マジック・ザ・メイカー 23話「魔女と覆う影5」
カトラは羽を鎌状に変形させウォーターソードと合わせ 3 方向から同時に切りかかる。
晴凛は振りかぶるカトラに対しチャリオットから飛び出して肉薄、間合いを外しクルージーンで腹を突く。
「あがっ……速い!」
晴凛はカトラを蹴りすぐさまクルージーンで 2 回切りつけた。カトラの両腕から鮮血が飛び散る。
「ガアアアアッ!強い……この前とはまるで別者……」
晴凛はクー・ホリンに任せるだけではなく、流れた来た思考に反応し自分で動くことを意識し始めていた。そのことによりクー・ホリンは動きやすくなり晴凛もまたクー・ホリンの戦い方を体で覚えていく。
「それなら……これよ!」
距離をとり大きく息を吸い込むカトラ。それを見た晴凛はクルージーンを空幻魔杖デル・フリスへと変える。
『そうだ晴凛良いぞ、術師相手には……』
「デル・フリス!」
バトンのように先の曲がった杖デル・フリスを回転させる晴凛。杖から飛び出した矢がカトラを襲う。
「ええい!」
忌々し気に羽根を広げて体を包み込んで矢を防ぐカトラ。その隙に晴凛は加速し背後に回り込む。
「たぁー!」
バットのスイングを思わせる動きで杖を振る。放射状に矢が飛び出しカトラの背後に数本突き刺さる。
「がああっ!」
『いいぞ!』
「おのれぇ!」
羽を伸ばして攻撃するカトラ。命中した晴凛は幻影、本体は上にいる。溜めを作りデル・フリスを縦に大きく振る。晴凛に迷いは無い。カトラを人外の脅威と考え、立ち向かう決心をしてここに来た。
「やぁー!!」
30 本の光の矢が飛び出し全方位からカトラに襲い掛かる。
「あがああああああああっ!!ま、ずいわ……再生が追い付かない……時間を稼がないと……」
カトラは口から黒い霧を吐いて晴凛の視界を遮り地面に向かって加速、黒い鱗の犬と合流しスレスレを飛んで離脱する。
『逃がすな晴凛!ガエ・ボルガを撃ちこんでやれ!!』
「うん!」
―交方川上空
「最後の一つ!」
剣の 6 の光弾最後の一つが杖に吸い込まれる。青白い光が周囲を昼間の様に照らす。下で奮闘していたアセルはそれを見て冥珂の 13 番死神のカードに戻る。
「仕上げは 21 番宇宙!」
21 番のカードを発動させると杖から稲妻が伸び雷雲と繋がる。冥珂は全身に走る鋭い痛みに耐えながら巨大な雷を安定させていく。
『馬鹿かこんな雷、周囲一帯消し飛ぶぞ!確かにこれ程ならゼウスのケラウノスや宝貝雷公鞭に匹敵するだろうよ。まさに神話の雷霆だ』
「……やりすぎかな?」
『一瞬でもコントロールを誤れば俺たちは一瞬で消し炭だぞ?ケラウノスや雷公鞭を簡単に使いこなせるとでも?』
「そりゃあそやね……」
『師匠これは駄目ですよ!消霧うんぬんのレベルをはるかに超えてますよ!もう少し出力を抑えられません?まさか発動最中に消霧の目的を忘れてケラウノスの再現に夢中だったのでは?』
「えっと……そうかもしれんわ……あはは」
『神話の再現なんて魔法に関わるものならやりたくなるものですが想像の域を超えないですしなまじ力を持った者が加減をしなかったらどうなるか分かるでしょうに何年魔女やってるんですか全く……』
リティーシャは早口でまくし立てる。
『どうするんだ冥珂この雷』
「マジックコンパクトを……使おかな」
『……お前自分の契約主すら使うのかよ』スフィンクスは呆れた声でつぶやく。
「大丈夫大丈夫、おとんみたいなものやから。たまに夢で怒られてお仕置きされるけど……」
『………そうか』
「お願い!マジックコンパクト!!」
マジックコンパクトを開く冥珂、中から蔦の集合体の腕が飛び出し雷の杖に手をかざす。見る見るうちに雷は収束し直径 2 メートルほどに収まる。
「怒ったらへんでスフィンクス。むしろ笑てはるわ」
ひょんな事で手に入れたマジックコンパクトの鏡は異次元に通じており普段は夢でしか会う事のない冥珂と契約主はわずかな時間とはいえ繋がりを持てる。
『主はこの世界に長く関われないんだから早く魔法を使え冥珂』
「よっしゃ!いくでー!!」
眼下の霧はさらに膨張、フィッシュメンは湧き出る水の如く出てくる。
「雷霆ケラウノス!!」
スフィンクスの鎧で覆われた腕を振り下ろす冥珂、雷雲と連動し稲妻が走る。霧に命中した瞬間、ドーム状の雷光となり霧を散らしていく。数えきれない触手が伸びるもすべて雷に焼かれバラバラになっていく。
『想像よりもコンパクトになったな。主のおかげだぞ冥珂、あのままぶっ放してたらどうなってたことやら』
「ごめんて……」
霧が晴れ姿を現したのは、蝙蝠のような羽を持ち、かぎ爪のある手足、頭部は触手に覆われた化物であった。
「あれが深海の魔女……?」
『どうだろうな……奴から感じるダークパワーは何か異質なものだぜ』
『何なんですアレ……見てるだけで吐き気がしますよ。見た目の気持ち悪さじゃなくてアレルギー反応に似たものです。存在を拒絶したくなる、そんな感じです』
「KOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
大気を震わす咆哮。冥珂とスフィンクス、リティーシャは気を失いかける。
「本気の装備で固めた魔女のアタシでこのダメージ……普通の人間がこんな声聞いたら……」
『こんな不快な声初めて聴いたぜ……』
『ディスクバットか壊れそうなので帰っていいですかね?』
