*前回まではこちら
VAMPIREEYE76 「闘技」
白峰吹雪、奥寺舞子、緋川燿子、野村萌絵、山根妃羅莉を乗せた車が着いたのは多くのテナントが入るビルであった。
「どういう事よ白峰吹雪」
「とにかく中に入って」
「は?」
「お願いだから」
いつもとは違う様子の吹雪に舞子は眉を顰める。
「ほんの少しでも妙な動き見せたら本気でやるからね。みんなもきっとそうよ」
「ええ」「うん」「いやぁんこわーい」
「こっちよ……」
重装備した教会の人間を置いて吹雪は四人を連れてビルの中に入る。階段を上がって 3 回の会議室には木城二郎とワーチーターの速水恭一が。その横にはモニターが付いていた。
「ここって電波遮断の会議室」
舞子は携帯端末の電波状態を見てつぶやく。
「あのモニターに映ってるのは……白峰雪名!?」
燿子が声を上げた。
「記録映像だけどね。さぁ皆この映像を見て欲しいんです」
二郎が言った。
「全然意味わかんない!木城君なんなの?」
「頼む奥寺、まずは映像を見て欲しいあんまり時間が無いんだ」
真っすぐな目で舞子を見つめて言い放つ二郎。
「そんな真剣に頼まれたら……断れないじゃない!いいわ見るだけよ!人間にしてはまぁいい奴だし」
「(舞子ちょろ……)」「(奥寺さん流石)」「(舞子ちゃんいいわぁ)」
「山根さんも、緋川さんも、野村さんも!」
一人一人の目の前に立って頼む二郎。
「は~い」「はい」「しょうがないなぁ~」
それを見てた恭一は吹雪にだけ聞こえるようにつぶやく。
「正直あのユニット・ヴァルキリーの女ども苦手なんだよなぁ……なんで二郎の奴平気かねぇ」
「正直で真っすぐなのよ二郎君は。妖怪って基本嘘つきが嫌いだから……」
「成程ねぇ……」
再生ボタンを押す二郎。
『皆さまごきげんよう。白峰家当主、白峰雪名です。集まって下さった皆様にお願いがあります。今の京都の状態を一刻も早く何とかしたくこの動画を取りました。妖怪連合、吸血鬼、教会の争いを裏で糸を引ているものがいます。そこでお願いです、連合のトップ酒呑童子に会う機会を作ってもらいたいのです。歩み寄らなくては自体は益々泥沼化するばかり。どうかお願いいたします』
深々と頭を下げる白峰雪名。
「こんなことありえません……白峰家の当主が我々に頭を下げるなんて」
緋川燿子は扇子で口元を隠しながら言った。
「か弱い妖怪ならその名前を聞くだけで震えるような白峰家当主ですよ?先代の時など京都中誰もが恐れたとと聞いてますし」
「……」
燿子の視線を逸らす吹雪。
「で、これがこんな所にわざわざ連れてきた理由?だとしたら話にならないわ」
舞子は髪を触る仕草と当時に糸を複数仕掛けた。
「ウチらのメリット何かありますの?」
燿子が扇子を向けて言った。
「動画で言われてもねー?」
「あんまり連合をナメだら駄目だゾ」
妃羅莉と萌絵が言った。一気に空気が変わる。
「待ってください落ち着いて!よく考えて欲しいんだ。いくら何でもこの 1 か月で揉め過ぎだと思うんですよ」
「……確かにもめ事多すぎな気がしますね」
燿子の声にうんうんと三人も頷く。
「教会は……雪名さんは引っ掻き回してる奴を見つけ出したいんです。教会のターゲットからあなたたちを外すと言ってます」
「せやけど人任せ、ちゅうのは信用されませんで?木城さんがなんぼ言うても代理にすぎひんですしねぇ」
「今すぐあってどうこうじゃあなくてもいいんです!まずは連合のトップの人に雪名さんのメッセージを届けてくれれば」
「へぇ……まぁ木城さんがそう言うなら考えてもええんですけど。そちらの白峰家の人間には何も聞かされてませんねぇ」
四人の視線が吹雪に注がれる。
「わたしがいうべき事だった……それは分かってる……」
「緋川さん、吹雪さんが好きに行動できない事は解るでしょう?だから俺が」
「それでも、です。男に言わせてダンマリはええ感じしませんの。意地悪しようなんて気はほんの少しだけありますけどやっぱり声に出していただかないと納得できひんです」
「(燿子こわ……)」
舞子は知らんふりして髪を弄る。
「お願い……します。皆さんの力を貸してください」
深々と頭を下げる吹雪。
「……」
「(燿子いいぞいいぞ)」「(超怖い!燿子さん)」「(やっぱり燿子ちゃんがリーダー)」
