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昭和56年の夏のある日。中学3年の「僕」の夏休みは月~土まで剣道の稽古に明け暮れている。今と違うのは学校がまだ週5日制でない事と稽古中水を飲んではいけない事。その理由はバテルから。毎日稽古終わりに部室裏のCanadaDryの自販機の前に陣取り、冷えたジンジャエールを一気に2本飲干すのが楽しみで、そのたびに腹がタプタプになっていた。 その日は誰かが持って来ていたクルマ雑誌を皆で回し読み、めいめいが好きな事を言いあっている。グラビアにはフェアレディZ、セリカ、サバンナと中坊憧れのクルマ達。ページを捲るとそこに見慣れない「プアマンズポルシェ」の文字、「?…新しいポルシェかな?」聞きなれない言葉に興味をそそられた「僕」は、剣道部員たちの騒がしい声をよそに雑誌の記事へと引き込まれていく。 「プアマン」とは貧乏人の事(そう書いてあったのでご容赦願いたい)で、アメリカのクルマ好きな若者たちは、フェアレディZの事を「プアマンズポルシェ」と呼ぶとある。中坊の「僕」にとって憧れのクルマを、「貧乏人の…」と言われてはいい気はしない。読み進むと、本物のポルシェは,たとえ10年落ちの安くなった中古車であっても、「リッチマン」でないのなら決して手を出してはいけないクルマだと。特にそのバカ高い(自動車)保険料たるや、それこそ日本製スポーツカーが1台買えてしまうほどであるとも。アメリカのクルマ好きな若者達は、手頃な値段で手に入り保険料も安く、それでいて見た目ポルシェに似て(似ていません)カッコイイフェアレディZ(DATSUN Z Car)を歓迎し、むしろ愛情をこめて「Poor man‘s Porsche(貧乏人のポルシェ)」と呼ぶのだと書いてあった。記事の最後には「金のかかるクルマに乗れる奴はそうすればいい。」「俺達はそれなりのクルマでいい。いやむしろそれを楽しんでいるぜ。」と書いてあった。「カッコイー」と感動した「僕」は、今でも時々その事を思い出します。 ガソリンだけでなくいろいろなものが値上がりして、少し窮屈に感じるこの頃ですが、良く考えてみるとこのアメリカ人達のようにそれなりを楽しんでしまう事を、42歳の「僕」は忘れていたかも知れません。お金をかけるべき時もありますが、それなりしか手に入らない事の方が、むしろ多い「僕」ですが、それはそれで「楽しんでいるぜ。」と言いたいと、平成20年の夏あらためて思います。
2008.07.24
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その後の「中年ライダー」達は、何事もなかったように暮らしている。晴れて「大型二輪免許」保持者となって一ヶ月、一向に【中年ライダー】となる様子はない。「今日からはハーレーの佐藤です。」と意気込んでいた元ヤンの佐藤君は、極秘に計画していた、【新車のHarley-Davidson250万円頭金0円の120回ローン作戦】がしっかり物の奥様に露呈し、そして阻止された。彼は作戦実施するのをしばらく見合わす事にしている。恰幅のいい堂々たる体躯に似合わず、「石橋を叩いて渡らない」タイプの小山くんは、新車・中古車を含めたおびただしい数のHarley-Davidsonの中から、大枚200万円也を投じる値打ちある一台を見つけようと、日々情報収集と研究に余念がない。「もうお腹いっぱいになったわ。」とは彼の言葉である。彼らが【中年ライダー】となる日が、はたしてくるのだろうかと思う。まぁ別にならなければならないわけもない。免許が取れたので、ひとまず一服である。佐藤・小山の「大型二輪免許」取得を聞いて、黙ってられない男が一人いる。その男の名は藤本直也、やはり42歳である。佐藤・小山がHarley-Davidsonに乗ると聞いては、藤本が平静で居れようはずがない。もう黙って見てはいられないのである。その日のうちのバイク屋へ赴き次の日には金を払っていた。返す刀で、自動車教習所の門を叩く。そう彼はこの時点でまだ「大型二輪免許」を持っていないのである。この男が見せる「速さ」は尊ばれるべきである。「欲しい」と「手に入れる」が同時にやってくる点にある。普段は「ダラーッ」っとして、物事に興味を示さない彼だが、一旦「事が起こった」時には恐るべき行動力を見せる。嫁さんも情報収集も彼には関係ないのである。いままでずっとそうして生きてきた彼は、自分のやり方に自信を持っている。かくしてこの3人の中で最も早く、Harley-Davidson乗りとなったのは、藤本直也その人だったのである。今日、その藤本君の下にHarley-Davidson FXR '87が納車された。「ハーレー来たから保険入るわ。」