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お嬢様学校の聖ケーリー・イェール女学院では、鷺宮籐子というカリスマ性を持った美少女による不可解な占いが大きな力を持っていた。怪しいものを感じた秋人は結夏や香澄とともに変装して女学院に侵入するが、籐子には「女教皇」のタロットが憑依していた・・・ シリーズ第2弾は3枚目のタロット「女教皇」、4枚目のタロット「運命の輪」との対決。 正直なところ、ラブコメとしてはあまりに王道的で型にはまっているようで、ちょっとパッとしないような印象がありました。なんだか、お約束をすべて律儀にこなしていくようなイメージです。 そうした中で、秋人を守るという使命と思いを持って戦う結夏や香澄と、二人を傷つけてはいけないと考える秋人との感情の食い違いは、なかなか興味深いものでした。その辺をちゃっかり示唆したアメジスティアがいちばんおいしかったのかも。 このシリーズの戦闘シーンで興味深いのは、タロットたちに与えられた能力が直接相手を攻撃するものではないことでしょうか。戦闘における特殊能力というとどうしても直接的に攻撃し、相手を痛めつけるものを想像してしまいます。それだけに、このタロットたちの能力はちょっと意外でした。とくに「運命の輪」の能力はおもしろかったですね。「ぐるん」「ぐるん」って。 ちなみに、「運命の輪」の登場シーンで思わず「吊された男」だと思ったのは僕だけでしょうか? 逆さ吊りで登場するボクっ娘なんでつい。関連作:『タロットの御主人様。』2008年7月25日読了
2008.07.31
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アンソロジー『I LOVE YOU』に収録された「百瀬、こっちを向いて。」で颯爽と登場した覆面作家中田永一さんのデビュー短編集。●「百瀬、こっちを向いて。」 人間レベルが低い僕は、幼馴染の宮崎先輩からの頼みごとを引き受けた・・・既読。嘘から出た実という言葉があるけれど、意外性を持たせたラストがいいです。●「なみうちぎわ」 意識をなくしていた5年の間に、家庭教師の教え子は自分の学年を越えていた・・・設定は少し残酷、そして切ない。ただし、ミステリ仕立ての結末まできれいに連れて行ってくれます。●「キャベツ畑に彼の声」 テープおこしのバイトをしていた久里子。収められた覆面作家の声は国語教師によく似ていた・・・だんだん近くなっていく距離と、感じられるあたたかさがいいですね。●「小梅が通る」 目立たぬよう地味メイクをしていた柚木は、クラスメイトの寛太に素顔を見られ、咄嗟に妹の小梅を名乗ってしまう・・・こういう逆コンプレックスのようなものを抱えている人って、きっといるんでしょうね。終わり方も、ここで終わるというのがちょうどいい感じでした。また、同じグループのふたりの気配りも嬉しいところ。 表紙の白さと相俟って、ピュアなイメージの強い短編集でした。少しのほろ苦さと、それを包み込んでしまうような甘酸っぱさ。その具合がなんとも心地よいです。次は表紙も中身も黒いのだったらどうしましょう。 ちょっとしたミステリ仕立てになっているようなところはいかにもあの人を彷彿させるのですが、どうなんでしょうね。オススメできる作品集です。収録作:「百瀬、こっちを向いて。」「なみうちぎわ」「キャベツ畑に彼の声」「小梅が通る」関連作:『I LOVE YOU』2008年7月23日読了
2008.07.29
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相変わらず駄弁り続ける碧陽学園生徒会。やっぱり今回もお子サマ生徒会長・桜野くりむが小さな胸を張ってなにかの本の受け売りを偉そうに語ることから始まる駄弁り。今日も、どうでもいいようなことをただひたすら駄弁り続ける生徒会・・・ 本当に相変わらずですね。駄弁りはよりよりテンポ良く、より強力に、そしてより過激に、なっているのかな? やはり、同じような内容で3冊続くとインパクトも薄れてしまうのが正直なところ。内容の良し悪しとは関係なくですね。いくらおいしい食事でも、三日三晩同じメニューでは飽きてしまうのと変わりません。もっとも、これでも十分におもしろいのですが。