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恋するふたりの間には、果てしなく続く海原やどこまでも広がる大空が。陸・海・空の自衛隊は、恋するふたりにとってちょっと特殊な環境の職場。男前でかわいい彼女たちの、一途で一生懸命な恋愛・・・ 自衛隊を舞台にしたあまーい恋愛小説集。耐性のない方は注意してください。●「クジラの彼」 聡子が数合わせで参加した合コンで出会った男・冬原は潜水艦乗り。次に会えるのはいつなのかもわからない・・・『海の底』からのスピンオフ。ほかにも会えない、待つということを書いた作品はありますが、いつ会えるかわからない、連絡も取れないという意味ではこの恋が一番大変かも。●「ロールアウト」 絵里が設計した航空機に高科という自衛官から注文がつけられた。それはトイレの個室化・・・これは切実な問題。このトイレに対するこだわり方がいいですね、高科も有川さんも。高科の意趣返しには拍手したくなりました。●「国防レンアイ」 民間との恋愛に失敗を繰り返す舞子は、陰では鬼軍曹と呼ばれている。同期の伸下は彼女に振り回されっぱなしだった・・・腐れ縁から始まるある意味典型的なラブストーリー。元彼がああいう男たちというのは男運が悪すぎ。民間と自衛隊ではやっぱり国に対する温度差があるんでしょうね。●「有能な彼女」 年下で有能な彼女にとって、自分は相応しい男だろうか。夏木はそう考えずにはいられない・・・こちらも『海の底』からのスピンオフ。誰だってこういうことを考えるんじゃないですか、よほどの自信家じゃない限り。自衛官だって、有能な潜水艦乗りだって普通の男ですもの。終盤の怒涛の展開が◎。●「脱柵エレジー」 「今日会いたい」故郷に残してきた彼女の言葉に、新入隊員は深夜の脱柵を試みる・・・若い隊員の脱柵のエピソードまではベタな感じがしましたが、その後のふたりの会話で一変。さりげない大人の雰囲気がいいです。悲劇の主人公を演じる自分に酔いしれるのも大概にしないと。●「ファイターパイロットの君」 娘から初めてのキスの話をせがまれた高巳は、妻でパイロットの光稀とのことを振り返る・・・いかにも守っているって感じがいいですね。“強くて、きれいで、凶悪にかわいい”光稀がウブで純で、というのはある意味反則。ドッグタグへのこだわりがおもしろいです。 ほどよくあま~い恋愛小説集。自衛隊の特殊性がいろいろな形で生かされていて、これはやったもん勝ちですね。自衛隊ネタでまだまだ読ませてほしいというのが本音。 『空の中』『海の底』よりも先に読んでしまったのは、やはり失敗なのでしょうね。早めに読みます。収録作:「クジラの彼」「ロールアウト」「国防レンアイ」「有能な彼女」「脱柵エレジー」「ファイターパイロットの君」2008年6月21日読了
2008.06.28
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「Foolish Children」それは命を懸けたネットゲーム。探偵の鷺浦悠人は青年の不可解な事故死を調べている途中、このゲームを見つけた。書き込んだことが現実になるこのゲームにいつの間にか参加させられていた都薙緋真は、他のマスターから命を狙われることに・・・ 乙一さん推薦の帯で目を惹いたホワイトハート新人賞受賞作。 ゲームを中心に据えた小説かと思いきや、ゲームは味付け程度、ホラーテイストの強い作品でした。予想していたものとは違いましたが、それなりに楽しめました。 ゲーム的な要素のある小説というと、最近では『扉の外』あたりを思い浮かべます。当然そのあたりを期待していたのですが、あまりゲームが生かされていない印象です。もちろん、このゲームなしには物語の始まりも終わりもないのですが、少々物足りません。なんでしょう。人物がゲームの中にいる小説と、ゲームの外にいる小説の違い?でしょうか。 ただ、読者をぐいぐいと引き込む物語ですし、苦い過去のある探偵鷺浦のキャラクターもおもしろいです。文章も難解すぎず優しすぎず、テンポもよくちょうどいい感じ。きっと力のある新人さんです。 ラストの流れから、おそらく続編があることが想像できます。鷺浦の過去も関係するでしょうし、助手の璃砂も絡んでくるのかな。もっとゲーム世界を活用した、スケールの大きな物語を期待。2008年6月18日読了