「ほならマネージャーに言うときますね。トップに話しできるんは幹部だけですんで」
扇子を広げて表情を和らげる燿子。二郎は大きく息を吐いて汗をぬぐった。
「急に言うてもアカンし明日また連絡します。木城さんの携帯にね」
「はい、待ってます!」
「皆帰りましょか」
「そうね」「おなかすいたー」「またねぇ~」
出ていく四人。
「はぁ~~~~~~~~マジ勘弁して欲しいぜあの空気。バチバチの喧嘩の方がましだ」
恭一は座った椅子からずり落ちて言った。
「俺も胃が痛かったよ……」
「ごめんなさい二人とも。わたしがふがいないばかりに……」
「吹雪ちゃんの所為じゃねえよーあの女どもが悪いんだ」
「ヴァルキリーの皆きいてくれてくれてよかったよ……駄目だったらどうしようかと」
―翌日
白峰の屋敷の前にリムジンが止まった。緋川燿子から連絡を受けて既に待機していた二郎と恭一が乗り込む。中には運転手と女性が乗っていた。
「真柴樹里です。ヴァルキリーのマネージャーをしています。話は緋川達から聞いております。代表の仙丈隼磨は仕事を浮ければ会うと言っております」
茨木童子である真柴樹里は鋭い目つきで言った。
「仕事ですか、それをすれば会ってくれのならやりますが。ところで吹雪さんは来なくていいとの事でしたが……なんで俺たちだけなんです?」
「二人組である必要ともう一つはやってもらう仕事内容が白峰吹雪に向かないからです」
「俺たちに何をやらせようっていうんだい?」
「バトルですよ。裏社会の人間どもが熱狂している場所でやってもらいます」
「裏社会……おい二郎こいつはかなりヤバそうな感じだぜ」
「ああ……」
「殺し合いをするわけではないです。事故で死ぬかもしれませんがね」
獲物を見据えるような目でみる真柴樹里。
リムジンが止まったのは京都タワーの裏にあるビルだった。
「こちらへどうぞ」
真柴樹里についていく二郎と恭一。細い路地を通り電子ロックの先にある 2 重扉の大層な扉を抜けると空港さながらの検査ゲートが待っていた。壁際には戦闘機に搭載されてるような機関銃のタレットが見える。持ち物検査を受けてからゲートをくぐり生体 ID を登録する二人。エレベーターで地下に降りていく。
「控室に着いたらフロアマネージャーの指示に従ってください。私は試合の後にまた来ますので」
「お、おい……」「やるしかないのか……」
エレベーターを降りると目の前には全身をサイバネ化した少年が立っていた。
「茨木童子から聞いてるぜ。お前たちがゲスト挑戦者だな、オレについてこい」
「後はお願いします八瀬童子」
「ああ、酒呑童子によろしくな」
八瀬童子と呼ばれた少年についていく二郎と恭一。
「ここが控室だ。正面のモニターに移っているのがお前たちが戦う闘技場だ。シンプルだろ?木製の舞台にそれを囲む堀、特殊ガラス越しに選ばれた客共が賭けてる訳だ」
「俺たちはどうすればいい?」
「この闘技場の現チャンピオンを1 R5 分、 1 対2の変則マッチに出てもらう。お前たちはコスチュームが無い、とりあえずゲスト用のパンツスーツを履け。ファウルカップやグローブは自由、銃火器は禁止。自身の能力によるものは何でも使っていいが。そこのツンツン頭の小僧、サイバネは体の一部として認められてるから安心しな」
「ルールは?」二郎が聞く。
「基本的に何でもありだ。気絶などの戦闘不能状態、堀に落ちるなどで勝敗は決まる。ハンデによりお前たちの片方でも 5 分間残っていれば勝ちだ」
「ところで何で床は木製なんだ?」恭一が聞く。
「派手に壊れるからそっちの方が受けがイイんだよ。チャンピオンは派手に叩きつける技が好きだからな」
「トップの酒呑童子は俺たちが戦う姿を見て話しに応じるかどうか決めるんだよな?必ずしも勝ちが条件では無い?」
「さぁな、だがしょっぱい試合をした相手と酒呑童子が会うとは思えん。勝つにしても負けるにしても酒呑と客が喜ぶような戦いをする方が良いだろう」
「で、チャンピオンはどんな戦いをするんだ?俺たちは何も知らないんだ」
「ワーチーターの小僧の言う通りだな。そっちの端末で過去の試合が見られるからそれでイメトレしときな。じゃあ 30 分後に呼びに来るからそれまでに準備をしておけ」
八瀬童子が出ていく。残された二郎と恭一は着替え始める。二郎は藍色、恭一は山吹色のコスチュームを履き。用意された防具を全て付ける。