ええ、満足はしています。 今までと比較するとキャラの定型化が進んだようで、とにかく真冬の腐女子化というか駄目人間化が著しいですね。頭の中BLとゲームしかないじゃないですか。いや深夏のこともちょっとあったけど。 くりむのお子様具合も相変わらずですね。「子供じゃないもん!キムチ食べれるもん!」 これって本当に子どもですよ。 また、今回は知弦さんの出番が少ないのがちょっと残念だったでしょうか。「ガクエンジャー」で演じる知弦さんの色には、思わず爆笑しながらうなずいてしまいましたが、ここで落ち込んだことからテンションが下がったのでしょうか。 とにかく、くりむが「継続こそ力なりぃっ!」と小さな胸を張って語ったとおりなので、次にもまた期待してしまうのです。杉崎が飛び込んで行ったあの場がどうなるのか、気になりますしね。収録作:「変身する生徒会」「旅立つ生徒会」「取材される生徒会」「食事する生徒会」「知られざる生徒会」「働く生徒会」「差し伸べる生徒会」「えくすとら~企む生徒会」関連作:『生徒会の一存』『生徒会の二心』2008年7月20日読了
2008.07.28
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名門・四阿家の跡継ぎである秋人は、落ちこぼれの占現師。分家の幼馴染・古城結夏にはバカにされ続ける毎日。だが、ある奇妙な依頼を受け、祖母が封印し、解けないと思われたタロットカードの封印を解いてしまったがために、とんでもないトラブルに。解き放たれた22枚のタロットのうち、「隠者」が取り付いたのは結夏だった・・・ カードの力を封印して支配するにも、封印したカードを解放して使うにも、どちらも乗っ取られた人間にキスをしなければならないという、まあなんともお見事な設定。こういうカードを使った作品はマンガやアニメとかほかにもいろいろありそうですが、よく知らないので。 知らないことが幸いしているのかどうかわかりませんが、なかなかおもしろかったです。タロットカードという、自分とは縁遠いものが物語の中心にありますが、難しいことは考えず楽しむことができました。タロットの知識は事前に必要ないですね。 おそらくはメインヒロインになるであろう幼馴染の結夏ですが、これがクールというよりは明らかにツンデレ。とくに秋人が能無しだとバカにされたときに本人よりも怒るあたり、いいですね。秋人がどちらかと言えばへらへらしているのとは対照的です。 一方、クラスメイトで「節制」が取り付いた八久住香澄は、内気でおとなしいけれど思い込んだら頑なという、ありがちなキャラクター。「節制」の力を使って彼女がどうなっていくのか、気になるところです。前髪に隠された美少女ってキャラクターは結構おいしいですね。 また、このふたりと秋人との三角関係を引っ掻き回すジブリールが絶妙なキャラクターですね。 残念なのは、いろいろとあっけなく終わってしまったように感じたところ。2巻が出せるかわからない状況でいろいろ詰め込もうとしたのかもしれませんが、ちょっと拍子抜けでした。「節制」との対決シーンあたりは盛り上がりにかける気がします。あまりに軽快に進みすぎたから、ということではないでしょう。 まあ、これから残りの20人が登場するんでしょうが、このまま同じように封印していくだけじゃ、芸がありません。きっと20人の中にはとんでもない奴がいて、アクセントをつけてくれるんでしょう。ただ、果たしてそこまでたどり着けるのか? プロローグまでがんばれ! 七飯宏隆!2008年7月20日読了
2008.07.25
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普通の女の子になりたい。剣の家に生まれた必殺剣の使い手・三月弥(みつきやよ)はそう願い、家を出て進学することにした。進学先はエリート校の蘇峰学園。楚々とした乙女に生まれ変わり、恋をすることを夢見た弥だったが、蘇峰学園は帯刀が常識、力こそがすべてというとんでもない高校だった・・・ セーラー服に日本刀という、表紙イラストどおりの物語です。剣豪伝というのは気が引けるし、ちょっと違う感じ。 入学式から乱闘が予定されているような常識はずれな学校ですから、常識的な生徒が集まっているとは考えにくいわけで。