異能者特務機関: TMI 第 13 話「レインボーフォリナー 6 」
「……狂ってる!ここの研究所は狂ってるわ!」
ルキナは次々と繰り出されるコンクリートスパイクを弾く。
「所長は 1 億と引き換えに人体実験の参加者を募ったんだけど誰も志願しなくてね。俺も断った、だけど気が付いたら感染させられていた。仕事中に意識失って倒れて起きたら培養槽の中で浮いてたよ 3 日経ってたし。ゴリラの次は人間での実験さ、確かにここは狂っているね。でも結果は上々、俺は満足しているよ 1 億も振り込まれたしな!!」
「上にいたカエル男と植物女はどうなのよ、明らかにおかしい様子だったわ」
「バクテリアとの共生がうまくいかず自我の崩壊を起こした連中だね。適合してもああなったらどうしようもない。終わりさ、俺と違ってね。さてルキナちゃん君はめんどくさいし手ごわそうだ、もう十分データもとれたしここらで逃げようとも考えてるんだが」
「……ここを出てれたとしてもどこ行くつもり? TMI からは逃げられないわよ」
「アテはあるんだよね。それじゃあ君を大人しくさせてから壁の中を移動して悠々と外に出ていくよ」
「させない!ヴォルテックスバースト!!」
「プラズマ弾か、それは危ない」
回避しながら準備していたヴォルテックスバーストを放つルキナ。対してコンクリートの礫を大量に飛ばす砂川、ヴォルテックスバーストに衝突させる。砂川に届く前に爆発を起こし爆風が駆け巡った。
「そんな!」
「それは障害物が多いと使えないね。植物女との戦闘を見てたから知ってるよ」
床に潜りこんでいた砂川が立ち上がる。
「だから言ったよね?風属性の君では土属性の俺に勝てないって」
「そんなバカげた相性!関係ないわ!!」
「終わりだよルキナちゃん」
ルキナの全方位からコンクリートの波が押し寄せる。ルキナはバリアーでガード、コンクリートはバリアーごとルキナを包み込む。
「そのスペースの空気だけで脱出できるかな?無理だよね?このまま待つのは俺の趣味じゃないんで一気にイカせてもらうよ」
包み込んだコンクリートの形を変えていく。女性の頭部をかたどった筒状の拷問器具『鉄の処女の形』に変えていく。
「ああああああああっ……」
ルキナの叫び声が聞こえる。コンクリート中でルキナは無数のスパイクに刺し貫かれている。
「鉄の処女ならぬ石の処女ストーンメイデンってやつさ。運が良ければ助かると思うね。じゃあ俺はこれで」
石の処女が開かれると全身に刺し傷を負い血まみれのルキナはゆっくりと床に倒れた。
「ルキナちゃんっ!!」
カレンが飛び出し砂川に向けて銃を撃つ。弾丸はコンクリートアーマーに弾かれた。
「ハハハ!ハンドガンなんて俺には効かない!おまえは攻撃手段を持たない異能者だな?まぁなんでもいいか、お前もルキナちゃんと同じ目に合わせてやるか」
床からストーンメイデンを出現させて狙う砂川、カレンは予知で回避する。
「お?」
「マイケル!!アポートでルキナちゃんを回収シテ!!」
叫ぶカレン、 1 秒先の予知を連続で見て砂川のストーンメイデンを回避する。
『オーケーオーケー!通信聞く限りヤバそうだし一旦全員 1 階にアポートさせるよ!』
アポートを発動させるマイケル。ルキナとカレンは 1 階のワゴン車に転送され、すぐ後にフローレンス、哿、博士もワゴン車の近くに転送させた。
「通信を聞いてました、ルキナさんを診させてください!」
フローレンスがワゴン車のドアを開けてルキナの状態を確認する。両手をかざしすぐに治療を始めた。
「大丈夫です、私の力で治せます」
見る見るうちに傷が塞がっていく。
「体内にバクテリアの存在は確認できないので感染してはいないと思います」
「良かったねルキナちゃん……」
カレンは涙目でルキナの手を握りしめて言った。
「……長官、わたしが行きます」
アリナはルキナとカレン、フローレンスの姿を見て言った。アリナは早乙女ルキナの事は好きでは無いが、決して嫌いなわけではない。同僚の無残な姿を見て拳を握りしめた。
『……わかった、君に任せよう』
「哿さん、わたしをテレポートで運んでくれますか?」
「は、はい」
***
地下 6 階
「消えたか……まぁいい、俺は外に出るだけだ。ん?」
砂川の目の前にアリナと哿が現れる。
