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最近だとテレビゲームはeスポーツというようになり,テレビゲームも市民権を得ているように思う。ちょっと前だとゲーム脳がどうだとか,ひどく言われていたことからすれば隔世の感だ。そんなわけで,今回は『東大卒プロゲーマー』を読んでみた。東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にかなわない【電子書籍】[ ときど ]ところで,最近の僕が愛読している漫画に『ゲーミングお嬢様』という格闘ゲームを題材にした漫画がある。そのなかには東台印飛紀子(とうだいいん・ときこ)というキャラが登場するのだ。このキャラが出たとき,Twitterで「ときどが女体化してる!」みたいなつぶやきを目にすることがあった。ゲーミングお嬢様 2【電子書籍】[ 大@nani ]僕は知らなかったのだが,「ときど」という芸名,というかゲームネームで活躍しているプロゲーマーがいるという。しかも,そのプロゲーマーは東大卒だという。ネットには断片的な情報があるものの,ウィキペディアなんかは分量が少なく,格闘ゲーム専門家のサイトなんかは専門用語が多くて意味が分らない。なので,本人が書いた新書を読んでみたのだ。さて,内容なのだが著者,ときどの半生を描いたものになる。おおざっぱに,小学生くらいのゲームを始めたころから,中学高校,大学と進学していき,プロゲーマーになって活躍を始めたころまで。本書が出たのは2014年だから,まだeスポーツという言葉もなく,YouTuberなんかもいなかったころのなので,これまた時代の流れを感じさせる。色々と感じさせられるのは,著者のもの考え方というか,ゲーム哲学である。著者はゲームをする際,基礎を固めてしまってからは延々とキャラ対策をしつづけるのである。どのキャラクターはどういう動きをして,どう立ち回るか,というやり方になる。そして,著者はゲームをやる場合,最強のキャラを好んで使う。ストリートファイターなら豪鬼だ。勝つためには,これが最も効率が良い。さらに,対戦相手のクセや行動パターンを徹底的に分析する。ここまでやって勝負をするというのだ。これを著者は勉強にも応用していたようで,著者が言うには東大試験についてはあくまで東大に合格するためだけの勉強をしたそうだ。つまり,東大の過去問をやり,模擬試験があり,合格判定がAだのBだの出るのを見ながら勉強したというのだ。なので,著者が言うには,東大に合格はしたが,他の私大には合格できなかったろうというのだ。なんと合理的なことか。漫画『ドラゴン桜』でもやっていたことそのままである。まさに試験対策のプロフェッショナルといえよう。ドラゴン桜 超合本版(1)【電子書籍】[ 三田紀房 ]特に心に残ったのが,著者がゲームでも研究でもやっていた「効率の良いしらみつぶし」論である。格闘ゲームならある技への対策ができるようになれば,その技と似た技にも似たようなやり方で対策ができるのではないかと仮説を立てて,解決策を見つけていくというのだ。バイオマテリアルの研究ならば先行研究から予測を立てて,結果を左右する要因である温度,濃度,微粒子サイズの1つを変えて延々と実験を繰り返すというのだ。地味であるし,びっくりするくらいつまらない話である。もっと簡単に強くなれたりはしないかと思うものだが,ローマは1日にしてならず,継続は力なりというのを感じるわ。僕は将棋棋士の本も何冊か読んでいるけれど,どうも著者のやり方と似ているような気がするのだ。もちろん,将棋も格闘ゲームもどちらもゲームであるのだから,定跡を研究し,延々と試行錯誤をするというのが似通って当然なのかもしれないけれど。素直に尊敬してしまう。プロゲーマーの未来はどうなっているのか注目してきたいものだ。東大卒プロゲーマー 論理は結局、情熱にかなわない【電子書籍】[ ときど ]
2021.07.20
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ヘロドトスの中巻を読んだ。この辺から,メインのペルシア戦争の話が展開し,その関連で少しずつギリシアの話がなされていくのだな。歴史(中)改版 (岩波文庫) [ ヘロドトス ]この岩波版だと,4~6巻が収録されているのだが,内容的にはおおよそこうだ。4巻 スキタイの話5巻 イオニア反乱6巻 マラトンの戦いあまり重要ではないのだろうけれど,『ヒストリエ』的に気になるのが4巻のスキタイの話である。うさんくさい話も,真実かもしれない話もごちゃぐちゃに語られている。ちょっと気になったのが,女戦士アマゾン族の話である。スキタイ系のサウロマタイ人たち,僕はてっきり蛮族だろうと思っていたのだが,たまたま流れ着いたアマゾンたちを妻にするため,言葉も通じないのに徐々に距離感を詰めていくのだ。ついに「お前たちを妻にしたら,もう他の女とは結婚しない」という,一夫一婦制のプロポーズをしたところ,アマゾンたちが「親と同居はイヤ」というので親から生前に遺産分けをしてもらい,自分たちの国を捨ててアマゾンたちと生活を始めるというのだ。きっと,これは史実じゃないだろう。女戦士アマゾン族なんて神話の中の話だろう。恐らくは,サウロマタイ人の女たちが男同様に馬に乗って,狩猟をしたり戦場に行くということの説明付けにアマゾン族を持ち出したんだろうけれど。このエピソードはヘロドトス的にはさほど重要な話じゃないのだろう。本筋はあくまでペルシア戦争だから。ただ,この点はエウメネウスを主役にした漫画『ヒストリエ』的にはひっかかるとこもあるのだ。エウメネウスはもともとスキタイ人の両親から生まれ,幼いころに親と引き離されてカルディアに来たという設定だった。なのでエウメネウスも序盤はスキタイと何かと縁があり,アレクサンダー大王の東方遠征の際に自身のルーツも辿ることになるのか,と思ったが・・・。連載がそこまでいくのだろうか,疑問である。ヒストリエ(1)【電子書籍】[ 岩明均 ]話は変わるのだが,ちょっと気になったのがヘロドトスにおける古代中国との関連性である。まず,1つめは臥薪嘗胆である。ペルシア王ダレイオス1世はサルディスがアテナイ・イオニア連合に占領された際に報復を誓い,食事のたびに給仕に「王よ,アテナイ人を忘れるな!」と言わせたそうな。これはまさに呉越の王たちが報復を誓うため,あえて苦痛と屈辱に耐えて雪辱をはたした臥薪嘗胆の故事とそっくりである。なお,呉越の王たちと違って,別にダレイオス1世は雪辱を果たすということもなかったというのは差異を感じる。2つめに背水の陣である。ペルシア戦争でカリア王マウソロスが「川を背にしてペルシア軍と戦えば,退却できない兵たちは持って生まれた以上の勇気を発揮するに違いない」と進言するも,これが退けられて大敗してしまうのだ。背水の陣という危険性の高い作戦が忌避されたのは分らんでもないが,この作戦が受け入れられて大勝した韓信との対比を感じさせる。一応,ヘロドトスもこの背水の陣については肯定的で,「この作戦が最も良かったのではなかろうか」と評していた。小説十八史略(一)【電子書籍】[ 陳舜臣 ]この2つの類似性については,別にどっちがどっちのパクりというわけでもないだろう。洋の東西を問わず,大望を果たすためあえて屈辱を受けるとか,勝利のためにあえて危険性の高い作戦を採用するというのはありそうなことだ。しかし,いずれも中国では成功したのにペルシア戦争ではうまくいかなかったというのは考えさせられる。安易に英雄のマネをしてもうまくはいかんだろうなぁ・・・。歴史(中)改版 (岩波文庫) [ ヘロドトス ]
2021.07.06
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