マジック・ザ・メイカー 15 話「魔女と魔法少女4」
―翌日
晴凛は自室で時計のアラームで目を覚ました。鵜蔵池の底にある石柱を破壊したところまでは覚えていた。
「あの後どうなったんだっけ?この前倒したのより更にデカい超巨大なボスキャラ出てきて……やっつけた?」
ゆっくりと体を起こす晴凛。 20 メートルの超巨大魚人を倒した記憶がぼんやりあった。これが夢であるののか昨夜の出来事かはハッキリしなかった。
「オハヨウ!晴凛!オハヨウ!」
ベランダに止まったアマトが言った。晴凛は窓を開けてアマトを部屋に入れる。
「アマちゃん昨日の夜のことハッキリ覚えてないんだけどどうだったっけ?」
『えぇ~!?あんなにアマチャンがんばったのに覚えてないっすか?ショック……ボスキャラの超巨大魚人をアマチャンとクー・ホリンの力を使って倒したっすよ。晴凛は疲れすぎて気絶してしまったんすよ(改竄した記憶はこれでOKのはず)』
「そ、そうだよね。それであってるんだ良かった……」
『後の始末は冥珂の指示でアマチャンがやっておいたので鵜蔵池は元の平和な池に戻ったっすよ。魔法少女の初任務終了おめでとー!』
「思ってたよりずっと大変だったね……それと冥珂さんの魔法が凄いのがよーく分かったよ。真似なんて全然できないんだもん」
『そりゃあそうっすよ、冥珂は世界七大魔女の一人と呼ばれてるんすよ?」
「そうなの!?」
『本人は嫌がってるけどね。冥珂は万能系で広い範囲のジャンルを扱えるとして魔女界では有名人っすよ。七大魔女の中には破壊力のある魔法を使えるけど探索も精製も召喚もできないのがいるっすからね』
「え~!」
『冥珂は派閥も組織も持ってないし、弟子も今は一人しかいないっすけど、七大魔女の中には 1000 人くらい弟子やら従者やら抱えてたりしてるんすよ』
「うわぁ……その魔女とあんまり関わりたくない気がする」
『まぁ~……他の七大魔女とは色々あったよ。冥珂から直接聞いたらいいっすよ、アマチャンがあんまり余計な事しゃべるわけにはいかないっす』
「その 1000 人の家来とか連れてる魔女は魔法少女も従えてるのかな?」
『もちろんっすよ!見た目で選んだという 48 人の魔法少女がいるっす!』
「何かアイドルみたい」
『その魔女は従者にランク付けとかして競わせてるっすよ悪趣味ですなー。さぁお話はここまでっすよ晴凛、学校に行く準備しなきゃ』
「そうだった!うひゃ~……」
晴凛は慌てて着替え始めた。
「いってきまーす!」
バス通学をやめた晴凛は自転車に乗って走り出した。
―放課後
晴凛は和美とラーメン屋に行く約束をしていた。待ち合わせ場所は晴凛の家から一駅の栢島駅の改札前。
「おまたせ晴凛、行こっか」
「うん」
エレベーターから出てきた和美。二人はそのまま改札を出て駅前広場に出た。
「えっと……あ、あそこだ!屋台もう開店してる!!」
「ホントだ!もうすでに周りのテーブルにお客さん入ってるね……」
「まだ 4 時前だしすぐに食べれるよ」
屋台に駆け寄る晴凛と和美。前に並んでいるのはサングラスをかけた金髪の女性だった。
「へいらっしゃい!注文先にお聞きしやしょう!」
タオルを頭に巻いた威勢のいい店員がメニューを持って前の 3 人の女性に注文を取りに来た。
「スープ超濃厚、麺、具、マシマシマシで、サイズはこのチョモランマ盛りを」
それを聞いていた晴凛と和美はメニューを見て確かめる。
「チョモランマ盛りって……麺だけで 1 ㎏だって!!すご……」
「私たち二人でも全然無理な量だよね。あの人いけるのかなぁ残したら追加料金だよ」
