異能者特務機関:TMI 第 2 4話「雷帝」
瓦礫の下敷きになっている枩島を発見したセレスティアは彼女の頭部の装甲を取り外し首からナノマシンを注入する。
「これでとりあえず死ぬことはない。枩島を近くの病院に連れて行くから病院に連絡しておいて」
『了解』
枩島を抱えて飛び上がるセレスティア。
『札幌 KES 研究所に向かう多数の敵勢反応を確認』
「そう……あの研究所はどのくらい持つかしら。私の住んでいる TMI の研究所と違ってセキュリティは大したことない、雷帝のお手並み拝見ね」
病院に到着したセレスティア。玄関に駆けつけた看護師に手短に状態を説明し量産型スーツを解除して枩島を担架に乗せる。
―札幌 KES 研究所。
群れを成して飛ぶ戦闘スーツとドローンの様子は見てる者にまるで意思のある一つの生物かのように思わせた。
窓から侵入した戦闘スーツとドローンは次々と扉を打ち破って突き進み、一直線にサーバー室に向かう。そして雷帝フョードルのハッキングしている部屋に飛び込んだ。
「ぬうううん!」
振り向きざまに片手をかざし電撃を放つフョードル。先に飛び込んだ戦闘スーツとドローンの数体は粉々に打ち砕かれた。
「イワン、アントン!ここの守りは任せる!!研究員の女!!雷帝に代わりプログラムでの攻撃を続けろ。貴様などが電人 G の相手が務まるとは思えんが時間稼ぎくらいはできるだろう?」
「はい閣下!」イワンとアントンが同時に返事する。「や、やってみます……」体をこわばらせて研究員・長神が返事した。
「小賢しい機械共が!薙ぎ払ってくれる!!」
電気を全身に纏い、電磁力で侵入してくる戦闘スーツドとローンを引き付けて一気に突進。まとめて一塊にしたそれらを窓の外に勢いよく投げ捨てる。
「ぬん!」
電撃を撃ち込んで空中で破壊する。そして跳躍、研究所の屋上に立った。見上げたフョードルの頭上には 100 体を超える戦闘スーツとドローンがうなりを上げ群れで蠢いていた。
「この程度!雷帝の裁きの天雷を受けるがいい!!」
全身に電気を纏わせ空中に留まるフョードル。青白い稲妻が走る球体が体を包み込む。
「ぬうううりゃああああああああっ!」
全身からテスラコイルの放電の如く放出される稲妻。空中に浮かぶ戦闘スーツとドローンは回避する間もなく裁きの天雷を受け次々と爆発していく。
「ふはははははははっ!」
後方に控えていた残る戦闘スーツとドローンは一斉に集まり体を合わせ巨大化していく。
「個々では敵わぬと見て合体か!だがそれだけだ!!打ち砕いてくれる!!」
片手を上げるフョードル。上空の雲が急速に集まり雷雲に成長していく。
「断罪の雷槌を受けるがいい!!」
合体途中の機械に巨大な雷が落ちる。周辺のビルの窓ガラスを揺らす程の爆音が鳴り響いた。
「ぬ?」
砕け散った機械群の中に銀色に輝くひときわ目立つ人型が立っていた。目は紅く輝き、口は鋸状に上下に開き耳部には角状の物が湾曲して生えている。
「機械共の大将か!」
「ワタシは G 。オマエだな電脳世界でワタシに挑んできた者は」
「ネットワークから出てきたか電人 G !!跡形も残さず破壊してやるぞ!!」
「愚かな」
電撃を浴びせかけるフョードル。電撃は逸れ G の周囲に拡散する。
「ほう、電磁シールドか。ならばこれはどうか?」
電磁力で戦闘アーマーの残骸を引き寄せるフョードル。指先から青白い光を放しアーク切断機の要領で戦闘アーマー三角錐にカット、そしてそれを空中に浮かべる。
「でりゃああっ!」
電気を帯びた青白い拳を三角錐の金属片に叩きつける。その瞬間ドーナツ状の衝撃波が広がり三角錐は G に向かって加速する。
「……」
軽く体を反らして躱す G 。
「質量の大きな物体を電磁シールドで受けなかったのは褒めてやろう」
「アクシオン粒子を使った重力場を発生させるシールドならば完全防御も可能、だがエネルギー効率が悪い。よって金属粒子を利用した電磁シールドでの防御を考えたがお前の射出した金属片を受けきれる強度を 0.3 秒で形成することは不可能と考え回避した」
「 3 流の異能者ならばそこで判断を誤り何が起きのか理解できずに敗北する。貴様は違うようだな G !」