「また美少女が現れたか!ハハ!今度は金髪クール系に小柄ボーイッシュか!」
「お前を制圧します」
アリナは睨みつけながら両手両足のアンカーボルトをセットして言い放つ。
「は~ん、金髪の君はパワー系かな?それじゃそういう系のにはこうするね」
砂川の足元から徐々にコンクリートの床は液状化していく。
「底なし沼さ!もがけばもがくほど沈んでいくぞ!」
「哿さんは離れて下さい、巻き込みたくありませんので」
「わかりました、気を付けて……」
テレポートする哿。アリナは液状化する前の床を蹴り一歩で砂川まで接近。
「な……!!?」
「はっ!」
アリナはアンカーボルトの付いた右拳で砂川に殴りかかる。とっさにシールドを構えるもアリナのアンカーボルトの拳は易々とシールドを粉砕し砂川の左腕のアーマーを砕き、あらぬ方向に折り曲げた。
「は?」
「(長官が最初から自分に任せてくれていれば早乙女ルキナはあんな目に合わずに済んだ、ゾンビまがいの感染者を大量に相手にすることも無かった)」
長官の采配に不満と任されなかった自分の力量不足に憤りを感じるアリナ。
「いぎゃああああああああああ!俺の腕があああああああああああっ!!クソが!!痛えだろうがあああー!!」
遅れてやってきた痛みに絶叫する砂川。天井床左右からコンクリートスパイクを伸ばす。アリナは片足を上げ両腕は空手の回し受けを思わせる動きでスパイクを全て叩き折った。
「ああクソ!これだからパワー系は!!……いてぇ痛えよ~腕が痛え~」
連続で壁からスパイクを生やしながら下がる砂川、折れた左腕は新たに形成したコンクリートアーマーで固定する。
「ストーンメイデン!」
アリナの背後から現れた扉を大きく開いた石の処女が襲い掛かる。スパイクの付いた内部に収まる直前に内側からの打撃で粉々に砕く。
「ハア!?コンクリートだぞ??発泡スチロールじゃねえんだぞ!!」
接近するアリナ。砂川はアリナに全方向からのスパイクで攻撃をしながら下がっていく。
「ああくそ!近づくな!!近づくんじゃねぇ!!」
砂川は下の地下 6 階の一角が水で満たされてることを思い出し瞬時に床に穴を開けてアリナを落としにかかる。
「フゥッ!」
足元に突如現れた落とし穴、アリナは大きく息を吸い込み噴き出す勢いで空中移動、横の壁を蹴りピンボールの如く跳ねて砂川に接近。
「うおおおおお!?ガ、ガードだ!!」
砂川はルキナのドリルを防いだ粘土状の高反発壁を出現させる。アリナのアンカーボルトをセットした拳が壁に突き刺さる。
「ハハ!フハハハハハ!!硬くてダメなら柔らかいので対処する!!」
「無駄です」
アリナは左のアンカーボルトも突き刺し、勢いよく左右に広げ壁を引きちぎる。そして裂け目から飛び出し、砂川の腹に蹴りを叩き込んだ。
「がっ」
砂川は弾丸めいて壁に衝突しコンクリートアーマーを砕け散らしながら飛んで行く。
「ゲボオオオオオ……(い、息ができねぇ!戦車砲を受け止められる構造にしたはずだ、外は硬く中は柔らかく……)」
頭部のアーマーを解き吐瀉物をまき散らす砂川。アリナはゆっくりと距離を詰める。
「(くそ……死にたくねぇ……あれは無理だ、俺にはどうにもできねぇ!くそくそくそ! TMI にあんなのがいるだなんて知ってたら最初から逃げてんだ……)」
痛みと衝撃のダメージで這いつくばった姿勢のまま動けない砂川。
「(体をコンクリートと同化して逃げるしかねぇ……)」
床と同化する砂川。それを見たアリナは歩みを止め知覚を更に強化して研ぎ澄ます。
「そこです」
アリナはアンカーボルトの付いたブーツで左下を踏み抜く。コンクリートの床が砕け中に潜んでいた砂川は左足を潰された状態であらわになった。
「ひぎいいいいいいいいいいい!!」
「終わりです」
アリナは猛獣めいた目線で砂川を睨みつける。
「ちくしょう!畜生!チクショウー!……俺は強い、俺はバクテリアに選ばれたんだ!こんなみじめに這いつくばっていいはずがない!もっと……もっともっともっともっと俺は進化できる!!」
砂川の体は灰色のコンクリート色に変化していく。床のコンクリートを摂食するかのように取り込んでいく。これまでとは違い取り込んでいる。
「俺は……俺が俺こそがコンクリートになれば!!」
