2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
全8件 (8件中 1-8件目)
1
![]()
明林書房の新米営業マン・井辻智紀は、前任者の後をついで担当の書店回りをしている。行く先々で編集部に異動した元エース・吉野と比較され続けたが、それにももう慣れてしまった。智紀は目の前に立ちはだかる謎を、吉野や他社の営業マン・真柴の力を借りながら解き明かしていく・・・ 大崎さんの新シリーズは、書店員から版元の営業マンに主人公を移した短編集です。●「平台がおまちかね」 足を運んでいない書店が自社本を大量に売ってくれた。喜んだ智紀だが、店長の態度は素気なかった・・・扱うものがなんであろうと、やはり人と人との関係は重要。この真相はそれなりに美しいけれど、井辻にとっては結構厳しいんじゃないですか。●「マドンナの憂鬱な棚」 各社営業マンたちのマドンナ書店員が落ち込んでいるという。それはどうして・・・正直、そこまでするかなという疑問が頭に浮かびました。本を愛する気持ちが伝わってくる一編。もちろん、本だけではないのですが。●「贈呈式で会いましょう」 年に一度の宝力宝賞の贈呈式。智紀は老紳士から受賞した塩原への伝言を頼まれた。だが、肝心の塩原が会場入りの前に姿を消した・・・軽快だけれど、人間の持つ暗い面をしっかり書いた印象。この作品集のスパイスかも。でも温かく、しっかり救われた気分になります。●「絵本の神さま」 初めて訪れた地方の書店は閉店していた。隣の蕎麦屋によると、前の晩も同じようにシャッターの前で立ち尽くす男がいたと・・・こういう時代だからこそ、本は本屋さんで買いたいものです。●「ときめきのポップスター」 各社営業対抗のポップ販促コンテスト。ところが、真柴の選んだ本があちらこちらへとなぜか移動させられる・・・比較的仕組みがわかりやすい作品かもしれません。書店でこういう企画があってもおもしろいですね。 相変わらずミステリとしては弱いかと思いますが、ミステリレーベルであることを気にしなければかなり楽しませてくれます。特に「贈呈式で会いましょう」は受賞者が来ないという謎を解く中で、井辻たちが塩原にたどりつくまでの迷走だけでなく人間の暗部と師弟愛を描いていて、非常に好感を持ちました。 一方で、「マドンナの笑顔を守る会」の面々のキャラの濃さはどうしたものかと。コミカルかも知れませんが、このシリーズならここまで濃いキャラにする必要はない気がします。 「成風堂」シリーズとは違う角度から書店・出版業界を取り上げた新シリーズ。リンクにも期待して続編を待ちたいと思います。収録作:「平台がおまちかね」「マドンナの憂鬱な棚」「贈呈式で会いましょう」「絵本の神さま」「ときめきのポップスター」2008年9月20日読了
2008.09.27
コメント(0)
![]()
「悪くない」。そんな名前を持つビストロ・パ・マル。従業員4人と規模は小さいが、フレンチ好きの常連が多く、味は確かな素敵な店だ。三舟シェフは無口だけれど、客が持つ悩みやちょっとした事件を、厨房にいながら名推理でたちまちに解いてしまうのだった・・・ 『タルト・タタンの夢』に続く「ビストロ・パ・マル」を舞台とした7編による短編集。●「錆びないスキレット」 手入れさえされていれば錆びないはずのスキレット。ところが、田上夫妻の場合はしっかり手入れしても・・・スキレットに秘められた悲劇。ちょっと歪んだ考え方が悲しみをさらに深いものにしています。煮干しの風呂敷包みを背負った猫ってかわいらしいですね。●「憂さばらしのピストゥ」 ベジタリアンの女性客が話した他店のシェフの言葉。三舟シェフと志村さんは顔を見合わせた・・・『自由じゃない』と思っているうちは、自由にはなれない。すごくわかる気がします。プライドの持てる仕事をしたいものです。●「ブーランジュリーのメロンパン」 オーナーの小倉さんが新たに持つパン屋。しかし、店をまかせられたふたりの間で意見がまとまらない・・・パンの好みって結構ありますよね。リーンなパンもリッチなパンもいいけれど、何よりも焼きたてのものがおいしいです。ミステリとしてはちょっと弱い感じ。●「マドモワゼル・ブイヤベースにご用心」 いつもオーダーするから「マドモワゼル・ブイヤベース」。ひとりで来店するのが常の彼女が、その夜は二名で予約を入れていた・・・確かに図々しい。