異能者特務機関:TMI 第 26 話「アポカリプス 2 」
「ヌウウウン!」
ヘッドスプリングで起き上がった男は出血している清涼院の右足を狙ってローキックを放つ。対する清涼院は足を上げてガード、痛みに耐えながら衝撃を床に移して耐える。
「お前は衝撃、摩擦には強いが斬撃、刺突にはそれほどでもないようだな」
「そんな事は僕自身が分かってるさ、だから防御力にだけ頼る使い方はしないんだ」
両腕を床に叩きつけ衝撃波を男に放つ清涼院、バランスを崩す男に接近。
「百撃・力波だ!!」
衝撃波を張り手と共に体内に送り込み反射させ全身にダメージを与える撃・力波を連打する清涼院。
「ヌン!筋力180%アップ!!」
清涼院の百撃・力波の張り手に合わせ拳を繰り出す男。両者の打撃がぶつかり合い破裂音が体育館に響き渡る。
「やるな……だが筋肉は全てを解決する!!筋力190 %アップだ!! 」
「馬鹿な!百撃・力波の激痛に耐えられるはずが!!」
「衝撃は筋肉で抑え込んでいる!俺の筋肉は常人のそれを遥かに超える!!その筋肉が190%アップしているのだ!!負けるはずがないだろう!!」
徐々に押していく男、打撃の衝撃を散らせ、下がりながらも清涼院は張り手で応戦する。
「どうしたどうした!!痣が出来始めているぞ!!集中力が切れてきたか!?」
「くっ……(まずい、僕の限界連続異能使用時間を超えそうだ)」
膝から崩れ落ちる清涼院、男の丸太のような蹴りが頭部に命中する。咄嗟に衝撃を散らすも脳震盪を起こし床に仰向けに倒れた。
「止めといくか!安心しろ、脳だけは無事に殺してやる」
倒れている清涼院の首に手を掛ける男。
「清涼院!」
「清涼院ー!」
狼谷と虎屋が体育館に駆け付けた。
「部下を斃してここに来たか、ただの雑魚ではないようだな」
「なんなんだテメェらは!!」叫ぶ狼谷。
「逃がさねーぞ!!警察が来るまで今度は俺たちが相手になってやる」シャドーボクシングをして言い放つ虎屋。
「……あの子に叩きのめされて機関の訓練生になって僕たちは変わったんだ」男の手を払いのけて立ち上がる清涼院。
「アイツに俺たちを認めさせてやるんだ」
「ああ、一流のエージェントになって並んでやるぜ」
狼谷が最初に仕掛ける。体重操作で飛び上がり男の顔面目掛けて蹴りを放つ。
「くらえ!」
インパクトの直前に体重を増加させ威力を上げた狼谷の得意技サイコドロップキック。その衝撃力は 5 トンに達する。
「ヌン!」
腕を十字にして受け止める男。
「オラァ!」その右側から虎屋がエアジェットで踏み込み加速した右ボディブローを撃ち込む。「ボディが空いてるぞ!!」
狼谷と虎屋は攻撃を加えるとすぐに離れる。入れ代わりに接近する清涼院。右手を床に叩きつけ前方に範囲を絞り間欠泉のように衝撃波を放つ。
「爆・力波だ!」
「ヌウウウウ……」
たたらを踏む男。その表情は笑みを浮かべている。
「いいぞ!そうでなくてはな!!ここからは筋力200%アップで相手してやる!!」
突進する男、ショルダータックルを狼谷に仕掛ける。狼谷は体重を減らし羽毛めいて衝撃を受け流す。
「ゴッフォッフォ!そこだ!!」
宙に浮いた狼谷の足を掴み床に叩きつけ踏みつける。
「がはっ!」
「野郎!」
エアジェットでジグザグにステップを踏んでラッシュを仕掛ける虎屋。男は両腕を広げ全力で拍手を打った。
「!?」
強烈な破裂音に虎屋の動きが一瞬止まる、その隙に男は体をねじり右ストレートを放つ。
「しまっ……」
左腕でガードする虎屋、もんどりうって床を転げる。左腕の骨が砕ける音を聞いた。
「狼谷!虎屋!うおおおおおおおっ!」
清涼院は出血する右足の痛みに耐えながら男にぶちかましをくらわす。
