異能者特務機関:TMI 第23 話「念爆者(サイコボマー5)」
「しかしこの傷でよく助かりましたね」
フローレンスはイグネイシャスと土御門に向けて言った。
「俺は異能を利用してオートガードしたからね。実際危なかったけど……本当なら皮膚を貫通させないはずなんすよねぇ」
イグネイシャスは首と胸をさすって言った。
「小生は身代わりの型紙を用意していた。どういう原理か分からないが発動を後らされた、そのせいでこのような傷を負う羽目になった」
土御門は小さな人型紙を取り出して見せた。
「時間差が起きた……と?」
フローレンスは弾丸の軌道をジェスチャーでして見せた。
「そんな感じっすかねぇ」
「そうかもしれんな。金縛りの類ではない、その程度で呪(しゅ)をかけた型紙が遅れる事などないからな」
「もしかして空間制御……」
哿がつぶやいた。
「空間制御って……そんなもの実在が疑われるものっすよ?」
「あり得なくはないです……虹の光事件の後に現れた神を名乗る異能者がそれを使えたと長官から聞いたことがあります」
「異次元干渉からの並行世界移動もしくは自身でそれを観測しながら制御……か。希代の陰陽師でもできたかどうか」
土御門が頭を振った。
「つまりどういう事でしょう……?」
「時間停止という事になるのではないか?」
フローレンスの質問に土御門が答えた。
「時間停止……」
「時間停止とは全宇宙の動きを停止させる事になりませんか?」
アリナが言った。
「うーむ……小生にはそこまでは」土御門は腕を組んでため息をつく。
「長官曰く、テレポート系の異能で時間の流れが違う異次元の一種に干渉し行動できるといったもの……と聞いています」
哿が言った。
「よくわかりませんね……」
アリナはタブレットを眺めている。
「僕もテレポーターですが完全には理解できません。僕の場合異次元への干渉は座標演算する時にイメージとしてあるものなので……」
「わたし達のいる次元から移動してそこで行動出来るのならすり抜けも自在にできる気がしますが」
「肉体は異次元へ移動はしてないのではないでしょうか」
「時間の流れが違う異次元の影響を肉体が受けて行動すると?」
「僕の想像ですが……どのくらいの時間の長さ停止できるのか分かりませんが、仮に 9 秒だとしましょう。その 9 秒の間異次元の時間の感覚で動けるではないかと。テレポートと違い移動して消えて戻って来るのではないと考えます」
「なるほど……わたしたちの次元の法則を無視した超加速と考えれば分かります。対策はやはりテレパスによる演算妨害になりますか?」
「有効だと思いますが」
「問題は射程範囲っすね……仮に 9 秒止められるとしたら 50m は離れていないとやられる危険性がある。当然向こうもテレパス対策は取って来るはず」
イグネイシャスはタブレットからヘルメットの画像を表示させる。
「これは過去の異能者大戦の時に念爆者が耐テレパス用に被っていたものっす。奴が念爆者組んでいるのならこのヘルメットを持っていても不思議じゃない。最悪なのは奴と念爆者を同時に相手する事……それだけは避けたいっすね」
「近づく事さえできれば……わたしが仕留めます。時間停止されても爆破されても常時強化状態で耐えて全力の一撃を叩き込みます」
アリナはガントレットの拳を握りしめて言った。
「それは最後の手段ってことにしようぜアリナちゃん。相手がまともにやりあう気が無いのなら逃げながら攻撃されてこっちの詰みっす。 TMI 総動員で奴らを仕留めるんすよ」
「……一理ありますね。敵がわたしと戦う気が無い場合は考えていませんでした」
「追い詰めるんすよ、チェスや将棋のようにじりじりと。逆にこっちがやられないように警戒しつつね。さて、本部に報告を上げるよ。北海道に着くころには何か指示があるはず」
***
―数時間前。北海道札幌市内。
「フン!ネットワークからの足取りをたどり電人 G を追えだと?笑わせるな!!この雷帝にそんな小細工は必要無い!!こちらに引きずり出してやるわ!!」
ロシア支部長、雷帝フョードルは研究員長神と枩島に怒鳴りつける。