「ワタシは電人 G 。人間・五所川原振之助を超えし存在。お前たち TMI の基準に当てはめればカテゴリー5に収まらないだろう。すなわちカテゴリー6、ワタシがお前に敗北するなどありない」
「挑発か!どの道貴様はここで粉砕する!!」
金属片を体の周囲に浮かべたまま飛翔するフョードル。 G との距離を詰める。
「レールガンだ!!」
フョードルは電撃でレールを形成。そこに金属片を浮かべ G に狙いを定める。
「その金属片の大きさから燃え尽きる距離を計算してワタシとの距離を詰めたか。ならば離れればどうする」
「阿呆が!この雷帝を見くびるなよ!!裁きの天雷!!」
全身から巨大な電撃を放つ。対する G は空中で電磁シールドで防御。
「その状態では身動きできまい!!レールガンを喰らえぃ!!」
「見くびっているのはお前だ」
フョードルの下、ビルの屋上から瓦礫を突き破って機関砲が現れる。
「ちいっ!」
レールガンを下に撃ち機関砲を破壊するフョードル。そのわずかな隙に G は接近。銀色のボディを輝かせ殴りつける。
「ぬううん!」
電磁シールドを突き破る G の拳はフョードルの腕に命中。
「ワタシのパンチは TMI 研究所での戦闘状態の終夜アリナに匹敵する。これは戦闘用車両の砲撃に匹敵する」
連続で拳を繰り出す G 。フョードルは電撃を放ち距離を取る。初撃を受けた左腕は激痛が走り感覚が鈍っていた。
「ぬううううあああああああっ!」
体内電気を操作し身体を強化するフョードル。同時に再生力も上げる。
「なるほど……ここからは慢心は捨てよう。全力で貴様を叩き潰す!!終夜アリナと同等の膂力?そんなものこの雷帝の足元にも及ばぬことを証明してやるわぁ!!」
「愚かな」
フョードルの周囲に戦闘車両の残骸と戦闘スーツ、ドローンが浮かび上がる。
「邪魔だ!裁きの天雷……」発動する刹那、一瞬速く戦闘スーツらから緑光線が放たれる。
「これは……プラズマレイ!」
「いつまで持つかな」
四方八方からプラズマレイを放ち続ける戦闘スーツ群。緑光はプラズマ流体となりフョードルを包み込んでいく。
「こんなもの!電磁流体衝撃波で押し返してくれるっ!」
「そうすることは想定していた」
包み込んでいるプラズマ流体の波動を感知し、押し返しにかかるフョードル。プラズマ流体は四方に散っていく。
「なにっ!?」
その隙を狙い肉薄する G 。電磁力で加速したプラズマ拳を放つ。
「ぬがああああああああああああああああっ!!」
咄嗟に電気操作で身体能力を強化するフョードル。胸の前で腕を十字に構え電磁加速プラズマ拳を防御する。腕は焼け衝撃波がフョードルの体を駆け巡る、そして弾丸めいて吹き飛ばされ下のビルに激突した。
「あの一瞬でガードするとは。だが今の一撃で勝負はついた。ワタシはお前のデータを持っていた。ネットワークで手に入れたデータから終夜アリナの打撃力、セレスティアのプラズマ能力、超合金のボディを組み合わせて挑んだ。こうなることは必然」
「がはっ……馬鹿な……」
「お前はカテゴリー 5 の中でも上位の戦闘能力を持つ異能者だ。だが一人でワタシと戦ったのは間違いだったなその慢心が命取りとなったのだ。終夜アリナやワタシの事を知り尽くしているセレスティアと組んでいればこのような事にはならなかっただろう」
「…………」
「もはや虫の息だな。両腕は損失、内臓破裂、全身 30 ヶ所の骨折か」
ゆっくりと下降する G 、フョードルの前に降り立つ。そして掌を頭部に乗せた。
「死ぬ前にお前のデータを全て貰う。これでワタシは更なる進化を遂げるだろう」
「おの……れ……」
「電人( DigitalMan ) =Goshogawara からワタシはやがて DigitalGod へと至る。雷帝よ、お前は帝王から神の一部へと進化できるのだ……もはや聞こえてはいないか」
気絶するフョードル。 G は脳波を解析しダウンロードを続ける。
「作業完了まで残りやはり頭部を持ち去ってユニットに接続したほうが効率がいいか。いや、カテゴリー 5 は制御できるか不明、このまま作業を続けた方が安全」
G は数十メートル先にある札幌 KES 研究所を視線を移した。
「邪魔者の残りはあそこか」