実際弥を取り合う2つの勢力が対立します。 果たして弥がどういう理由でどっちに決断するのか、非常に気になったのですが、なんだかいろいろな意味で拍子抜けした気分です。 いや、こういう選択もありだとは思うのですが、想定外だったのです。まあ、どうせなら思いっきりこっち方面に走ってくれた方がいいかも。 もう少し「楚々とした乙女」とか「男の子と恋をする」という、弥の夢を追いかける部分があってもよかった気はします。入学式のその日から、そんな夢はどこかへ吹っ飛んでしまっていますから。 それに、いろいろなことがあった割には、山場というか盛り上がり方がイマイチだったことは否定しません。 ただ、この設定は悪くないと思うし、ありきたりに近いかもしれないけれどキャラもしっかり立っています。続きも気になるので、きっと次も読むことでしょう。2008年7月15日読了
2008.07.23
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バイト先のオーナーの息子・鹿島了からの依頼。それは了の弟・周平に成りすまし、従妹の小野木真純の恋人になってほしいというものだった。真純は心臓の病で未来が期待できない身。依頼された宮田輝幸は、「歳よりも大人」「平気でウソをつける」テルにしかできないという了の言葉に、周平として真純のもとへ転校する・・・ じわっとくる、学園ものの恋愛小説でした。 なんと言っても、お金のため、生活のためのバイトと割り切っていたテルが見事に恋に落ちる様がなんとも気持ちいい。罵詈雑言を浴びせかけられていたにもかかわらず、です。 これはやはりこの手のストーリーのお約束かもしれないとは感じるのですが、そうと割り切っても気持ちがいいのです。 ともすれば卑屈にも見えるほど真純のために尽くそうとしたり、バイト期間が終わったあとのことなど微塵も考えられないほどの恋。自分たちがついている嘘のことを考えれば、当然本気になってはいけないはず。それを承知してはいるのに。 だから、テルの正体がばれそうになれば、読んでいる側はその危険性に過剰に反応してしまいます。本当にドキドキものです。 どちらかと言えば、あまりめずらしいとはいえない類型的なストーリー展開。だからこそ、そのわかりやすいおいしいところを活用、強調して、うまく感情移入させてくれます。 最後は本当にまいったなあ。じわっときます。 松井さんの作品は数冊あるようですが、最後の作品はもう5年以上前のようですね。もっとこういう物語を読ませてほしいです。2008年7月14日読了
2008.07.22
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母の血筋は一流なのに、父親が誰かわからず落ちぶれ、貧乏になった姫君・馨子。乳姉妹の宮子と暮らしていたが、ある日馨子の父親は超名門貴族だったことがわかり、ふたりは義兄の兼通のもとへ。だが、兼通の前で馨子と名乗ったのは、身代わりになった宮子だった・・・ 平安朝を舞台としたライト・ミステリ。 『なんて素敵にジャパネスク』のような作品を期待して手に取ったわけですが、なかなかに楽しませてもらいました。突拍子もない発想をする馨子は瑠璃姫のよう。こういう破天荒なキャラクターは読んでいておもしろく、結構気に入っています。逆に振り回される宮子は小萩のポジションでしょうか。とにかく控えめというか、常識的で馨子に忠実なキャラクターです。それだけに、余計に馨子の破天荒ぶりが引き立てられます。 そんな宮子をヒロインに据えた平安ミステリ。キャラクターに頼り切るわけではなく、キッチリと作りこまれたトリックが予想以上によかったです。また、その裏にある人間関係も、この時代性をうまく生かしていました。雅やかなところがいいですね。 ただ、やはりそういった雰囲気を出す文章は氷室冴子さんの方が数段上でしょうか。比較するのが間違っていると思われるかもしれませんが、あちらはいろいろなところで貴族の時代の雰囲気が出ていましたから。もちろんこの作品も頑張っていましたが、氷室さんがうますぎるかな。もしかすると最初の貧乏貴族の設定が雰囲気を壊しているのかも。 厳しい目で見ても、ここで打ち切りになるのは勘弁してほしいと思わせてくれるおもしろい作品でした。ぜひ、続きが読みたいです。2008年7月13日読了
