異能者特務機関: TMI 第 11 話「レインボーフォリナー 4 」
「………」
この嫌な予感は何なのか、アリナは考えていた。
早乙女ルキナの降りた地下 5 階まで動物はおろか人も居なかったと聞く。それは死体さえも無かったと。
ではどこに消えたのか。消えていなかった者は居なかったか。
「……警備兵」
車に乗った警備兵、研究所に来る途中襲い掛かってきた二人組。
「恐らくバクテリア感染者……」
なぜあの二人しか発見できなかったのか。
「長官、お聞きしたいことが」
『どうしたねアリナくん』
「研究施設の人達はどこに居るのですか?」
『今の所確認ができない……火災や地震で研究所が壊滅的ダメージを受けた場合もマニュアルにしたがってトンネルの途中の避難所行くことになっている。だが通信しても返事が無いんだよ』
「避難所を確認してきてよろしいですか?」
『……よろしく頼む。 B チームに研究所周辺の調査を命じたよ。何か発見したら君たちにも連絡する』
アリナはマイケルに 1 階の警戒を任せトンネルへと続くシャッターを開ける。
「グウアアアアアアアアアアッ!!」
シャッターを開けたと同時に土気色の白く濁った眼をした人間が数人なだれ込んできた。
「!!」
正拳突き、回し蹴り等の打撃を入れて外に押し戻すアリナ。後ろ手でシャッターを強引にしめようとするも大量に押し寄せる感染者に阻まれる。
「これは……施設の」
感染者の衣服は白衣、警備服、スーツなど様々であったが全員首から研究所の ID カードを下げている。アリナは加減しながら感染者たちを打撃で吹き飛ばしていく。
「ヘイ、アリナ!一旦こっちにバックだよぉー!」
マイケルが叫ぶ。その手にはアサルトライフルが握られていた。アリナは走ってワゴン車の前まで戻る。
「あれは完全にもうダメだと思いますねぇー……」
「発砲するというのですか?」
「まぁ見てなって、暴徒鎮圧用のテスラライフルさぁー」
マイケルがトリガーを引くと青白い弾丸が連続で発射、次々と感染者を電撃に包み込み転倒させていく。
「アメリカ支部ではこれが主力装備なんだよぉー」
次々となだれ込んでくる感染者にテスラライフルを打ち込んでいくマイケル。感染者は痙攣したままその場でうめき声をあげている。
「あの感染者、動きを止めることはできるけど気絶はさせられないかぁー」
「予測ですが見た感じ 300 人はいるかと。弾丸もそうですが動きを止めた後はどうするのです?」
「ボクのアポートで炭素ワイヤーネットを呼び出せばあっという間に拘束できるさぁ。テスラライフルのリロードもアポートで瞬時にできるしねぇー」
エンジェルチームのワゴン車には大量の武器弾薬が積まれている。マイケルはそれらすべてをアポートの登録を済ませいつでも取り出せるようにしていた。
感染者たちは突如突進を止め下がり始める。整列した感染者たちが左右に分かれると中央から大型の熊が 2 頭飛び出してきた。その目は白く濁っている。
「オーマイガッ!クマだよー!!」
「わたしが行きます」
突進する感染熊、アリナは熊の前に出て構える。
「 GUUUUUUU !!」
前足の爪をむき出しに大きく口を開け上から襲い掛かる感染熊。アリナは下から拳を突き上げ感染熊の顎に叩きこむ。
「 GYAAAAA! 」
感染熊の下あごは砕け肉片となって飛び散る。後方回転した巨大な図体は感染者の集団に突っ込んでなぎ倒していった。
もう一頭の感染熊は転げた熊を踏み台にして大きく跳躍。
「ワォ!あの動きありえないよぉー!!」
「はっ!」
アリナはアンカーボルトをブーツにセット。飛び掛かる感染熊の鼻に飛び膝蹴りを叩きこんで勢いを止める。体を旋回させアンカーボルトのついた後ろ回し蹴りを熊の額に打ち込む。感染熊の後頭部が肉片を散らしてはじけ飛ぶ。
「アメイジング!アリナ!」
「……マイケル、ワゴン車の後ろに下がって下さい」
感染者の集団は一斉に後ろを振り向き後方の集団が持ってきたゴミ捨てカートを囲む。
「何をしているのでしょうかねぇー?」
シャッターの下にカートを設置する感染者、カートから取り出したのは不燃ごみに分類される金属やプラスチック、ガラス瓶など。感染者は一斉投擲の構えをとる。
「オォウ……マズいねこれは。ワゴン車はロケットランチャーにも耐えれますがぁ……」