「ゴッフォ!中々のぶちかましだな!俺の全身に衝撃波が走っていった」
「く……(今のが僕の全力だったのに!)」
「ヌウン!」
清涼院の背中にハンマーナックルを撃ち込み床に叩きつける。
「げはっ……」
「立てるかな?200%の俺のパンチは約10トン、骨が砕けなかったのは運が良かったな小僧」
「ま、まだだ……」
「ほう、立つか!で、どうする?周りの雑魚共は見てるだけで援護もしないな?異能者を集めた学園だと聞いていたがこんなものか」
「僕たち三人は……この学園の代表だ、生徒の皆を守らないとね」
「そ、そうだ!」わき腹を押さえて立ち上がる狼谷。
「いつつつ……そういうこった!」左腕をかばいながら体を起こす虎屋。
「まだ気力が萎えてないか」
「お前なんかよりもっと強い子を知ってるんでね」
「アイツに比べたらどうってこたぁない」
「これっぽちも怖くないな!」
「良いだろう、ならば500%で相手してやる!あっさり死んでくれるなよ?」
「……来い!」
「ゴッフォッフォ!俺はアトラース!無謀な者ども名を名乗るがいい」
「清涼院宏昌」
「狼谷 猟だ」
「虎屋 伝だ覚えておけ!」
「いいぞ、お前たちは優秀な異能兵士になれそうだ。この俺には及ばないがな」
「……生徒の皆!逃げてくれ、僕たちはこのアトラースに勝てないかもしれない!」
「時間は稼いでやる!だから速く!!」
「おまえら俺たちの頑張り無駄にすんじゃねえぞ!!」
三人の声を聞いて動き始める体育館の生徒たち。悲鳴を上げて逃げる者、アトラースをにらみつけ残る者がいた。
「……清涼院君たちだけに任せて逃げられないよ!君たち3人には及ばないけど力を合わせれば……」
「け、警察が来るまでの間だけなら!」
「ここで逃げたら一生逃げる気がするんだよね」
「き、きみたち……」
「ゴッフォッフォ」
笑みを浮かべ眺めているアトラース。
「準備はいいか?行くぞ?」
爆発的突進で清涼院を跳ね飛ばすアトラース、そのままコンクリート製の壁に激突するかと思われたが、狼谷が体重を軽くして受け止めた。追撃してくるアトラースの攻撃をエアジェットで二人を抱えて回避する虎屋。
「でやー!」「くらえええ!」「とりゃー!」
電撃、熱風、念動でネジを飛ばし攻撃する生徒たち。
「ヌン!蚊ほどにも効かぬわ!!」
腕を振るい薙ぎ払うアトラース。生徒たちは打撃で気を失い床に転がった。
「クソ……力が違いすぎる……僕たちはカテゴリー4と判定されてる。アトラースはきっとそれ以上……」
「カテゴリー5かよ」
「判定レベルが強さの全てじゃねえぜ……」
「ああ、だけど……」
アトラースの圧倒的力の前に3人は成す術が無いと感じ始めていた。
「僕たちは立ち向かう」
「一矢報いるくらいはしてやろうぜ!」
「菊彩学園を舐めんじゃあねえ!」
三人は同時に仕掛ける。アトラースは正面から受け止め殴り返す。
「ゴッフォ!ちょっと力が入りすぎたか?だがこれで大人しくなったか、部下に回収させるとしよう」
腰のポーチから携帯電話を取り出すアトラース。顔に近づけた所で突如携帯電話は粉々に吹き飛んだ。
「ヌ??何が起きた?」
「そこまでですよ」
体育館の扉の方から声がした。
「警察のお出ましか?」
「いいえ、警察ではありません。異能者特務機関です」
金髪を後ろでふたつにまとめ、両手両足には真紅のガントレットブーツ。人形のように整った顔立ち、猛獣のように鋭い目つき。
「あ、あの子は……」
「まさか来たのか」
「かっこ悪い所みられちまったな」
三人は気を失いそうになりながら声のする方を見た。
「 TMI か……現れたな!俺はアトラース!お前を蹂躙する者の名前だ」
