マジック・ザ・メイカー 22 話「魔女と覆う影 4 」
「スフィンクス!」
『コイツはヤバいぜ……霧に触られるだけで力が散っていく。俺とお前のダークパワーはある意味無限だが供給よりも散る方が多い』
迫りくる乱杭歯触手を蹴散らすスフィンクス。冥珂はほうきで回避を続けながらローブの中からサブマシンガンを取り出して触手を攻撃する。
『霧の中から出た方がいい』
「せやけど出たら出たで本体の位置は分からへん」
『ち……そうだな……霧をなんとかしねえとどうしようもねぇ。天候を操る魔法はお前の分野じゃないしな……全力でぶっ放して霧を吹き飛ばすか?……』
「いや、そんな一撃放って消耗したあげく仕留めきれへんかったらどうにもならん。「やったか!?」なんて言ったらもうね……」
『このままじゃあ消耗するだけだ建て直す為にも一旦霧から出るぞ!』
四方八方から襲い掛かる触手を回避する冥珂。ほうきをジェット噴射させ一気に上昇、霧から抜け出す。
「……」
上空から冥珂の目に映ったのは野球場の 3 倍以上に拡散しつつある霧であった。フィッシュメンの集団はもはやアセル一人では抑えきれなくなってきている。
『こいつは……このまま広がり続けたらじゃあ街だけでは済まないぞ』
「アタシにあの霧全体を薙ぎ払える魔法が使えれば……」
冥珂は少し考える。
「……うーん、別の方法考えてみるかな」
『できるのか?』
「核ミサイルでどっかーんみたいな超火力やったらゴリ押しでいけそうやけどアタシにはそんなことできひん。だから別の方法であの霧をなんとかする」
冥珂は後ろを向く。そこには金属製の蝙蝠ディスクバットが浮いていた。
「リティーシャ、見とるんやろ?」冥珂は弟子のリティーシャのディスクバットが着いてきていたことは知っていた。
「聞きたいんやけど霧を消す装置あるやん、高速道路とか空港の滑走路に。あれの仕組みアタシにはさっぱりやしどういうことか教えて」
『え?いきなり何ですか?』
「ええから教えてよ」
『消霧装置の事ですよね?それ今言ってどうにかなります?』
「どういう仕組みで霧を消してるか、それが知りたいねん。難しい科学の講義はいらんよ」
『え、いやあの霧って普通のものじゃないですし分析してみない事には……』
「ええの、魔法は結果を導きだすもの。アタシの感覚では料理みたいなもの。化学薬品の調合とは違うねんて」
『ええぇ~……突き詰めれば科学と魔術は似たようなところがあるので魔法に通ずると私は考えてるのですけど』
「だからあんたは魔女の練り菓子下手なんやね……凄い科学者が分析してめちゃくちゃ美味しい料理つくれるとは限らんように」
『む、ですが私は師匠にはできないことができますよ?』ディスクバットの向こう側でリティーシャは胸を反らしていた。
「うん、だからあんたに頼むんよ」
『……はぁ~師匠にはかないませんね。えっとですね霧を消す方法、消霧装置はコロナ放電を生じさせて、コロナ放電によって荷電粒子を発生させ霧を消散させるものなんです』
「…………いや、さっぱり分からんわ」
『ええぇ~………面倒ですね。う~ん……コロナ放電は夜中に雷雲の下を航海する船の帆柱の先端に生じる火みたいなものですよ。荷電粒子は……師匠の使う剣の6あれが近いんじゃないですかね』
リティーシャは言葉を選びながら答える。
「ほうほう、ほなら剣の6をブワーって拡散させてあの霧に撃ち込めば消えるってことでええのかな?」
『どうですかね。私なら霧を消せることを確認した後、荷電粒子を発生させたシールドを全身にまといながら敵本体を探しますけど』
「……ケラウノスや」
『は?』『何ですって!?』
スフィンクスとリティーシャは同時に声を上げた。
「イメージはゼウスの雷霆ケラウノス!使うカードは剣の 6 と杖の 9 と 21 番宇宙( The Universe )の 3 枚!!」
『 21 番を使うのか、しかも 3 枚目で』
『剣の 6 の力を杖の 9 で強化して 21 番宇宙で完成……ですか。ぶっつけ本番ですよね?』
「アタシはいつもぶっつけ本番で何とかしてきた。マジック・ザ・メイカーの渾名は伊達やないで」
冥珂は自身の体から飛び出した 3 枚のカードを手に持つ。その表情は自信に満ちている。