2008.07.21
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桜祭りにあわせて開放された横須賀基地にやってきたのは市民だけでなく、海から無数の巨大な甲殻類が襲ってきた。停泊中の潜水艦「きりしお」の夏木大和と冬原春臣は、艦長の命と引き換えに逃げ遅れた子どもたち13人を艦内に避難させることに成功したのだが・・・ 自衛隊三部作の第三弾。今度の舞台は海です。 食糧としてのヒトを求め横須賀を襲撃する巨大甲殻類「レガリス」、それを食い止めようとする機動隊、機動隊の立場を尊重しつつ出撃を待つ自衛隊、そして救出を待つ「きりしお」という構図。 でも、だからといってこの物語は「いかにして機動隊や自衛隊はレガリスを倒し、きりしおを救うのか」という物語ではありません。いや、そういう面もありますが、やはりメインになるのはきりしお艦内での自衛官と子どもたちとのやりとりです。何せ「潜水艦で十五少年漂流記」ですから。 これだけの人数が狭いところで何日も過ごすのですから、当然そこにはいろいろなドラマが発生します。そこに地上での人間関係や生い立ちが持ち込まれ作られるストーリーがお見事です。紅一点だったメンバー構成もよかったかも。ただ、若干子どもたちが年齢より幼く見える気がしました。こういう緊急事態だからでしょうか。だから、声変わりのエピソードは年齢にあっていないように思えてしまい、ちょっとした違和感がありました。 また、夏木と冬原の問題児コンビがかっこいい。艦長の遺志を継ぎ、救出まで子どもたちの面倒を見ようとするふたり。その必死さが目に見える夏木と飄々としている冬原との対比もおもしろいです。夏木が望を必要以上に意識しているのもありありと見えますね。「有能な彼女」以前はこんなだったのか・・・ もちろん、「きりしお」の外にもドラマはあります。中でも機動隊の壊走に至る過程は、その生き様に感動してしまいます。まさに散り方の美学。またそれを演出する側に立った烏丸、明石といった面々もよかったなあ。と同時に、やっぱりこの国のセクショナリズムの悪い面を見せ付けられた思いがします。 ただひたすらに没頭して楽しむことができる上質なエンターテインメント作品。自衛隊三部作では一番好きかも。関連作:『クジラの彼』2008年7月8日読了
2008.07.18
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敦賀原発を狙ったテロが発生した。そのテロは鎮圧されたが、手口が当麻蔵人の著書『原発危機』の内容と酷似していたことから、メディア良化委員会は当麻の身柄確保に動き出した。作家狩りである。図書隊は横暴を食い止めるべく、先んじて当麻の身柄を保護した・・・ 「図書館戦争」シリーズの4冊目で一応の最終巻。 今回は今まで短編集のような構造とは異なり、一本の長編になっています。それだけに、緊迫感も途切れることなく、最後までグイグイと引っ張ってくれました。おかげでほぼ一気読みでした。 内容は、ついにここまで来たかといった風な、メディア良化委員会側との全面抗争です。そして、同時に自分とは関係ないと思っている一般市民との戦いでもあります。無関心というのはある意味一番厄介なのかもしれません。自分はそうありたくないと思いますが。 さて、今回の読みどころはやはり当麻をかくまった図書隊にとってのザ・ロンゲスト・デイなのでしょう。詳しく書くわけにはいきませんが、この「図書隊史上最大の作戦」はハラハラドキドキワクワクで、読み応えのある作戦でした。もちろん、ラブラブも。ただ、日付が変わった翌日がややあっけなく感じたのは残念でした。 でも、僕が興味深く読んだのは柴崎の手塚の兄・慧とのやりとりです。半敵対的な関係にあったふたりの冷静かつ大胆なやりとり。「歴史にあたしの名前が残るのよ」とまで言い切ったあたり、さすが「柴崎麻子様」でした。ちょっと手塚のかなう相手じゃないですよね。生真面目が取り柄の手塚ですから、ちょっと。このふたり、これからどうなるんでしょう。堂上と郁よりも気になります。 『別冊 図書館戦争1』はすでに読んでしまったので、残りはあと1冊でしょうか。なんだか名残惜しくなってしまいそうです。関連作:『図書館戦争』『図書館内乱』『図書館危機』『別冊 図書館戦争1』2008年7月6日読了