「私たちは普通の並で」
並を頼んだ晴凛たちは金髪の女性と隣のテーブルに着く。しばらく待つとラーメンが運ばれてきた。
「こっちはチョモランマ、こっちは並2つお待ちぃ」
出されたラーメンはスープが透き通り味噌の良い香りが漂っている。隣のチョモランマは丼の大きさは通常の 3 倍以上、もやしとキャベツ煮豚で麺は隠れその高さは 30cm 程になっていた。
「うっわぁ~隣のチョモランマすご……」
「あんまり人の見てないで食べよ?」
「そ、そだね。あ、具の真ん中に味噌がある!これを溶かしながら食べるんだね」
「おいしそう~いただきま~す!」
「おいしいねー!」
食べ始める晴凛と和美。チョモランマを頼んだ客が気になって隣を見る。
「え!?もう半分無くなってる……」
「超速くない?速いけど食べ方きれいだね」
見てる間にチョモランマを頼んだ女性はスープまで完飲し立ち上がる。晴凛たち二人はまだ半分ほどしか食べていない。
勘定をする金髪女性。そこに医療用マスクをつけた黒髪の女性が近づいてきた。
「アリナ、行きますよ」
「待ってフロー、向こうにあるたこ焼きが気になるのですが」
「時間ですアリナ、 17 時までに現場に入らなくてはなりません」
「……仕方ないですね諦めましょう」
二人は駅前広場のロータリーに停車しているワゴン車に乗り込んで去って行った。
「なんかすごい人見ちゃったね……あんなに食べてあのスタイルなんだ」
「まだ食べようとしてたね……スタイル良かったね、呼びに来た人も。芸能人とかモデルかな?現場とか言ってたし」
「この後どうする晴凛?」
「今日はこの辺で帰るよじゃあね和美また明日。ラーメン美味しかった!」
「じゃあね晴凛~」
晴凛は駐輪場に向かう。その時後ろで大きな爆発音がした。思わず身を縮めた晴凛はゆっくりと振り返る。すると向かいの道路にヘリコプターが墜落していた。
「た、大変だ……」
「晴凛~!!」
改札の前から引き返してきた和美が駆け寄ってきた。
周囲の人々の視線は墜落して炎上し始めるヘリコプターに注がれている。
「警察呼べ警察!」
「爆発するぞ逃げろ」
「なになに?事故?」
「うっわ……ワゴン車直撃じゃん」
ヘリコプターの下敷きになったワゴン車は先ほど晴凛たちの隣でラーメンを食べていた少女が乗っていたものであった。
「あ……さっきの人たちが乗った車だよ晴凛……」
「え!あ、ホントだ……やだ……どうしよう」
爆発するヘリコプター。巨大な爆炎が巻き起こり破片が飛び散る。見ていた人々は一斉に逃げ出す。
「あ……あれ」
晴凛が指をさしたのは向かいの商業施設の屋上。そこに先ほど見た少女二人が立っていた。
「え?何?どうしたの晴凛?」
「あ、居なくなっちゃった……」
「晴凛私たちも逃げよ、危ないって」
「そ、そだね……(どういうことなんだろう……)」
―京都市内の古い 3 階建てのビルの一室で冥珂は電話をしていた。
「あんた京都に来れへん?」
「もうちょっと待ってもらえます?完成させたいものがあるので…… 1 週間くらい」
電話の相手は東京にいる冥珂の弟子である。
「わかった。ほんであんたの相棒は付いてくるのん?」
「もちろんですよ!私と彼はチームですので!!あ、いやらしい関係は一切ないので変な想像はしないで下さいね!まぁ師匠なら私も安心ですよ、私の相棒はオバサンに興味はなさそうなので変な事にはならないでしょう」
「はいはいオバサンで良かった良かった……うっ」
冥珂はふいに眩暈に襲われた。
「??師匠?」
突然冥珂に頭の中にフラッシュバックする。赤く染まった空、黒い太陽。大量に飛び交う象よりも大きな鱗の鳥たち。金属鎧を着た弟子と少年がそれらに攻撃され墜落する光景が見えた。
