異能者特務機関:TMI 第 31 話「ラグナロク 3 」
―作戦開始から数分後
「セレスティア博士」
ジェットヘリに向かう途中、アリナはセレスティアを呼び止めた。
「どうしましたアリナさん」
「答えられなくても良いのでわたしの目を見てください」
「わかりました」
「セレスティア博士、あなたは念爆者が倒されることを望んでいる」
「……」
「 YES ですね」
「念爆者に逆らうことが出来ない」
「……」
「 YES ですね、今ので大体の事情は分かりました」
「全て終わればお話しますよ」
「はい」
ジェットヘリに乗り込んだメンバーはパイロットのナターシャを除く、
終夜アリナ(身体強化)
フローレンス・フランシス(生体コントロール)
哿希世美(テレポート)
早乙女ルキナ(エアロキネシス)
マイケル・カルーヤ(アポート【転送】)
アナスタシア・ヴァシーリエヴナ(フロストキネシス)
美濃・セレスティア・白夜(プラズマキネシス)
の 7 名。
ジェットヘリでまずは太平洋上に待機している護衛艦を目指す。そこから戦闘スーツを着たアリナ、ルキナ、マイケル 3 名がハリケーン台風に突入する。
護衛艦でアリナ達の戦闘スーツを通じてセレスティアが敵空母の分析。アナスタシアはジェットヘリの護衛、哿とフローレンスは負傷者の為に待機。
日本支部には敵の攻撃に備えて TMI のエージェント 10 名を配置、リザーバーとして長官ジェームズ、イグネイシャス、ジョリスが待機。作戦時の通信はカテゴリー5のテレパス苗木來美が行う。
「この距離からでもすごい風ね。合衆国でみたどのハリケーンよりも大きいわ」
ルキナは前方に見える超巨大ハリケーン台風を見て感想を述べた。
「護衛艦はこれ以上近づけない、ここから飛ぶわけね」
「何かあったらすぐに退避してください、無理な突入は禁物ですよ」
ジェットヘリの中のセレスティアが言った。
「大丈夫、こういう場面こそあたしの本領が発揮出来るって訳よ!」
「風よ!」と叫んで飛び上がるルキナ。戦闘スーツの飛行機はオフのままエアロキネシスで空中に留まる。
「あのハリケーン台風の風、消してやるわ!」
「駄目です早乙女ルキナ!作戦と違います!」
アリナが叫ぶ。
「上空から侵入ってその方が危ないわ。なるべく離れたところから風操作であのハリケーン台風を消すのがベストよ!」
「どうして!」
「現場に来て風を読んでそう感じたのよ、上は嫌な感じがするの!」
ハリケーン台風に向かって飛ぶルキナ、近づくにつれて天気は荒れ暴風雨と雷が襲い掛かる。ルキナには風も雨も触れることは無い。強風に何ら影響されずに接近していく。
「天気は荒れてるけどこのくらい平気よ……やっぱり予感は的中、ハリケーン台風の上からいっぱい何かが向かって来る!」
黒い円盤型のドローンが大量に上空から降下してくる。ドローンの機体の縁から刃が飛び出し回転鋸となりルキナに襲い掛かって来た。
「これは攻撃型ドローンね。恐らくハリケーン台風上部、いえ下部にも他の迎撃用の武器があると思う。対空砲対地砲とかね」
『それが分かっただけでも十分です、早乙女ルキナさん一旦退いて下さい』
セレスティアの声が戦闘スーツから聞こえる。
「だめよ、あたしが戻ったらこのドローンが護衛艦まで付いてきちゃうでしょ。ここで迎撃するわ!」
ルキナが手をかざすとドローンは制御を失い一か所に吸い込まれるように集まりお互いをぶつけ合い次々と爆発。数百体のドローンはものの数十秒で全滅となった。
「また何か来るわ!」
ハリケーン台風上部から飛び出したのは翼竜を思わせる翼に人型がとりついた者。全身を黒光りさせた鎧で身を包んでいる。
「フン!」
背中からライフル銃を取り出しルキナに向ける。対するルキナは風の壁と光の透過率を変え透明と化した。そしてその状態のまま敵に接近する。