いや、それくらいでないと務まらないのかもしれませんが。動揺している三舟シェフがなんとも微笑ましい。●「氷姫」 杏子が出ていった。リストカットを繰り返していた彼女は、自分のもとで落ちついていたように思えたのだが・・・氷という彼女が好きだったアイテムが効果的に使われた一編。報われない恋と氷の冷たさが悲しみを増幅させます。●「天空の泉」 トリュフのオムレツが絶品だという話を思い出し、向かったレストラン。偶然出会った男に旅に出た理由を話すことになった・・・若い三舟シェフが青臭く、そして少しキザに見えます。これもフランスという土地柄なのでしょうか。●「ヴァン・ショーをあなたに」 ルウルウと三舟と三人で行ったマルシェ・ド・ノエル。夢のようと評判のミリアムおばあちゃんのヴァン・ショーは赤ワインではなかった・・・家族の絆と思いを伝えることの大切さが描かれます。ヴァンショーを口にせずとも温かく、やさしい気持ちになります。 前作以上にミステリ分は少なめ、むしろパ・マルや三舟の修業時代のちょっとした出来事を記したような作品集。ミステリに固執していないところがこのシリーズの良さを引き出している気がします。 語り手を必ずしも高築に固定せず、後半三編はそれぞれ異なる人物が語り手を担当。特に「天空の泉」「ヴァン・ショーをあなたに」の二編は、三舟のフランス修業時代に舞台を移していて、今までとはかなり異なる雰囲気の作品に仕上がっています。 いつもおいしそうなフレンチが山ほど出てくるこのシリーズ。読んでいて本当におなかがすいてしまいます。次の登場がいつなのか、楽しみです。収録作:「錆びないスキレット」「憂さばらしのピストゥ」「ブーランジュリーのメロンパン」「マドモワゼル・ブイヤベースにご用心」「氷姫」「天空の泉」「ヴァン・ショーをあなたに」関連作:『タルト・タタンの夢』2008年9月18日読了
2008.09.22
コメント(0)
![]()
大阪湾に沈んだ車から発見された男の水死体。男には高額の保険金がかけられており、警察は他殺を疑う。容疑者として名前が挙がったのは催眠ダイエットサロンを経営している妻、男に金を貸していた妻の知人、そしてその養子の三人。だがそれぞれに男を殺害できない理由があった・・・(「猿の左手」) 「猿の左手」「残酷な揺り籠」の2中編をあわせて長編仕立てにした作品。 なんといってもジェイコブズの「猿の手」についての新解釈が目を惹きます。未読ながらも大筋は知っている作品だったのですが、わかりやすく適切な論理展開になるほどと頷かずにはいられません。それはあたかも『ニッポン硬貨の謎』における「『シャム双子の謎』論(あるいはクイーン論)」を読んだときのようでした。やはりこういうことをやりたくなる性分というのがあるのでしょうか。 ミステリとしては、特別な知識を絡ませたようなトリックが出てくるわけではなく、むしろ一つ一つのヒントを着実に組み合わせていった印象。奇抜なトリックもいいですが、こういった論理の積み重ねも読みどころです。容疑者を守る壁を壊すようなロジックが。 また、新登場の女性刑事・高柳もこれからいろいろな形で絡んできそうな予感。ほかの刑事たちよりも頭が切れそうな彼女によるおもしろい展開に期待します。 欲を言えば火村と対決したあの人物がもう少し魅力的な人物であったらと。そうすれば対決シーンもさらに盛り上がったのではないでしょうか。 そういえば、去年感じた疑問(2007.06.07「その肩書きの今は?」)に対する答えも出ていました。火村准教授って。やっぱり少し違和感がありますね。関連作:『46番目の密室』『ダリの繭』『ロシア紅茶の謎』『スウェーデン館の謎』『海のある奈良に死す』『ブラジル蝶の謎』『英国庭園の謎』『ペルシャ猫の謎』『絶叫城殺人事件』『乱鴉の島』2008年9月16日読了
2008.09.19
コメント(0)
![]()
