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2024年08月26日
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カテゴリ: 情報的生活行為







『中古』愚か者—畸篇小説集

多くの短編の中から、「ぬけがら」より。
p82 5行目より 以下引用→
 その晩、北川氏はこんな話をした。ーーー僕の親父は鳥取県の寒村の生れで、
東京へ出てきて、学校を出たあと会社員になって、世田ヶ谷区の祖師ヶ谷に家
を買いました。それが昭和30年代のはじめ、高度経済成長がはじまったころ
です。そのころにはもう姉と私は生まれていました。あとに弟が一人生れました。
その三人の子をそれぞれ学校を出し、嫁にやり、会社員と教員にしました。会

絵を架けたり、つまり「便所」を「トイレ」と言い抜ける、そういう都市近郊
の生活です。併しこんな生活は、はじめからぬけがらです。何の目標も根拠も
ありません。親父は、家を買った時の借金を返して行くだけのその日その日で
す。返し終わると、癌で亡くなりました。僕ら子供たちもそれぜれ、たまたまで
す。学校を選ぶのも、嫁に行くのも、会社勤めをするのも、その場その時のた
またまです。無根拠性の中を漂っているだけです。ふとその場その時の出来心
で盗みをしてきたようなものです。それがたまたまばれなかっただけのこと
です。
 ーースーパーマーケットへ行くと、魚や肉を売っているじゃないですか。僕
はある時まで、海には魚の切り身が泳いでいると思っていたんです。肉を買っ
て来て、晩飯のおかずにする。だけど世の中には「お肉」なんてものはないん

気でいるのが僕らの生活だった。何か耐えがたいほど居心地のいい、うその生
活ですよね。ところが、そういう生活に平気でいる人は、牛をさばく人に感謝
するどころか、逆に白い目でみたりします。

引用以上。p83終りから3行目まで。
(文中ルビは省いている。ただよう、と言う語の漢字はサンズイに羊の下に水。)









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最終更新日  2024年08月26日 06時04分24秒
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