「ヌヌ!?」
敵の背後を取るルキナ、圧縮空気弾を放つ。命中するも敵にダメージを受けた様子は無く僅かに体勢を崩しただけであった。
「そこか!」
ライフルを撃つ敵の男。弾丸はルキナの風の壁で軌道を変えられ後方へと消えていった。
「念爆者の異能兵士ね!」
「その通り!!お前は早乙女ルキナだな!!俺はボレアース、お前を葬り去る者だ」
「わざわざ名乗ってくれてどうも!」
空気圧縮弾を連続で放つルキナ。両腕でガードするボレアース。翼を羽ばたかせ突風で反撃する。
「そんなもの……」
回避するまでも無いと風の壁で反らせるルキナ。わずかに空気の壁から氷の結晶が現れた事に気が付いた。
「(敵もエアロキネシスだろうけどこれは……)」
トンボ返りの後大きく距離を取るルキナ、気温が急低下を戦闘スーツが告げている。
「お前さえ潰せば TMI はアイスクラーピウスを止める手段を失う!ここで死ねい!!」
翼をはためかせながらライフルを連射するボレアース。ルキナは空気防御壁を張りながら急速旋回で回避。更に周囲の気温が下がっていることを戦闘スーツが告げる。
「(マイナス 40 度!?)」
「ククク……どうした?驚いているようだが?」
「(フロストキネシスの性質も持っている!?そういえば日本支部を襲った異能兵士も普通の異能じゃなかったって言ってた……)」
「スリャアアッ!!」
大きく翼を羽ばたかせるボレアース、ルキナの周囲の気温は益々下がりマイナス 60 度ににまで下がる。
「ククククク……」
「周囲の温度が下がったくらいで!」
空気弾を連続発射するルキナ、ボレアースは翼でガード、ライフルで反撃する。
「選ばれし戦士の力思い知るがいい!!」
「(異能兵士は北海道の施設のミュータントの完成形と言われている存在……)」
ボレアースが手を上げる。すると空母アイスクラーピウスの上部から円盤ドローンが追加で大量に出てくる。
「あんなものいくら出したってあたしには通じない!」
「だろうな、だが護衛艦はどうかな?連中だけで守り切れるかなァ?」
「!!」
数百もの円盤ドローンが護衛艦に向かう。ロケットめいて追いかけるルキナ、手をかざしてドローンを吸い寄せて 1 ヶ所に集めて破壊を試みる。
「隙だらけだ!」
ライフルを撃つボレアース、ルキナは空気防御壁で難なく弾丸を反らし振り向きざまに集めたドローンをボレアースに飛ばす。
「何っ!?」
「随分とナメた真似をしてくれるわね!」
大量のドローンを受け爆発するボレアース。黒煙が巻き起こり視界を遮るもルキナは爆即座に払いボレアースの姿を確認する。そこには黒装甲の大半を破損させ青黒い肉体を覗かせたボレアース。
「 BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!! 」
両手両腕を広げ咆哮するボレアース。全身が盛り上がり巨大化、顔は変形し爬虫類めいた姿へと変態する。
「もう止められんぞ!この姿になったのだからな!!」
体を限界まで逸らして大きく息を吸うボレアース溜めを作り一気に吐き出す。螺旋状のアイスストームがルキナに向けて放たれた。
対するルキナはアイスストームを正面で散らせながら上空で圧縮していく。
「マイナス 100 度のアイスストーム……だからそれがなんなの」
ルキナの目が輝く。
「今のあたしには迷いも無ければ油断も無い、ヴォルテックスバースト!」
上空で圧縮した空気のプラズマ弾を放つルキナ、同時に乱気流を発生させボレアースの動きを止める。
「 UGAAAAAAAAAAAAAAAAA!! 」
ボレアースの胴体をプラズマ弾が貫く。ルキナは生死を確認せずにすぐに下から竜巻を発生させアイスクラーピウスに向けて吹き飛ばす。
「ハリケーン台風と一緒に消えて!!」