「わたしたちを研究施設から出したくないように思えます動きが統率されすぎています」
「兎に角撃って撃って打ちまくるしかないねぇー!」
アポートでアサルトテスラライフルを転送しアリナに渡すマイケル。感染者たちは一斉に廃棄物を投げる。後ろの感染者と交代、つぎの廃棄物を手にする。ワゴン車に様々な廃棄物が降り注ぐ。
「バリケードを築いていきますね」
倒れて積み重なった感染者の後ろに隠れ廃棄物を投げてくる。テスラライフルの電撃はバリケードで阻まれ後ろの集団に流れていかない。
「 BOWWOW!BOWWOW! 」
感染者の集団の脇から 3 メートルを超える大型狩猟犬が 3 頭飛び出す。爪は通常よりも鋭く長く、体毛はヤマアラシを思わせる棘状。尻尾は鋭い鋸状の刃が並んでいる。
「モンスター!?デカすぎるよあの犬ぅー!!」
「 WOWWWWWWWWWWWWWWWWWW !!」
唸り声をあげる変異犬。感染者が一斉に投擲を開始する。
「マイケル!あなたは車に入って下さい!」
廃棄物が降り注ぐ。ワゴン車に入るマイケル。アリナは廃棄物を回避して感染者にテスラライフルを撃ち 10 人ほど転倒させる。
「 BOWWWWWWWWWWW!! 」
左右上から一斉に飛び掛かる感染犬、アリナは大きく飛び上がりテスラライフルを撃つ。弾丸は感染犬の棘で反らされ地面に青白い電撃が走った。
「それなら」
着地したアリナはガントレットの内側から出されるベヤリング弾を握る。指に力を込めベヤリング弾を打ち出す。スナイパーライフルに匹敵する威力で打ち出すアリナ。感染犬の棘を打ち砕き背中の肉をえぐりとった。
「マイケル、この犬はわたしが対処します。あなたは感染者をお願いします」
「オッケェイ!!」
マイケルはワゴン車の窓から体を乗り出してテスラライフルで感染者を狙う。
「 BOWWWWWWWWWWWWWW! 」
牙を剥いた感染犬は飛び上がり体を縦回転。牙と鋸尾で床のコンクリートを削りながらアリナを襲う。横に回避するアリナ、感染犬はコンクリートの壁を削りながら天井を蹴り更に回転速度を上げて再び襲い掛かる。
「 BOWWWWWWWWWWWWW! 」
「 BOWWWWWWWWWWWWW! 」
アリナの背後から牙を剥いて錐もみ回転、後方と上方からコンビネーションを意識した動きで襲い掛かる感染犬3頭。
「……」
月面宙返りで回避するアリナ。空中でガントレット、ブーツのアンカーボルトをセットする。
「 BOWWWWWWWWWWWWW! 」
一旦距離を取った感染犬は一直線に並び突進、アリナの手前 2 メートルで時間差で錐もみ回転で飛び掛かる。アリナは2頭をベヤリング弾で狙い、残り1頭は鞭のようにしなる前蹴り上げで迎撃する。
「 GYAWOO!! 」
ベヤリング弾で腹を貫かれ、前蹴り上げで顎を砕かれた感染犬。コンクリートの床に巨体を横たわらせる。
「 GUUUUU!! 」
頭部を半分吹き飛ばされた感染熊 2 頭が起き上がり近づいてくる。
「ジーザス……まるでゾンビだよアリナ~……」
「熊と犬はわたしが対処しますのでマイケルは感染者を進ませないで下さい」
***
隔壁を開け地下6階に降りるルキナとカレン。風の防壁をまとったルキナが宙を浮いて先を進む。カレンは銃構えてついていく。
「カレン、何か見える?」
「……植物のようなものが蠢いてますネ。実験動物か植物が変異したものか何かは分かりませんが」
「6階は資料室と植物培養室……か」
「植物培養室は危険な生物がいますルキナちゃんどうしますカ?」
「行くわ、制圧しなきゃダメっしょ」
博士の ID カードを使って植物培養室に入るルキナ。照明の消えた薄暗い部屋に蠢くものが見えた。ルキナに気づいたそれはゆっくりと照明の光の当たる部屋の中央まで動いた。
「な、なんなの……」
現れたのは全身を植物の蔓と葉に覆われ、左目からはバラを思わせる植物が生え両脚は根に覆われ触手めいた動きで歩行している人型の生物であった。
「メタモルフォシスの異能者……?それともバクテリアで何か変化した生き物?」
「お前……何だ?」
「しゃべった……あ、あたしは TMI の早乙女ルキナ。この研究所の調査と救助に来たのよ」
「 TM …… I ? 聞いたこと……あるような……ないような?」
「あんたのそれ、どうなってるの?」
