異能者特務機関:TMI 第 43 話「新たな道」
哿のテレポートで穴井千種のいる事務所に飛ぶ三人。そこには黒い靄を纏った人間らしき者が立っており、周囲の人間は昏倒していた。穴井千種はかろうじて意識を保っていた。
「穴井さん!」
「ダメ……来ないで!力が暴走してるの…… AAAAAAAAAAAAAA!! 」
「 GEGEGEGEGE ……」
黒い靄の人物の口端が上がって見えた。耳の近くまで裂け、目は魚のように見開いたまま、鼻はそぎ落としたように低い。
「穴井さんから離れなさい!これは警告です、次は撃ちます!!」
フローレンスがショック銃を構える。
「 GRHAAAAAAAAAAAAAA!!! 」
口を大きく開き、何かを吐き出す謎の人物。咄嗟にアリナはフローレンスを伏せさせる。吐き出された飛翔体は後方の壁に突き刺さった。半透明の骨のような棘であった。壁紙を焦がし煙を上げていることから強酸性を思わせる。
「 GOBUBUBUBUBUBUBU ……」
アリナのベヤリング弾が嵐のように放たれ謎の人物をあっという間に血だるまに変えていく。それに合わせてフローレンスもショック銃を撃ち込んでいく。
「 HIGIIIIIIIIIIIIII ……コレデ……アキラメルト……オモウナヨ!」
謎の人物は窓を突き破って飛び降りる。追う哿、下に姿は無く周囲を見渡す。上に気配を感じ視線を向けると謎の人物はトビウオを思わせる翼を生やし滑空していた。
「……っ!追跡弾を当て損ねました、すみません」
「深追いは危険です、穴井さんを守れただけ良しとしましょう」
「ええ、フローの言う通りです哿さん」
フローレンスは穴井の傍にしゃがみ異能で治療を始める。
「ありがとう……さっきのアイツ……アイツが度々意識に入って来るのよ!そのせいで私は……」
「明らかに穴井さんを狙っている様子でしたね……」
「今日からしばらく 24 時間穴井さんのマンションを張り込みましょう」
「また来ると言ってたのでそれが良いでしょう」
―それから数日
時折現れる魚顔人間の撃退を続ける三人。根本的な解決には至ってないと長官ジェームズに相談した。
『その件に関しては既に日本の専門機関が動き始めているよ。君たちにはすまないが事態が収束するまで穴井千種の護衛をお願いしたい』
「専門家らと協力して捜査はさせてもらえないのですか?」
『専門知識や経験が乏しい我々では足手まといになるそうだ。哿くん』
「そうですか……」
『【霧】には近づくなと言われたよ。もし霧を見かけたらすぐに連絡して欲しい』
「解りました」
―その日の夜
空は曇り異常に生暖かい空気、ほのかに感じる磯の香。じっとしているだけでも汗ばむ息苦しい状態の熱帯夜。
「霧が……山の方だけじゃなくて街、川の方にも発生です!」
「このマンションを囲うように霧が出てきてますね」
「フロー、哿さん、警戒してください。妙な気配を感じます」
アリナはゆっくりとワゴン車から降りた。
「!!」
コンクリート製の床であったはずの駐車場は粘度の高い黒い水で濡れていた。アリナの足首ほどの深さまで達していた。
「哿さん!フロー!車から出ては駄目!!足を取られます!!」
他の者なら一瞬で転倒し黒い水に飲み込まれてしまうが、アリナは常人離れした筋力とバランスで持ちこたえている。
「この水から霧が発生しているようですね」
哿はテレポートで飛んでアリナを回収、車の天井に着地する。
「長官に連絡が繋がりません……この霧が関係しているのかもしれませんね」
フローレンスは端末を操作しながら言った。
「車をホバークラフトモードに移行しました。これで水面でも移動できます」
「哿さん、車をマンションの玄関前につけてください、住民の皆さんをむやみに外に出さない為にも」
「そうですねアリナさん」
ホバークラフトワゴン車をマンションの玄関スロープの前に停車させる。マンションは驚くほど静かで人々が騒いでいる気配は感じない。
「誰も出て来ませんね、こんな異常事態なのに」
「穴井さんもインターホンに出ません……」
『 KOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!! 』
「!?」「うっ!!」「うあっ……」
これまで聞いたことのないような不快な叫び声が響き渡り三人に襲い掛かった。
「この音……声ですか、なんという不快な」
「体の奥からぞくぞくします……」
「二度と聞きたくない声でしたね……」
三人の目の前に複数の人影、それに加え巨大な影が現れた。
「何か出て来ましたね霧の中から」
アリナはスロープに降り立ちベヤリング弾を構える。
「魚顔の連中です! 100 人はいるかと!!それの後ろの巨大なのは!!」