藤本君からの電話で、彼の会社へ赴くと、そこには、全身を黒く塗装されグッと低く身構えるようにして、1台のHarley-Davidsonが居る。「来たよ♪」と私。「おお来たな♪ チョット待ってさっきからエンジンかからんのよっ!」藤本君はそう言いながら、スターターを回す、「キュキュキュルキュルルルルル…パン…ボボボ…パン…パパン」とエンジンはかかりそうな気配すら見せない。「おかしいなぁ…さっきまで掛かってたのに…キュルルルルル…パン…パスン」藤本君はいったんスターターを止め、私に向かって、「チョーク引いてみよっか?」と問う。「こんな真夏にっ?よけー掛からんよっ」と私。「おっかしいなぁ?なんでかなぁ?」と藤本君は再びスターターを押す、「キュルキュルキュキュキュ…パン…ボボボ…ドン…ドドン」「もうっなんで?壊れとん?(バイク屋に)取り来さそうかっ!」「プラグは?」と私。「見た!掃除したしっ!」語気を強める藤本君。「火飛んでた?」と再び私。「火?飛ぶ?」と素っ頓狂な声で藤本君。「ちょっといい?」と、藤本君の返事を聞かず、プラグを外して再びスターターを回す、「やっぱり。このプラグ1こ死んどるよ。」と私。オートバイ乗りなら、ちょっと昔なら自動車でも替プラグは積んで走ってたような…ちょっと昔と言っても、父親の【トヨタパブリカ】の頃だから、ちょっとじゃないかもしれないが、「ありがとありがと♪」初めて文明人を見た原住民のような視線を受けながら、彼の会社を後にする私。私とて決してメカに強いわけではない。全く機械の事をわかっていない…もしかしたら解ろうとすらしていない彼にもオートバイを存分に楽しんでもらい。彼らが、颯爽たる【中年大型二輪ライダー】になる日が楽しみである。かえる道々達人を発見した。これこそがオートバイを楽しむ。単車の醍醐味だというような人♪無断で写してゴメンナサイ。でもすごく楽しそうで、気持ち良さそうだ。なにも大排気量にこだわる必要も無ければ、ブランドやスタイルもどうでもいい。自分が楽しければ◎だ。こんな風にオートバイを楽しむことが出来たらどんなにいいだろう。ちびっ子のヘルメットカッコよかったもう少し大きい写真で取ればよかったな。
2008.07.15
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最近誰かから、「なんで言ってくれなかったの?」って言われたことありませんか?誰かを、「なんで教えてくれなかったの?」と問いただした事ありませんでしたか? 例えば昔からの友達に、「じつは去年結婚したんだ。」と切り出されたら、「なんで言ってくれなかったの?みずくさい」なんてことをいいそうですよね。言われたほうも、「ごめんね~」なんていってりして、まあこんなのは、罪の無い「なんで言ってくれなかったの?」ですが、このあいだ私にかかってきた一本の電話は、それよりも少し重いものでした。電話の主は友人の「天田克也」君。彼は、「なんて言うてくれんかったんじゃろ?なんでじゃと思う?」と私に問いかけてきます。 天田君は、半年前にBMW(500万円)を新車で購入しました。自分と家族のためにと奮発した、まだ真新しい真っ赤なBMWが、信号無視で無保険の軽トラに真横からぶつけられ、自慢の愛車は無残な姿になってしまったのです。 軽トラのおじいさんは自動車保険に入っておらず、やむなく天田君は自分の自動車保険(車両保険)で直すことにしましたが、修理に預けたディーラーマンからこう告げられました。「修理には300万円ほど掛かります・・・」そうだろうなと聞いていた彼は、次の聞き慣れない言葉に反応しました。新車特約があれば新しい車をお届けできたのに・・・残念です。」」天田君はこう聞き返します。「・・・新車特約ってなんですか?」その説明を受けながら、彼はふつふつと怒りがこみ上げるのを覚えます。見た目は平静を装っていましたが、心の中ではこう叫んでいたのでしょう。「なんで言うてくれんかったん?」と。 私と天田君は友達ですが、自動車保険はよその代理店さんと契約していました。私と知り合う前からの付き合いと聞いています。だからこの電話はクレームではありません。同じく保険を生業としている私に、友達として聞いてもらいたいのです。私はうんうんと頷きながら彼の話を聞きます。「なんで言うてくれんかったんかな?なんでじゃと思う?」私は、「うん。そうじゃな~」と時々相槌を入れます。どうしてあげることも出来ない、「なんで言ってくれなかったの?」です。天田君にとっては大きな問題なのです。「なんで言うてくれんかったん?」何度もそう繰り返す天田君。彼のその口惜しい気持ちは良く解ります。「もしかしたら俺が聞き忘れたのかな?」と自らを省みる事も決して忘れてはいない彼ですが、「でもやっぱり。