マジック・ザ・メイカー 12 話
― 1 週間後
冥珂の家
「アマチャン、ハラヘッタ。メイカ、メシヨコセ」
突然声を出したアマトに冥珂は吹き出し煙草を落としそうになった。
「な、なんやのアマト!オウムになってるからっていきなりどうしたんや」
「……前々から思ってたんですけど、今更ですけど、自分メアートって名前で呼んでもらいたいっす」
翼をバタつかせて叫ぶアマト。
「ほんま今更やな!……言いにくいしアマトでええやん。スフィンクスもスフィンクスちゃうねんし。それより晴凛ちゃんの事しっかり頼むで」
人差し指でアマトの頭を軽く押す冥珂。
「晴凛の事はまかせとけー!しっかり監視しといてやるっすー。自分的には美少年監視してたいんですけども」
「……あんた心の声だだもれやしやっぱりあんまりしゃべらん方がええわ」
「コミュ障ですからなー自分。ここは女子高生になって晴凛の親類として一緒に通った方がコミュ障も治るのでは?ついでに美少年ゲットっす!」
「あかん!オウムで頼むわ!」
「オウムツマンナイ!アマチャンツマンナイ!!」
「はいはい……」
結界の中に人が入ってきたのを感知した冥珂、だがすぐに警戒を解く。
「こんにちはー……あ、アマちゃんこっちに来てたんだ」
学校帰りの晴凛が入って来る。テーブルの横にカバンを置いた。
「まーねー、だって晴凛の家族とは会話できないっすからなー」
「あははははっそうだね~オウムだもんね。しゃべりすぎたら怪しまれるし」
「人間に姿を変えればいいんすけどね……冥珂がやめとけって……しくしく」
羽で目元を覆いウソ泣きをするアマト。
「そうなの?でも一回今度人間になって見せて~」
「ミステリアスクール美少女っすよ自分。クラスで話題になっちゃうっすよ」
「マジで~!?」
「学校ではあかんで……」
冥珂は煙草の煙を吐いて言った。
「じゃあおうちでこっそりとね~」
「おお、秘密の美少女っすか……学校に行かなかったら街で人間になっても問題ないっすよね?」
冥珂を見つめるアマト。
「……はぁ、ええよ。人間の姿でしか行けへん場所もあるやろうしな」
「やったー!冥珂はあんまり自分を外に出さないからストレスたまってたんすよねー」
「だから心の声だだもれやって……だからあんたをあんまり出せへんかってんて。でもまぁ晴凛ちゃんとは楽しくやれそうで安心したわ」
「あははっアマちゃん楽しいです、クーちゃんも凄く家族となじんでますし」
「へぇ~流石晴凛ちゃん、クー・ホリンともう仲良くなったの?」
「そうなんです!クーちゃんすごい勢いで学校の教科書読んだり TV 見たりしてますよ。お父さんもお母さんも「こんな賢い犬見たことないって」クーちゃんの事気に入ってくれてもう喧嘩なんて全然しなくなったんですよ」
「クー・ホリンはミルクばっかり飲んでんの?」
「そんなこと無いですよ、お父さんとお母さんが時々お肉買ってきてくれるからそれを。流石に本物の犬じゃないからドッグフードはあげれませんし」
「大英雄様やしな。生身の人間ちゃうし食事はそこまでいらんやろうけど出来るだけ美味しいもの食べさせてあげたいよねぇ。アタシのつくった魔女のお菓子はどう?」
「めちゃくちゃ喜んでましたよ!私もやっと 2 段階の味作れるようになってきたんで頑張ります!冥珂さんのレシピの材料は揃えられないけどなんとか近いものを!」
晴凛は腕まくりをして力こぶを作るポーズをとった。
「話は変わるけど晴凛ちゃん魔法少女の変身はどう?」
「まだ慣れないですね……」
晴凛はゴシックパンクな魔法少女の衣装に変身した自分の姿を思い出してた。光に包まれるとはいえ一度裸になることがどうしても慣れなかった。
「衣装のデザインはアタシが決めたからまぁ堪忍して。もっとフリフリでお姫様みたいのが良かった?それとも女王様みたいにエレガントなのが好き?今やったらまだ変えてあげれるけど?」
「い、いやデザインはかっこよくて冥珂さんの魔法少女って感じでいいんですけど変身するときがちょっと……」
「ああ……晴凛ちゃんあれは実際の時間にしたら 0.02 秒しかかかってへんから大丈夫やで」
「 10 秒くらいの感覚だったんですが……」
「慣れるしかないよ。あと晴凛ちゃんパートナー(使い魔)はどうするか決めた?」