満開の桜の下で、彼女は不思議な話を始めた。昨日までおかしなところで投げていた、と。少年野球チームのエースでありながら、小学校卒業にあわせて野球をやめざるを得なかった彼女は、いったいどんなところで投げていたというのか、どんな試合をしていたのだろうか・・・ ミステリーランドの最新作は、ミステリではないと思うけれど、なんともミステリアスで北村さんらしい作品。野球への愛情に満ち溢れています。 また宇佐木さんという名前、お茶会や赤の女王、あるいは本書のタイトルを見てもわかるように『鏡の国のアリス』をモチーフにした作品です。 もう野球ができないはずのアリスに与えられた最後のチャンス。このチャンスにアリスが心の底から野球を楽しんでいる様がとても心地よく感じられます。そしてこの野球からの卒業こそが、アリスにとっての大人への第一歩のような気がします。 そういう意味で、ちょっとした出来事でチャンスを失いかけたアリスに、再び、そして最高の舞台が与えられたのがとても印象的でした。 女房役で少し大人の兵頭や天才とも称されるスラッガー五堂、鏡のこちら側ではおとなしかった安西など、アリスの周囲を彩る仲間たちも個性的でおもしろいです。 ところどころに差し挟まれるジョークも思わずクスッと笑ってしまいます。 あべこべとなった鏡の世界で、アリスは野球に対するおかしな価値観と対峙します。この一件で、この世界での考え方が少しでも変わるのでしょうか。確かに気は晴れるかもしれません。しかし、そんなことよりもアリスたちが野球を楽しんだということの方がきっと重要です。 野球に興味のない人、ルールを知らない人にもオススメ、と言いたいところですがどうなんでしょう?2008年9月13日読了
2008.09.16
コメント(0)
![]()
ノリリンといえば探偵役は法月綸太郎。今回はそこをはずして、ノン・シリーズの作品を集めた短編集。全10作品。●「使用中」 編集者と打ち合わせていた作家の新谷は下腹がうずいて席を外したが・・・『大密室』で既読。シチュエーションの面白さが光る作品です。このあとの展開が気になります。●「ダブル・プレイ」 妻と不和になった省平は、出先で出会った男から交換殺人を持ちかけられた・・・『不透明な殺人』で既読。凝りに凝った交換殺人が複雑で興味深い。●「素人芸」 内緒で高価な腹話術の人形を買った妻に、夫は腹を立て・・・ホラーのような感触を一瞬でユーモアに変えてしまったオチが見事。●「盗まれた手紙」 南京錠をかけられた秘密の手紙は相手しか読めないはず。だが、手紙は途中で抜き取られた・・・比較的わかりやすいパズルのような作品。ただしはじめからこの方法で手紙が送られることがわかっていないと不可能な犯罪であることは否定できません。●「イン・メモリアム」 依頼された原稿は・・・本文わずか4頁の掌編。奇妙で味わいのある作品です。●「猫の巡礼」 夫妻が飼うのは猫のみどろ。猫は聖地へ巡礼に行くと聞いたのだが・・・異色作。全くミステリではありませんが、殺伐とした中の癒しのようでした。こういうのもいいですね。●「四色問題」 殺された女は、左の手首に「X」のような切り傷があった・・・『退職刑事』のダイイング・メッセージもの。何故こんな回りくどい方法を使うのか、という根本的な疑問にぶち当たりそうです。ただ、ノリリンらしい気はします。●「幽霊をやとった女」 資格を失った私立探偵への依頼は、夫の様子を心配してのものだった・・・ハードボイルドを融合させた作品。こういった作品はやはり御手の物でしょうか。●「しらみつぶしの時計」 それぞれすべてが異なる時間を差す1440個の時計。本当に正しい時計は・・・このオチを持ってくるためにこの数学的な文章を続けるのは正直如何なものかと。●「トゥ・オブ・アス」 高校時代の同級生木下悠子と北沢靖子は就職後も同じ部屋に暮らすほど仲が良かったが・・・『不条理な殺人』で既読。まったく不条理。これはこれでよかったのですが、長編化した『二の悲劇』のほうが読み応えがあり、完成度も高いという思いは変わりません。 ミステリを突き詰めていくとこういうことになるのかもしれませんが、全体に、というか初読の作品にパズルゲームのようなものが多く、残念でした。少なくとも僕はミステリに数学の解法であることを期待しているのではなく、推理小説であることを期待しています。単なるパズルゲームなら、それの専門家に任せておけばいいじゃないですか。収録作:「使用中」「ダブル・プレイ」「素人芸」「盗まれた手紙」「イン・メモリアム」「猫の巡礼」「四色問題」「幽霊をやとった女」「しらみつぶしの時計」「トゥ・オブ・アス」関連作:『二の悲劇』『不透明な殺人』『不条理な殺人』『大密室』2008年9月11日読了
2008.09.15
コメント(0)
![]()