ボレアースを追いかけ暴風吹き荒れる中に飛び込むルキナ。風の流れに逆らわずアイスクラーピウスの周囲を飛ぶ。
「この風は……普通じゃない、こんなの……」
風自体が意志を持っているかのようにルキナの制御を逃れ吹きすさぶ。
「ああもう!まるで暴れ牛ね!!でも……制御してみせる!!」
「 GUUUUUGAAAAAAAAAAA 」
叫ぶボレアース、ハリケーン台風の風の影響で体は捻じれ全身の骨肉が裂ける。徐々に体は千切れ飛び肉塊と化した。
「防御壁がなければこの風の中を飛ぶのは無理ね……そしてこの風は異能、機械的な物じゃないボレアースよりもずっと強力な異能の持ち主がハリケーン台風を発生させている」
数 km 離れた護衛艦からルキナの様子を戦闘スーツのモニターで眺めているアリナ、フローレンス、哿、マイケル、アナスタシア、セレスティア。
『早乙女ルキナ、わたしとマイケルはまだ突入できませんか?』
「もうちょっと待ちなさいアリナ。風の分析中よ、自力で飛べないアンタたちはまだ近づかない方がいい。いくら博士のスーツの性能が良くてもね」
ハリケーン台風の中で漂いながら風と格闘するルキナ。アイスクラーピウス下部から巨大な何かが海に投下されるのを見た。
「何あれ……海獣?とにかく変なものが海の中に落ちたわ」
『護衛艦も確認したようです』
護衛艦とアイスクラーピウスの間の海面に水柱が次々と上がる。
『護衛艦が迎撃を始めたようです』
魚雷で応戦する護衛艦。水面に大量の泡が上がって来る、そして海獣が海面から飛び上がるその大きさは 20m 程、蛇を思わせる頭部、背部は甲羅を思わせる硬質の鱗がびっしりと覆い、ヒレには巨大な棘がいくつも生えている。
「 GYAOOOOOOOOOOOOOOOONN !!」
海獣から吐き出される 5 体の人型。護衛艦に向かって飛んでくる。
「アナスタシア」
「言われるまでもないわ」
セレスティアを呼ぶのとほぼ同時に答えるアナスタシア。一瞬で海面に氷山を出現させ 5 体の人型の進行を止める。人型は頭部を激しく揺さぶりその後爆発、氷山を砕け散らせた。
「……あれは恐らく念爆者に爆弾としてセットされた使い捨ての異能兵士でしょう」
「そんな……」
「喜んでそう志願したのですよ彼らは。あの海獣はバクテリアで変異させた生物に手を入れたサイバネ海獣。潜水艦に代わる兵器の試作機かと」
セレスティアが 6 人に向けて言った。
アナスタシアの出現させる氷山に突撃を繰り返し砕いて進む海獣。
「このままじゃ……」
哿はフローレンスとマイケルの腕をつかみテレポートの準備をする。
「大丈夫よ」
海獣に冷凍線を浴びせかけ、下から鋭い氷山を出現させ打ち上げるアナスタシア。海獣の表面は凍結始め、連続で出現する氷山に突かれ高度を上げていく。
「氷の女王の力見せつけてやります」
完全凍結した海獣は頭から真っ逆さまに落下。氷塊と化した海面に叩きつけられ全身を砕け散らせた。
「こっちは平気ですルキナ、ハリケーン台風の解析お願いします」
「流石ねアナスタシア最近カテゴリー 5 になったばかりと聞いたのに」
「どうという事はありませんわ」
出現させた全ての氷を砕き海に流すアナスタシア。
「手が必要なら言ってくれればよろしくてよ」
「ありがとうでも風のことならあたしに任せておいて」
生物のように暴れまわる風を少しずつ支配下に置いていくルキナ。
「??」
アイスクラーピウスの壁面から黒い人影が染み出すように出てくる。暴風をものともせずにゆっくりと真っすぐにルキナに迫る。
「新手の異能兵士!?」
「……」
人影は徐々に色を帯び灰色のローブ姿の男になる。手には捻じれた木製の杖が見えた。
「!!」
通常よりも強化した空気防御壁を展開するルキナ。
続く
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