「弱小国の低能共は下らぬことを口にせず黙って見ておけ!!いいか、貴様らは人数合わせにすぎぬ。戦闘が始まっても我らは貴様らを守ることなどせん自分の身は自分で守るのだな!!」
「博士~……」
「こわい!博士……」
長神と枩島はセレスティアに振り替える。
「雷帝殿のお手並み拝見といきましょう。長神さん枩島さんは私のスーツを装着していればそうそう死ぬことはありませんよ」
「フン!では始めるぞ!!」
「はい閣下!」フョードルの従者イワンとアントンが同時に声を上げた。
イワンはドーム状のエネルギーシールドを展開、アントンは疲労を軽減させる光で二人を包み込む。
「電脳戦においてもこの雷帝は無敵だという事を分からせてやるぞ電子生命体!」
端末に手を置き異能を発動させるフョードル。意識の半分をネットワークに走らせて電人 G の痕跡を追う。
「ぬうううううううううううううううううおおおおおおおおおおおおおおお!!」
フョードルの腕から電光が迸り周囲を照らす。セレスティア、長神、枩島はアーマーを装着する。
「攻勢プログラムで迎え撃つか……全て粉砕してくれる!!」
電脳世界を進むフョードル。電人 G の放った攻勢プログラムを破壊していく。
「これは……日本近海に潜航していた正体不明の潜水艦がハッキングされミサイルが発射された。ここに向かって飛んでくるぞ!」
「私が何とかしましょう」
「女、弱異能者にできるのか?」
「ええ、異能の強さではなくこの戦闘スーツの力で」
飛び上がるセレスティア。異能と連動するスーツのリアクター。全身から緑光を発し加速する。
「 Adele ミサイルはどこに?」
AI に話しかけるセレスティア。
『南西に確認。到達まで約46秒です』
「ちょうどいいわ、新型の迎撃ミサイルのテストを行いましょう」
『了解、ターゲットロック』
「発射」
肩から超小型ミサイルが発射される。
『ターゲット軌道を変更。迎撃ミサイル再追尾を開始』
急激に速度と軌道を変化させるミサイル。セレスティアの放った迎撃ミサイルは Adele の指示でミサイルを追う。
軌道を変えるミサイル、その変化に合わせ迎撃ミサイルは Adele の指示を受けずとも自分で判断して追いかける。
『ターゲットに命中。全対象の破壊に成功』
「ふふ…… Adele 迎撃ミサイルの実戦データを保存。 BS サーバーを更新」
『了解。ユニットの30%が興奮状態』
「そのままでいいわ。そのほうがいい」
『了解。経過観察を続けます……フョードル・ヴァシリエヴィチから入電』
「繋いで」
『雷帝だ!ミサイル撃墜は成功か?失敗でも構わんぞ、ミサイルが降り注ごうが雷帝が撃ち落としてくれる』
「成功です、これより戻ります」
『フン!精々邪魔にならないようにしてろ』
フョードルは更にネットワークを進む。
「奴め、コピーをばら撒いているのか……これは」
研究室の外で大きな爆発音が聞こえた。
「テレビ塔の方ですね……」
「近くを飛んでいる偵察ドローンの映像を出します」
長神と枩島が言った。
「あれは!」
「そんな!軍用パワーローダーが暴れています!!死傷者が出ている模様!!」
「こちらに向かってきています」
連続で爆発音が聞こえてくる。
「また!?」
「戦闘スーツにドローン……戦闘車両が!」
「一体だれが?」
「騒ぐな女ども!!それらは電人 G の操る兵器だ!!」
「こ、こんな数対処しきれません……」
「泣き言は聞かん!時間稼ぎ程度の事はやれ、その間にこの雷帝が電人 G を引きずり出してくれる!!」
「博士……どうしましょう?」
セレスティアを見る長神と枩島。
「 TMI 本部に応援要請を。私は出て応戦します、時間稼ぎ程度はできるはずです。あなたたちのスーツにもプラズマレイが装備してありますので身を守る事は出来るでしょう」
「私もお供します、博士一人に行かせるわけには!」
枩島がスーツのヘルメットを装着する。
「では一緒に時間稼ぎに行きましょう」
慣れない枩島に合わせて二人は低空飛行で市街に向かう。
「ああ……」
車は炎上、逃げ惑う人々、破壊されていく建物。動かなくなった人の群れが二人の目に飛び込んで来た。
「これ以上被害を広げないように私たちに敵を引きつけますよ」