2008.06.27
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ついに高彬と結婚し、人妻となった瑠璃姫。ようやく落ち着いた新婚生活が始まるのかと思いきや、高彬が乳兄弟守弥の恋人を預かってほしいと言い出し、新三条邸ではひと悶着が。小萩は高彬との関係を疑うが・・・ 高彬の気持ちに思わず頷いてしまうシリーズ第5弾。 結婚したことで瑠璃姫が変わったとまわりの人々は思っているようですが、全然そんなことはない感じ。むしろ、結婚したことに浮かれて、おとなしい妻を演じることを楽しんでいるように見えてしまいます。 だから、帥の宮たちの見舞いの一件があろうとなかろうと、高彬が「身を慎んでおくれ」と瑠璃姫に言うのは当然のことだったのかも。 いくら変わった、おとなしくなったとは言っても、所詮は瑠璃姫。几帳や御簾の陰に隠れているようなタイプでないことは高彬にもわかっているのです。 もちろん、思いもかけないところからやってきた帥の宮の影には驚きますし、薄気味悪いものを感じます。なにやらよくない予感が・・・ ということで不倫編へ続く。このタイミングでぶった切ることで次へと引っ張るのは、やはり氷室さんのテクニックでしょうか。関連作:『なんて素敵にジャパネスク』『なんて素敵にジャパネスク2』『ジャパネスク・アンコール!』『続ジャパネスク・アンコール!』2008年6月13日読了
2008.06.24
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静養中の吉野では不思議な男と出会い、峯男という名をつけた瑠璃姫。待ち続ける人々には誰にも知らせず内緒で京の都へ帰ろうとしたのだが、そこで待ち構えていたのはなぜか怒った高彬と初めての夜だった・・・ 守弥と小萩、そして瑠璃姫が語る3編を収録。●「守弥のジャパネスク・ダンディ の巻」 策が破れた守弥は、吉野に乗り込み瑠璃姫と談判しようとするが・・・予想はできたことですが、すっかり三枚目路線の守弥。まあ二枚目ばかりではおもしろくないですからね。守弥の心の動きがおもしろい一編です。●「小萩のジャパネスク日記 の巻」 父母を亡くし肩身のせまい思いをしていた小萩は貴族の邸に勤めることにした・・・これは本当に番外編。小萩が瑠璃姫に仕えたころの話が日記風に語られています。地味ながら瑠璃姫に懸命に尽くす重要人物小萩の意外な過去に興味津々。●「瑠璃姫にアンコール! の巻」 吉野から都へ戻ることにした瑠璃姫。内緒で帰ろうとしたが、待ち受けていたのは・・・やはり瑠璃姫がいいですね。この作品集は彼女が3編とも登場しますが、彼女が語るのとそうでないのとでは大きな違いです。ちょっとしたサスペンス風味が読者をひきつけます。「表の瑠璃姫、裏の夏姫」ということですが、もし裏表が入れ替わっていても同じようなことになったのでしょうか。 ここでこのシリーズもひとつの区切り。ここで終わったほうがよかったという方もきっといるのではないでしょうか。まあ、僕は続きも読みたい派なのですが。収録作:「守弥のジャパネスク・ダンディ」「小萩のジャパネスク日記」「瑠璃姫にアンコール!」関連作:『なんて素敵にジャパネスク』『なんて素敵にジャパネスク2』『ジャパネスク・アンコール!』2008年6月12日読了
2008.06.23