雷霆の残滓はなおも化物を焼いている。次々と再生する触手や表皮を焼いていく。
『あの効果は……狙ってやってるのか冥珂』
「せやで、 21 番宇宙使う時に炸裂後リピートをかけるようにしてん。その仕掛けを作るのにちょっと時間かかったんよね」
『え?じゃあ杖にエネルギー充填しながらもう一つのカードの準備をしていたと?』
「せやで?料理だって同時に進めたりするもんやん?」
そう言って冥珂は子供のような笑顔を浮かべる。体は震え、目からは血が滲み、全身からは冷たい汗が噴き出していた。
『冥珂……お前満身創痍じゃないか』
『師匠!』
「あはは……まぁでもなんとかもったわ。リティーシャがいてくれたおかげであの魔法を使う事が出来た。居てへんかったらもっと力ずくでやって失敗してたかも……」
電撃に焼かれ続ける化物、炭化した部分が崩れ落ち体が小さくなっていく。そして現れたのは肉片と目玉と触手が蠢く直径 2 メートルほどの存在。
「あ、あれが化物の核……」
『……宇宙人らが持って帰ったブツに似てるな』
『は!?なんですかあれ……あんなもの……分析不能です……』
化物は触手を動かし自らを包み込んでいる電撃を叩いた。触手は千切れ飛ぶ。次に化物は触手の先をガエ・ボルガに似た形状に変え電撃に伸ばす。
『あの化物……クー・ホリンにやられたガエ・ボルガをマネしてやがるのか』
「本物はここにあるで。来る前にクー・ホリンから一つ預かって来てるんや」
ゆっくりと電撃を貫いて破る化物。冥珂に狙いをつける。
『師匠!来ますよ!!』
「ごめん……スフィンクス、リティーシャ。アタシ今浮いてるだけで精いっぱいやねん……だから力を貸してくれへん?」
震える手で冥珂はリボルバーをコートの下から取り出しガエ・ボルガを銃口に取り付ける。スフィンクスは銀の鎧で冥珂の体を支え、リティーシャはディスクバットから鎮痛剤を冥珂に打ち、冥珂の肩に止まってレーザーを放ちポインターで触手の化物に照準をつける。
「もう少し右そう、そこ。あの化物の偽ガエ・ボルガごと貫く!」
冥珂は剣のA、ソードエースのカードを取り出してリボルバーに吸い込ませる。リボルバーは柄の曲がった棒状の投槍器に代わり、先だけのガエ・ボルガは槍に変形する。
『原型に近づけるのか』
「うん、クー・ホリンの期待に応えるにはコレやなって」
『分かった、投擲は俺に任せろ。冥珂はダークパワーのコントロールに集中、細かい軌道修正はリティーシャに任せる』
『了解!』
「いくで……!ガエ・ボルガ!!」
―交方市街
逃げるカトラをほうきで追いかける晴凛、赤黒いリボルバーを取り出して狙いをつける。
「いくよ、アマちゃん、クーちゃん!」
『おけっす!』
『おう!』
「ガエ・ボルガ!!」
赤く輝く螺旋の光帯を伸ばして飛ぶ弾丸。急上昇で回避を試みるカトラを追跡する。
「いやああああ!あの弾はもうくらいたくないいいいいいいいいい!!」
カトラの背中に弾丸が突き刺さる。心臓に達すると 30 の棘に分かれ全身を貫く。
「ぎゃああああああああああああああああああああああ…………」
カトラは墜落しアスファルトの地面を転げまわる。
「こ、これで終わりじゃないわ……カトラは必ず復活する……深海の魔女があるかぎ……GIYAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
突如カトラの全身が煙を上げて溶け始める。
「そんな……深海の魔女……」
カトラの肉体は跡形もなく消滅する。残ったのは奇妙な文様の入った石だけであった。
―交方川
冥珂の放った槍は赤黒い波動を纏い加速する。化物は槍状の触手を伸ばす。切っ先同士がぶつかり衝撃波で地面がめくれ上がった。
「うあああああああああああああああああっ!!」
鼻血を垂らし口に血をにじませる冥珂。全身が千切れ飛びそうになりながらダークパワーを送り続ける。
「KOOOOOOOOOOOOOOOO!?」
徐々に冥珂のガエ・ボルガが触手の槍を押していく。
『冥珂……限界だ』
『師匠これ以上は!』
「もうちょっとやねん……あとちょっと……」
冥珂の指輪とペンダントの宝石が砕ける。
『お前……その宝石は……』
「ここが使いどころや……」
『その宝石……宝石の魔女に貰った身代わりの魔法がかかった……』リティーシャが叫ぶ。
「もう一押し……これでいけるはずや!」
砕かれた宝石からダークパワーがあふれ出し冥珂に吸い込まれていく。
「これでどうやあああああああああっ!!」
輝きを増したガエ・ボルガは触手を砕き化物に深々と突き刺さる。
「KYUUUUAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
ガエ・ボルガは 30 の棘に分かれて伸び、更に 30 の針となり化物を貫き伸び続け、砕け散る肉片をも破壊していく。
「あれが本来のあの槍の力……」
『ケラウノスにガエ・ボルガ……流石に耐えられないだろうよ』
ガエ・ボルガの柄に電撃が引き寄せられ刃先から放出される。砕け散った肉片は全て炭となり崩れ去っていく。
『そうかガエ・ボルガは海獣由来の槍、電撃を纏いやすいという事か』
『化物の反応消えました……やりました!師匠!!』
「や……やった……」
冥珂は脱力し意識を失った。
続く
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