「終夜アリナです。お前を制圧します」
「ゴッフォッフォ!お前がカテゴリー5身体強化の終夜アリナか、ちょうどいい、俺は全力を出せる相手を探していたんだ800%でまずは行くぞ……ヌヌ!?」
鋭い痛みが全身に走る。アリナから連続で放たれたベヤリング弾がアトラースの肉体に食い込んでいる。
「携帯を破壊したのはこれか!だが残念、ライフル銃の弾丸にも耐えるこの肉体、こんな指弾では倒れぬ!」
「そうですか」
ベヤリング弾を止めゆっくりと近づくアリナ。
「鉄筋コンクリートの壁をぶち抜くパンチを受けて見ろ!」
「……」
2mを超える巨体から振り下ろし気味のストレートを放つアトラース。アリナは拳を左手で払う。
「ヌヌ、捌いたか。ならばラッシュを仕掛けるまで!」
ジャブストレートからのフック、アッパー。アリナは今度は全て最小限の動きで躱す。
「どうしたどうした!避けてばかりではどうにもならんぞ!!」
「その程度なのですか?」
「受けることも攻撃することもできないお前が大きな口を叩くのか!」
「……」
アトラースの蹴りを受け止めるアリナ。体育館の床を煙を上げながら滑っていく。
「ゴッフォッフォ!倒れなかったのは流石だが今ので腕は使い物にならなくなったか?」
「いいえ、何の影響もありませんよ」
そう言い終えたアリナ、アトラースが気付いた時にはもう目の前まで接近していた。
「!?」
左掌底をアトラースの腹に打ち込むアリナ。アトラースは体をくの字に折り曲げ水平に吹き飛び体育館の扉を打ち破り外に転げた。
「……ガガガガッ」
「どうしました、もう終わりですか?」
「ガガガガガ……良いだろう、全力全開1000%だ!こうなったらもう止められんぞ、俺の気が済むまで破壊と殺戮を続ける……自分で自分を抑えられんぞ!!」
アトラースは金属製の側溝の蓋を持ち上げアリナに投げつける。難なく受け止めたアリナは側溝の蓋を持ちアトラースのいる外に出る。
「ヌウウウウウウウン!」
側溝の蓋を置いたアリナの頭めがけ手刀を振り下ろす。アリナは振り向きざまにカウンターで裏拳を撃ち込んだ。大きくのけぞるアトラース。
「馬鹿な……」
ローキックを放つアリナ、アトラースの膝があらぬ方向に折れ曲がる。
「ギアアアアアアアアッ!」
後ろに回り込み折れた足を踏みつけながら腕を後ろにねじり上げうつ伏せに倒す。その際に捻りを加え手首と肘、肩を同時に折る。
「イギャアアアアアアア!!」
「制圧完了です」
ポーチから特殊合金の手錠と異能制限の首輪を取り出してアトラースに取り付けた。アリナは首元の通信機で哿とフローレンスに連絡し体育館に戻る。
「すぐにわたしの仲間と救急車が来ます。皆さん落ち着いてここで待機していてください」
「ハハ……君って子は……」
「おいしいところ持っていきやがって」
「ヒーローかよ……」
「鎮痛剤です、これを飲んで救急を待っていてください清涼院宏昌、狼谷猟、虎屋伝」
一人一人に錠剤を渡す。
「僕たちの名前を」
「覚えていたのか」
「へっ……」
「更生して TMI の正式所属になる事を期待していますよ」
「エリートの僕たちなら訳ないさ」
「すぐになってやるよ待ってろよ」
「コノヤロウやる気が俄然わいてきたぜ……」
アリナは振り返らずに体育館に倒れている生徒に向かった。
『終わったかいアリナちゃん』
イグネイシャスの声が通信機から聞こえる。
「菊彩学園に居た敵異能者は制圧しました。まだ学園に仲間がいる可能性はあります」
『後は B チームに任せて一旦アリナちゃんら U チームは支部に戻って来てくれ』
続く
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