『そうだったな冥珂。やれちまうんだからな、七大魔女と呼ばれるわけだ』
剣の 6 のカードは 6 つの青白い光の弾になり、杖の 9 はねじれた半透明の杖に。 6 つの光の弾を半透明の杖に吸収させていく。杖は青白く輝き始める。
『……おい、それは行けるのか?』
『ダークパワーの急上昇を確認。光弾吸収の度に倍々になってますけど師匠、それ抑え込めるんですか?』
「ゼウスの雷霆やで?アタシの扱えるギリギリの所までもっていかんと」
4 つ目の光弾が吸収される。冥珂の掲げる杖の光は周囲を照らす。
『ち、俺が杖を支えてやる。お前は魔法完成に集中しろ』
スフィンクスが冥珂の左腕に巻き付くと一回り程大きな銀色のプレートアーマーに変形した。
5 つ目の光弾が吸収される。光は益々強くなり上空に雷雲が発生する。
『まさか師匠……あの雲から落ちる雷も使う気ですか?』
「そうや。リティーシャあんたの船のマストの話を聞いてイメージしてな」
―本郷晴凛の家
「急に曇ってきて風が出てきたね……うわぁアレ何の光!もしかして冥珂さんの魔法!?あそこだけめちゃくちゃ明るくなってる」
目を覚ました晴凛は窓の外を見て言った。
『ん~人型もいいもんっすね~。いやぁイッシーの力のおかげっすなぁ』
「え!誰!?」
晴凛の横にはダチョウの羽を持った黒髪で切れ長の目をした少し浅黒い肌の若い女性が立っていた。白い布を巻き付けた服を着ている。
『アマチャンっすよ!』
「え!アマちゃん!?」
『回復してきたから晴凛を見守るために人型になったんす。ほら、クー・ホリンは犬の姿だしイッシーの人型は目立ちすぎるし』
「へ?イッシーって?」
『晴凛の上に浮いてる 2 番女教皇のカードの子っすよ。冥珂が置いて行ってくれたおかげで晴凛もクー・ホリンもアマチャンも全快っす。イッシーご苦労様』
『はぁ~い……疲れたのでしばらく寝ますので帰りますね~』
2 番女教皇のカードから声がする。カードはそのまま窓ガラスをすり抜けて出て行った。
『さて、アマチャンたちはここで大人しく待ってたらいいだけなんすけど……実はそうも言ってられなかったり。変な気配が街のあちこちでするんすよね』
「変な気配?」
『例のフィッシュメンとか……魔法少女カトラとかその辺のね。晴凛、水晶玉少しは使えるんすから見てみればどうっすか?』
「うん、やってみる」
晴凛は机の引き出しから小さな水晶玉を取り出して手をかざす。
『アマチャンの羽をあちこちにつけてあるからそこに繋げるっす』
「う、うん……」
晴凛はアマトのダークパワーを感じ水晶玉を通じてアマトの羽を探す。
「あ、あった!アマちゃんの羽!」
『じゃあ映像を送るっすよ晴凛!』
水晶玉に映し出されたのは電柱の上からの映像。濃い霧の中、黒い人影が群れを成して徘徊している。
「凄い霧だよ!それにフィッシュメンがあんなに!」
『これはもう……街の人には隠し切れないっすね……後で大規模な記憶操作が必要っすよ』
「ああっ!フィッシュメンがコンビニに!!」
『ヤバいっす晴凛!!アマチャンが行ってくるっす!!』
「待ってアマちゃん!」
『え!?』
「私も行くよ!待ってるだけなんて嫌だよ!!」
『アマチャン的にはその方が消耗少ないしありがたいんすけど晴凛が……』
「それでも……もしフィッシュメンの他にカトラが別の場所で出てきたら私はアマちゃんに任せっきりで何もできないまま見てるしかない、アマちゃんがいないと魔法少女になれないし」
『分かったっす。それならアマチャン全力で魔法少女セリンをサポートするっす』
―コンビニ前
大型トラックも止まれるほどの大きさの駐車場にフィッシュメン群れが集まっている。
「なんだ!なんだよあいつら!!」
「外にいたおじさん食べられてるよぉおおおお!!」
「警察だ!警察呼べ!!」
「ひいいいいいっ!こっちくるぞあの魚顔の連中!!」
フィッシュメンは太った中年の男の内臓を貪り食い終わるとコンビニの中にいる客の見据える。
「 Iaaaa …… Iaaaaa …… Cthu …… fht …… Iaaaaa …… Iaaaaaaa …… lhu …… gn ……」
フィッシュメンらは目を輝かせてじりじりとコンビニに迫る。