2008.07.17
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四国沖の演習空域で試験機「スワローテイル」と自衛隊のF15Jイーグル戦闘機が相次いで謎の事故を起した。その高度は2万メートル。事故機とともに飛行していた武田光稀三尉と日本航空機設計の春名高巳は現地調査に乗り出す。一方、高知ではイーグルのパイロット斉木の遺児瞬が浜辺で不思議な物体を見つけていた・・・ 『図書館戦争』で大ブレイクした有川さんの自衛隊三部作第二弾は、大空を舞台に繰り広げられる「未知との遭遇」です。 「大人ライトノベル」を掲げ、文庫ではなく単行本で刊行されたこの作品は、荒唐無稽な物語かもしれませんが、読み応えがありました。 一番の読みどころは【白鯨】をめぐる「セーブ・ザ・セーフ」とのやりとりでしょうか。日本を、人類を守るためにこの問題に立ち向かうという点で対策本部とは違いはありません。ただし、根本にあるものが違うため、方法がことごとく違う方向を向いている感じです。そこに歪みがあります。 ただし、この物語の主題は瞬と佳江というふたりの成長にあると思います。この年頃特有の危うさが巧みに表現され、なかでも瞬はフェイクと出会ってからののめり込み方、そして誤りに気付いたあとの自問自答が非常に痛々しく描かれています。それはふたりにとって大人への道、未来への通過点です。ちょっと大規模なものですが。 そんなふたりを真っ当に導く宮じいが魅力的でした。宮じいの言葉は一つ一つがどれも重く、心にしみます。そう感じること自体、きっと僕自身やはりまだまだ子どもなのだということでしょうね。 もっとも、「スカイドン」にピンと反応してしまった時には自分の年齢を感じずにはいられませんでした。いや、リアルタイムでは知らないですけど。 【白鯨】と高巳とのやり取りも緊迫した中にユーモラスな雰囲気が漂い、遅々として進展していないにもかかわらず飽きさせないのがいいですね。 また、ラブストーリーの側面もありますが、有川さんの後の作品のように甘すぎないところにも注目でしょうか。『クジラの彼』には、その後の高巳と光稀を描いた「ファイターパイロットの君」が収められています。甘いのがいい方はそちらも。 なお、角川文庫版に新たに併録された「仁淀の神様」は一読の価値あり。単行本で読んだ方もこれのためだけに文庫版を手にとってほしいです。特に宮じいファンの方は必読。収録作:「空の中」「仁淀の神様」関連作:『クジラの彼』2008年7月5日読了
2008.07.14
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一人の編集者が独自に編集したアンソロジー。「面白いお話、売ります。」表紙のその言葉に嘘偽りはありません。●伊坂幸太郎「首折り男の周辺」 テレビを見て隣人を「首折り男かも」と疑った安永夫妻。首折り男の特徴は確かに隣人にピッタリだったが・・・視点を頻繁に切り換えることで読者を煙に巻くようなお得意のテクニック。登場する二人の容姿が似ているため、厄介なことこの上ないですが、非常に伊坂さんらしい作品。ただ少々物足りないかも。●近藤史恵「プロトンの中の孤独」 「チーム・オッジ」に加入した赤城。なんとなく溶け込めない彼だったが、溶け込もうとしない石尾の相談役を任された・・・『サクリファイス』外伝。外伝だけに本編の引立て役に徹した印象。アシスト役ということか。未読の方はぜひ本編も読んでください。●有川浩「ストーリー・セラー」 売れっ子作家になった妻が襲われた病は、思考することと引き換えに寿命を失う奇病だった・・・勘弁してください、涙腺を攻めるのは。恥ずかしくなるほどストレートなラブストーリーですが、甘さと苦さを併せ持つ作品。いつもの有川さんの甘いばかりのラブストーリーのつもりで読むと痛い目に遭います。どこか有川さんご本人とダブるのですが、こんな運命が訪れないことを祈ります。●米澤穂信「玉野五十鈴の誉れ」 旧家の跡取り娘純香。彼女の誕生日に祖母から贈られたものは、同い年の使用人五十鈴・・・「バベルの会」シリーズの一編。「で、このあとどうなったの?」と思わせるまとめ方がうまい。