液状化した砂川が立ち上がり人型を取った後ビジネススーツ姿に変化、髪をかき上げネクタイを調整した。
「まだ……終わりじゃねえぞ!!」
「そうですか」
正拳突きの 2 連打を叩き込むアリナ。ガードした両腕を砕け散らす砂川、しかし次の瞬間破片は集まり元の姿へと戻る。
「フハハハハ!はぁーはっはっはっは!痛みも感じない!俺はコンクリートになった!!この施設すべてを取り込んでやるか?」
高笑いする砂川に連打を浴びせるアリナ。両手両足を粉々に粉砕する。
「ハハ!わざわざ加減して手足を潰してくれてるのか?いいぜどこでも打って砕いてみろよ?無駄だって証明してやるからよ!」
周囲のコンクリートを集め手足を巨大化する砂川。
「と、思ったが俺のターンだ!!」
アリナの背後に砂川がもう一人現れ殴りかかる。アリナは振り向きざまに拳を振り分身砂川の腕を粉砕する。
「こっちだこっち!」「こっちもだぜ!」「ハハ!こっちだ!」「くらえ!!」
天井壁床から出現する砂川。
「全方向俺だ!!」
飛び掛かる砂川をアンカーボルトの拳で打ち胴体に穴を穿つアリナ。
「ハハ!そんなことをしても無駄だ!内臓もコンクリート化してある瞬時に再生だ!」
「……」
「この世のすべてのコンクリートは俺になる!!世界最強無敵能力者ってか!!」
壁に巨大な顔を出現させて笑う砂川。
「さぁさぁさぁ砕いてみろよ!パワー系の君は土属性、俺も土属性!互角の相性だがその時は力の強いものが勝つって訳だ!!」
「四大元素説……」
「あ?知らねえよそんなもん!属性は世界の常識絶対的な相性!!アニメでもゲームでもそうなってるんだよ!!」
「お前は偶々運よく早乙女ルキナを斃しただけ、四大元素説とは関係ありませんよ」
壁の顔を粉砕するアリナ。床に巨大な顔を出現させた砂川はアリナに噛みつきかかる。
「ハハ!俺は無敵最強!!もはやこれはカテゴリー5をこえたカテゴリー6なのでは?」
「……」
アリナは身体強化の強度を上げる。そして床の砂川を殴りつける。
「ほほう!更にパワーを上げたか!だが無駄だ!!」
床は下の階まで粉砕され水の溜まったフロアーが見えている。
「(無敵の能力なんてありえない……この者がカテゴリー6なんてありえない……バクテリアで進化したのならバクテリアを完全に粉砕すれば……)」
知覚を上げていくアリナ。わずかな空気の流れ、音、匂い、目に映る全ての動きに集中する。
「超微細コンクリートになって肺の中から突き破ってやろうか?パワー馬鹿でも肺は鍛えられねぇだろ!」
砂と化す砂川の動きを更に知覚を上げ観察する。今のアリナには世界が 10 万分の 1 のスローモーションに見えている。
「(飛んでくる砂粒にバクテリアは見当たらない。背後の壁の振動は配管のもの。反対側の壁の熱反応は電気ケーブル……敵はわたしを見ている、見えている所に必ずいる)」
砂粒を回避し壁に体をつけるアリナ。指で壁をノックして音を聞く。
「何!速い!!」
砂川にはアリナが瞬間移動にも似た速さで動いているように見える。
「(壁の中で何かが動いた……不規則な動き……)」
アリナは向かいの壁に狙いをつけアンカーボルトの拳を叩き込む。拳を打ち込んだ厚さ 2 メートルの壁は半径 4 メートルの穴を空け後ろの岩盤は剥き出しにしてくり抜かれトンネルを作った。
「ごげええええええええええええッ!!!」
人型の砂川は一瞬で生身に戻り目鼻口から血を噴き出した。
「なななんなななあ?どうなった……??」
「バクテリアの声は今でも聞こえますか?」
「ああ!?……おい、なんだよ……聞こえねえ……ごええええええええ」
大量の血を吐く砂川膝から崩れ落ちて倒れる。
「どうやらバクテリア完全適応者でも弱点はあるようですね」
「ばばばばばバクテリアがなくても俺は最強……だ!」
手をかざす砂川、体はコンクリート化しない。
「どうなってる!」
砂川の手は徐々に土気色に変化、全身に広がっていく。
「は?はあ?何だ!!なんなんだあああ!!」
立ち上がろうとする砂川の体は徐々に変化していく。顔は犬の様に尖り始め牙が生え目は生気を失っていく。
「ナンナンダ……オレハ……サイキョウ……」
続く
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