「ふふふふふふふ……いいわ、とてもいいわ!フィッシュメンたち思う存分やりなさい!人間は皆殺しよ!!」
声と共に上空から現れたのは魔法少女カトラ。全身いたるところに海藻を思わせる包帯を巻き付けている。
「痛い痛いわ……!あの赤黒い棘の傷が疼く……!!」
カトラはコンビニの中の飲料棚を見据えて杖を構える。
「液体がたっぷりあるわね。私の力が存分に揮えるというもの!雨の日なら言うことなのだけど……」
カトラの杖が輝く。するとコンビニの飲料棚のボトルは一斉に破裂、液体の触手となり近くに立っていた男女 4 人を串刺しにした。
「きゃあああああああっ」
「うああああああああっ」
ガラスが飛び散ちる。店内は一気にパニックになった。
「ウォーターランス!いいでしょ?美味しい飲み物で死ぬなんて中々無いわ」
「なんだ!何が起こった!?」
「あのコスプレ女は一体?何で飲み物が爆破したんだ?」
「くそっ!警察はまだかよ!!」
「なんでこんなことにまきこまれるのよぉおおおおおおおおおお!!」
その様子を見てカトラは口角を上げた。
「いいわ、いいわ!もっと混乱しなさい阿鼻叫喚の様子を見せなさい!次の標的は内側から食い破るように殺してやるわ」
「だめええええええええっ!」
ほうきに乗った魔法少女に変身した晴凛が急降下、ステッキから光弾を発射してカトラを牽制する。
『うわ~たくさんの人間に見られてるっすね~これは後が面倒だ……とりあえずここはアマチャンフラッシュ!!』
オウム姿のアマトはコンビニの前で全身から光を放つ。光を受けた人々は昏倒した。
「アマちゃんナイス!」
『晴凛!アマチャンのことよりも目の前の敵っすよ!!』
「現れたな魔法少女!!ウォーターソード!!」
ペットボトルの液体を集め剣に変え晴凛に切りかかるカトラ。晴凛はガラクタで作った盾で受け止めた。
「そんなくだらない盾、また壊してやるわ!!そして今度こそむごたらしく殺してあげるわ!!」
「そう簡単にいかない!」
盾が回転を始める。ウォーターソードを散らしカトラを押し返す。
「ちっ!」
「うまくいった……!」
出発前に晴凛は盾の強度を上げるだけでは不安を感じアマトに相談。強度を上げるには材料も時間も足りない中で考え出された案で盾の回転はアマトが操作をしていた。
『傘にヒントを得たと言ったときは「は?」と思ったっすが』
「小さい時に傘を回して遊んでたの思い出したんだよ。傘についた雨が飛んでいくの」
カトラはウォーターソードで数回斬りつけるも回転する盾で弾かれる。
「ちぃいいいいっ!グレゴル!!」
黒い鱗の犬が飛び出し晴凛の側面から襲い掛かる。
「うわぁっ!」
咄嗟にステッキで受けた晴凛は体勢を崩し、ほうきに必死にしがみついて耐える。
『うおおおおっ!今のアマチャンは超本気っすよ!!』
黒い鱗の犬に飛び掛かるアマト、 2 匹は飛び回り互いに衝突を繰り返す。
「大した魔法も使えないくせにカトラの邪魔をするとは身の程をわきまえない勘違い魔法少女なのね?使い魔に頼りっきりの半人前が!」
カトラはコンビニの酒瓶とペットボトルから液体を補充しウォーターソードを巨大化させる。
「今の私はそうかもしれない……でも、できることをしたい。その為にアマちゃんやクーちゃんを頼ってしまうけど」
晴凛は赤黒いリボルバーを取り出す。
「クーちゃんお願い!」
『さっき話してたアレだな?いいぜ』
赤黒いリボルバーからクー・ホリンのダークパワーが放出される。そして晴凛の戦車のカードに入っていく。
『上乗せとは欲張りな奴め』
魔法少女セリンの衣装の上からクー・ホリンの外套、鎧を纏う。ほうきは馬の引いていないチャリオットへ、ステッキはクルージーンに変形。晴凛の髪に金髪が混ざる。
「えへへ……全部乗せとか好きなんだよ」
『窮屈だが……まぁお前の負担は半分以下だ。それにアマトの力を使うことで俺本来の力も少しは発揮できる』
『アマチャンは超きついっす!二人三脚でサッカーするようなもんっすよこれ!』
晴凛は流れ込んでくるクー・ホリンの思考に従いクルージーンを振りカトラを離す。
「なによそれ!……ふ~ん、召喚魔法が得意って訳?ハ!でも地の力が違うわ!」
続く
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