「そうですねぇ……色々な子見せてもらったんですけど迷います。冥珂さんのスフィンクスってやっぱり優秀なんですね……一度一緒に行動したからよく分かります」
「スフィンクスは口は悪いけど頼りになるパートナーや。そういや晴凛ちゃんクー・ホリンがパートナーではあかんの?」
うう~ん……と唸ったあと晴凛は腕を組んで首をかしげる。
「クーちゃんは今の世の中の事全然知らないから逆にこっちが教えてるんですよ。戦闘に関しては凄いけど超常現象とか意外と全然くわしく無いし……」
「あ~そっか、クー・ホリンは戦士やもんな。逆に彼をサポートしてやるほうが良い感じになるんかもねぇ。せやねぇそれやったらアマトとクー・ホリンのダブルパートナーでどうかな?役割分担させて」
アマトとクー・ホリンのカードを並べる冥珂。
「知識はアマちゃんに、戦いはクーちゃんにサポートしてもらうと?」
「そうそう。それでよければ二人のカードをステッキにリンクさせるで?」
「じゃあそれでお願いします!」
冥珂は手をかざし二枚のカードとステッキのダークパワーを同調させていく。光の波紋が繋がり一つの大きな波紋となる。
「これでよし……と。これで晴凛ちゃんのパートナーはアマトとクー・ホリンや。万が一ステッキが手元に無くても二人を呼べば魔法少女に変身することができるし、声出さんでも会話もできるからね」
「おぉーそれは便利ですね」
「パートナーの使い魔との連携は大事やで。魔女にとっても魔法少女にとっても」
冥珂は深く頷きながら言った。
「晴凛ちゃん、出来そうな範囲でいいからね。怖いなーとかやりたくないなーってのはせんでいいから。後は組織とか機関とかそういうのに所属してる奴とは距離を置くこと」
「肝に銘じておきます!」
「うんうん。おっと……」
冥珂は振動したコンパクトを取り出して開いた。そこにはダ=ガの姿が。
『お、繋がった。全ての修理を終えていよいよ出発することになったから挨拶しとこうとおもってネ』
「良かったなぁ気を付けてな」
『例の物を持って帰って分析したらまた報告に来るよ。この星の安全に関することだったら黙ってるわけにもいかないからね。この星の時間で……一ヵ月後くらいかな』
「わかった、待ってるわ」
『それじゃさよならメイカ』『また会おう』『恩は忘れない』
ダ=ガ、ドイラ・バ、ゥオーは胸に手を当ててそう言った。
「元気でな―」
冥珂は彼らの真似をして胸に手を当てて見せた。鏡の映像が消える。冥珂はコンパクトを静かに閉じしまい込んだ。
「宇宙人さん達帰るんですね」
「いい奴らで良かったわ。アメリカで会った宇宙人はとんでもなかったで」
「そうなんですか」
「めちゃくちゃ狂暴で隙あらば自分の子孫を残そうとする奴でね、真っ黒で頭が長くて尻尾が生えてて酸を吐くんよ。最後は建物ごと爆破して全滅させたんやで」
「うわぁ……」
「話は変わるけど明日に出発するわ。まぁ言うてもそんなに離れてへん街やし会おう思ったらすぐに会えるんやけどね」
「あ、京都でしたっけ?ここから車で一時間くらいですよね」
「晴凛ちゃん行ったことある?」
「遠足とかで何回か」
「そっか、じゃあ色々片付いたら連絡するし遊びに来てよ。魔法少女の事も聞きたいし」
「遊びに行きます!あと一ヵ月もすれば紅葉の季節ですし楽しみです」
「ああ~京都は山に囲まれてるもんねぇ」
冥珂は水晶玉に京都市内の映像を浮かび上がらせる。
「さて……拠点はこの辺の住宅街にしよかな」
冥珂が見ているのは北区の住宅街であった。
「これって……上空から映してるんですか?」
「これは写真を取り込んだ映像やで。実際に離れた場所を映すのは集中しないとね。やって見せよか?」
冥珂は手にダークパワーを集中させて水晶玉に注ぎ込む。水晶玉から放たれた光は天井を通り抜け漢山に向かって飛んでいく。そして水晶玉にはクレーターのできた公園が映し出された。
「おぉ~流石冥珂さん」
「これをあんまり多用せえへんのは痕跡がしばらく残るからやねん。光がぴゅーっと飛んでったやん?飛行機雲みたいにしばらく残ってしまうのよ。ステッキもってる晴凛ちゃんには見えたやろ?」
「見えました!……ああそっか、むやみに使うと自分の場所がバレてしまうんですね」
「そういう事。魔女の中にはわずかな痕跡もたどれるのがおるからね」