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都を騒がせた唯恵の謀反未遂ののち、瑠璃姫は傷ついた心と体を癒すため、吉野に籠もることになった。都に残った高彬は、唯恵が生きのびているという話を耳にする。瑠璃姫のためにも唯恵に生きていてほしいと願う高彬は、夜中に邸を抜け出し、西の京の調査に向かった・・・ 高彬とその乳兄弟守弥それぞれの一人称で語られる2編を収録した番外編。瑠璃姫不在の都での物語ですが、シリーズ構成上読み飛ばすことはできません。●「高彬のジャパネスク・ミステリー の巻」 独自で唯恵出没の調査にあたった高彬が見たものは・・・瑠璃姫のために孤軍奮闘する高彬。事件のオチはあっけなく、拍子抜けでした。もちろん、立場は違えど人を想う気持ちは同じということですが。●「ジャパネスク・スクランブル の巻」 高彬の乳兄弟守弥にとって、都で「物の怪憑き」と評判の瑠璃姫が許嫁であることは、到底我慢のできることではなかった・・・瑠璃姫の追い落としに頭脳派の守弥が暗躍するのですが、インパクトが強いのは煌姫。「うまい話には裏がある」「人を見たら泥棒と思え」と言い放つ姫には笑いが絶えません。 瑠璃姫不在ということでどうなることか不安もあったのですが、そんなものはきれいに払拭してくれました。煌姫の一人称があってもおもしろかったかも。過激ですから。収録作:「高彬のジャパネスク・ミステリー の巻」「ジャパネスク・スクランブル の巻」関連作:『なんて素敵にジャパネスク』『なんて素敵にジャパネスク2』2008年6月11日読了
2008.06.23
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東宮から即位した鷹男の帝は瑠璃姫にあてて頻繁に文を送ってくる。帝大事の高彬はまったく頼りにならず、堪え切れなくなった瑠璃姫はついに尼寺へ。だがその夜何者かの手によって三条邸が焼け落ちてしまう。そこには『瑠璃姫 怨』と書かれた呪詛状が残されていた・・・ 瑠璃姫、高彬、鷹男の帝の三角関係になるのかと思いきや、急展開を見せる2巻。1巻を読む限りではかなりコメディの要素が強いかとも思いましたが、意外なほどにシリアスな物語でした。後半の怒涛の展開は涙ものです。 『海がきこえる』を読んだときにも思ったのですが、氷室さんは読者と主人公の気持ちを一つにするのが本当にうまいですね。自然と瑠璃姫と同じ気持ちになれます。瑠璃姫が嬉しいときは嬉しいし、瑠璃姫が哀しいときは哀しい。だから、生真面目で堅物の高彬が見せる優しさも、それを受けた瑠璃姫の気持ちもよく伝わってきます。 高彬と言えば、今回は大活躍でした。鷹男の帝の一大事に几帳の陰から飛び出して謀反人に斬りつけたり、その謀叛人を追いかけたり。 そしてあの最後の一言は殺し文句。きっともうあの人とは会えない。心のどこかで二人ともそう確信していたからこそ、出てきた言葉なのでは。 切ない、本当に切ない、そんなラスト。そこには、瑠璃姫と高彬が手を携え、乗りこえていかなくてはならないものがあります。関連作:『なんて素敵にジャパネスク』2008年6月10日読了
2008.06.22
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平安の世、名門貴族の娘瑠璃姫は幼い頃を過ごした吉野で出会った吉野君との初恋を忘れられず、独身を貫こうとしていた。だが父の大納言は策を企て、瑠璃姫を無理やり結婚させようとする。弟融の親友衛門佐高彬に助けられ、何とか事なきを得たが・・・ 言わずと知れた『なんて素敵にジャパネスク』です。平安時代を舞台に、当時の風習や文化と恋愛を絡めたラブコメといったところでしょうか。●「お約束は初めての接吻で の巻」 何とか瑠璃姫を結婚させようとする父大納言は、権少将を招いて管弦の宴を催したが・・・なんとも強引な手段を用いた大納言と権少将、それを強引に防いだ高彬。「ぶっちぎり」と言ってしまうところが瑠璃姫らしいですね。高彬の秘めていた想いもまたちょっとかわいらしさがあります。●「初めての夜は恋歌で囁いて の巻」 兵部卿宮の二の姫との縁談を極秘に進められてしまった高彬。瑠璃姫は高彬と急遽一夜を共にすることに・・・ありがちといえばありがちな邪魔ですね。