ただ、終盤の大逆転に慌しさと都合のよさを感じてしまったことが残念。●佐藤友哉「333のテッペン」 東京タワーのてっぺんで起きた殺人事件。掴んだはずの平凡な日常は、様変わりしていく・・・初めて読んだユヤタンは、予想していたよりもおとなしい印象。もっと過激なものを書くのかと思っていました。いつもこういった感じの作品なのでしょうか。そういえば、似たような感じのミステリをひとつ、思い出してしまいました。随分前に読んだものですが。●道尾秀介「光の箱」 同窓会の会場に向かう圭介は、懐かしい日々を思い出していた。それは光と闇の日々、そして弥生のこと・・・やられた。こういう作品を書くだろうことは予想できるのに。暗闇の中、たった一筋の光明でも、あきらめなければいつか光射す明るいところへ出られる。●本多孝好「ここじゃない場所」 私が秋山を見つめるのには理由がある。それは、彼が私の目の前で消えたからだ・・・静謐な作品を書くイメージがあったのですが、こういう作品を書くとは予想外。このシリーズはおもしろそうで、ちょっと追いかけてみたい。 とにかく豪華なメンバーで、内容も充実しています。中編が揃っているだけに読み応えがあり、これで780円というのはかなりコストパフォーマンスがいいのではないでしょうか。雑誌の形態をとっているのでいまだに店頭に並んでいるか定かではありませんが、見つけたら迷わずレジまでダッシュすることをオススメします。 こんな豪華な作品集、また読ませてください。収録作:伊坂幸太郎「首折り男の周辺」/近藤史恵「プロトンの中の孤独」/有川浩「ストーリー・セラー」/米澤穂信「玉野五十鈴の誉れ」/佐藤友哉「333のテッペン」/道尾秀介「光の箱」/本多孝好「ここじゃない場所」関連作:近藤史恵『サクリファイス』2008年7月2日読了
2008.07.09
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このニュースにちょっとびっくり。 伊坂さん直木賞予選前辞退!(スポーツ報知) http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20080708-OHT1T00107.htm 直木賞選考対象から辞退=「ゴールデンスランバー」で伊坂幸太郎さん(時事通信=Yahoo!ニュース) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080708-00000058-jij-soci 内容は、日本文学振興会が文藝春秋を通して直木賞候補を決める予選前に伊坂幸太郎さんに接触したところ、執筆活動に専念することを理由に予選辞退を希望したというものです。 これまで何度も候補になりながら落とされてきた伊坂さんが、今回なぜ辞退するのか、その真意がどこにあるのかちょっとわかりかねます。 それにしても候補作が発表され、選考会・受賞作決定まで一週間となったこの時期にこういう報道がされることはどうなのでしょう。最大の話題になるはずだった作品が辞退していたということで、今回の直木賞は何が受賞しても、受賞作がなくてもケチがつきそうです。追記 静かになりたい…伊坂幸太郎氏が「直木賞」選考辞退(ZAKZAK) http://www.zakzak.co.jp/gei/2008_07/g2008070814_all.html こんな取材記事もありました。「静かになりたい」ですか。有名になる恐怖なんて、一般人ではわからないことですが、やはり辞退は残念です。 大変でしょうが、伊坂さんが次の作品でも読者を楽しませてくれることに期待したいと思います。
2008.07.08
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仕事を辞めたその日、芽衣は新幹線で美人で傲慢な音生と再会した。音生に引きずられるまま旅に出かける芽衣。それはトルコへ、四国へ、そして石垣島へと続くいい加減な旅。この旅はどこへ行き着くの? 柴崎さんの小説は、僕にとっていつも本当に難解です。そこに謎があるとか、笑いがあるとか、涙があるとか、そういう類のものではないから。代わりにあるのは、何気ない日常のちょっと変わった延長線。 今回の旅行は、仕事を辞めたあとの感傷旅行。