「怪物……!?」
『 DA …… DA …… GO ……』
じりじりと迫って来る魚人の群れ、先頭には例のトビウオ魚人。最後方に 20 メートルはあろう巨大な魚人が控えている。
「連中をマンションに入れるわけにはいきません。ここで食い止めましょう」
アリナはベヤリング弾を放ち魚人を撃っていく。赤黒い血をまき散らしながら魚人は進行を続ける。
「穴井さんや他の住民の様子も気になりますがまずはあの者たちを何とかしなければ」
「怪物相手に容赦などいりませんよね?」
フローレンスは暴徒鎮圧用のグレネードランチャー装備のショックアサルト銃を取り出した。哿はフラッシュバンを取り出す。
哿のフラッシュバンに続いてフローレンスの銃撃。次々と倒れていく魚人であったがひるむことなく仲間を踏みつけ前に前に出てくる。
「フロー、哿さん下がって」
黒い水から上がってきた魚人をスロープで迎え撃つアリナ。ステンレス製の手すりを引き抜いて槍のように構えた。
『 GURAAAAAAAAA!! 』
突進する魚人、対するアリナは最小最速の動きでステンレス棒をで突き喉を砕いていく。
『 GOBUUUAAAAA!! 』
仲間を踏み台にして飛び上がる魚人には振り抜いて迎え撃つ。バッティングセンターのボールの如く飛んで行く。
「 GEBOOOOOOOOOOOOO!! 」
棘を一斉に発射する魚人。アリナはプロペラめいてステンレス棒を回転させて弾く。
後列の魚人がそれに合わせて突撃。
「そう来るのなら……」
アリナは高跳びめいてステンレス棒を使い跳躍、上空からベヤリング弾の連続発射。魚人の頭に着地する。
「アンカーボルトセット」
かかとのアンカーボルトが魚人の頭を貫く。アリナは飛び上がり空中回転捻りして別の魚人を踏み抜く。その反動を利用してまた飛び上がりベヤリング弾を撃ちながら回転。魚人の動きを止めながら次々と頭を砕いていく。
「アリナやっぱりすごい」
「あれでアリナさん今は異能使ってないのですよね」
着地したアリナにつかみかかる魚人、手を払うと同時に手刀で喉を潰して振り回す。投げつけられた魚人は他の魚人を巻きこんで将棋倒しになり残りは 10 人ほどに。残る魚人は哿とフローレンスの射撃で倒れていった。
「 KOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!! 」
不快な叫び声をあげて巨大な魚人が歩みを始める。アリナはステンレス棒を拾い、槍投げする。
「 GYAOOOOONN 」
巨人のガードした腕に突き刺さるステンレス棒。貫通するまでには至らず胸の前で止まった。
「威力が足りませんでしたか……」
「とにかく撃って撃って撃ちまくってマンションに近づけさせないようにしましょう!」
「そうですね!」
アリナは周囲を見渡してつぶやく。異能を使えば粉砕できる自信はあったがコントロールできない今、安易に使うべきではないと考えている。
「あの巨体……斃す武器……」
アリナはワゴン車に積んであるロープと拘束衣を見つけた。
「アリナ?」「どうしたのですかアリナさん?」
「これであの巨人を斃します」
拘束衣を折り畳み、両端にロープを繋げた簡易的な投石機を手に持つアリナ。花壇のブロックを引きぬいて投石機にセットする。
ブロックがセットされた投石機を振るアリナ。空気を裂く音が響き渡る。
「ハッ!!」
放たれるブロック、ソニックブームを発生し霧を散らしながら巨人の頭の僅か上を通り抜け後ろの山に着弾、木をなぎ倒したのが見えた。
「今ので大体分かりました。フロー、哿さん、そのまま射撃で巨人の足を止め続けてください」
「ええ!」「はい!」
特殊合金のワイヤーを編み込んだロープ、炭素繊維を使った拘束衣はアリナの振り回すパワーに耐えれた。
「ハッ!」
第二射が放たれる。巨人は投石を察し手で防御の姿勢を取る。ブロック弾は巨人の両手を粉砕し右目に命中した。悶絶する巨人は足を速める。
「それならば」
第三射、第四射で巨人の両脚を砕くアリナ。膝をつき停止する巨人。
「ハッ!」
第五射を放つアリナ。高速のブロック弾は巨人の眉間に命中、頭部を粉砕し肉片をまき散らした。ゆっくりと仰向けに倒れる巨人。その時遠くで雷鳴が響き渡った。
続く
異能者特務機関:TMI 第44話「これから」 Aug 1, 2020
異能者特務機関:TMI 第42話「日常」 Jul 21, 2020
異能者特務機関:TMI 第41話「決着2」 Jul 8, 2020
PR
Free Space
Freepage List
Calendar
Category
Comments
Keyword Search