高彬も疑われることぐらい予想がつきそうなものですが。●「初めての夜よ もう一度 の巻」 仕切りなおして、いよいよ瑠璃姫と高彬が初めての夜を迎えようかというそのとき、融が太刀傷を負って帰ってきた・・・サスペンス色が濃い中編。物語のスケールも大きくなり、俄然活動的になる瑠璃姫が大活躍します。またしても、なのですが。 とにかく瑠璃姫の設定が魅力的。当時(作中では現代)の貴族の姫君は、御簾の後ろに隠れ、滅多なことがなければ人に顔を見せることなどありません。しかし瑠璃姫は館から飛び出し大活躍する、破天荒で快活な姫なのです。 また、高彬と結婚したも同然の関係でありながら、鷹男にも魅かれてしまうという瑠璃姫の心情が手に取るようにわかります。 舞台は平安時代ですが、難しさや堅苦しさはなく、むしろ現代感覚で読みやすい物語です。古文や王朝文学の世界への取っ掛かりには最適かも知れません。収録作:「お約束は初めての接吻で の巻」「初めての夜は恋歌で囁いて の巻」「初めての夜よ もう一度 の巻」2008年6月10日読了
2008.06.19
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「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」そんな一言から生まれたclub indigo。相変わらず事件に巻き込まれてしまうindigoのホストたち。今夜も晶とホストたちは夜の渋谷を奔走する・・・ 『インディゴの夜』に続くシリーズ第2作。今回もclub indigoのホストたちが大活躍します。4編収録。●「返報者」 ホストたちが襲われる事件が相次いだ。エルドラドの空也は自分のヘルプ樹が怪しいと睨んでいたが・・・明らかになった犯人の心情を考えると、いたたまれない気分になります。たどり着くまでの過程がなかなかおもしろい。●「マイノリティ/マジョリティ」 塩谷が連れていた美女は彼の後輩の妻だった。後輩は行方不明になっているのだと言う・・・ヒントに気がつく過程がやや唐突だったでしょうか。晶や塩谷の本業がらみもいいのですが、もう少しホストたちを活躍させて欲しいです。●「チョコレートビースト」 突然襲ってきた強盗に、晶はなぎさママのバッグを投げつけ撃退した。だが、バッグは強盗に持ち去られ、しかも中にはママの愛犬「まりん」がいた・・・まりんは通称「四十三万円」。この導入部のおもしろさにぐっと引き込まれます。物語として一番きれいにまとまっていました。●「真夜中のダーリン」 心臓の手術を受ける気がない吉田吉男。ホスト選手権に出場することで前向きに生きさせようとするが、彼らに嫌がらせが・・・ベタですがちょっといい話。空也のポイントが上がり続けるのが悔しいですね。 全体に謎解きの要素はかなり薄く、そちらを期待された方はあまり楽しめないかも。ただし、伏線はかなり念入りかつわかりやすく用意されているので、ストーリを追う楽しみがあります。展開はスピーディー、テンポのよい軽快なエンターテインメントです。加藤さんには謎解きよりもこういった作風のほうがあっているのでしょう。次も楽しみです。収録作:「返報者」「マイノリティ/マジョリティ」「チョコレートビースト」「真夜中のダーリン」関連作:『インディゴの夜』2008年6月9日読了
2008.06.17
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人間嫌いが災いしてホテルに引きこもってしまった男は「金の声を聞く男」と呼ばれ、株式で巨万の富を築いていた。しかし、彼の元に送られてきた1枚の旧千円札が彼を動かした。それは、捨て子だった彼がなくしてしまった唯一の宝物だったから・・・ 第39回メフィスト賞受賞作。大雑把に言えば、引きこもり男が自分の過去をたどることによって外界へ出て行く物語。そこに主人公ヒィの「他人の金に対する欲が幻覚で見える」という特殊な能力(あるいは症状)が微妙に味を加えます。