「二郎は漆黒義手の右腕だけ剥き出しか。俺は裸足でいく、爪が出せなきゃだめだ」
着替え終わった二人はチャンピオンの動画を確認する。
「星熊童子……か、やっぱり鬼が相手なんだな」
「プロレスっぽい戦闘スタイルだな。殴ってよし掴んでよし極めてよしか、かなりタフそうだぜ二郎」
「恭一、このチャンピオンは秒殺とかしないっぽいからそこに付け入る隙がありそうだな」
「ああ、そんでもって KO するよりも堀に落とす事を考えた方がいいかもな。最悪一人が道連れで一緒に掘に落ちれば勝てる。それも厳しそうなら 5 分間耐える」
「その作戦で行こう」
「俺はスピードでかき回す。二郎は隙を見てチャンピオンの体勢を崩してくれ」
「分かった」
時間に成ると八瀬童子が迎えに来る。
「案外落ち着いてるな。泣きわめいて逃げ出そうとする奴もたまにいるんだがな」
「俺も二郎も修羅場を潜り抜けてきてるからな!」
「そうか、試合は盛り上がりそうで安心した。ついてこい」
八瀬童子についていく二人。徐々に歓声が聞こえてくる。
『ゲスト挑戦者の入場です!今回は特殊能力を持ったサイバネ少年とワーチーターの少年です!!』
ゲートを抜けて闘技舞台に続く一本橋を渡る二郎と恭一。見渡すと正面の豪華な囲いのある席に茨木童子と金髪の大柄な男性が見えた。
「おい二郎、あの金髪のおっさんが連合のトップ酒呑童子じゃねえか?」
「それっぽいな……」
『続いてチャンピオン星熊童子の入場です!』
ひときわ大きな歓声が響き渡る。反対側のゲートが開きそこから長髪で筋肉質、赤いスウェットパンツを履いた男が出てきた。
「オイオイオイ!賭けが成立してねぇんじゃないか?試合時間 3 分に縮めてやろう」
『チャンピオンの提案により試合時間を1 R3 分一本勝負に変更します。会場の皆様今からベットを開始します。ご準備を』
不敵な笑みを浮かべ睨みつけてくる星熊童子。
「こっちとしてはかなり有利になったな」
「 3 分なら逃げに徹しても行けそうだぜ」
『ベット終了です。それでは選手の皆さん開始位置に』
一本橋が上げられる。舞台のやや中央に引かれた白線の前に立つ星熊童子、向かい合って二郎と恭一。
『それでは開始します!』
大きな太鼓の音が鳴る。
「オオオオラアアアアッ!!ダブル鬼ラリアットー!!」
叫び声をあげながら両腕を振り上げ突進する星熊童子。二郎と恭一はとっさに防御の姿勢をとった。
「グッ!」「ウグッ!」
腕を叩きつけられた二人は体勢を崩して舞台を転げる。星熊童子は追撃はせずに両腕を振り回して歯を剥いて笑みを浮かべている。
「さぁ来いガキども!精々試合を盛り上げてくれや!!」
「舐めやがって!」
飛び起きた恭一、足の爪を利用してジグザグにダッシュ。フェイントからローキックを打つ。対する星熊童子は軽く足を上げてカット。恭一に掴みかかる。
「軽すぎるぜチーター小僧。そんなんじゃオレにダメージは入らんぜ?」
「だったらこれはどうだ!」
足の爪をむき出しにして逆サマーソルトキックを放つ恭一。星熊童子はわずかに身を反らして回避。胸に 5 本傷が現れた。
「そうこなくっちゃな!」
裏拳で背後を攻撃する星熊童子。後ろに回り込んでいた二郎に襲い掛かる。義手でガードした二郎はよろめいた。
星熊童子はそのまま回転、後ろ回し蹴りを恭一に向ける。
「鬼スピンキック!!」
星熊童子の蹴りを恭一は衝突の瞬間後ろに飛んで衝撃をやわらげて後方回転で着地する。
「ほう……二人ともオレの打撃を耐えるか。これは楽しめそうだ」
「(義手じゃなければ完全に骨を折られてる……)」「(ガードした腕が痺れてやがるぜ)」
星熊童子が舞台中央、二人は距離を取って円の動きで様子をみる。二郎は義手の力を解放しゆっくりと漆黒の姿へ、恭一も獣人状態へと変身する。
「いいねいいねぇ~それがお前たちの本気の状態か」
続く
VAMPIREEYE137「救世主と少年」 Jan 15, 2022
VAMPIREEYE136「異次元の扉」 Jan 14, 2022
VAMPIREEYE135「起死回生」 Jan 12, 2022
PR
Free Space
Freepage List
Calendar
Category
Comments
Keyword Search