どう考えても聞いていない。」 いまさらじたばたしてみても、その保険代理店さんを責めてみても、どうしようもない事だと彼にはそうわかっているはずです。誰かにその責任を取らせようとしているのではなく、ただそのやり場のない憤りを誰かに聞いて貰いたいのです。 そこで、責任問題云々はいったん脇に置いておいて、保険について詳しい知識を持ち合わせていない天田君に、この代理店さんがどのようにして、伝えればよかったを考えて見ることにしましょう。 「新車特約という補償がありますよ。」 と言う情報が、どうして天田君に伝わらなかったのでしょうか?まず、新しい車を買ったという連絡が、天田君から代理店にされます。その後、「車検証」のコピーがFAX等で保険代理店に渡ったはずです。「車検証」をみれば、新車であると言う事はわかりますから、代理店がこの情報をキャッチしなければ、たとえキャッチしていても、「新車特約を付加されますか?」と情報提供しなければ、天田君が潜在的に必要としていた新車特約の情報は伝わりません。 これがまさに今回のケースでしょう。天田君から代理店へは、「車検証」という情報が示されているのに、代理店側がキャッチできなかったために起こったエラーです。天田君を海に浮かぶ氷山に例えると、明らかに水面に顔を出している「新車」という情報を読み取れなかったのです。 これはこの保険代理店さんに限らず、どこでも起こりえることです。もちろん「ウチ」でも起こる可能性があります。いや、本当は起きているのに気づいていないだけなのかも知れません。 天田君自身と代理店双方が認識しているはずの「新車」という情報(リスク)を、代理店側が見逃した為に、保険情報提供が出来なかったため、「どうして言ってくれなかったの?」がおこったのです。 これを防ぐ為に、代理店はお客様の「水面に現れている氷山」に目を凝らし、船の衝突を防ぐ見張り番よろしく、二重三重のエラー防止の対策をたてて、「どうして言ってくれなかったの?」を防ぐしかありません。「見張り番型」しかしどんなに有能な見張り番にも完全はありません。 「水面に現れている氷山」とは天田君自身がしっている情報(リスク)です。であるなら少々の時間と忍耐力は必要ですが、保険の全てを伝える方法はどうでしょうか? 例えば、保険のパンフレットなどを用いて順番に全てを説明していくのです。天田君にとって必要であろうとなかろうと、文字通り全てお話しするのです。代理店が判断する事はかえって良くありません。そこにエラーが生じる可能性があるからです。 必要だと思う情報だけをキャッチしてもらえれば、「どうして言ってくれなかったの?」は起こりえません。 いかがでしょうか?保険の全てを伝えるので、「全部説明しました型」です。書いている私自身あまり気が進みません。言う方も大変なら、聞くほうも大変だからです。「パンフレットをよくお読みください」というフレーズよく見かけますが、「いったい誰が読むんだ」って、代理店の私でさえ思います。ただ、この方法ならば、「どうして言ってくれなかったの?」は起こりえません。キャッチしているかどうかはともかく一応すべてお話しているはずですから。しかし、これはこれでどこか不親切な感じがします。そもそも、「どうして言ってくれなかったの?」を、言われない為にどうするかではなかったはずですから。 「水面に出ている氷山」を注意深く見れば充分かといえば、タイタニック号の例をあげるまでもなくもちろん違います。天田君からも代理店からも見えていない、少なくとも水面上には現れていない危険(リスク)情報が、どんな場合にも必ずあり、契約者によってその水面下の大きさは様々です。 天田君は、高額な費用のかかる修理をするか、それとも他の車を購入するかを、数週間迷っていました。車で通勤する天田君にはその間の代車の問題も出てきます。 毎日車がないとやっていけない人かそうでないか。これによっても必要とする補償は違います。 水面下に隠れた情報(リスク)を、インタビューによって、代理店と天田君の両者で認識し、その情報(リスク)にどう対応するか相談して保険を決める。この方法が恐らくベストではないかと思います。 これは、代理店側の人間の能力も問われますし、ユーザーにも、いろいろと協力してもらう必要があります。ウチが出来ているか?もちろん不十分、まだまだです。今回は知りきれトンボで結論に至っておりませんが、お客様と保険代理店がどのようなコミュニケーションをとればよいか?なんだか考えることがいっぱいありそうなテーマです。長くなってしまったのでこの辺で切り上げますが、この話は「つづく」です。
2008.07.13
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