音生というわがままな女友達(5歳年下)に引っ張られ、トルコへのツアーに参加したり、四国に住む友人の旅館に長居したりというもの。やっぱり日常の延長線上。 音生は人並みはずれた美貌の持ち主。非常識でわがままで傲慢。普通に考えればあまり読者に好かれないタイプの登場人物ですし、おそらく僕もそう思うはず。なのに、どこか気になる憎めない人物に思えたりします。言うべきことははっきり言い、行動する、どこか一本の筋がピンと通ったようなところがいいのでしょうか。 対照的に芽衣はもうグダグダ。面食いで、あまり考えず行動して文句ばかり、努力は嫌いで僻みっぽい。おまけに音生に引きづられっぱなしで、何ひとつ決断しないタイプ。だから、音生よりも芽衣にイライラしっぱなしでした。四国でそれをストレートに指摘されるシーンでは、思わず首肯の繰り返し。 読んでいて、柴崎さんらしさが随所に見られたのですが、ただただ芽衣のグダグダしたところが鼻についてしまいました。それが残念。2008年6月23日読了
2008.07.04
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やっとのことで王子様からカップルになったのに、ふたりはなぜか波風ばかりたててしまう。二十六歳純粋培養乙女・茨城県産のブラッディ笠原とゆかいな仲間たちの激甘ラブストーリー。 失敗しました。読む順を間違えました。やっぱり『図書館革命』を先に読むべきだった! と後悔してもあとの祭り。のっけから堂上が入院していて「???」状態。本編との絡みがほとんどなさそうなバカップルのための“別冊”なので、割り切って読みました。 「図書館戦争」シリーズの本編にある良化法をめぐる大きな流れを取り払った結果、残ったのが郁と堂上の激甘ラブストーリーです。そういう意味では、若干キャラクター色が強かったかもしれません。●「明日はときどき血の雨が降るでしょう」 入院していた堂上が復帰。図書館では、ゴミ箱に捨てられていたバーコードシールを毬江が見つけていた・・・顔に返り血を浴びていい笑顔の女性って、怖いもの見たさで気になります。リンゴの皮むきからおもしろかった。●「一番欲しいものは何ですか?」 堂上が復帰したことによりキスする機会が減ったことを嘆く郁。堂上が実家に帰った元日、郁も堂上の実家に伺うことに・・・ひどいことをする人がいるんですね。とにかくベタ甘。保存してある写真がたった1枚だけっていうのも気持ちが伝わっていいかもしれません。●「触りたい、触られたい二月」 キスから先のことでなんとなくギクシャクしてしまった堂上と郁。堂上は少し距離を置こうとするが・・・きっと「ここさえ乗りこえれば、あとは」ってところですね。催涙ガスの中へ飛び込んでいくのはいかにも彼女らしい行動。スキンケアでスキンシップ。●「こらえる声」 ふたりで初めての外泊。堂上がシャワーを浴びているとき、郁は自分がうっかりミスをしていることに気付いた・・・また新しい二つ名がつくところだった郁。「熊殺し」「ブラッディ」「肉食獣」じゃちょっと悲劇的。でも、やっぱりこらえる方法がちょっと違う気が。●「シアワセになりましょう」 「もっとふたりでいる時間がほしい」外に部屋を借りたいと言い出す郁だが、堂上はけんもほろろで・・・堂上のほうが完全に一枚上手でした。一気にここまで畳み込んでいくなんて。 赤面っていうのは大袈裟かもしれないけど、頬が緩むとかいうのはわかる気がします。相手をキライなことではなく、相手をスキだからこそ揉めたり喧嘩したりするあたり、かなり甘い。恋愛の生々しい悩みもあるのですが、それをそうと感じさせないほど楽しく読ませてくれるのが良いですね。 別冊もとりあえず2冊目までは予定されている模様。だったら手塚と柴崎でしょうか、それとも小牧と毬江、あるいは? いずれにせよ、本編から登場人物が作りこまれているからこそ、こういうスピンオフも楽しみにできるのでしょう。収録作:「明日はときどき血の雨が降るでしょう」「一番欲しいものは何ですか?」「触りたい、触られたい二月」「こらえる声」「シアワセになりましょう」関連作:『図書館戦争』『図書館内乱』『図書館危機』2008年6月22日読了
2008.07.01
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