フョードルの破壊を免れた戦闘スーツとドローンは一斉に札幌 KES 研究所へ向かって飛んで行く。
「作業完了までの時間を稼がせてもらおうか」
札幌 KES 研究所内に戦闘スーツとドローンがなだれ込む。セレスティアの量産型スーツを着た長神は動揺しながら両手を前に突き出しプラズマレイで迎え撃つ。
「うあああああああっ!!」
破壊されていく戦闘スーツ。
「下がれ!」「シールドの中に入れ!」
イワンとアントンが叫ぶ。敵ドローンから対人小型ミサイルが放たれる。
対人ミサイルはイワンのサイコキネシスを利用したエネルギーシールドで避けたものの天井に命中。大きな音を立てて崩落し始める。
「不味い!」「この重量と質量は受け止めきれん!!」
「だ、脱出です!」
サーバー室から廊下に出る三人。そこには無数の戦闘スーツが待ち構えていた。
「閣下からの連絡は?」「まだだ!」
「どどどどうしましょう!囲まれています!!」
「強行突破しかない!」「外に出て閣下と合流だ!!」
「セレスティア博士は!?枩島さんは!?」
「通信が途絶えた」「残念だが……そういうことかもしれんな」
「そんな!」
『 GIYYYYYYYYYYYYYYYYYYNNNNNNN !!』
戦闘スーツが一斉に叫びをあげる。その音を聞いた三人は強烈な頭痛でその場にしゃがみこんだ。
「アガガガガガ……」「頭が割れそうだ……」
「あああああああぁぁぁ」
膝をついたまま耐えるイワン、シールドが薄れていく。アントンは嘔吐して昏倒、白目を剥いている。長神は耳を手に当て伏せている。そして再びドローンからミサイルが放たれた。
「作業完了まであと 60 秒……」
札幌 KES 研究所の爆発音を聞いた G は確認するようにつぶやいた。
「……」
後方上空から接近する者に反応する G 。
「電人 G 」
降りてきたのは戦闘スーツに身を包んだセレスティア。
「何をしに来たセレスティア」
「貴方を見かけたので」
「やりあうつもりかね?」
「まさか」
「だろうな、結果の分かりきっているそんな茶番に付き合うつもりはない」
「超高速ステルス潜水艦ポセイドン。脳波コントロール飛翔兵器ナポレオン。攻撃衛星ソール・ハンマー」
「……そうか、隠しておきたい奴が持っていた兵器を手に入れたって訳だ」
「で、どうするの?」
「言っただろう?茶番に付き合うつもりはないと。ワタシを止められるものなどいない」
「 TMI を甘く見ない方がいい。それと……念爆者を名乗るあの異能者を」
「フ……ここは退くとしよう、作業も完了した事だしな」
「フョードルはまだ生きている?」
「ああ」
G はフョードルの頭から手を放し飛び上がる。
「……」
一瞬だけセレスティアに視線を向けた G は両手両足からジェット噴射上空に飛び去った。
「雷帝も G には勝てなかった……か」
無表情のセレスティアは応急処置のナノマシンをフョードルに打ち込み、煙の上がる札幌 KES 研究所に向かった。
火災報知ベルが鳴り響く札幌 KES 研究所、戦闘スーツとドローンが建物を取り囲み砲撃を繰り返している。セレスティアの接近に気付き一斉に振り返った。
「 Adele 浸食は?」
『既に解析は完了しています可能です』
「そう、実行する」
『了解しました』
G に制御を奪われていた戦闘スーツとドローンを支配下に置いて行くセレスティア。
「嫌がらせのつもりだったのかしら」
『不明。男性の恋愛感情心理に構って欲しい、気持ちを察して欲しいなどがありその場合嫌がらせといった行動を取る場合があります』
「生身の時から変わってないのねそういう所は」
『思考、行動パターンは五所川原振之助と G の相違点はそう多くありません』
「 Adele 貴女も似たようなものなのだけど」
『私はマスターに生み出されたアデル・ホワイトをモデルとした AI です。故人であるアデルと面識はありませんので比べる事は不可能です』
「そう、そういう所がアデルなの。貴女はとても良い AI よ」
『光栄です』
「さぁ、長神さんたち作戦チームのメンバーを探しに行きましょう」
『了解』
続く
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