セレスティアの両手からプラズマレイが発射され電人 G の戦闘スーツを破壊する。それを合図にドローン、戦闘車両、戦闘スーツらは一斉に二人の方を向いた。
「ききき来ます!うあああああっ!!」
プラズマレイを連射する枩島、ドローンを撃ち落とし戦闘スーツにダメージ与える。
「無駄撃ちはしない方がいいですよ枩島さん、貴女は逃げ回りながら攻撃してくる敵だけを狙ってください」
「セレスティアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
戦闘スーツが同時に叫ぶ。
「ふふ……」
飛び掛かって来る戦闘スーツ達、セレスティアはプラズマレイで迎撃していく。
『マスター、敵戦闘スーツの破壊に必要な出力は20%以上、出力の増加もしくは異能力の更なる使用を推奨します。10%での使用を続けますか?』
「ええ、10%でいいわ Adele 」
『了解』
セレスティアの10%プラズマレイを受けた戦闘スーツは数発の攻撃を耐えている。
「ああ……博士が……」
枩島の目にはセレスティアが大勢のドローンと戦闘スーツに追われ苦戦しているように見えている。
増え続ける戦闘スーツ、ドローンはやがてセレスティアと枩島だけを追うのを止め研究室に向かって飛んで行く。
「ああああ……やっぱり無理だったんだ……役に立てなかった……」
「そんな事はありませんよ枩島さん、戦闘員でもない私達二人でこれだけ食い止めているのですから。敵はまだまだ居ます頑張りましょう」
「あ、あ、はい!」
『敵戦闘スーツ群の中心のパワーローダーから高エネルギー反応』
「何を見せてくれるのかしら」
戦闘スーツ、ドローンが高エネルギーのパワーローダー中心に集まっていく。パーツを変形させ巨大な人型を作っていく。
「か、怪物です!博士!機械の怪物ですよ!!」
「セレスティアアア AHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH !!」
体長20 m 程の機械巨人が咆哮を上げる。
「ふふ……そう来ますか。 Adele 出力を50%に上昇」
『了解』
「 GAHHHHHHHHHHHHHHHHHH!! 」
車を投げつける機械巨人、セレスティアは空中回避してプラズマレイを撃ち込む。機械巨人の右手部が吹き飛んで散らばった。しかし機械巨人の右手部に戦闘スーツ、ドローンが集まり元の形に再構築される。
『マスター、コアとなる機体の破壊を推奨します。必要な出力は80%』
「出力は上げない。破壊にはソール・ハンマーを使うわ」
『了解、ソール・ハンマーに接続。発射まで10秒……座標をセット』
機械巨人は口を思わせる部分大きく広げ内部にエネルギーの充填を開始。
『敵から急上昇の熱源反応。ソール・ハンマーを中断しますか?』
「いいえ、発射可能になり次第撃って」
『了解。ソール・ハンマー発射』
上空の雲をかき消し機械巨人に光の柱が撃ち込まれる。太陽エネルギーを利用した衛星の攻撃は半径50 m を焼き尽くす。機械巨人の体の表面は融解し重なった戦闘スーツ、ドローンを貫き内部のコアとなっているパワーローダーを破壊。それと同時に爆発四散した。
「!?」
「博士ー!」
爆発に巻き込まれるセレスティアと枩島。吹き飛ばされ倒壊する周囲のビルに激突。
『機体左肩部を損傷、マスターの左肩部に軽度の火傷と裂傷を確認。鎮痛剤を投与。ナノマシンで機体と身体治療を開始します』
「……この爆発は何? Adele 」
『敵爆発の原因を予測……爆炎の様子からプラズマコアの崩壊によるものと思われます』
「そう、プラズマコア搭載型……試作機がまだあったのね。ところで枩島はどうなった?」
『検索……量産型スーツから枩島大弼の生命反応を確認。量産型にはナノマシンは搭載されていない為現段階での治療は不可能です』
「回収に向かうわ」
『了解。座標を表示します』
セレスティアは爆発で傾いたテレビ塔を一瞥した後、枩島の座標に向かって飛んだ。
続く
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