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(1)何故、海の水は塩からくなってしまったのだろう。沢山の塩を製造する工場が海のそばにあったのだろうか。それとも、沢山の人々が涙を流したのだろうか。(2)蟻は蟻であることに満足しているのだろうか。蟻の長い列は遠足の子供達なのだろうか。それとも、奴隷の列なのだろうか。
Jul 27, 2008
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あの人は空気のような水がほしいと言った。あの人は水がほしくてたまらなかったのだが、既にわたしが差し出す水すら飲み込む力がなかった。水を含んだ脱脂綿で唇を湿らしてやるとさらに喉の渇きが増したのか全身の力を振り絞るようしてのどが焼けると呟いた。その後の声はとても小さかったしぜいぜいという呼吸音に負けて普通なら聞こえなかっただろう。しかし、わたしには聞きとれた空気のような水がほしいと。病院の売店は物資がなくて閉じられていたし駅前のデパートは壊滅していた。それでも、わたしは祈ることをやめて空気のような水を探すために病室を出た。今、病室を出ると二度とあの人の声を聞くことができなくなる。しかし、あの人が望んでいるものを探すことが後に残された者の使命に思えてわたしは涙をこらえながら日の光のまぶしい外に出た。
Jul 19, 2008
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空気のような水だと思った。とても楽に呼吸ができる。なぜもっと早くこうしなかったのかと後悔するぐらいに気持ちが良かった。気持ちが落ち着いた。その上、何の不安感もない。あなたは経験したことがないだろうか。土曜日の午後、明日も休日で心の平穏が訪れようとしているときに何も不安がないのが不安になって、昔の不愉快な思い出に触れたくないと思っているのに自らその記憶を辿り始めてしまう。もうこの空気のような水に包まれてしまえばそんな心配もいらない。ほんの少しの恐怖に打ち勝ったおかげで水に深く突っ込むと後は楽になった。あまりに気持ちが良くてこのままでいいと思った。そして、彼は川に浮いて海に流れていく。
Jul 13, 2008
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蝶の胴体の柔らかさは気持ちが悪かった。優雅に飛ぶ蝶を捕まえて観察してみると指につく鱗粉が疎ましくてならなかった。女はいつか男を失望させるものらしい。甲虫の腹に潜む内臓が無機物のように感じられた。早朝のクヌギの樹蜜に集まる甲虫に胸をときめかせたが虫かごの中で甲虫は黒い体の光沢をすぐに失った。男もいつか女を失望させるものらしい。そして、確かに夫も妻も互いに失望し同じ屋根の下でひっそりと暮らしている。
Jul 6, 2008
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