お金に欲のある人物からはヒィの懐へと無数の腕が伸びるというような幻覚を見てしまうのです。 しかし、この能力が実際にどれだけ生かされていたか考えると、微妙と言わざるを得ません。もっと効果的に使うことができた気もするし、なくてもよかった気もします。彼がホテルから出ない理由や、仕手戦で莫大な富を築いた根拠にするためだったのかもしれませんが、何かほかの方法で代替ができたのではないでしょうか。 ただ、主人公のヒィとヒロインのカズキがなかなか魅力的に描かれています。ヒィは人間嫌いという設定でなかなか読み手をも寄せ付けないような部分を感じるのですが、彼が外へ外へと出て行くのにつれてどんどん引き込まれてしまいます。一方のヒロイン・カズキもヒィ同様ある種の問題を抱えた人物でありながら、常に明るく前向きに生きようとするあたり好感が持てます。もっとも、これはほかの登場人物たちに金の亡者のような人物が多いことが影響しているのかもしれません。 シナリオライター出身ということで、ストーリー構成は手堅く感じます。ただ、手堅さ以上の目新しさは感じませんでした。次回作に期待。2008年6月7日読了
2008.06.16
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11日に小田和正さんのライブツアー「KAZUMASA ODA TOUR 2008 今日も どこかで」の名古屋公演(1日目)に行ってきました。このツアー2度目です。 小田さんのツアーで名古屋まで見に来たのは2回目。前回は2002年8月の愛知県体育館、「Kira Kira」のときでした。今回は日本ガイシホール。とにかく広かった。スタンド席のステージ裏側だったのですが、それが苦にならないくらい小田さんはよく動く。あちらこちらへ。 曲目は4月のエコパのときとほとんど変わりませんが、ずっと聴きたかったあの曲をアンコールで聴けたのは嬉しい限り。 そして小田さんが目の前まで来たのはびっくり。サービス精神はとても嬉しいですが、スタンド席の通路までは無謀だった気がします。 今度会えるのはいつだろう。そう思わずにいられないステージでした。
2008.06.13
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母親に連れられて、山奥の庵にやってきた悟。そこで出会ったのは、年老いたおんば様と謎の美少女茅、そして生意気な少年真だった。この庵はは何のためにあるのか? 残してきた父親はどこへ? 切ない夏は、悟に何をもたらすのか・・・ あの宮部みゆきさんが絶賛した第3回新潮エンターテインメント大賞受賞作。宮部さんが現代の田舎を舞台に物語を書くと、こういう感じになるのかもしれないと思わせる作品でした。言いすぎでしょうか。 例えば【鈴鳴らし】や【魂翔け】【魂振り】のような特殊能力はいかにも宮部さんが好きそうですし、その描写も美しく、景色が眼に浮かぶかのよう。 ただし、いろいろと詰め込んだ、というわけではないのに物語の軸がはっきりせず、どうにも先が見えないのは残念でした。まるで松明を灯して前に進むかのようです。 また、人間関係の深さや闇のような部分が足りないような気もしました。200ページ程度の長さでは致し方ないことでしょうか。ここにもう一歩踏み込むことが出来れば、悟と園子、真と真彦という親子関係の対比とか、より際立ったと思うのですが。 読後に残る爽やかさは、物語の舞台や登場人物によるものだけではないはず。次回作にもこの爽やかさが生かされていれば嬉しいです。2008年6月4日読了
2008.06.10