「もしかして冥珂さんがほうきばっかりに乗らないのも?」
「痕跡をなるべく残さへんためってのもあるね。もしかして水晶魔術に興味あるのん?」
「えっと……占いとかできたらいいかなーってあはは」
「そう、そしたら簡単な占いくらいできるようにあとで練習方法教えてあげるね。水晶魔術ってのは宝石魔法の一種でね宝石魔法の基礎やねん。宝石はダークパワーの蓄積しやすいし、種類によって使い方がある。宝石だけを使う場合と宝石の力を利用して使う方法があって、例えば……杖や仮面に宝石つけて宝石だけではできない魔術を行使したり、扉や自動人形の動力にしたり使い方は色々。万能に思えるけど良い宝石は手に入れるのが面倒やしカットするのにも専門の知識と技術がいるんよ。だからお手軽な使い捨ての魔術結晶とかもあるんやで」
「そういえば冥珂さん首と両手の指輪に宝石つけてますね」
「うん、これらはめったに使わんけどもしもの時の為にね。アタシの得意分野じゃないし。晴凛ちゃんにはこの水晶玉は大きすぎて扱いにくいやろうからアタシが昔使ってた手のひらサイズのやつあげるわ」
「ありがとうございます!」
―翌日
冥珂は仮住まいの家を全て片付け、大型バイクに変形したスフィンクスにまたがっていた。煙草に火をつけ一服していると晴凛が姿を見せた。
「冥珂さ~ん」
制服姿の晴凛が手を振って走ってくる。
「晴凛ちゃん、こんな朝早くから来てくれたん」
「冥珂さんを見送りたくて学校行く前に来ちゃいました……今なら誰も周りにいませんよね?」
「ん?まぁ人払いの結界はまだ解除してないしうちらの姿は見えてても認識できひんやろね、どうしたん?」
「えっと……魔法少女の姿を冥珂さんに一回見てもらいたくて」
「おお!うれしいねぇ~やってやって!」
「では……」
30cm ほどのルーンが刻まれたステッキを取り出す晴凛。それを上に抱え上げる。
「レッツ!マジックメイク!!」
ステッキが輝き晴凛の体を光が包み込む。ブーツ、手袋、ジャケット、スカートが 0.02 秒で装着される。ゴシックパンク姿の魔法少女に変身した。
「おおおおっ!」
拍手する冥珂。
「いいねいいねぇ!!昔のアタシよりも似合ってるわ!!かわいいねぇ~」
「て、照れますね……」
『この姿にはアマチャンも思わずにっこりっす』
上空で見張りをしていた緑色のオウム姿のアマトが晴凛の肩に止まる。
『アマトも気に入ったようやね』
「出発前に晴凛ちゃんの晴れ姿も見れたし気持ちよく行けるわ」
冥珂は煙草を消し携帯灰皿へとねじ込んだ。そしてギアをローにいれる。
「じゃあね晴凛ちゃん!」
「はい!冥珂さんお元気で!!」
走り去る冥珂、晴凛は姿が見えなくなるまで手を振って見送った。
『さまになってたな晴凛の奴』
スフィンクスが言った。
「なんか泣けてきたわ……」
『年寄りは涙もろくていけねえな』
「今回の仕事は楽しかったわ……晴凛ちゃんがいたおかげで」
『無償だけどな……本当にお前、収入が他にあるからってこんな活動馬鹿だと思うぜ』
「ええねん、アタシは今が全盛期。その時にできることは目一杯やっときたいねん。一々お金の交渉とか何やらで余計な労力使いたくないんよ」
『組織化したりして楽してる魔女が多いのによ~……そういやリアダンの泥棒集団どうなるんだろうな?東京のアジトも潰したしリアダンも死んだしよ』
「残党はまだ東京に潜伏しとるみたいやで、あの弟子から今朝連絡あったわ『いいかげん携帯電話もってくださいよ』と言われたね」
今朝、冥珂の元に伝書鳩ならぬ伝書機械イーグルが到着していた。到着するなりそれは円盤状に変形、立体映像で冥珂にメッセージを伝えたのだった。
『あのミルク大好きなちびっ子、生意気な口叩きやがるが優秀なんだよな』
「優秀なんやけど口が悪いんよね~……しゃあない電話持てってうるさいから携帯ショップに寄って適当なの買っていこかな。いや、それよりか科学と魔術のハイブリット携帯作らせて送ってもらおか?」
『がめつい奴だからふっかけられるぞ?』
「あいつの研究は金が滅茶苦茶かかるしなぁ……」
冥珂は笑いながらアクセルをひねり加速した。
続く
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