「……いや何でもないよ、なるべく早ようこっちに来てなあんたの好きな銘柄のミルクぎょうさん用意しとくし」
「……?本当に大丈夫ですか?師匠が私を頼るなんて……」
「色々準備しときたいねん」
「そうですか……そういう事ならできるだけ早くそちらに行けるようにします」
「じゃあまたなんかあったら連絡するわ」
電話を切る冥珂。机の上に置いた 21 宇宙のカードを見つめる。
「(……あの光景はほうき星の続きかもしれんなぁ)」
『おい冥珂、ビルの周りをウロウロしてるガキがいるぜ?』
「ん?子供?昨日来たおっさんやなくて?」
スフィンクスの声を聞いて冥珂は水晶玉を覗き込む。
「ほんまやな、人払いの結界に気づいてるんかもね。京都やし魔術師やら能力持ったんやら闇の住人がぎょうさんおるしその類かもね」
『どうする?』
「結界に何かしようものならカウンターくらう仕掛けにしてるしほっといてもええけど……それにしてもこのえらい思いつめた顔してるなぁ。ちょっと話かけてみるわ」
階段を降りシャッターを開け外に出る冥珂。それに気が付いた少年は安堵した表情を浮かべた。
「こんにちは、ここで何してるの?」
少年の右腕義手の異様な存在感に目が留まった。
「この辺ウロウロしてたみたいやけどどうしたん?迷った?」
「いえ、人を探してまして……タチバナメイカさんて人に会いたくて」
「へぇ……その人この辺にいるの?」
「それがハッキリしなくて……この辺にいるってのは聞いたんですけど」
「ふ~ん……誰に聞いたん?」
冥珂は煙草に火をつけてから指輪の宝石にダークパワーを注いで反応させる。
「それは教えることはできないんです、名前も知らない者で……でも信用はできるんです。その者のいう事に従わなければいけないって……すみません意味わからないですよね」
「うーん(嘘はついてない……か。暗示をかけられてる様子も無いし人形でもない。右腕が異常なだけの男の子や)」
冥珂は宝石を覗き込みながら少年を観察する。
「タチバナメイカさんにどうしても会わないといけないんです。すみません失礼します」
「ちょっと待ち」
「はい?」
「アタシ占い師やねん。せやからそのタチバナメイカさんの居場所占ってあげるわ。キャンペーン中で先着 3 名様無料や。君が 3 人目よ」
冥珂はシャッターを開けて小さなテーブルと折り畳み椅子を出した。
「さ、座って」
「はい……」
冥珂はタロットを使って占いを始める。
「君は……そのタチバナメイカさんに会って未来の道を切り開こうとしている。障害はとても大きなもの……過去に失敗をしている」
「あ、あの……」
「君が……障害を乗り越えるにはいくつもの流れを一つにまとめなければならない」
冥珂に再びフラッシュバックが起きる。火の海になった街。そこに息絶えた様子の少女を抱えた目の前の少年の姿。
「君はタチバナメイカと誰かを会わせようとしている」
「そ、そうです!知り合いのお母さんなんですが……」
「実を言うとタチバナメイカさんは良く知ってるんよ。忙しい人やし今日の夜も予定が……。でもちょっと予定をずらせば君の知り合いのお母さんに会えるかも」
「そうなんですか!……実は俺、貴女がタチバナメイカさんじゃないかって思ってたんです。なんとなくそんな気がして」
「そっか、ほな立ち話もなんやし向かいのファーストフード店にいこか。もちろんアタシのおごりや」
続く
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