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ススキノにあるバー「チャオ」。深夜になってもクラス会の三次会をしている5人は、一人の男を待ち続けていた。男の名は田村。彼は大雪で到着が遅れ、クラス会には間に合わなかった。四十になる男女5人は、彼を待ちながら口々に過去を振り返り、語りだした・・・ やってくるのを待ちながら、過去を振り返る。それだけのはず。いつ来るか、いつ来るか、そう思いながら、ひたすら待ち続ける。「田村はまだか!」と繰り返しながら。そこには過去に対する悔恨や淋しさがあり、あの「孤高の小学生」だった田村なら何とかしてくれるのではないかという期待があるようにも見えました。 こういう作品、こういうテーマは嫌いではないのです。自分がそういう年なのかどうかはともかく、過去を振り返る話。 でも、いい話が多かった反面、もう少し田村を絡めたエピソードにして欲しかったという希望があります。そこで、今何故田村なのか、田村を欲するのか明確にされていてもよかったのではないでしょうか。 また、最後の大きなエピソードはなくてもよかったのでは。なんとなく無理矢理つけたような印象がします。 四十になった同級生たちの半生がリアルに語られるのがいいですね。また、「チャオ」のマスターがとてもいい雰囲気を持っていました。5人の名前が明らかになるにつれ、彼らが身近になってくるような気がしました。雪の中の、心があたたかくなる物語です。2008年6月3日読了
2008.06.10
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「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」そんな一言から生まれたclub indigo。店の人気は上々だが、なぜかホストたちが殺人や誘拐といった事件に巻き込まれてしまう。その度にオーナーの晶とホストたちは夜の渋谷を奔走するが・・・ 第10回創元推理短編賞受賞作「インディゴの夜」を含む連作短編集。全体にミステリとしての推理要素は薄く、創元推理短編賞のイメージから本格ミステリを期待した方にはやや期待はずれかも。ただし、晶とホスト探偵団の痛快な活躍は楽しく、読んで損はしないのでは?●「インディゴの夜」 客だった編集者のまどかが殺された。容疑をかけられたホストのTKOは、彼女の部屋から怪しい女が出て行くのを見たという・・・いきなりホスト探偵たちが活躍。事件の展開はやや都合がよいようにも思え、創元推理短編賞を受賞した割にミステリ食は薄いのですが、事件の真相にはちょっとした恐ろしさを感じます。●「原色の娘」 ジョン太が預かったのは小学生の祐梨亜。よそのホスト・空也に惹かれた祐梨亜は借りられるだけ金を借り、姿を消した・・・いつも女性客を手玉にとっているようなホストたちが、小学生に翻弄される姿がおもしろいですね。ちょっとした暗号ものですが、本当にちょっとした。●「センター街NPボーイズ」 区長の娘が撮られたやばい写真の回収を依頼された晶たち。撮ったナンパ師は区長を強請ろうとしているが・・・東京って本当に怖いところですね。今度はセンター街での大追跡戦。●「夜を駆る者」 憂夜への電話は、辞めたホストのBINGOからのSOSだった。晶はキャバ嬢に扮しBINGOが働いていたクロノスに潜入するが・・・憂夜さん大活躍。ジョン太たちの失態は想像どおりでしたが、その後の華々しい乱闘劇はおもしろかったです。晶がクロノスのターゲットにされた理由には思わず苦笑。 とにかくいきいきと描かれるホストたちが魅力的。ホストといっても一般的なホストクラブのホストではなく、アフロだったりDJだったりと個性的でしかもたくましいホストたちです。彼らが独自のネットワークを生かしたり、渋谷の街を駆け巡る様はワクワクさせてくれます。 夜の東京をちょっとだけ掘り下げ、垣間見ることが出来る短編集。続編の『チョコレートビースト』も出されていて、こちらも期待大。長編でもおもしろいかも。収録作:「インディゴの夜」「原色の娘」「センター街NPボーイズ」「夜を駆る者」2008年6月2日読了
2008.06.09