ルキナは距離を取りながらエアカッターを準備して聞く。人型の胸の ID カードには薔薇原灯浬(ばらはらともり)と表記されている。
「え?……私なにか……おかしい?」
「おかしいでしょ!体が植物についてるし目から生えてるし!!」
「ん?……ああ、私は……生き延びた。いっぱい死んだ……いっぱい……死んだんだ」
「お、落ち着きなさい。保護するわ、その体も治療できるはずよ」
「ああ……そうだ……栄養が足りない……水も……生き延びて生き延びて……家にかえらないと……あの人が……子供たちが……待って……る」
薔薇原の肩の蔓が伸びルキナに襲い掛かる。ルキナの風のバリアーが弾いた。
「くっ!?」
「生き延び……ないと」
背中と肩から無数の蔓が伸びる。蔓に着いた蕾が膨らみ花を咲かせる。
「大人しくしてもらうわよ!」
エアカッターを放つルキナ、蔓を切断していく。
「敵から……身を守らないと……生き延びないと」
左目の花から種が飛ぶ。ルキナの風バリアーに触れると小爆発を起こした。
「くっ!」
連続発射される種。連続で小爆発起こしルキナの聴覚にダメージを与える。
「おとなしく……しろっての!」
突風エアブラストを浴びせるルキナ、薔薇原は草の様にしなり受け流す。
「ああ…… A h……」
薔薇原の全身から大量の花粉が噴出される。黄色い霧となってあたりを包み込んでいく。
「そんなもの!」
エアブラストを放つルキナ、部屋中に花粉が舞い散る。
「ヤバ……」
あわててドアに向かうルキナ、薔薇原は口から酸性の粘液をドアに飛ばす。煙が立ち込め飛び散った酸が天井を溶かし素材が床に落ちていく。ドアは酸によって溶着され、ルキナは急停止しざるを得ない。
「カレン、ドアから離れて!」
「了解!」
ドアの外にいるカレンに叫ぶ。空気を圧縮しヴォルテックスキャノンの構え。後ろから薔薇原の蔓が槍の如く襲い掛かる。
「……ヴォルテックスキャノン!」
振り向いてヴォルテックスキャノンを放つルキナ。蔓を砕き薔薇原の体を吹き飛ばし机の上の水槽を砕き実験器具を巻き込みながら反対側のコンクリートに叩きつけた。
「死んでないわよね……?それにしても人間離れしすぎてるし!」
「帰らないと……守らないと……生き延びないと!」
口から緑色の体液を吐きながらつぶやく薔薇原、右腕の蔓が伸び太く捻じれ巨大化していく。植物は益々体を覆い人間と認識できる部分はもはや頭部右半分だけになっている。
「あんな状態で元に戻れる?メタモルフォシスの事詳しくないけど……」
やりにくいとルキナは感じていた。これまでは凶悪なサイボーグ、異能者などに能力を振るい倒してきた。その結果重傷を負ったとしてもその後死亡したとしても気にすることは無かった。「思いっきりやれ」「責任は私が取る」と支部長ハリーに言われてきた事もあって罪悪感は無かった。
目の前の植物に覆われた者は悪意も無くただただ生き延びようとしているバクテリアの影響で能力が暴走し攻撃してきたとしても殺してしまうほどのダメージを与えて良いものか、そうしなければ止められない場合どうしていいかルキナは分からなかった。経験がたりていなかった。
「どうにかしてアイツを止めなきゃ……それか閉じ込めないと」
「ルキナちゃん!アレは危険!!」
小窓から叫ぶカレン、銃で窓ガラスを割り薔薇原に狙いをつける。
「やっつけてルキナちゃん、躊躇してると怪我しますヨ!」
7 発連続で撃つカレン。 5 発が薔薇原に命中し緑色の体液をまき散らす。
「ああああ……ヤメテ……助けて……」
言いながら薔薇原は巨大化した右手の触手を振るいカレンを狙う。小窓を粉砕しコンクリートの壁に触手を食い込ませる。本体の頭部が蔓の中に飲み込まれ中を移動する。
「!!」
3 秒後の小窓に突き刺さった右手の触手から頭部が現れ酸を吐きつける未来を見たカレン。壁から離れ銃を構える。そして顔が現れた瞬間 8 発の弾丸を打ち込んだ。
「ぎゃああ……ヤメテ……ヤメテ……………死んで!!」
3 秒の予知の後の 3 秒インターバルの後、再び未来予知を行うカレン。今度は 2 秒先薔薇原の動きを見て突進を回避。柱の陰に隠れて弾倉を交換する。
「カレン大丈夫!!」
ドアを突き破って出てくるルキナ、両手を上下に合わせヴォルテックスキャノンの構え。
続く
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