誘われて参加した今回の囚人ゲーム。それはRPGだった。福原とオリビアはふたたびコンビを組み、魔王を倒しとらわれの姫を救い出すため、東京の街を歩き始めた。そこはありとあらゆるものが障害になる街。ちょっとした段差、すれ違う人々、そのすべてがふたりを傷つける・・・ 今までと比べてなんともシンプルなゲームになった印象。比較的わかりやすいRPGになったからなのか、それともお金の概念が薄くなったからなのでしょうか。あるいはどちらでもない? ただ、やはりRPGという自由度の高いゲームの特性を生かしきっているとは言えない気がします。お金のこともそうですが、もっといろいろなことができたのではないでしょうか。 物語は姉を救い出すために福原が囚人ゲームに挑み続けることで進みます。その組織の一端がようやく見えてきたようです。福原の視点で進められるため彼以上のことはわかりませんが、飛鳥やカレン、あるいは舞がどれだけ組織のことを知った上でこのゲームに参加しているのか、その辺も今後の展開に影響しそうな気がします。 期待が大きいだけに少々辛口かもしれませんが、楽しませてくれる作品であることは間違いありません。関連作:『ツァラトゥストラへの階段』『ツァラトゥストラへの階段2』2008年9月8日読了
2008.09.12
コメント(2)
![]()
勤務していた旅行代理店でリストラ役に回された秋月孝介。リストラ勧告した先輩社員の一家心中や、それに起因した娘の自殺と離婚も経験した彼は、自らも退職した後にひとつの行動を起こした。誘拐。彼は時の総理佐山の孫娘百合を誘拐したのだ・・・ これは読ませますね。冒頭から強く引き込まれます。 読み手としては、秋月が抱えている事情は承知しているので、事件そのものの顛末が気になるのと同時に、どうして秋月は誘拐事件を起こしたのか、どうして佐山百合だったのか、どうつながるのかというところを追いかけてしまいます。 事件は犯人の秋月、総理の佐山、そして捜査にあたる警察と主に3者の動きで進みます。それぞれの理由から緊迫感が伝わってきておもしろいですね。 もっとも、結末で明らかになるその真相はいささか腑に落ちないものでした。事件がなかなか手の込んだものだったのと比較すると、その動機が若干弱いように感じてしまいます。もっとも、読者には計り知れないような心情が存在するのかもしれませんが、少し残念です。 さらに言えば、これだけ凝った犯罪を起こしておきながら、実は秋月は捕まりたかったのではないか、あるいは自分へたどり着く手がかりを見つけてほしかったのではないかと想像してしまいました。 五十嵐さんは幅の広い作風で知られていますが、こういった緊迫感を前面に打ち出したような作品が一番好きですね。『TVJ』もよかったですし、『交渉人』も早く読みたいと思います。2008年9月3日読了
2008.09.11
コメント(0)
![]()
迫り来る生徒会長選挙。本命視されていたのは北村だったが、文化祭の燃え尽き症候群に陥っていた彼は何を思ったか突然グレた。「生徒会長選挙なんて」などと口にし、髪を染めて。そんな北村を亜美は切り捨て、生徒会長のすみれも失望をあらわにするが・・・ 青春だ。こっぱずかしいけど、北村の抱える事情はまぎれもなく青春そのもの。だからといって何もグレんでもいいではないかと思いますが。 ただ、メインは北村ということから、やはり限りなくサイドストーリーに近い印象を持ってしまいます。それが残念でしょうか。メインとなる5人の中ではどうしても影が薄いので。北村って、もともとそんなキャラだったかなあ。 とにかく立候補締め切り、そして演説会当日の動きは目が離せません。兄貴が兄貴らしさを見せつければ、北村はそれに応え、そして大河はついにそのタイガーとしての本領発揮。それまでの『とらドラ!』らしからぬ落ち着き気味の展開にはややもすると物足りなさを感じがちですが、この最後の最後での盛り上がりは圧巻です。なんとなくこういう舞台が用意されそうなのは感じるのにもかかわらず、派手に盛り上げて、しかも一筋縄では行きません。 ここで気になるのは亜美とみのりんですね。何、あれは?どうなるの?関連作:『とらドラ!』『とらドラ2!』『とらドラ3!』『とらドラ4!』『とらドラ5!』2008年8月2日読了
2008.09.03
コメント(0)
全8件 (8件中 1-8件目)
1
![]()

![]()