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「なんて素敵にジャパネスク」 作家の氷室冴子さん死去 asahi.comより http://www.asahi.com/obituaries/update/0606/TKY200806060232.html 大ショック! ご冥福をお祈りいたします。 しばらく新作はありませんでしたが、いつか再び書いてくれると期待していたのに・・・ いまだに『ジャパネスク』読まずに積んであります。読もう。
2008.06.06
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癌で母・咲枝を亡くした小学五年生の我茂凰介。葬儀から一週間ほどで凰介は登校したが、今度は幼馴染の水城亜紀の母・恵が夫の職場から転落死してしまう。亜紀も車にはねられ、父・洋一郎や亜紀の父・徹の様子もおかしい。いったい両家には何が起きているのか・・・ ミステリ・フロンティア第27回配本作品。第7回本格ミステリ大賞小説部門受賞作。 ミスディレクションを多用した心理ミステリ。変わらぬ巧みな技術が見られます。多視点を活用した複雑な構造で、語るべきところとそうでないところを正確に使い分けています。それでいて過剰にごちゃつくことはなく、きれいにまとめられていて、スムーズに物語に引き込んでくれます。 道尾さんの作品はまだ3作しか読んでいませんが、登場人物に対する徹底した厳しさがあるように感じられます。試練を与えているというべきかも。それが道尾さんの発言にある「本格ミステリほど人間を描ける、感情を描けるジャンルはほかにないんじゃないか」ということかもしれません。その点、本作は以前読んだ『向日葵の咲かない夏』に近いのかと。 では、何が違うのかと考えたときに、思いついたのはやはり読後感でしょうか。『向日葵の咲かない夏』ではその不条理を生理的に受け付けられず、突き放されるような感覚がありました。今回の結末もまた決して正しいとか、きれいだとか言うべきものだとは思いませんが、それでも『向日葵の咲かない夏』ほどの読後感の悪さはありませんし、十分に受け入れられるものでした。もっとも、真相のインパクトでは劣りますが。 ますます読みたくなる道尾作品。次は『背の眼』か、それとも『ソロモンの犬』か。2008年5月29日読了
2008.06.03
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死体を見つける特性を持つ少年・ギーガン。義眼だからギーガン。彼は左目に義眼を入れて以来、泣いたり笑ったり、感情を表に出すことがなくなってしまった。久しぶりに見つけてしまった10人目の死者は根本さん。それは、9人目として彼の父親が自殺して以来、2年ぶりののことだった・・・ ひたすらにあたたかく、やさしい物語。不思議なことに、現実的なことが書かれている部分でも、どこかファンタジックに感じてしまいます。 柊さんやケイト、誠くん、あるいはルーピーといった同年輩の仲間たちとギーガンとの交流が見どころのひとつ。特にある出来事をきっかけにギーガンを守ろうとし、より強固になったルーピーとの友情は感動的。ひとつ間違えれば二人がバラバラになりかねなかった出来事を、丸く収めたギーガンの父親もまたすばらしいです。 その一方で、子どもたちだけでなく鎌倉のばあちゃんや田村先生といったギーガンの周りの大人も、いい味を出しています。 一見すると10人の死体の謎、そしてそれをギーガンが見つけてしまうことに重きが置かれそうですが、小路さんの目的はそこにはないのでは。これらの謎はギーガンたちの友情と成長を描くための演出のひとつに過ぎないのではないでしょうか。 作品全体を包むノスタルジックな雰囲気で、現代人が忘れかけたようなものを教えてくれる気がします。関連作:『空を見上げる古い歌を口ずさむ』2008年5月28日読了
2008.06.02
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