょうが、どうやらここから修羅場が続きそうです。 いずれこの日が来るだろうことは予測できたのですが、いざ読むとなると本当に辛いのですね。いや、おもしろいのです。おもしろいのですが笑えない。何か「おもしろい」と表現するのもためらってしまうような雰囲気。楽しいクリスマスとか、切ないクリスマスとかいろいろ読んだ気がするけど、ここまでショッキングなクリスマスはなかった気がします。 竜児と誰かがうまくいきそうで、ほかの二人が邪魔しにかかるとかそんな単純な展開だったら、きっと笑わせてもらえたのでしょうが。 とにかく逃げることも隠すこともごまかすこともできないような展開へ突入。みんなどうするのさ。関連作:『とらドラ!』『とらドラ2!』『とらドラ3!』『とらドラ4!』『とらドラ5!』『とらドラ6!』2008年8月3日読了
2008.10.10
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東京で公演されていたオペラ『トスカ』。女優は演出家の指示どおり、男優の頚動脈めがけてダミーのナイフを振り下ろした。だが、吹き出したのは血糊ではなく本物の血。男優はその場で絶命した。何者かによって、ナイフは本物とすりかえられていたのだ・・・ オペラ『トスカ』を題材にとりあげたミステリ。一般的にはなかなかとっつきにくい印象があるオペラですが、冒頭からわかりやすく説明されていて全く心配はいりません。むしろ、興味がなかった人でも「一度見てみようか」と思うこともあるのでは。もちろん、知っているほうが楽しめることは間違いないでしょう。 ミステリとしては、開かれた密室、見立て殺人、すりかえられた凶器、残されたメッセージなど、ミステリらしいガジェットがふんだんに盛り込まれています。それらをうまく活用しながら、最後に明かされる真犯人への道筋をひとつひとつ丁寧に逸らしていく手際のよさに感心させられます。もちろん、読んだあとでなければわかりませんが。 ただし、若干地味なのがネックでしょうか。物語自体が派手とはいえないので、せめて探偵役の瞬一郎ぐらいは派手でもいいのではないかと思うのですが、こちらも博識ではあるものの派手とはいえないでしょう。そういう面では損をしているようです。もっとも、異色の登場人物といえばあの警部がいますが。 作中では登場人物の名を借りて、『トスカ』の新解釈が提示されているのがおもしろい趣向かもしれません。少し前に読んだ『妃は船を沈める』では『猿の手』の新解釈が紹介されていましたが、こういうのは最近の流行なのでしょうか。2008年10月3日読了
2008.10.07
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多額の借金を残して、父親は失踪してしまった。ひとり残された祐太のもとにきたのは「三十銀貨財団」からの取り立ての電話だけでなく、聖少女がふたりと大天使、大魔王がひとりづつ。天涯孤独どころか、とってもにぎやかな生活の始まりで・・・ あの『さよならピアノソナタ』の杉井さんの新作。 最近、怒涛のごとく作品を送り出している杉井さんです。『さよならピアノソナタ』とは異なる方向性であってもおかしくないですし、それはあらすじを一読するだけでもわかるのです。でも、違いすぎません? ということで、最初の方から肌に合わないという感覚を持っていたのですが、最後まで読んでもやっぱり合いませんでした。 冒頭から下ネタのオンパレードで、まあ今までの作風とは明らかに違うのですが、それはそれで別に苦にはなりません。エリとレマというふたりの聖少女と祐太との関係もいい感じでしたし。 とにかく、表現のしようがないのですが、あまり楽しめなかったというのが残された事実。もうすぐ2巻も発売されますが、どうするべきか、かなり微妙なところです。2008年9月26日読了
2008.10.06
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「愛知県警の鉄の女」などと畏れられる京堂景子警部補。どんな難事件も解決してしまう凄腕だが、家事はすべてイラストレーターで主夫の新太郎が取り仕切り、景子を支えていた。そして、実は新太郎はほかの方法でも景子を支えていたのだ。安楽椅子探偵として・・・ 『ミステリなふたり』に続く京堂夫妻ものの短編集。●「ヌイグルミはなぜ吊るされる?」 吊るされた死体の周りには、いくつものヌイグルミが吊るされていた・・・このほどほどの奇妙具合は、最初の事件に最適かも。●「捌くのは誰か?」 殺された女性は料理が苦手。だが、捌いた刺身とともに発見され・・・誰でも簡単にできるわけではないのがうまいですね。●「なぜ庭師に頼まなかったか?」 主人が殺害された豪邸では、松の枝が不恰好に伐られ・・・ムダなものがないスマートな作品。●「出勤当時の服装は?」 堅物と思われた男は、女装した死体として見つかった・・・whyやwhereのストレートな連鎖が楽しかったです。●「彼女は誰を殺したか?」 橋の上で一人の痴漢を撃退した女性。ところが、川からは死体がふたつ・・・景子と新太郎のちょっとした推理合戦がおもしろいです。●「汚い部屋はいかに清掃されたか?」 ゴミ屋敷で清掃業者が殺された。ゴミひとつない部屋で・・・あの一言が!●「熊犬はなにを見たか?」 町を自由に散歩する大きな犬を飼っていた、嫌われ者の男が殺された・・・あの一言が! その2。何気ないところに隠された手がかりが巧み。●「京堂警部補に知らせますか?」 スポーツジムで汗を流す新太郎。そこへやってきたのは景子の同僚たち・・・安楽椅子から飛び出した新太郎が活躍する異色作。 前作は「~殺人事件」というタイトルの短編が並んでいましたが、今回は最後に「?」、それも有名な作品のパロディになっています。さらに『誰が疑問符を付けたか?』。遊んでますね。それでもちゃんと話の内容に関連しているところがすごいです。 作品の構造自体は前作とほとんど同じ。あいかわらず新太郎の推理が冴えます。ただ、全体的にやや強引というか、真相がほかにあってもおかしくないような割り切れなさが残りました。一編ごとの短さが影響しているのかもしれません。 軽快かつユーモラスな作品が並んだ短編集。二面性を持つ景子さんはもちろん、登場するキャラクターがコミカルなので、陰惨な事件でも吹き飛ばしてくれます。ドラマ化してもおもしろいかも。でも、30分枠かな。収録作:「ヌイグルミはなぜ吊るされる?」 「捌くのは誰か?」「なぜ庭師に頼まなかったか?」 「出勤当時の服装は?」 「彼女は誰を殺したか?」「汚い部屋はいかに清掃されたか?」 「熊犬はなにを見たか?」 「京堂警部補に知らせますか?」 関連作:『ミステリなふたり』2008年9月25日読了
2008.10.04
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